誹謗中傷対策|削除依頼・発信者特定にかかる弁護士費用
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監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

目次
SNS・サイトでの誹謗中傷|削除依頼にかかる弁護士費用はいくら?
弁護士費用の内訳|3つの費用項目
弁護士費用には大きく分けて以下の3つに分けられます。契約の内容によって費用の名目は異なりますが、一般的な表現として弁護士費用というと、この3つがあげられます。
- 着手金(契約時に発生する費用)
- 報酬金(成功した際に発生する費用)
- 実費(交通費や郵便代など実際にかかった費用)
通常、弁護士と契約をする前には法律相談を受けることになります。その中で、弁護士費用の内訳など、詳細を確認することができます。それぞれの言葉の意味を理解した上で契約手続きに進みましょう。特に、着手金は契約時に発生するもので、結果にかかわらず原則返金はおこなわれない性質のものです。一方で、報酬金は結果に左右される金額です。あとでトラブルにならないよう、どのような場合にいくら発生するかをイメージしておくことが大切です。
ポイント
- 法律相談の相談料は無料のところもあれば、「回数」「時間」などで料金が変動する法律事務所もあります。料金体系は各法律事務所のサイトに掲載されていることが多いため、参考に閲覧しておくことをおすすめします。契約時には、費用の他に「弁護士の実績」や「説明が丁寧か」なども検討材料にしながら法律事務所の選定をするとよいでしょう。
削除依頼の方法
サイトやSNSで誹謗中傷記事が書かれた場合、削除依頼の方法には次の3つが考えられます。
- 投稿者に直接削除依頼する
- 運営者(コンテンツプロバイダ)に削除依頼する
- ガイドラインに則った削除依頼(送信防止措置依頼)をする
たとえば、TwitterやInstagramなどのSNSでは、投稿した本人に直接削除を依頼したり、運営会社に通報するという方法があります。この削除依頼の方法は、費用をかけずに個人で行うことができます。
注意点
- 投稿者本人に直接削除依頼をする場合、その依頼が原因で炎上を招くリスクも考えられます。直接コンタクトをとるかは慎重に判断する必要があります。
削除依頼は、弁護士に依頼することも可能です。個人での任意交渉に応じてもらえない場合、また、自分で削除依頼をすることに不安がある場合は、弁護士に依頼して早期解決を図ってください。
仮処分の申立て・削除請求に必要な弁護士費用
任意の削除依頼や、ガイドラインによる削除依頼をしても削除されなかった場合には、裁判所を利用した手続きを検討することになります。その際には、次の3つの費用が弁護士費用として必要になります。
- 着手金
- 報酬金
- 実費および日当
多くの法律事務所がこの3つの費用項目を用意しています。ただし、法律事務所によって費用設定の方針は異なりますので、どの事務所に依頼するかで必要な弁護士費用は変わります。
着手金だけ見ても、「仮処分:税抜20万円~」と設定しているケースもあれば、手続きの段階を細かく分けて、それぞれにかかる着手金を設定してるケースもあります。費用の設定については、相談の中でしっかり確認しておく必要があります。
なお、仮処分申立てのあと、訴訟に移行することもあります。手続きの展開により必要となる費用も変動しますので、ご契約前には手続きとあわせて費用情報も整理しておきましょう。
匿名投稿者を特定する|発信者情報開示請求・損害賠償請求の弁護士費用
発信者情報開示請求とは
発信者が誰なのかを特定するために、サイト運営側やインターネットプロバイダ側に対して情報開示を求める手続きを「発信者情報開示請求」といいます。発信者情報は個人情報として厳格に保護されていますので、任意のリクエストで応じてもらうことは難しいでしょう。そこで、法律に基づいて手続きを進めることになります。
サイト運営側に対してプロバイダ責任制限法(ガイドライン)に基づく情報開示請求がうまくいった場合、裁判手続きを使わずともサイトへの接続情報を入手することができます。しかし、次の段階として想定されるインターネットプロバイダに契約者情報を求める際には、裁判所を利用することになります。
