プライバシー侵害とは|プライバシー侵害の基準・事例・対処法

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プライバシー侵害

この記事でわかること

  • プライバシーの侵害について
  • プライバシーの侵害に該当するケースの具体例
  • プライバシーの侵害があった場合の対処方法

SNSなどのネット上で、個人情報や犯罪歴(前科)など、知られたくない情報を無断で投稿されるケースが発生しています。このような場合、プライバシーの侵害に該当する可能性があります。以下でプライバシーの侵害について詳しく見ていきましょう。

プライバシーの侵害とは?

プライバシー権とは

プライバシー権とは、個人の姿や情報など、私生活上の事柄を守るための権利す。日本国憲法第十三条の解釈により、保障される基本的人権の一内容であるとされていますが、明文化はされておらず、憲法解釈や判例により確立されてきた権利になります。

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

e-Gov 法令検索 日本国憲法第十三条

プライバシー侵害の基準|どこからがプライバシー侵害か

公開された情報が以下の3つの要件にあてはまる場合、プライバシーの侵害に該当する可能性があります。

プライバシー侵害の基準

  1. 私生活上の事実、または事実と受け取られる可能性のある事柄であること
  2. 1の事実が、一般的な感覚を基準として考えると、公開をしてほしくないであろうと認められる事柄であること
  3. 1の事実が一般の人にまだ知られていない事柄であること(非公開であること)

プライバシー情報とは

上記3つの要件にあてはまる情報であれば、プライバシー情報に該当します。例えば、以下のような情報があげられます。

プライバシー情報の具体例

  • 顔写真(個人が特定できるもの)
  • 犯罪歴(前科)
  • 指紋データ
  • 運転免許証番号やマイナンバー

プライバシーの侵害に該当するケースとは

プライバシーの侵害になる可能性が高いケース

前述の基準に照らして考えると、以下のようなケースはプライバシーの侵害にあたる可能性があります。

  1. 無断で他人の個人情報(電話番号、マイナンバーなど)を公開する
  2. 「Aさんは前科がある」「Bさんは多額の借金をしている」など、本人が隠している情報を言いふらす

補足|プライバシー侵害は内容により名誉毀損罪に該当することも

補足

プライバシー侵害行為の内容によっては、名誉毀損罪に該当する可能性もあります。人の社会的評価を低下させるような事実を公然と書き込んだ場合、刑法上の罪に問われる可能性もあります。

例えば、上記2のように「Aさんは前科がある」と公開の場で言いふらされた場合、「前科がある」という事実が適示されており、この事実が真実でも虚偽でもAさんの社会的評価を害するものになるので、名誉毀損罪に該当します。

名誉毀損罪について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考になさってください。

プライバシーの侵害にならない可能性が高いケース

逆に、以下のようなケースはプライバシーの侵害にならない可能性があります。

  1. 公開されても特段影響がないことを公開する(「Aさんはたまにコーヒーを飲む」など)
  2. もともと公開されている情報を投稿する(本人がSNS等で公開している情報や、企業の公開情報など)
  3. 政治家、著名人に関する、公共性・公益性のある情報を公開する「知る権利」の優先

前述③のように、本人のプライバシー権よりも、国民の知る権利を優先すべき情報を公開した場合は、プライバシーの侵害にあたらない場合があります。例えば、「政治家Aには前科がある」という情報は、多くの国民にとって、投票するかどうかなどの判断材料として有用なものであり、知りたい情報であるので、この場合はプライバシー侵害にあたらない可能性が高くなります。

SNSなど、ネット上の投稿がプライバシーの侵害に該当する事例も

最近では、SNSなどで他人の個人情報を無断で投稿するケースが増えています。例えば、以下のような投稿はプライバシーの侵害に該当する可能性があります。

  1. ネット上で他人の免許証画像を無断で公開する(顔写真等の個人情報の公開)
  2. 犯罪歴や破産情報を無断で掲示板へ投稿する

ネット上で上記のような投稿がされた場合、さらに拡散され被害が拡大してしまうことが懸念されます。

過去の犯罪歴などが公開されてしまうと就職活動や結婚などに支障が出る可能性がありますし、住所が投稿されている場合は家に押しかけられる可能性があるなど、自身や家族に危害が及ぶ可能性が高まります。

