開示請求にかかる期間とタイムリミット!いつまでに開示請求すればいい?

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開示請求の期間とタイムリミット

インターネットの掲示板やSNSで誹謗中傷を書き込まれたとき、匿名の投稿者を特定して法的措置を取りたいと考える人もおられます。

匿名の人物を特定する方法として「発信者情報開示請求」という言葉を聞く機会も増えていますが、この手続きは数日で出来るものではありません。

「難しそうでよくわからない…そのうち対応を考えよう
半年前に悪口を書かれている

このように、「後から対応を考えよう」と先送りする人や、随分前の書き込みに対応したいという人もいますが、発信者情報開示請求を成功させるためにはタイムリミットを意識した対応もある程度必要になります。

開示請求したいと思っても間に合わないということがないよう、発信者情報開示請求にはどれくらいかかるのか、そこから逆算してどんなタイムリミットを意識すべきなのかをみていきましょう。

発信者情報開示請求はどれくらいかかる?

発信者情報開示請求にかかる期間と期間を短縮する方法について説明します。

発信者情報開示請求にかかる期間

発信者情報開示請求にかかる期間は、手続きを開始してから10ヶ月前後と考えておきましょう。事案によってもっと早く終わったり、逆に長期化したりすることは起こりえます。

発信者情報開示請求の流れを簡単に説明すると、次の通りです。

開示請求の流れ(概略)

  1. 掲示板やSNSなどに投稿者のIPアドレス開示を求める(仮処分申立て)
  2. 同時に投稿者のログ保存を求める(仮処分申立て)
  3. IPアドレスから特定したプロバイダに発信者情報開示請求の訴訟

仮処分申立てについてはそれぞれ数週間で済むことも多いです。

しかし、発信者情報開示請求の訴訟については事案により様々といえます。なぜなら相手方が国内なのか海外なのか、どの掲示板・SNSなのかなど、相手の対応次第だからです。

発信者情報開示請求の実績を多く持つ弁護士に相談してみて、おおよそどれくらいかかるのかを聞いてみることをおすすめします。

関連記事では発信者情報開示請求の要件・流れなどの基本事項をまとめていますので、あわせてお読みください。

開示請求を早める方法はある?

裁判手続きはこちらの都合だけで早めることが出来るわけではありません。そのため開示請求を早めるためには、手際よく準備を進めることがポイントといえます。

発信者情報開示請求のための準備としては、権利侵害があったことを示す証拠資料のほか、裁判所に提出する書面の作成などが必要です。

証拠の検討や収集、裁判所に提出する書類の書式や記載内容の確認など、いきなりネット上のトラブルに巻き込まれた方がすべてを一人でおこなうことは難しいでしょう。

そのためネットに強い弁護士に相談・依頼をして、発信者情報開示請求の手続きを任せることがスピーディに進めるための方策といえます。

開示請求の技術的なタイムリミット|いつ始めたら間に合う?

誹謗中傷・権利侵害にあたる書き込みを見つけ、その投稿者を発信者情報開示請求により特定したいと思っても、投稿日から日が経ちすぎていると間に合わない恐れがあります。

なぜなら発信者情報開示請求に必要なログには一定の保存期間があるため、タイムリミットを過ぎてしまっているときには開示請求に失敗してしまうのです。

発信者情報開示請求のタイムリミットについて解説します。

いつ開示請求を始める?

発信者情報開示請求をおこなうためには、投稿された日から3週間程度でIPアドレスの開示請求を始めるようにしてください。なぜなら開示請求に必要なログは、プロバイダによっては3ヶ月ほどで消えてしまうためです。

プロバイダでのログ保存期間はまちまちなので、3週間を過ぎていても間に合う可能性はあります。しかし、プロバイダ次第になるので着手は早いに越したことはありません。

なぜプロバイダの保存期間を考慮して動くべきなのか、くわしい説明を続けます。

ログ保存期間から逆算したタイムリミットが重要な理由

やみくもにあらゆるログの保存や消去禁止を求めても、認められません。まず最初に、IPアドレスの開示を求める仮処分を申し立てる必要があります。

IPアドレスの開示を求める仮処分申立てについて、期日の調整が始まります。

この調整は第1回期日を決めるものですが、「それでは明日やりましょう」とはなりません。期日の調整をしてから数日後に第1回の期日が設けられることになります。

審理を経て、裁判所が「IPアドレスの開示が必要」と判断したとき、開示の命令を発令します。開示命令から数日でIPアドレスの開示を受ける流れです。

その後、該当IPアドレスのログ情報が消えないように「保存」や「消去禁止」を申立てることになります。

このようにログ保存や消去禁止までにも一定の時間がかかるものです。仮に3ヶ月でログが消えてしまうプロバイダの場合は、投稿日から3週間以内にはIPアドレスの開示手続にかかるべきでしょう。

まずは弁護士に相談をして、ご自身の事案は間に合うのか、タイムリミットはいつ頃を想定すべきかの助言を受けるようにしてください。

以下の関連記事では発信者情報開示請求に失敗してしまうケースを複数紹介しています。発信者情報開示請求の失敗パターンを知っておくことは、成功率を高めることにもつながるでしょう。

