キャリコネの悪質な口コミは削除できる?削除方法と投稿者特定の流れ
キャリコネは企業の評判や口コミを閲覧できるサイトとして、求職者向けに様々な情報を発信するサイトです。
職場探しに役立つ情報が多数掲載される一方で、企業の評判にかかわるような悪質な口コミが記載されることもあります。
個人の論評だったり、感想だったりするレベルの口コミであれば対処は難しいですが、個人の表現の自由を超えて他者の権利を侵害するものは悪質な口コミとして対処すべきです。
この記事ではキャリコネの利用規約を参考にしながら、悪質な口コミを削除する方法や、口コミ投稿者特定の流れを説明します。
目次
キャリコネには口コミ削除に一定の基準がある
キャリコネでは、口コミが投稿された後に事後検閲がおこなわれています。一定の基準に該当している場合、キャリコネ側の判断で口コミが削除されるのです。
キャリコネの事後検閲における基準
以下の基準にあたるとき、キャリコネ側の自由な裁量で投稿を削除することがあると述べています。
キャリコネの事後検閲基準
- 個人名、電話番号・住所等個人のプライバシーに関わる内容
- 誹謗中傷となる内容
- 過度な感情表現が含まれる内容
- 危険行為を助長する、もしくは直接結びつく怖れのある内容
- 投稿場所と投稿内容が合っていない内容
- 法令、公序良俗に反する内容
- 秩序を乱す起因となる内容
上記はキャリコネの利用規約の一部抜粋になります。すべての規約を確認したい方は、キャリコネの公式ホームページより「キャリコネIDラウンジ 企業に関するアンケートの利用規約」をお読みください。
キャリコネにおける禁止行為
また、キャリコネ会員に向けた禁止行為も定められています。以下はその一部抜粋です。
禁止行為(一部抜粋)
- 著作権などの知的所有権、プライバシー、名誉、肖像権など他人の権利を侵害する行為。
- 個人や団体を誹謗中傷する行為。
- 第三者又は弊社に不利益を与える、又はそのおそれのある行為。
- 虚偽の情報を登録、告知、提供する行為。
- 法令、公序良俗に反する行為、又はそのおそれのある行為。
すべての禁止行為については、利用規約内のキャリコネ会員に向けた禁止行為の部分をお読みください。
どんな口コミが削除される?
キャリコネの検閲基準や禁止行為から考えられる、削除される可能性のある口コミの例を示します。
削除される可能性がある口コミ
- 面接落ちた。面接官の人の顔は覚えている。絶対に許さない。
- パワハラが横行している職場です。絶対に応募してはいけない、劣悪な環境です。
- 営業部の〇〇(本名)は社内不倫をしています。
上記はあくまで一例ですが、誰かに危害を加えるような内容、過度な感情表現によるもの、個人情報を掲載しているものについては、キャリコネ側も容認しない可能性が高いです。
もっとも、ユーザー投稿コンテンツに関するガイドラインにもあるとおり、会社側から削除を申請したときは情報が正確であることの証明が必要とされます。そのため削除依頼が必ず通るとは限りません。
キャリコネの口コミを削除する2つの方法
キャリコネの口コミを削除する方法としては、(1)削除依頼フォームから連絡する方法と(2)裁判所の手続きで口コミを削除する方法の2つがあります。
(1)削除依頼フォームから連絡する方法
キャリコネでは、投稿の削除を依頼するフォームを設けています。なお、投稿が利用規約に違反していると判断できる理由や根拠を説明する資料の提出が必要です。
キャリコネの口コミ削除の流れを以下にまとめます。
キャリコネの口コミ削除の流れ
- 削除依頼フォームを開く
- 氏名、メールアドレス、削除依頼記事番号、削除理由などを記入する
- 根拠や説明資料を添付する
- フォーム送信する
「削除理由」にはキャリコネの利用規約を参照しながら、利用規約のどの部分に違反しているのかを明確に記載しましょう。
(2)裁判所への仮処分申立てで削除する方法
キャリコネの削除依頼フォームで連絡を入れても、キャリコネ側の判断によって削除申請が認められない可能性があります。
その場合には、裁判所の手続きである「仮処分申立て」の利用も検討しましょう。
仮処分申立てとは
通常の裁判手続きを待っているあいだにも権利の実現が困難になってしまったり、権利侵害が拡大したりする恐れがあるときに認められる、迅速かつ暫定的な権利保全の手段。
ネット上の口コミが残ることで誰かの名誉が侵害されたり、企業の評判を下げたりといったときに取られる法的手段といえます。
仮処分命令が裁判所から発令されたときには、キャリコネ側も削除に応じる可能性は高いです。
仮処分申立ては通常の裁判よりは迅速な手続きとなりますが、申立てから約1ヶ月から2ヶ月ほどかかるため、仮処分申立てを検討している方は早めに弁護士への相談をすすめてください。
仮処分申立ての進み方
裁判所での仮処分申立てを利用したとき、おおよその進行は以下の通りです。
仮処分申立ての流れ
- 仮処分申立書や資料を裁判所へ提出
- 裁判官と申立者での面談
- 裁判所でキャリコネ側を交えて審尋
- 申立者が担保金を納付
- 裁判所から削除の仮処分命令が発令
- キャリコネ側が当該口コミを削除
仮処分申立てをおこなっても、必ず裁判官が認めてくれるわけではありません。仮処分申立書の内容をしっかりと整え、申立ての根拠や権利侵害を示す資料も十分に準備しましょう。
なお、本来仮処分申立ては「暫定的な救済措置」なので、正式な裁判が必要となります。しかしネット上の投稿削除における仮処分申立てでは、実際に口コミが削除された場合において、これ以後の正式裁判は必要ありません。
仮処分申立ては弁護士に相談すべき
仮処分申立てをしても、必ず被害者側の主張が認められるとは限りません。仮処分申立書をしっかりと作成し、証拠を揃えて、裁判官に権利侵害を主張していきましょう。
正当な申立てと判断されるためにも、法律の専門家である弁護士に相談して、必要に応じて対応を任せることもおすすめです。
こうした仮処分申立てによる削除の手続きは、関連記事『削除請求の仮処分申立てとは?ネット上の誹謗中傷や名誉毀損への法的手続き』でもより詳細に解説しています。あわせてお読みください。
口コミへの対処に関して気になる疑問にお答え!
