SNS炎上事例からみる企業がすべき対応とは?炎上防止策や炎上への対処法

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SNS炎上事例から企業がとるべき対応

「従業員のSNSが大炎上している!」
「企業SNSアカウントの投稿が思いもよらぬ炎上につながった…」

近年ではSNSによるコミュニケーションが盛んですが、同時に様々なトラブルが起こっています。

従業員や利用客の不適切な言動が動画となって世の中に拡散されて炎上するケースや、企業公式SNSが炎上してしまうケースなど、SNS炎上のニュースが後を絶ちません。

SNSの炎上は、炎上を防止するための対策と、炎上した後の初動対応が大事です。この記事ではこれまでの炎上事例の紹介のほか、炎上を防止する対策や炎上後の対処について解説します。

企業とかかわりのあるSNSの炎上事例

企業とかかわりのあるSNS炎上事例をいくつか紹介します。

従業員の不適切な動画の拡散事例

2024年2月12日、大手ピザチェーンの店内で生地をこねる従業員が不適切な行為をおこない、その動画が拡散されて炎上しました。

会社側は同月14日に社内調査と対応の途中経過を報告し、店舗の清掃および営業停止の報告、あわせて従業員への厳正な処分と法的措置の検討中であることを報告したのです。

ネット上では会社側の迅速かつ毅然とした対応を応援するコメントのほか、アルバイト従業員の不適切な行動(バイトテロ)の恐ろしさや、損害賠償がいくらになるのかといった議論がなされるなど、話題になりました。

バイトテロの問題は深刻

アルバイト従業員が職場において不適切な行為をおこない、その様子を動画で撮影したものが拡散されて炎上につながる「バイトテロ」が問題になっています。

こうしたバイトテロは偽計業務妨害罪(刑法233条)、威力業務妨害罪(刑法234条)、器物損壊罪(刑法261条)といった犯罪行為にあたる可能性があり、有罪判決が出る可能性も十分あるものです。

またこうした動画は「不適切な行為をした人」はもちろん、その動画を撮影して公開した人についても罪に問われる可能性があります。

利用客の動画が炎上する事例

企業SNSではなく、利用客のSNSが炎上することで話題になるケースもあります。

たとえば、大手すしチェーン店で醤油ボトルを舐める動画が拡散されて世間でも話題になりました。

こうした利用客の動画が炎上している場合にも放置すべきではなく、企業としての対処法や再発防止策など発表することで、顧客離れとブランド価値の保護を図る必要があります。

法令違反が疑われる事例

個人の肌悩みに合わせたサプリメントを販売している企業のSNSにおいて、法令違反にあたる可能性の高い投稿がなされました。

サプリは医薬品ではないため、商品の紹介時に使用してはいけない表現があります。そうした「本来禁止されている表現」を使っていたことが問題視されたのです。

広告表現には注意

医薬品・サプリなどの広告表現には、薬機法(薬事法)に基づいて厳格なルールが設けられています。

そのため医薬品やサプリメントをあつかう企業は、広告文にも十分な注意が必要です。近年ではインフルエンサーにPRを依頼するケースも多いですが、PRの文章にも十分注意しなくてはなりません。

薬機法に違反すると、違反者や事業者に行政指導が入るだけでなく、刑事処分の対象となったり、課徴金納付を命じられることもあります。

スタートアップ企業であってもトラブルを生まないように「法的リスクへの対策」が重要です。事業について相談できる弁護士を見つけておくようにしましょう。

企業公式SNSの炎上事例

企業公式SNSは企業の事業内容の紹介にとどまらず、ユーザーに親しみや愛着をもってもらう重要な手段になっています。ときに「中の人」として、SNS運用担当者自身のファンがつくケースもあるでしょう。

しかしそんな企業公式SNSも炎上してしまうケースが多々あるのです。大きくは以下の2つのパターンにわかれるでしょう。

  • 不謹慎な投稿だと指摘を受ける
  • 企業アカウントと個人のアカウントを間違えて私的なことを投稿してしまう

多くの人の共感を得られれば、その投稿はバズり、SNS運営としては成功します。しかしSNS担当者が面白いと思う企画も、読み手にとって不快であれば炎上してしまうのです。

また企業アカウントと私的なアカウントを間違えてしまうことも炎上原因のひとつでしょう。企業として不適切な投稿をしたり、個人的な趣味嗜好の相手に返信を送ったり、担当者のミスだったりと様々なケースがあります。

