捨て垢や匿名も特定できる!誹謗中傷や嫌がらせへの開示請求と特定後の対応

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【捨て垢・匿名】

インターネットは匿名で利用できますし、複数のアカウントやメールアドレスを持つことは簡単です。そのため素性を明かさないままに暴言を書いたり、嫌がらせを繰り返したりする迷惑な人がいます。

捨て垢・匿名・捨てアドも、IPアドレスの開示を受け、プロバイダに対する発信者情報開示請求が認められれば特定可能です。

特定のカギは、発信者情報開示請求の条件を満たすこと、特定につながる情報が消去される前に行動を起こすことといえます。

まずは早急に弁護士に相談をして開示請求・特定の見通しを聞いてみましょう。

捨て垢や匿名の相手を特定する発信者情報開示請求

表には見えていなくても、インターネットに接続し、掲示板やSNSに書き込む際には必ず情報が残ります。

たとえば匿名の掲示板であっても、個人特定につながりうる情報が記録として残っているのです。

そうしたサイト運営者やプロバイダが所持する情報を「発信者情報開示請求」によって開示してもらえば、捨て垢や匿名も特定が可能です。

ただし闇雲に発信者情報開示請求が認められてしまえば、個人情報の漏洩は避けられません。そのため発信者情報開示請求には一定の進め方や条件があります。

発信者情報開示請求の進め方

発信者情報開示請求をするためには、まず捨て垢や匿名アカウントの「IPアドレス」を入手する必要があります。

IPアドレスが入手できれば投稿時のプロバイダを特定可能です。つぎに、プロバイダに対して契約者情報の開示を求めることで捨て垢や匿名者の個人特定を進めることになります。

この一連の「発信者情報開示請求」の流れをまとめると以下の通りです。

発信者情報開示請求の流れ

  1. サイト管理者に投稿者のIPアドレスなどの情報開示を依頼
  2. 開示されない場合は裁判所の仮処分を申立て
  3. 仮処分命令が出たらIPアドレスがわかる
  4. IPアドレスから判明したプロバイダに契約者の情報開示を依頼
  5. 開示されない場合は発信者情報開示請求の訴訟を起こす
  6. 勝訴した場合は氏名や住所が特定できる

発信者情報開示請求のくわしい流れや手続きについては、関連記事『発信者情報開示請求の要件と流れ|誹謗中傷の投稿者を特定する方法を解説』も参考にしてください。

発信者情報開示請求は弁護士に依頼すべき

捨て垢や匿名アカウントを特定するための発信者情報開示請求は複雑な法的手続きです。

それにもかかわらず、相手の特定につながる情報は時間の経過によって消去されるため、できるだけ早く開示請求手続きに取り掛かる必要があります。

開示請求の注意点

  • 複雑な法的手続きなので、一人でやると負担が大きい
  • 手続きに手間取っているうちに特定の機会を逃す
  • 権利侵害などの要件に満たない場合は却下される

こうした点から、発信者情報開示請求については手続きに慣れた弁護士に任せることが得策です。

弁護士に依頼する前には、法律相談を利用するケースがほとんどになります。法律相談の方法は法律事務所によって様々ですが、ご自身の希望する相談方法に対応する弁護士を探してみましょう。

法律相談先選びのポイント

  • 相談料(無料か、費用がかかるのか)
  • 相談の形式(対面相談、電話相談、メール相談など)
  • 取り扱い範囲(インターネットトラブルにくわしいか)

捨て垢や匿名への開示請求には法的根拠が重要

発信者情報開示請求には要件があり、どんなケースでも情報開示が認められるわけではありません。

たとえば要件の一部には、権利侵害が明らかであること正当な理由が存在することが明記されていますので、この2点を掘り下げて説明します。

権利侵害が明らかであること

発信者情報開示請求をする上では誹謗中傷による権利侵害を明らかにしなくてはいけません。「嫌がらせを受けています」と主張するだけではなく、「嫌がらせによって自分の権利が侵害されている」などの法的問題として主張する必要があるのです。

ネット上の誹謗中傷で問題となりやすい権利侵害を以下にまとめます。

ネットで問題になりやすい権利侵害

権利侵害概要
名誉権社会的評価をみだりに低下されない権利
(例:悪口、知られたくない秘密の暴露)
肖像権自分の容ぼうをみだりに公開されない権利
(例:顔写真の無断投稿)
プライバシー権私生活上の情報を無断で公表されない権利
(例:個人情報のさらし)

これらの権利はお互いに関連しあっています。たとえば、「〇〇(本名)は窃盗の前科がある」などと書かれて、なおかつ顔写真を晒されていれば名誉権と肖像権の両方への侵害を検討すべきです。

ご自身への嫌がらせや誹謗中傷がどんな権利を侵害しているのかを見極める際には、ネット上のトラブルにくわしい弁護士に見解を聞いてみましょう。法律の専門家の立場から見解を得ておくことが大切です。

ネット上で生じやすい権利侵害についてのくわしい解説は、以下の関連記事をお読みください。

正当な理由が存在すること

発信者情報開示請求によって情報を知ることが最終目標ではなく、しかるべき手段をとるために相手を特定するという理由が大切です。

具体的には、民事上の責任を問うための賠償請求、刑事告訴をするための個人特定などがあげられます。

「どんな人なのか知りたい」という好奇心や、「相手を特定して報復したい」という相手への不法行為目的であれば、開示請求は却下されるでしょう。

誹謗中傷に対して開示請求するかどうかを悩んでいる方は、関連記事も参考にしてください。開示請求の基準に関する詳細や、開示請求が通らないケースについてわかりやすく説明しています。

捨て垢や匿名アカウントの特定後はどんな対処が取れる?