ネット上でプライバシーの侵害があった場合は、早急に対応する必要があります。個人情報の晒し被害への対処法を知りたい方は、関連記事も参考にしてください。

コラム|「肖像権の侵害」はプライバシー侵害の一種

コラム

人物の特定が可能な顔写真などを本人に無断で公開すると、肖像権の侵害になる可能性があります。

肖像権とは、自分の顔や姿態をみだりに「撮影」や「公表」などされたりしない権利であり、プライバシー侵害の一種となります。

肖像権侵害について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考になさってください。

プライバシーの侵害があった場合の対処法

SNSなどの運営会社に削除依頼する

前述の通り、ネット上のプライバシー侵害を放置すると、拡散性の高さからさらなる被害拡大が予想されます。問題の投稿を発見した場合は、早めにサイトやSNSの運営会社に削除依頼をすることが大切です。運営会社の規約により、プライバシー情報の投稿禁止を明記していることも多いので、規約違反と認められれば削除される可能性があります。

削除依頼する場合は、サイト内の問い合わせフォームや、ヘルプページ、通報ボタンなどから行うことが多いです。削除基準や、削除依頼時の権利侵害性をどう主張するか事前に調べておく必要があります。

詳しくは、運営会社に削除依頼を求める場合には下記の特集記事をご覧ください。

誹謗中傷の削除依頼方法

プライバシー侵害で慰謝料請求ができるか

プライバシーの侵害に関しては、刑法で罰する規定はありません。ただし、刑事上の責任は発生せずとも、民事上の責任を問うことは可能です。民法第709条の不法行為を根拠として損害賠償請求することが考えられます。問題の投稿の差し止め請求や、損害賠償請求を検討することとなります。

民事責任追及の場合、その前提として匿名投稿者の特定が必要になります。ログ情報の保存期間は数か月程度であることが多く、時間の経過で特定できなくなることがあります。投稿を発見した場合、早めに弁護士へ相談して対応の方向性を検討することをおすすめします。

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

e-Gov 法令検索 民法第七百九条

匿名の投稿者を特定する方法について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考になさってください。

また、プライバシーの侵害に関しては、上記の通り刑事上の責任を追及することができないため、それだけをもって警察に動いてもらうことは難しいです。ただし、例えば住所とともに「住所を特定したから家に行ってやる」というような脅迫的な文言が投稿されている場合は、脅迫罪などの犯罪に該当する可能性があります。身の危険を感じる場合はまず警察への相談を検討しましょう。

個人情報などが無断で投稿されている場合は専門家に相談しよう

個人情報などが無断で使用されてしまった場合、そのまま放置するとどんどん拡散され、不利益を被ったり心身に危険が及ぶ可能性が高まります。

プライバシー侵害の被害にあわれた場合は、まず法律事務所に相談することをおすすめいたします。

プライバシーの侵害があった場合には、削除依頼や損害賠償請求などを検討しますが、弁護士へ相談いただくと比較的スムーズに対応が可能になります。無料の相談窓口を設置している法律事務所もあるので、まずは相談してみましょう。

ネット上でプライバシーを侵害する投稿がされた場合、多くの方にとって精神的な負担となります。さらに、情報が他のサイトにも転載されることで新たなトラブルが発生してしまう可能性も高まります。

ただ、実際に投稿された内容がプライバシーの侵害にあたるのかという判断は個人では難しいため、弁護士などの専門家へ相談して確認してもらうとよいでしょう。

プライバシーの侵害が疑われる投稿を発見した場合は、迅速に対応を考えましょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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