企業SNSによる炎上の事例を以下に示します。

企業SNS炎上の事例

  • 大手ディスカウントストアの公式SNSによる「みんなは〇〇(自社店舗)で何盗んだことがある?」との投稿が不適切であるとして炎上
  • 有名テーマパークが作品に登場するセリフを引用して「めでたい」というような投稿をしたが、その日は原子爆弾が投稿された日であったため炎上
  • 大手旅行代理店の公式アカウントが、有名人に対して「ぶさいく」とコメントして炎上

企業SNSの炎上を防止する5つの対策

企業SNSは、顧客とのコミュニケーションや情報発信に有効なツールですが、炎上リスクも伴います。炎上は企業イメージやブランド価値を毀損し、大きな損失に繋がる可能性があります。

5つの対策

  1. 炎上リスクの高い投稿を避ける
  2. 運用ルールを明確に定め、徹底する
  3. 従業員教育を徹底する
  4. 炎上後のさらなる炎上は避ける
  5. 専門家の意見を採り入れる

(1)炎上リスクの高い投稿を避ける

企業SNSは多くの人に見られていることを意識し、話題も慎重に選ぶ必要があります。見る人が見れば傷つく可能性があるような表現、何かの事柄について特定の立場からの意見などは避けるようにしてください。

炎上リスクの高い投稿を避けるための具体策は次の通りです。

  • 政治、宗教、差別など、センシティブな話題は避ける
  • 個人攻撃、誹謗中傷、差別的な表現はしない
  • 誤解を招く表現や事実誤認は徹底的にチェックする

(2)運用ルールを明確に定め、徹底する

企業SNSにおいては運用ルールが大事です。企業の顔である以上、誰がアカウントを動かしても一定水準の運用がなされるべきでしょう。

たとえば、次のような事柄について決めておき、誰であっても同じ手順で対処できるとより安心です。

  • 投稿内容の承認フロー
  • コメントへの対応方法
  • 炎上発生時の対応マニュアル

また、複数人で投稿内容をチェックすることも有効でしょう。誤字脱字、事実誤認、倫理的な問題などをチェックできるほか、異なる視点からの意見を取り入れることにもつながります。

炎上発生時の対応マニュアルについて

炎上発生時の対応マニュアルでは、次のような事柄を定めておきましょう。

  • 迅速な情報収集と状況分析をおこなう手順
  • 謝罪文の迅速な作成と公開する手順
  • 原因究明と再発防止策の策定

ただし謝罪文の作成と公開はスピード感だけでなく、慎重な判断も求められる部分です。とくに、今後の対応も考えると、法律の専門家である弁護士から客観的な意見をもらうこともポイントといえるでしょう。

また、定期的に運用状況をレビューして、よりよいマニュアルの整備も重要です。

(3)従業員教育を徹底する

炎上事例としてとりあげた「バイトテロ」は、従業員の不適切な行動が全てのきっかけといえます。そのため日ごろから教育をおこない、従業員の意識改革を図ることが重要です。

従業員教育の例としては、個人アカウントであっても、自社の批判や不適切発言はしないよう、SNSの適切な使い方を周知していくこともポイントといえます。

また、企業のSNSアカウントを運用する従業員には、必ず運用ルールを周知徹底することや、どういった投稿や表現が炎上につながるものか、これまでの炎上事例から学ぶことも重要でしょう。

(4)炎上後のさらなる炎上は避ける

一度炎上してしまったら、状況の分析、企業としての声明発表、削除の対処も必要です。これらの中で重要なことは、さらなる炎上をできるだけ避けることに尽きます。

企業としての声明を出す際には、一度出した声明は取り消すことが出来ないと覚悟して、内容をしっかりと精査してください。次に示す通り、専門家の意見を聞いたうえで声明を発表することが大切です。

(5)専門家の意見を採り入れる

炎上してしまったあとの対策や、炎上を予防するための対策としては、専門家の意見を聞くことも大切です。

とくにインターネットトラブルにくわしい弁護士に相談しておくことで、先々をみすえたアドバイスを受けることができます。

法令順守や法的なリスクを回避するためにどんな対策を講じておくべきか、先手を取った対応によって再炎上を防止していきましょう。

SNSで炎上してしまったときの対処法

インターネット上で企業や個人に対する批判が集中し、激しい非難が巻き起こる「炎上」によって、企業の評判やブランドイメージに深刻なダメージを与える可能性があります。

現状を冷静に分析する

炎上発生時には、まず冷静に状況を分析することが重要です。

  • なぜ炎上しているのか?
  • 投稿のどの部分に批判が集中しているのか?
  • 誰が批判しているのか?

