ネット上の風評被害対策を解説!削除や投稿者の特定方法は?どこに相談する?

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ネット風評被害対策

根拠のないうわさ話や、無関係にもかかわらずトラブルに巻き込まれてしまう「風評被害」は、企業にとって脅威となっています。

風評被害を最小限におさえること、そして企業活動を正常な状態に戻すことは企業にとって一番の課題です。

主にネット上の風評被害については、次のような3つの対策が考えられるでしょう。

風評被害への対策

  1. 風評被害の原因投稿を削除
  2. 投稿者を特定して賠償請求
  3. 警察に犯罪被害を訴える

迅速かつ適切な対策をとるためには、風評被害の状況を冷静に分析することと、どういった選択肢が取れるのかを知っておくことが必要です。

この記事では、企業が風評被害にあったときに知っておきたい対策をまとめています。

風評被害対策(1)風評被害の原因投稿を削除

風評被害への対策としては、きっかけとなった投稿の削除が有効です。削除にもいくつかの方法がありますので、各方法の流れを説明します。

掲示板やSNSサイトに削除を依頼する

大手掲示板サイトやSNS、ブログサイトについては運営会社が問い合わせ窓口を設けていることがほとんどです。

削除を依頼する際は、利用規約のどの部分に違反しているかを具体的に述べるようにしてください。

なお、サイトによっては「削除の依頼」がそのまま公開されてしまうことがあります。そのため、不要な個人情報は記載しないこと、文言には細心の注意を払って乱暴な表現を避けることなどに注意してください。

削除依頼の経験がない場合は、削除要請のノウハウを持った弁護士に任せることをおすすめします。

投稿者への直接連絡にも注意

企業の風評被害は、顧客の投稿が発端となって炎上するケースが多く見受けられます。

企業が投稿者にDMやメールで直接削除依頼をすると、「企業から圧力をかけられた」と削除依頼したことそのものが晒され、新たな火種になりかねません。

送信防止措置依頼による削除請求

送信防止措置依頼とは、インターネット上の書き込みや画像など、権利侵害にあたる情報について、プロバイダ等に対して送信防止措置を講じるよう依頼する手続きです。

依頼する場合には、「送信防止措置依頼書」をサイトの運営者やプロバイダ等に送付します。プロバイダ等は送信防止措置依頼書を受領すると、投稿者に意思確認をおこない、削除するかどうかを検討する流れです。

そのため、送信防止措置依頼をしたからといって、必ずしも削除されるわけではありません。

送信防止措置依頼による削除を希望する場合は、一度弁護士に相談をしておき、削除されなかった事態に備えておくとよいでしょう。

裁判所へ削除の仮処分を申し立てる

裁判所からサイト側に削除を命令してもらう方法もあります。具体的には、裁判所の仮処分という手続きを用いる方法です。

仮処分とは何か

通常の裁判の判決前に、権利侵害の被害を防止するため、緊急的な暫定措置を取る手続きのこと

仮処分では、通常の裁判手続きと比べて迅速な削除命令を得られることがメリットです。

特に、ネット上の風評被害は情報拡散による被害が甚大になる可能性があるため、被害を最小限に抑える効果が期待できるでしょう。

また、任意の削除依頼や送信防止措置依頼では削除されないケースでも、裁判所からの命令であれば応じる可能性は高いです。

ただし、裁判所が仮処分の申立てが正当であると判断した場合にのみ削除命令が発令されます。

書き込まれた内容が「単なる感想に過ぎない」と判断されたり、「広く社会に知らせるメリットがある」と判断されたりすると、仮処分の申立ては認められません。

風評被害対策(2)投稿者を特定して賠償請求

風評被害の投稿者を特定できれば、民事面での責任を訴えた損害賠償請求の請求も可能です。こうした投稿者の特定においては「発信者情報開示請求」という手続きをおこないます。

風評被害投稿者を特定する方法

発信者情報開示請求の大まかな流れは、まず風評被害の投稿に関するIPアドレスやタイムスタンプ等の情報を入手することから始めます。

そのためには、サイトに対して情報の開示を求めることになりますが、任意の開示要求にはめったに応じてもらえません。そのため裁判所に対して、「IPアドレスを含む情報を開示するように命令してほしい」という仮処分を申立てます。

