契約書作成時のリーガルチェックはメリット多数!弁護士が必要なケースとは?

契約書は企業同士の取決めや約束を明文化し、円滑な取引のために定める重要な書類です。
リーガルチェックとは、契約書や規程などの文書を法律の観点からチェックすることを意味します。具体的には、契約内容が双方の権利義務のバランスを適切に取っているか、法令に違反していないかといった視点です。
契約書の作成を弁護士に任せることで、法的に問題にある契約内容を避けることができます。あるいは契約書を自社で作成し、リーガルチェックを受けることも有効です。
企業に法務部があれば任せることもできますが、専門的な分野、リスクの高い契約、あるいは第三者によるチェックが望ましい契約書は弁護士への依頼も検討してみてください。
契約書作成時のリーガルチェックのメリットとは?
契約書の作成を弁護士に任せることには、多くのメリットがあります。あるいは自社で作成した契約書について、リーガルチェックをしておくことは非常に重要です。
契約書作成時のリーガルチェックで得られるメリットについてみていきましょう。
確実な契約書作成に近づく
弁護士への契約書作成依頼や契約書のリーガルチェックは、曖昧な表現を明確化し、解釈違いを防ぐことができます。
契約書には、専門的な法律用語や業界特有の用語が使われることがあり、解釈が曖昧になる場合もあります。双方に認識の違いがあると、せっかく契約書を締結しても正しく履行されません。
また、契約書に必要事項が記載されていない場合、契約が無効となる可能性もあります。リーガルチェックによって必要事項を全て確認し、法的に有効な契約書を作成することが可能です。
潜在的なリスクを徹底的に洗い出す
契約書の内容を法令や判例に基づいて詳細にチェックしておくことで、法的な問題を早期に発見し、修正することができます。
リーガルチェックを受けた契約書は法的に問題が少なく、紛争発生時のリスクを減らすことにもつながるのです。
企業にとって最適な契約条件を実現
法知識がないと、自社に不利な契約条件に気づかないまま契約を締結してしまう恐れがあります。不当な条件で契約してしまうと、今後の企業活動に支障をきたす恐れがあるでしょう。
弁護士への契約書作成依頼や契約書のリーガルチェックによって不当な契約の締結を回避したり、より適切な条件を提案したりと、企業にとって最適な契約条件の検討につながります。
外部からの信用を高めて企業価値を向上
弁護士への契約書作成を任せることやリーガルチェックを依頼することは、法令遵守を徹底した契約を締結できて企業の信頼性を高めます。
取引先にリーガルチェックを受けた契約書を提示することで、誠実に取引に向き合っている姿勢を示すことにもつながるのです。
また、明確で分かりやすく作成された契約書は取引先の確認作業をスムーズに終わらせることができ、円滑な取引に貢献します。
リーガルチェックのない契約書にひそむリスクは?
