ネット上の侮辱を弁護士に相談したい。特定や訴える流れ・刑事告訴がわかる

更新日:
ネットで侮辱された

誹謗中傷は、被害者の精神的なダメージを与えるだけでなく、社会的な信用や名誉を傷つけることもあります。

侮辱罪で相手を訴えたいと考えているならば、まずは弁護士への相談を始めていきましょう。

何らかの権利侵害が認められない限り、侮辱してきた相手を特定したり、損害賠償請求をおこなったりといった対処が難しいです。

相手を訴えるために利用する法的手続きや賠償の交渉に関しては、ノウハウを熟知した弁護士に任せるメリットが大きいといえます。

この記事では、侮辱罪で訴える流れや要点、弁護士に任せるメリットを説明します。

侮辱罪で相手を訴えるときに必要な対応は?

侮辱罪で相手を訴えるためには、投稿者の特定と刑事告訴の対応が必要です。

  • 投稿者の特定:民事上の責任を求めるために必要
  • 刑事告訴:刑事上の責任を求めるために必要

それぞれについて説明します。

対応1.投稿者の特定

匿名の相手を訴えて損害賠償請求するためには、何者かを特定せねばなりません。

ネット上の投稿者の特定をするため、サイトやプロバイダに対して発信者情報の開示を求めていきます。

ただし、サイトやプロバイダがすすんで情報開示をしてくれるわけではありません。任意の依頼に応じてもらえないときには「発信者情報開示請求」もしくは「発信者情報開示命令」という、裁判所の手続きを活用します。

こうした法的手続きには様々な書類や証拠をそろえ、発信者情報が消えないうちに迅速に対処しなくてはいけません。そのため匿名の相手を特定するためには法的手続きにくわしい弁護士のサポートが有効です。

対応2.警察への告訴

侮辱罪は親告罪といって、被害者の告訴がなければ起訴できません。いいかえれば、加害者に刑事罰を受けてほしいなら、告訴状を提出する必要があるのです。

誹謗中傷が個人の感想や評価にとどまらず、侮辱的な内容であったり、誰かの身に危害を与えるような内容である場合には、刑事告訴に踏み切ることも重要な判断です。

告訴を受けた警察は捜査をおこない、刑事事件の被疑者とされた者は、最終的には検察官に刑事処分を受けることになります。

ネット誹謗中傷の再犯防止を狙うためにも、刑事事件化することも視野にいれておくことが望ましいです。警察に相談し、立件可能かを相談することもできます。

侮辱罪で訴える流れ|特定や訴訟はどうやるの?

侮辱罪にあたる場合は、民事事件としての損害賠償請求と、刑事事件として訴えることの両方が可能です。

ただしネットの匿名の投稿者に対して刑事告訴することは可能ですが、事実上、その人物を特定してからおこなうことが多いです。

ここからは侮辱罪で相手を訴える流れについて説明します。

弁護士に相談して侮辱罪にあたるかを確かめる

侮辱罪とは、事実の摘示がなくとも、公然と人を侮辱する犯罪のことです。

ご自身に対する書き込みの一つひとつについて、「事実の摘示」にあたるのか、「公然」に該当するのかなどを冷静に判断することは難しいでしょう。

書き込み内容を証拠としてスクリーンショット保存し、弁護士の見解を聞いてみることをおすすめします。弁護士は法律の専門家ですので、書き込み内容がどういった権利侵害にあたるのかを適切に判断可能です。

侮辱罪の成立要件や侮辱罪になる言葉の具体例を解説している関連記事『侮辱罪の成立要件は?名誉毀損罪との違いや侮辱罪になる言葉の具体例を紹介』もあわせてお読みください。

侮辱してきた相手を特定する

侮辱してきた相手を特定するためには、サイトやプロバイダに情報開示を求める方法と、裁判所の手続きを利用する方法の2つがあります。

もっともサイトやプロバイダに情報開示を求めても応じてくれる可能性は低いので、法的手続きを利用するケースが大半です。

投稿者を特定するための流れは次の通りです。

  • サイトに対してIPアドレスなどの投稿者情報の開示を求める(仮処分申立て)
  • サイトから投稿者情報の開示を受ける
  • IPアドレスを元にプロバイダを特定する
  • プロバイダに情報保全を求める(仮処分申立て)
  • プロバイダに対して発信者情報開示請求をおこなう(発信者情報開示請求訴訟)