仮処分申立てが認められたら、開示された情報を元にプロバイダーを特定します。そして、そのプロバイダーに対して契約者の情報を開示を求める「発信者情報開示請求訴訟」を起こすのです。

発信者情報開示請求訴訟で勝訴すると、発信者情報として住所や氏名などの開示を受けることができます。

くわしい手続きや流れは『発信者情報開示請求の要件と流れ|誹謗中傷の投稿者を特定する方法』の記事を参考にしてください。

発信者情報開示請求の注意点

発信者情報開示請求は必ず認められるわけではありません。すべての人には表現の自由が認められているので、書かれた側にとって不利益だからという主張だけが通るわけではないのです。

そのため発信者情報開示請求をする場合には、法的根拠にもとづく主張が必須といえます。

なお、発信者情報は一定期間を過ぎれば消去されてしまうので、早急な着手が必要です。書類の作成方法や証拠収集などに手間取っていると、特定の機会を失ってしまいます。ネット上のトラブル解決にくわしい弁護士への相談が有効です。

注意点のまとめ

  • 発信者情報開示請求は、権利侵害があると判断されたときのみ認められる
  • 発信者の特定に必要な情報は3ヶ月から6ヶ月で消える場合が多い
  • 発信者情報開示請求は法的手続きなので弁護士のサポートが有効

風評被害で生じた損害賠償請求

風評被害との因果関係が認められれば、損害賠償請求が可能です。たとえば、以下のような損害賠償金を請求できる可能性があります。

損害賠償金の例

損害項目概要
売上減少減少した商品やサービスの売上
契約解除取引先との契約が解除されたことの損害金
給与補てん営業ができない状態でも従業員に支払った給与
慰謝料精神的苦痛への金銭補償

損害賠償請求のやり方

いわゆる裁判外での話し合い(示談交渉)で解決できれば、その方が時間も金銭負担も軽減できます。そのため、いきなり訴訟を起こすのではなく、内容証明郵便を送って話し合いによる解決を目指すことが多いでしょう。

しかし、相手方が損害賠償金の支払いを拒否したり、そもそも投稿を認めていなかったりと難航する場合には、民事訴訟に踏み切ることも視野に入れなくてはなりません。

相手方と直接やり取りをしたくない不当に低い賠償金は避けたいという方は弁護士に交渉を任せることをおすすめします。

風評被害対策(3)警察に犯罪被害を訴える

風評被害のなかでも、犯罪行為に該当すると判断された場合には、警察の捜査対象となりえます。とくに、投稿内容が脅迫に近く危険を感じた場合は早急に警察署へ相談してください。

脅迫や虚偽で信用を傷つける投稿は犯罪の疑いあり

企業の風評被害と関連の高い犯罪としては、信用毀損罪業務妨害罪脅迫罪などがあげられます。

たとえば、以下のような投稿については警察への相談すべき事案といえるでしょう。

刑事事件の可能性がある投稿例

  • 「△△会社に爆弾を仕掛ける」と掲示板に投稿された
  • 「△△店舗で虫入りの料理を出された」と画像付きでSNSに投稿された
  • 「投稿を削除してほしかったら100万円払え」と金銭を求められた

企業の風評被害は、虚偽の情報によって会社の信用が失墜し、経済的な損失を被るなど、様々な被害が発生します。

問題の投稿を保存し、警察署へ問い合わせましょう。投稿があることにより問い合わせが殺到し臨時休業をしたなど、風評被害の影響についても併せて報告してください。

ネットの風評被害対策で知っておきたいポイント

風評被害対策において知っておいた方がいいポイントをまとめています。有効な風評被害対策を講じたい方は併せてお読みください。

どのような書き込みが「誹謗中傷」にあたるのか

誹謗中傷とは「根拠のない悪口や嫌がらせで、他人を傷つけること」とされています。

混同されやすいものに「批判」や「非難」がありますが、批判や非難は事実を根拠としたものであることが誹謗中傷との違いです。

投稿者自身があくまでも批判であると認識していても、度を超えた表現になると違法性をおびることもありえるのです。

誹謗中傷にあたるものとして対処するべきか悩んだ場合は、インターネット上のトラブルにくわしい弁護士に見解を聞いてみることをおすすめします。

社員や元従業員からの口コミも注意すべき

企業に対する誹謗中傷・そこから発生する風評被害は、不満を持っている社員、退職した元従業員が悪意ある書き込みを行うケースも存在します。

採用活動への影響、企業イメージの悪化、現社員への悪影響など、風評被害の範囲は計り知れません。ひとつの口コミが色々なところに転載されてしまえば、その対処はさらに困難になるでしょう。