開示請求後の法的なタイムリミット|刑事面と民事面で注意

発信者情報開示請求の手続きに成功し、裁判所から発信者情報(住所・氏名・メールアドレスなど)が開示されたあとにも、注意すべきタイムリミット(時効)があります。

そのタイムリミットとは、相手に対して刑事責任を問うための刑事告訴ができるタイムリミットと、慰謝料を請求する損害賠償請求のタイムリミットです。

法的措置の時効

法的措置時効
刑事告訴犯人を知ってから6ヶ月
損害賠償請求犯人を知ってから3年

刑事告訴や損害賠償請求の時効について、くわしく説明します。

刑事告訴の時効|告訴期限は犯人を知ってから6ヶ月

告訴ができる期限は犯人を知ってから6ヶ月なので、発信者情報開示請求によって開示がなされてから6ヶ月が告訴のタイムリミットです。

犯罪の中には「親告罪」といって、被害者からの告訴がないと起訴できないものがあります。起訴できないということは裁判を開くことが出来ないので、加害者に刑事処分を負わせることができません。

ネット上のトラブルとかかわりの深い親告罪には、名誉毀損、侮辱罪があげられます。告訴期限を過ぎてしまうと、加害者に対して刑事責任を問うことは難しいといえるでしょう。

刑事告訴のやり方

刑事告訴は、警察に対して告訴状を提出することです。告訴状が受理されると、警察・検察による捜査がおこなわれ、最終的に検察が起訴・不起訴を決定します。

告訴状には作成年月日・宛先・告訴人・被告訴人・告訴理由・告訴事実・証拠の記載が必要です。

告訴状への記載内容の詳細やおさえておきたい基本情報は関連記事でも解説しているので、参考にしてみてください。

刑事責任の時効|公訴時効は罪の内容により異なる

犯罪には、犯罪行為があったときから裁判を開いて罪に問うことが出来るまでにもタイムリミットがあり、これを公訴時効といいます。

具体的には誹謗中傷が書き込まれたとき、違法なアップロードがなされたときなど、その犯罪があったときを起点に時効がスタートするのです。

ネット上のトラブルにおいては、名誉毀損罪や侮辱罪の公訴時効は3年、著作権法違反の公訴時効は7年、リベンジポルノ行為における私事性的画像記録提供行為の公訴時効は3年となります。

損害賠償請求の時効|犯人を知ってから3年

慰謝料をはじめとした損害賠償請求にも、民法に基づき「犯人を知ってから3年」という時効があります。発信者情報開示請求により情報開示を受けたら3年以内に損害賠償請求をおこなわねばなりません。

損害賠償請求をするためには、まず開示請求によって知りえた住所・氏名あてに内容証明を送ることが多いです。いきなり裁判をするのではなく、まずは話し合い(示談交渉)での解決を図ります。

裁判を起こすということは、解決までの長期化や弁護士費用・裁判費用の発生など、被害者にとってもデメリットがあるのです。

弁護士なら交渉や裁判対応を任せられる

相手方との交渉を弁護士に任せることで、相手と直接やり取りをする必要はなく、氏名や住所などの個人情報を出すことを避けられます。

また、ご自身は社会生活に復帰しているあいだに弁護士が交渉を進めるので、私生活への影響を最小限に抑えることが可能です。

さらには、どれくらいの金額なら妥当かということも弁護士なら熟知しています。不当に低い慰謝料で終わらせないためにも、法律の専門家である弁護士に対応を任せることがおすすめです。

弁護士に任せるメリット

  • 氏名や住所などの個人情報を出さなくて済む
  • 私生活への影響を最小限に抑えられる
  • 不当に低い慰謝料を避けられる

以下の関連記事では誹謗中傷や肖像権侵害などの権利侵害について、慰謝料相場や損害賠償請求の流れを解説していますので、あわせてお読みください。

開示請求のタイムリミットを意識して弁護士相談を始めよう!

開示請求には技術的なタイムリミットがあり、一定の期間を過ぎてしまうと発信者情報開示請求ができなくなります。

そのため、弁護士相談においてはタイムリミットについても確認をし、開示請求に成功したパターンと間に合わずに失敗したパターンの両方を想定しておくことも大切です。

法的手続きの日程を短縮することには限界もありますが、発信者情報開示請求に手慣れた弁護士であれば、証拠収集や書面の作成をスピーディにおこない、少しでも円滑な手続きを進めることが可能です。

どの弁護士に相談・依頼をすべきかじっくり考えたいところですが、悪質な投稿から日が経つほど開示請求に間に合わないリスクも増加してしまいます。

ネット上のトラブルを多く扱ってきた弁護士なら、開示請求におけるタイムリミットをよく理解し、期限を意識した対応を考えることが可能です。

関連記事ではネットトラブルにくわしい弁護士を見つける方法やポイントをまとめています。弁護士相談の検討にご活用ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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