損害賠償請求(示談交渉・民事訴訟)

特定後の損害賠償請求では、権利侵害に対する慰謝料の請求が可能です。そのほか、誹謗中傷によって負った損害についても、因果関係があれば認められる可能性があります。

慰謝料の金額は、誹謗中傷の内容や権利侵害の程度によって様々です。たとえば名誉毀損罪であれば10万円から50万円程度になることが多いとされています。

誹謗中傷で認められる慰謝料相場については、関連記事『誹謗中傷の慰謝料相場はいくら?損害賠償請求の流れと注意点をおさえよう』をご覧ください。

損害賠償請求の進め方

まずは特定した相手に内容証明を送り、示談交渉するところからスタートです。相手方の態度やこちら側の請求内容によっては、話し合いによって解決できるケースもあります。

一方で話し合いによる解決が難しいときには、特定した相手へ民事訴訟を起こすことも検討することになるでしょう。

なぜ最初から民事訴訟にしないの?

なぜ最初から民事訴訟を選択しないのかというと、その理由は「費用」と「時間」にあります。

民事訴訟を起こす場合には一定の手続き費用と弁護士費用がかかります。また裁判手続きになると、訴状の作成と送達、裁判期日などで解決まで長期化する傾向です。

こうした理由から、まずは示談交渉による解決を目指すことが大半といえます。

ただし民事訴訟のデメリットはありつつも、示談交渉では解決しきれない事案もあるでしょう。そのため弁護士に相談をしてみて、民事訴訟にまでもつれこんだときの対応や流れも聞いておくと安心です。

刑事告訴

誹謗中傷の内容しだいでは、投稿者への刑事処分を求めることも可能です。その際、名誉毀損罪や侮辱罪などの親告罪で訴えたいなら、警察への「告訴」が必要になります。

刑事告訴のやり方

警察に、被害の事実と、刑事処分を求めていることを表明しましょう。口頭でもできますが、多くは告訴状を提出します。

告訴自体は「相手方不詳」でも可能ですが、ネット上の誹謗中傷トラブルにおいては相手を特定してから行われることが大半です。

相手の特定とは、ここまで説明したように、現実の誰かを特定していることをいいます。「アカウント名〇〇が匿名犯だった」というだけでは、個人の特定とは言えません。

刑事告訴のやり方や費用については関連記事でくわしく解説しているので、併せてお読みください。

捨て垢や匿名の特定に関するよくある質問集

捨て垢や匿名アカウント、捨てアドの特定についてよくある質問にお答えします。

捨て垢が削除されたら特定はできない?

アカウントが削除されても情報は一定期間保存されるため、特定が不可になるわけではありません。

しかし、開示請求においては「いつ」「どういった被害を」「どのアカウントから」受けていたのかを証拠として揃える必要があります。そうした証拠集めに支障をきたすため、アカウントが削除されないうちにスクリーンショットを取っておきましょう。

捨て垢や匿名アカウントの特定を警察に依頼できる?

特定そのものを依頼することはできませんが、警察が事件捜査の一環で捨て垢や匿名アカウントの特定をおこなうことはあり得ます。

たとえばリベンジポルノはあなたの権利が侵害されているという民事上の問題だけでなく、法令に触れる犯罪行為として警察の捜査対象となります。

そのため警察に被害を申告すれば、捜査の過程で相手を特定してくれる可能性はあるでしょう。

基本的には捨て垢や匿名アカウントの特定は、法的手続きも必要になることから弁護士に依頼することをおすすめします。

匿名の捨てアドから個人は特定できる?

捨てアド(捨てメールアドレス)からの個人特定については、どういった内容のメールを受けているか、メールの送信先によってケースバイケースです。

事例で検討

例として、「〇〇(本名)は社内不倫している」という内容のメールを受け取ったとしましょう。この場合、〇〇さんにとって不名誉な内容であることには変わりありません。

しかしこのメールが〇〇さん本人にのみ届いたときには、名誉毀損の成立要件である「公然性」はありません。権利侵害が起こっていないので、開示請求の要件外であり特定は難しいでしょう。

一方で、メールが勤務先の人や家族にまで届いた場合には公然性が認められ、名誉毀損という権利侵害が成立し、開示請求が認められる可能性もあります。

このように個々の事案によって開示請求や特定成功の見通しは様々です。そのため弁護士に相談してみて、ご自身のケースでアドバイスをもらいましょう。

しつこい嫌がらせもDMなら開示請求できず泣き寝入り?

DMは特定のユーザー間でのやり取りなので、誹謗中傷による開示請求が認められる可能性は低いといえるでしょう。 

ただし執拗に嫌がらせを受けている場合には、ネットストーカーの被害として警察に相談すべきケースもあります。警察が捜査に踏み切れば相手の特定につながる可能性は十分あるでしょう。

執拗な嫌がらせへの対処法は、関連記事『ネットストーカーされている…相談先と対処法は?弁護士ができる法的サポート』も参考にしてください。

捨て垢や匿名からの誹謗中傷でお悩みなら弁護士に相談!

捨て垢や匿名からの誹謗中傷を受けたとき、相手を特定できるかどうかはケースバイケースです。誹謗中傷の内容を見せて、どんな法的対処が取れるのかを聞いてみましょう。

捨て垢・匿名・捨てアドのいずれにしても、IPアドレスを入手してプロバイダを特定し、プロバイダに対して発信者情報開示請求をおこなうという流れは同じです。

要は誹謗中傷の内容しだいで特定の可否が異なるので、まずは弁護士に相談してみて特定成功の可能性を聞いてみましょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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