検索順位を下げる逆SEOとは?誹謗中傷対策の目的によって不向きな面もある
自社にとってネガティブな内容が書かれているとき、そのページの検索順位を下げる「逆SEO対策」は有効な手段のひとつです。
逆SEO対策とは、より質の高いページを作成したり、既存のページの価値を高める対策をしたりして、googleなどの検索結果でネガティブなページを目立たせないようにする方法になります。
もっとも、逆SEO対策にも出来ることと出来ないことがあるので、誹謗中傷に対してどうしたいのかという目的に応じた選択を取らねばなりません。
この記事では逆SEO対策の一般的な概要・効果と、逆SEO対策だけではできない「投稿の削除」や「損害賠償請求」についても簡単にまとめています。
逆SEO対策を検討している方も、情報整理のためにお読みください。そして、ご自身の目的によっては弁護士への相談も視野に入れてみましょう。
目次
逆SEO対策の手法と効果
ネガティブなページの検索順位を下げる対策
逆SEO対策とは、自社サイトに対するネガティブな情報や口コミがgoogleなどの検索エンジン上位に表示されるのを防ぐための対策です。検索順位を下げることで、人の目に触れる機会を減らす効果があります。
具体的には、次のような対応が考えられます。
逆SEO対策の具体例
- 公式ホームページのコンテンツを充実させ、質を上げることで検索上位をねらう
- 専門家による製品に関するブログ記事を作成し、検索結果に上位表示させる
- 公式のページについてSNSで積極的に情報発信し、製品の安全性や有効性をアピールする
なお、いくらネガティブなページがあったとしても、そのページに対して攻撃を仕掛ける行為をしてはいけません。
逆SEO対策が有効なケース
逆SEO対策が有効なケースとしては、企業の風評被害対策が挙げられます。
例えば、自社製品に対してネガティブな感想を書かれたブログが上位に表示されていると、多くの人に見られてしまい、よくない印象を持たれてしまう可能性があります。
「味がおいしくなかった」「接客にいい印象を受けなかった」などと書かれても、こうした表現であればあくまで個人の感想に過ぎず、違法とまでは言えない可能性が高いです。そのため、そのブログの取り下げを依頼したり、削除請求したりすることは難しいでしょう。
そうした場合には、その自社製品に関してより高い評価を得られるようなサイトを作成すれば、ネガティブなページの露出が下がる効果が期待できます。
なお、検索時のサジェスト(検索候補)にネガティブなものが表示されてしまうことへの対応は、『Google検索のサジェスト削除依頼|サジェスト汚染の対策方法とは』の記事を参照してください。
逆SEO対策と法的対処の違い
逆SEO対策は検索順位を下げるが削除はできない
逆SEO対策は、ネガティブなサイトの検索順位を下げることはできますが、削除はできません。
逆SEO対策は、あくまで自社サイトに対するネガティブな情報や口コミが検索エンジン上位に表示されないための対策であって、ネット上には存在し続けるのです。
削除請求するには、そのサイトの管理者や投稿者に削除を依頼する方法があります。しかし、管理者側に対応してもらえなかったり、投稿者から反発を招いたりして、うまくいかないことも多いです。
任意の削除依頼が難しいときには、裁判所の手続きある「仮処分申立て」によって削除を目指す手法がとられることもあります。この仮処分申立ては書面の作成や裁判官との面談が必要になる法的手続きになるため、弁護士に依頼する方も多いです。
関連記事『削除請求の仮処分申立てとは?ネット上の誹謗中傷や名誉毀損への法的手続き』では削除請求の仮処分申立てについて解説していますので、あわせてお読みください。
逆SEO対策では投稿者が誰かはわからない
逆SEO対策による効果は、自社でより高品質なページを作成することで、相手方のページの検索順位を下げることです。
そのためそのページをだれが作成したのかは関係なく、わかりようがありません。
もし投稿者が誰なのかを突き止めて法的対処を取りたいという場合には、発信者情報開示請求の手続きが必要になることが多いです。