初期の段階から社内で情報を共有して対処法を検討することをおすすめします。

SNSの炎上は初期対応が重要

SNSの拡散速度はすさまじく、一度話題に上がるとまたたく間に炎上する可能性があります。ネットトラブルに詳しい法律事務所に対応を聞いて、被害を最小限に抑える対策をとりましょう。

炎上によって風評被害が発生するパターンの例を以下に示します。

風評被害の発生元

  • 顧客
    「●●店舗でこんな失礼な接客をされた」SNS公開アカウントにクレーム投稿をしたため拡散炎上
  • 元従業員
    「●●企業では違法なことを社員にやらせている」動画の配信で暴露、インフルエンサーが取り上げる
  • 個人の誹謗中傷から発展
    「煽り運転をした●●氏は●●社勤務。なぜこんな人を雇うんだ」炎上している個人の問題が企業に飛び火、批判が企業へも殺到

SNSで炎上した際には、スピーディかつ適切な対応が求められます。

関連記事『SNS炎上事例からみる企業がすべき対応とは?炎上防止策や炎上への対処法』ではSNS炎上の事例から企業が取るべき対応や炎上防止策について解説しているので、併せてお読みください。

ネット上の風評被害をゼロにする対策は難しい

残念ながらネット上の風評被害を未然に100%防止できる方法はありません。

日ごろからSNSの利用に対する教育や周知徹底をするほか、トラブル発生時のマニュアルを作成するなど、万全の対策が取れる体制づくりに注力することをおすすめします。

ネット上の風評被害の相談窓口はどこ?

ネット上の風評被害についての相談窓口を紹介します。

警察|犯罪行為として捜査してほしい

警察相談用電話「#9110」では、相談窓口につながります。どういった犯罪にあたるのかは分からなくても、犯罪の被害にあったかもしれないと悩んでいる場合も利用可能です。

通信料はかかりますが、無料相談を受け付けている点も特徴といえるでしょう。

相談内容に応じて関係部署が連携して対応してくれるうえ、相談者の不安を解消するような助言やはたらきかけをおこなってくれます。

警察への相談の補足

  • 犯罪行為にあたる事案は警察への相談、被害届提出や告訴を検討すべき
  • 警察に相談する段階で出来るだけ証拠を集めておくことが重要
  • 警察に取り扱ってもらいにくい事案もある

誹謗中傷ホットライン|第三者機関から削除を要請してほしい

誹謗中傷ホットラインは、一般社団法人セ―ファーインターネット協会による相談窓口で、インターネット通信費用などを除き、無料で利用できます。

誹謗中傷が書かれたサイトに対して、利用規約にもとづく削除対応を促す通知を送る対応をしてくれる窓口です。

絶対に削除されるというものではなく、相手方の対応次第となる点を留意しておきましょう。

誹謗中傷ホットラインの補足

  • 誹謗中傷投稿に関する説明や投稿を特定するための情報(投稿のURLなど)が必須
  • 風評被害の投稿者を特定することはできない

弁護士|風評被害への対処を任せたい

弁護士は、被害者の代理人として、削除要請、発信者情報開示請求による特定といった法的手続きをおこないます。

風評被害によってどんな権利侵害を受けているのか、犯罪行為にあたる可能性があるのかなど、様々な相談に対応可能です。

無料相談をおこなう事務所や、電話・メール・対面相談など、色々な相談形式に対応している事務所もあります。

ただし弁護士にも注力している分野は異なるため、SNS問題やネットトラブルにくわしい弁護士を探して相談することをおすすめします。

弁護士相談の補足

  • 相手に法的対処をとりたい場合には弁護士相談が有効
  • 法律相談は無料であることも多いが、正式な契約時の弁護士費用はしっかりと確認する

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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