発信者の情報開示請求の流れは以下のようになります。
- コンテンツプロバイダに、発信者の接続情報(IPアドレス等)を開示請求する
- インターネットプロバイダに、契約者情報(住所・名前等)を開示請求する
※従来は2段階に分けて開示請求手続きを行う必要がありましたが、法改正(改正プロバイダ責任制限法)により2022年10月以降はワンアクションで行えるようになります。
発信者情報開示請求に必要な条件や具体的な流れについては、以下の記事をご参考になさってください。
発信者の情報開示請求にかかる弁護士費用
ネットで検索をしてみると、「仮処分」と「発信者情報の開示請求訴訟(通常訴訟)」で、着手金と報酬金がそれぞれ同額で設定されている法律事務所も見受けられます。また、「仮処分」と「通常訴訟」では、後者の方が費用設定が高めになっている料金体系も見受けられました。弁護士費用の相場を知るには、いくつか法律事務所で見積もりをとってみるとよいでしょう。
仮処分の手続きをとる場合、その手続きの中で担保金を収める必要がでてきます。後に還付されるとしても、担保金はすぐに収められるように準備しておく必要があります。仮処分の場合は、30万円程度が相場だといわれています。
発信者特定の後の「損害賠償請求」とは
発信者が特定できたあとは、その発信者に対して様々なアクションを起こすことが考えられます。代表的なものとしては、損害賠償を請求するという選択があります。民法709条の不法行為に基づき損害賠償を請求するというケースがあります。これは、[1]裁判外で請求する方法と、[2]民事裁判を起こして行う方法があります。
「損害賠償請求」するには弁護士費用はいくらかかる?
裁判外で直接相手方にアプローチする場合と、裁判手続きを使う場合では弁護士の活動内容や費用に違いが生じます。そのため、どの方法で行うのか、またそれにはどのような費用が生じるか、担当弁護士に確認しておくことが大切です。例えば、民事裁判をする場合には、訴額(相手方に支払いを求める金額)に応じて裁判所に収める印紙代が必要になりますので、その分の実費が計上されることになります。
ポイント
- 損害賠償請求とは別に、相手を「名誉毀損罪」などで刑事告訴することも考えられます。全ての誹謗中傷に対して刑事告訴ができるわけではありませんので、刑事告訴できる事案かどうかは、弁護士に相談して見通しをたてる必要があるでしょう。
弁護士費用の支払い方法
弁護士費用の支払いは後払い?前払い?
先に説明したとおり、弁護士費用には「着手金」「報酬金」という項目があります。「着手金」を契約時に支払い、事後的に結果に応じた「報酬金」を支払うというパターンがあります。また、事前に「預り金」を弁護士にわたし、事後に精算をするというシステムを採用している法律事務所もあります。弁護士費用の支払い方法は、法律事務所の方針によって異なりますので、契約前によく説明を受けておくことをおすすめします。
ケース①
着手金を契約時に支払い、 事後に報酬金を支払う。
ケース②
事前に預り金を用意し、 事後に預り金をもとに精算する。
誹謗中傷にかかる弁護士費用については、法律事務所のホームページに費用体系が掲載されていることが多いです。実際に、自分のケースではいくらかかるかを知るためには、直接法律事務所に問い合わせてみるのがよいでしょう。
ケースによって費用は異なりますので、まずは相談を受けてみるのがおすすめです。また、複数の法律事務所から同じ条件で見積もりをとることも費用の目安・相場を知るには有効です。着手金はいくらか、完全成功報酬型なのかなど、確認しておくとよいでしょう。
着手金など削除請求に関する弁護士費用の項目を詳しく知りたい方は下記の特集記事も合わせてご覧ください。
削除依頼については、「削除代行業者」も存在しています。しかし法律上、報酬が生じる削除依頼は、本人かその代理人弁護士でなければすることができません。弁護士が対応してくれるのか、必ずチェックすることが必要です。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了