現在では口コミを確認してから意思決定をする人も多いので、企業として口コミの扱いには注意したいところでしょう。
ここでは口コミの削除についての疑問に一つずつお答えします。
削除ではなく投稿者の特定はできる?
キャリコネの削除依頼フォームを利用した場合も、削除を求める仮処分申立てをおこなった場合も、いずれの方法であっても投稿者の特定はできません。
仮に投稿者の特定をおこないたい場合には、発信者情報開示請求という手続きが必要です。
発信者情報開示請求の流れ
- 口コミ投稿時のIPアドレスを入手
- そのIPアドレス情報からプロバイダを特定
- プロバイダに対して発信者情報の開示を請求
- 発信者情報の開示を受ける
発信者情報の開示を受けることで、投稿時に使われたプロバイダの契約者情報が得られます。住所・指名・メールアドレスなどがわかるので、投稿者本人に対して損害賠償請求が可能となるのです。
もっとも投稿者の特定につながる情報は永久に残るわけではありません。情報が消えてしまう前に早めに行動に移すことが大切です。
実名が出ていないと権利を侵害されたとはいえない?
実名は出されていなくても、誹謗中傷が誰に向けられているのかを客観的に判断できる場合には、削除依頼が認められる可能性があります。
キャリコネはその企業の口コミとして記載しますので、どの企業に勤めている人なのかを推察しやすい状況といえます。そのため実名こそ書かれていなくても、そのほかの情報から個人特定は可能と判断される可能性はあるでしょう。
関連記事『ハンドルネーム・伏字・源氏名への誹謗中傷で名誉毀損は成立する?』でも解説していますので、参考にしてみてください。
個人情報が書かれてしまったときは?
キャリコネの事後検閲基準において「個人名、電話番号・住所等個人のプライバシーに関わる内容」が含まれています。
プライバシー侵害を受けているときには早急にキャリコネに被害を申告しましょう。
なお、悪質な場合には投稿者を特定して損害賠償請求することも検討してください。その際、口コミを削除することで特定につながる情報が消える可能性があるので、弁護士に相談して、適切な対応をとっていきましょう。
「給料が低い」は風評被害?
「給料が低い」というのはあくまで個人の感想になりますので、風評被害や名誉毀損にあたる口コミという主張は認められないでしょう。
あまりにも同様の口コミ投稿が続く場合には、待遇の改善を検討したり、従業員への説明を徹底したりといった別の対応が必要といえます。
ただし「残業代の未払いを続けるブラック企業」「給料が募集要項と違う虚偽会社」などと書かれ、それらが全くのデマであるときには法的対処の検討も視野に入れていきましょう。
デタラメな口コミでも放置すると問題あり?
全くのデタラメが書かれていて、誰も信じないだろうと安直に放置することは危険です。
もし故意にデタラメを書かれている場合には、ほかの口コミサイトにも同じような内容が書かれている恐れがあります。
多くの人の目に触れれば、SNSや掲示板サイトに転載され、さらに拡散が続けば炎上するリスクもあるでしょう。
そのため口コミは決して軽視すべきではありません。
ほかの求職者向けの口コミサイトの削除方法は関連記事でくわしく解説していますので、あわせてお読みください。
口コミの削除で行き詰っている方は弁護士相談も検討!
キャリコネには事後検閲基準や禁止行為が明文化されており、利用規約に違反していることが認められれば削除依頼フォームからの申請でも十分削除されるでしょう。
それでも、削除自体はキャリコネ側の判断によるため、思うように伝わらず、削除されないという事態も想定されます。
キャリコネ側から削除の判断を受けられずにお困りの方は、一度弁護士への相談も検討してみてください。
弁護士に相談することで、どういった根拠資料で削除を申請すべきか、あるいはキャリコネの削除依頼フォームによらず裁判所の仮処分申立てに移行すべきなどの助言が受けられます。
口コミの削除申請手続きに精通した弁護士であれば、様々な観点からアドバイス可能です。弁護士への相談を検討したいという方は、下記バナーよりご確認いただける解説記事もあわせてお読みください。相談する弁護士を選ぶ際の考え方のヒントになる記事を紹介しています。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了