リーガルチェックのない契約書で考えられるリスクには、法的リスク、経済的リスク、信用低下のリスク、時間的コストの増大リスクの4つがあげられます。
リーガルチェックなしのリスク
- 法的リスク
- 経済的リスク
- 信用低下のリスク
- 時間的コストの増大リスク
それぞれのリスクを検討していきましょう。
法的リスク|法令違反や契約の無効
リーガルチェックのない契約書は、次のような法的リスクを抱える可能性があります。
法的リスク
- 法令違反で行政処分や罰則を受ける
- 契約が無効となる
- 損害賠償責任を負う
下請法を例にしてくわしく解説します。
下請法
たとえば、IT業界におけるシステム開発では、企業同士が下請法(下請代金支払遅延等防止法)を守った契約が必要になるケースがあります。
下請法で定められた義務をきちんと果たし、なおかつ禁止事項に抵触しない契約書が必要です。下請法で禁止していることをいくつか抜粋します。
下請法の禁止事項(一部抜粋)
- 親事業者は受領拒否をしてはならない
- 親事業者は下請代金の減額をしてはいけない
- 親事業者は下請代金の支払いを遅れてはいけない
- 親事業者は不当な返品をしてはいけない
※下請代金支払遅延等防止法第四条より一部抜粋
下請法に違反するような契約書を結んでいると契約は無効になりますし、態様によっては行政処分や刑罰の対象となります。
経済的リスク|契約トラブルによる賠償や出費が増加
契約書の内容に不備があると、不利な契約条件を押し付けられたり、契約トラブルに巻き込まれたりして、経済的な損失を被る可能性があります。
また、こうした契約トラブルによって訴訟費用や弁護士費用が余計にかかってしまい、企業の経営を圧迫する可能性もあるのです。
契約不適合責任
契約内容を満たさないときに問題となる「契約不適合責任」の考え方では、受注側は故意・過失があるときに損害賠償責任を負うものとされています。
なお、発注側の仕様書や指示に不備があり、その不備が原因で経済的損失が生じた場合には、受注側に賠償の義務はありません。
こうした契約不適合責任の原則をよく知ったうえで契約書を作成しておかないと、発注者・受注者ともに不利益を受ける可能性があります。
企業が守るべき法令を熟知し、契約書の内容を適切に判断するためにも、より専門性の高いリーガルチェックは必要不可欠です。
信用低下リスク|新規開拓と既存顧客の両方に悪影響
リーガルチェックのない契約書では、法令違反にあたる契約内容を盛り込んでいたり、契約トラブルに巻き込まれたりするリスクが高まります。
契約トラブルによって取引先との信頼関係を損ない、企業イメージを悪化させ、信用低下につながってしまう恐れがあるでしょう。
新しいビジネスチャンスを逃してしまうだけでなく、既存の得意先・顧客との信頼関係にも傷をつけてしまう可能性があります。
時間的コストの増大リスク|締結やトラブル対処に時間がかかる
リーガルチェックのない契約書では、内容の確認や修正に時間がかかってしまう可能性があります。そうした不備だらけの契約書を受け取った企業からの信用低下も懸念されるでしょう。
最悪のケースでは、双方ともに契約書の不備に気付かず、法的に無効な契約書が結ばれてしまい、後々のトラブルの原因になりかねません。
契約トラブルの発生時には多くの時間や労力がかかってしまい、企業活動の妨げになってしまう恐れもあるでしょう。
リーガルチェックの方法は2通り
リーガルチェックをする方法としては、社内の法務部でおこなう方法と、弁護士に依頼する方法の2通りが考えられます。
社内の法務部でおこなう
社内の法務部でおこなうメリットとしては、費用面、スピード感、自社サービスの適切な理解などが代表的です。
社内法務部のメリット
- 費用をおさえることができる
- 比較的迅速にチェックを受けられる
- 自社の状況やニーズに合わせたチェックが可能
- コミュニケーションがとりやすい
- 社内のノウハウ蓄積に繋がる
つづいて社内の法務部でおこなうデメリットを上げてみると、法的知識の程度や、客観的な視点に関する不安があげられます。
社内法務部のデメリット
- 網羅的な知識が不足している可能性がある
- 利害関係が一致するため、第三者的視点が欠如する可能性がある
- 複雑な案件やリスクの高い案件には対応が難しい
- 専門的な業法に関する案件には対応が難しい
社内の法務部によるリーガルチェックには多くのメリットがあります。一方で契約書の内容が複雑だったり、より客観的な意見が欲しいといった場合には、弁護士に依頼する方法も検討すべきです。