発信者情報開示請求は逆SEO対策とは全く別で、投稿者のIPアドレスを入手し、そのIPアドレスから発信者の住所や氏名、メールアドレスを特定します。
投稿者を特定したいというときには逆SEO対策は適していないといえるでしょう。
もっとも、誰かを特定したいという意図だけでは発信者情報開示請求は認められず、特定後は損害賠償請求や刑事告訴などの対応をとる必要があります。
発信者情報開示請求についての詳細は、以下の関連記事もあわせてお読みください。
逆SEO対策では投稿者に損害賠償請求できない
損害賠償請求するためには、相手がどこの誰なのかを突き止める必要があります。逆SEO対策ではそうした個人を特定する情報はわからないので、損害賠償請求はできません。
悪質な投稿によって営業を妨害されたり、噂話で社会的評価を下げられたりといった損害を受け、その損害に対して賠償金を請求したいときには、相手が誰なのかを知る必要があります。
そのためには発信者情報開示請求の手続きが必要になるので、損害賠償請求をしたいなら逆SEO対策は不向きといえるでしょう。
関連記事は誹謗中傷による慰謝料請求の流れや金額相場を解説しています。
【まとめ】悪質な投稿には法的対処も検討すべき
ネガティブな投稿ではあるものの違法とまではいえないコンテンツにおいては、自社の価値を高めるためにも逆SEO対策は有効な手段となるケースがあります。
しかし、虚偽の情報を流したり、行きすぎた表現で誹謗中傷を受けたりしている場合には、逆SEO対策ではなく法的対処の検討も必要といえるでしょう。
具体的には、その投稿の削除請求や、投稿者への損害賠償請求、あるいは内容しだいでは警察への相談も対処のひとつです。
どういった法的対処が取れるのかは法律の専門家である弁護士に問い合わせてみて、具体的な方針を検討していきましょう。
逆SEO対策と弁護士相談で悩んでいる方へ
逆SEO対策と弁護士費用の比較は慎重に行おう
逆SEO対策にかかる費用は、弁護士費用と比べると比較的安価なことも多いです。
しかし、目的に応じた検討と、長期的な視野での比較が必要です。
たとえば逆SEO対策の一環で高品質なページを作成した場合、一度作成すれば終わりというわけではなく、SEO対策によって高い順位を維持することも必要になります。
つまりページの作成費用だけでなく、その質や順位を維持するための費用が掛かる可能性があるのです。長期的な視点で費用の見積もりを取っておきましょう。
一方、法的対処をとるための弁護士費用については、契約と同時に着手金が一定額必要だったり、成果に応じた報酬金が発生したりします。
法律事務所ごとに金額は様々ですが、投稿者を特定して賠償請求する場合には100万円以上かかることもあるでしょう。
そのため、弁護士費用については「どこまで依頼するのか」という契約の範囲をしっかり確かめて、事前の法律相談で必ず見積もりを取っておいてください。
弁護士費用については、以下の関連記事でも解説しています。
相談先はどうやって探せばいい?
逆SEO対策について
逆SEO対策においては、該当するページに対して何らかの攻撃を加える行為はすべきではありません。そのため、そうした不適切な対策を講じることのない専門家への相談がおすすめです。
また、非弁行為をおこなっていないことも確かめておきましょう。
非弁行為とは
弁護士法で定められている「弁護士のみが行うことができる行為」を、弁護士資格を持たない人が報酬を得る目的で行う行為のこと。
弁護士資格を持たないにもかかわらず「当該ページの削除を代行請求します」などと言っている業者には注意して、よく話を聞くようにしてください。本人の代理人となれるのは弁護士のみです。
弁護士について
ネット上の投稿削除や発信者情報開示請求による投稿者特定などの手続きには、サイトの特性を理解していたり、手続きに慣れてスムーズに行えることなどが重要なポイントになります。
そのためネット上の誹謗中傷問題を取り扱った実績があり、ノウハウを生かして活動してくれる弁護士に相談すべきです。
ネットにくわしい弁護士を探したいという方に向けて、探し方のヒントを解説している記事がありますので、以下のバナーも参考にしてみてください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了