近年では改正プロバイダ責任制限法が施行されたことで、これらの一連の手続きを一度でおこなう方法も選択可能です。

発信者情報開示請求について詳しく知りたい方は関連記事を参考にしてみてください。

損害賠償請求をおこなう

発信者情報開示請求訴訟で情報開示が決定したら、開示された情報を元に、相手に対して損害賠償請求おこないます。

ただしいきなり訴訟を起こすのではなく、内容証明などの書面で請求する方法が多いです。

それでも相手が応じて来なかったり、話し合いがまとまらなかったりすると、民事訴訟で損害賠償請求することも視野に入れなくてはいけません。

侮辱罪の慰謝料相場は数万円といわれていますが、被害の程度に応じて適切に算定すべきです。権利侵害の程度が大きいと判断されるときには、増額請求すべき事案もあるでしょう。慰謝料の見積もりについても、弁護士の法律相談を活用することをおすすめします。

刑事事件として訴える(刑事告訴)

発信者情報開示請求訴訟で情報開示を受けたら、警察に告訴状を提出することも可能です。告訴自体は相手を特定できていなくても可能ですが、事実上、特定後に提出することが多いでしょう。

告訴状の提出後は警察や検察にて事件が捜査されます。起訴された場合には、ほとんどのケースで何らかの刑事罰を受けることになり、前科がつくことになるのです。

侮辱罪の刑罰

1年以下の懲役もしくは禁錮または30万円以下の罰金または30日未満の拘留または1万円未満の科料

不起訴となった場合には前科はつきませんが、捜査を受けた「前歴」は残りますし、加害者に対して強い反省を促すことになります。

刑事告訴のやり方や告訴状作成のポイントなどの詳細な解説は『刑事告訴の方法と告訴費用を解説!ネットトラブル・誹謗中傷を警察に訴えたい』の記事をご覧ください。

各SNSで起こる侮辱罪の事例|これって侮辱罪?

X(旧Twitter)の場合

例えば、誰でも見ることができる形で「Aさんはバカで仕事もできない」と投稿された場合は侮辱罪となる可能性があります。

SNS上での投稿のため「公然と」の要件を満たし、「バカで仕事もできない」は事実の摘示とは言えないので侮辱罪の成立を検討します。

一方でDMで「ばか」「あほ」と悪口を言われた場合は、侮辱罪は成立しません。内容は侮辱的ですが、DMは基本的にお互いしか見ることができないため、「公然と」の要件を満たしていないことが理由となります。

Instagramの場合

例えば、Aさんの顔画像を無断で投稿し「Aさんは不細工だ」と投稿した場合は侮辱罪となる可能性があります。

SNS上での投稿のため「公然と」の要件を満たし、「不細工だ」は事実の摘示とは言えないので侮辱罪の成立を検討します。

インスタのDMについても、X(旧Twitter)と同様に双方しか見ることができないため、「公然と」の要件に当てはまらず、侮辱罪にはあたりません。

ブログサイトの場合

例えば、Aさんの本名をタイトルにした記事で、本文に「Aさんはあほだ」などと記載されている場合は侮辱罪となる可能性があります。

公開されているブログであれば「公然と」の要件を満たし、「あほだ」は事実の摘示とは言えないので侮辱罪の成立を検討します。

掲示板(5ちゃんねる、爆サイなど)の場合

例えば、Aさんの本名+「バカだ」などと投稿された場合は侮辱罪となる可能性があります。公開の掲示板上の投稿は「公然と」の要件を満たします。

また、掲示板側に投稿の削除を依頼する際は、問題の投稿が「Aさん本人へ向けられた投稿である」と客観的に分かるものであることが重要になります。

例えば、下の名前だけの投稿やニックネームでの投稿だと誰に向けられた投稿であるかが客観的に判断できないので、権利侵害の主張が難しくなる可能性が高いです。

動画サイト(YouTubeなど)の場合

例えば、Aさんの顔が映っている動画を無断で投稿し、タイトルや動画中で「不細工だ」などと記載、発言した場合は侮辱罪となる可能性があります。

また、動画だけでなく、コメント欄で侮辱的な投稿を名指しで大量に行った場合なども侮辱罪に該当する可能性があります。

侮辱罪で相手を特定して訴えたいなら弁護士に相談

侮辱罪で訴えるときに弁護士に相談するメリット

侮辱罪で訴えたい方は、弁護士に相談すると次のようなメリットが得られます。

  • 侮辱罪にあたるものか判断してもらえる
  • 相手を特定できるのか見込みを聞ける
  • 侮辱罪でいくら請求するべきか見積もってくれる

まずは弁護士に相談して、ご自身への侮辱的な書き込みが「侮辱罪」に該当しうるのかを聞いてみましょう。

そして侮辱罪で相手を訴えるためには、相手を特定する必要があります。特定のために必要な情報はそろっているのか、どういった証拠を集めるべきかなどは、インターネットトラブルにくわしい弁護士のアドバイスが有効です。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

現在、相談窓口を鋭意準備中です。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。