弁護士に依頼する
リーガルチェックを弁護士に任せるメリットとしては、専門性の高いチェック、第三者の視点、トラブル時の対処などが代表的です。
弁護士のメリット
- 専門性の高いチェックを受けられる
- 企業と利害関係がないので、第三者的な視点でチェックできる
- リスクの高い案件、専門的な業法に関する案件にも対応できる
一方で弁護士にリーガルチェックを任せることには次のようなデメリットがあります。
弁護士のデメリット
- 弁護士費用がかかる
- 時間がかかるケースがある
- 企業活動やサービス内容などの丁寧な説明が必要になる
弁護士は社内の法務部とは異なり、弁護士費用を支払う必要があります。また、弁護士が抱えている案件によって、リーガルチェックにかかる時間は様々です。
契約書がどういったサービス・商品に関するものか、社内事情など、企業にとって最適な契約書を作成するための丁寧な説明も必要でしょう。
もっとも、最適な契約書の作成とレベルの高いリーガルチェックが受けられるという点は、弁護士に依頼する最大のメリットといえます。
契約書の内容次第では弁護士依頼も検討しよう
大半の案件は法務部によるリーガルチェックで問題ないといえます。
しかし、複雑な案件、リスクの高い案件、専門的な業法に関する案件は弁護士に依頼することで、契約トラブルや潜在的なリスクを減らすことにつながるでしょう。
あるいは法務部があっても、その契約書の内容に応じて、外部の弁護士にセカンドオピニオンを求めることも検討してみることをおすすめします。
契約書作成やリーガルチェックを弁護士に任せる流れ
弁護士に契約書の作成やリーガルチェックを依頼する場合には、企業の法務部や担当者が、企業情報やサービスの内容を事前に説明をする必要があります。
おおまかな概要を弁護士に提示した後、弁護士に正式に依頼をするかどうかを検討しましょう。作成やリーガルチェックにかかる時間、費用などの見積もりを出してもらってください。
正式に依頼することになったら、弁護士が契約書作成やリーガルチェックに着手します。
弁護士から契約書の案やリーガルチェックの結果が返却されたら、確認・修正をして契約相手に提示し、契約書締結の交渉をおこなう流れです。
修正後に不安があれば弁護士に問い合わせてみましょう。この際、契約内容によっては追加で費用が発生するケースもあります。
流れのまとめ
- 依頼の概要を弁護士に伝える
- 弁護士と費用やかかる時間などを打ち合わせる
- 弁護士への正式な依頼を決定する
- 弁護士が契約書作成やリーガルチェックに着手
- 弁護士から修正内容が返却される
- 修正案をもとに相手方と契約の交渉をする
- 契約書を締結する
なお関連記事『【雛形紹介】秘密保持契約書(NDA)とは?作成方法と弁護士に任せるメリット』では、重要な契約書のひとつである「秘密保持契約書」について弁護士に作成を依頼するメリットを解説しています。
秘密保持契約書の作成方法についてもわかりやすく要点をまとめていますので参考にしてください。
弁護士の契約書作成やリーガルチェック費用
弁護士へ契約書作成を任せる費用やリーガルチェック費用は、契約の範囲・方法によって様々です。
たとえば弁護士との契約の範囲が、契約書の作成から任せるのか、作成した契約書のリーガルチェックだけ依頼するのかで異なるでしょう。
あるいは、リーガルチェックについての契約を結ぶのか、顧問として一定期間の契約を結ぶのかでも費用は様々です。
弁護士と契約する前の法律相談を活用して、契約したい範囲や方法を明確に伝えたうえで、費用について確認を取っておいてください。
弁護士を選ぶときのポイント
リーガルチェックを任せる弁護士を選ぶときには、次のような点に注目することをおすすめします。
- 契約書作成やリーガルチェックの経験があること
- わかりやすく説明をしてくれること
- コミュニケーションがとりやすいこと
むずかしい専門用語で説明を受けたり、なかなか連絡がつかなかったりする弁護士では、自社サービスに最適な契約書の作成やチェックは期待できません。
自社のビジネスをよく理解してくれる、信頼のおける弁護士を選んでください。
関連記事では契約書作成・レビューなどを含め、弁護士に法務を任せるメリットを解説しています。法律相談先の選び方もまとめているので参考にしてみてください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了