これらの点を分析することで、炎上原因を特定し、適切な対応を検討することができます。

安易な反論はしない

炎上している状況で、反論したり投稿を修正・削除したりすることは逆効果です。

反論は火に油を注ぎ、さらなる炎上につながる恐れもあります。あるいは修正・削除は「火消しに走っている」と批判される可能性もでてくるでしょう。

投稿はすでにスクリーンショットなどで拡散されているため、修正・削除しても証拠は残っています。

適切な謝罪や声明の発表

原因究明後、謝罪が必要な場合は公式見解として謝罪し、誠意を持った説明を行います。

  • どういった経緯があったのか
  • どんな対処をとるのか
  • 今後の再発防止策

こうした点を明確に述べ、謝罪すべきことは謝罪する必要があります。

投稿削除

問題の投稿は、状況を悪化させないために速やかに削除しましょう。

もっとも、投稿を削除しても、拡散された情報はネット上に残り続けたり、企業名検索で炎上関連情報が表示されたりする可能性が十分あります。

炎上の経緯や対応などのまとめサイトが作成されることもあり、ネット上から炎上した事実を完全に削除することは困難です。

削除の方法は?

媒体によって削除の方法は異なりますが、基本的には、サイトや媒体の運営に連絡をして削除してもらうか、裁判手続きを利用する方法があげられます。

各媒体の削除方法についてまとめた関連記事を紹介しますので、ご検討ください。

ただし今後の法的対処においては、炎上した投稿を削除することで証拠となる情報が失われる懸念もあります。まず弁護士に相談して先をみすえた対応をとりましょう。

SNS炎上への法的対処にはどんなものがある?

SNSが炎上した際の法的対処をまとめて紹介します。

投稿の削除を申立てる

炎上した事実はあっても、いつまでも多くの人の目に留まる状況は避けたいと考えるのは自然なことです。また、おもしろおかしくまとめサイトや動画が作られ、作り話のように広がることで、企業活動に影響が出ることもあります。

企業活動を不当に妨げるものについては削除できる可能性があるので、一度弁護士に相談してみてください。

弁護士のサポートのもと、裁判所に削除の仮処分を申し立てることも検討しましょう。

ネットに強い弁護士を探す

削除の仮処分とは何か知りたい方は、関連記事『削除請求の仮処分申立てとは?ネット上の誹謗中傷や名誉毀損への法的手続き』も併せてお読みください。

いきすぎた誹謗中傷には毅然と対処

いきすぎた誹謗中傷については、侮辱罪や名誉毀損に該当する可能性があります。たとえば次のような投稿は、他者の権利を侵害しうるものです。

  • この会社の〇〇〇〇(本名)は社内不倫をしている。
  • この企業の商品〇〇(製品名)を食べたら食中毒になった。
  • この店は国産品を使っていると嘘ばかり。実際には輸入原料ばかりだ。

なお、関連記事『店への悪口は名誉毀損や営業妨害になる?誹謗中傷への対処法がわかる』では企業や店に対する誹謗中傷にどんな法的問題があるのかを解説しています。併せて参考にしてください。

脅迫を受けた場合は警察にも相談

炎上をきっかけに脅迫を受けたり、暴力行為をふるうことを示唆されたり、根も葉もないデマで営業を邪魔された場合には、警察への相談も検討してください。

  • 店におしかけて営業できなくしてやると書き込まれる
  • 騒動を起こした罰などといって金銭を要求される
  • 炎上に乗じて悪意あるデマを流される

企業のSNSが炎上するとき、企業側にも一定の落ち度はあると考えられます。しかし、非難を受けるべきことと、不当な権利侵害を受けることは別ものです。

従業員や利用客への賠償請求や刑事告訴

従業員や利用客の不適切な動画が炎上してしまった場合には、その内容しだいで賠償請求や刑事告訴も視野に入ります。

店が営業できなくなったことへの損害や従業員への給与補償、再発防止策をとるためにかかった費用なども、炎上騒動との因果関係が認められれば損害賠償の対象です。

また不適切な動画によって店の営業を邪魔されたときには、威力業務妨害や偽計業務妨害といった犯罪行為に該当する恐れもありますので、警察への相談も視野に入れることになります。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了