システム開発の契約不適合責任とは?瑕疵担保責任との違いとIT業界の注意点

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システム開発での契約不適合責任とは

システム開発における契約不適合責任とは、システムの種類・品質などが契約に適合していないときに受注側が負う責任を指します。

これまでは瑕疵担保責任とされてきたものですが、2020年の民法改正で「債務不履行」のひとつとして考えられるようになり、契約不適合責任と呼ばれるようになりました。

契約不適合責任となったことで、システム開発側が負う責任が重くなった部分もある一方で、賠償面では過失の有無が重要視され、損害賠償を免れるケースもあります。

システム開発事業や自社製品を守るために、契約不適合責任についての正しい知識を持っておくことが大切です。

契約不適合責任とはどんなもの?

契約不適合責任とされる責任の内容

契約不適合責任として定められる主な内容は以下の通りです。

  • 発注者の損害を賠償する
  • 不適合発覚時の修補や代替品を納入する
  • 修補などに対応しない場合の代金減額請求に応じる
  • 修補などに対応しない場合は契約解除対象となる

システム開発において「契約内容と異なるとき」とは、主にシステムが種類、品質、数量が契約と合わないことを想定しています。

契約不適合責任とITシステム開発のかかわり

システム開発において、契約不適合責任は、発注者と受注者双方の権利を守るために非常に重要な役割を果たします。

たとえばシステム開発において生じたバグは、受注側が補修を適切に終え、なおかつ適切な代替措置をとることで、契約不適合には当たらないと考えられる可能性が高いです。

一方で、システムの不具合に対する責任を負う期間は、発注側が不具合を知ったときが起算日となるため、従来よりも長くなったと考えられます。

システムのバグは長期間運用して発覚するケースは多々あることから、システム開発者側には長期的なフォローが求められるようになったともいえるでしょう。

このように契約不適合責任とシステム開発事業は密接にかかわります。

契約不適合責任と瑕疵担保責任の違い

契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いは以下の通りです。

契約不適合責任と瑕疵担保責任の違い

  1. 完全な給付を求める権利
  2. 損害賠償は受注者の落ち度が要件
  3. 損害賠償の範囲が拡大
  4. 代金減額請求権が認められた
  5. 契約解除の規定を変更
  6. 責任を負う期間の変更

瑕疵担保責任は、契約に基づいて納品したシステムや製品にバグや欠陥があったことで、契約の目的を達成していないときの契約解除や補修要求がメインでした。

しかし契約不適合責任では、債務不履行のひとつとして考えることから「契約内容との違い」に重心が置かれています。

契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いについてみていきましょう。

(1)完全な給付を求める権利(追完請求権)

瑕疵担保責任と異なり、契約不適合責任においては追完請求が可能となったことで、完全な給付を求めることができるようになりました。

たとえば契約上は「システムにAという機能を持たせる」と決めていたとします。ところがAという機能をもたないシステムが納品されたならば、発注者はAという機能の追完を求めることが可能です。

ただし契約不適合となった原因が発注者側にあるときには、追加請求はできないとされています。

(2)損害賠償は受注者の落ち度が要件

これまでの瑕疵担保責任では、契約に何らかの免責条項を入れていない限り、過失の有無にかかわらず発注者側が損害賠償請求ができたのです。

契約不適合責任となってから、受注側の故意・過失があるときに賠償責任を負うこととなりました。

バグも損害賠償請求の対象となりうる

システム開発においても、開発側の落ち度によってシステムが不具合を起こし、業務に支障をきたした場合には損害賠償請求される可能性があります。

システム修復にかかった費用のほか、業務に支障をきたしたことへの損害賠償も含まれる可能性があるでしょう。

(3)損害賠償の範囲が拡大

契約不適合責任に基づく損害賠償の範囲は、信頼利益と履行利益の両方です。契約不適合責任の考え方になってから、履行利益が損害賠償の対象に追加されました。

信頼利益とは契約が有効であると信じたことにより生じた損害をいい、履行利益とは契約が正しく履行されていれば本来得られたはずの利益をさします。

履行利益とは

本来得られたはずの利益はいわゆる「逸失利益」ともいわれるものです。

例えば、店舗の運営にかかわるシステムに不備があり、店舗が営業できなかったとします。その場合には、本来営業していれば計上していた売上についても賠償対象となる可能性があります。

なお、損害賠償の範囲は契約で上限額や固定額を決めているケースも考えられますが、あまりに低額な上限設定や固定額の場合には無効と判断されるケースもあることを留意しておきましょう。

損害賠償請求できないケースの例

たとえば発注側が用意した材料に不備があったとします。そしてその不備が原因で品質に影響が出た場合には、受注側は過失がないものとして損害賠償責任を負わなくて良いと考えられています。

発注側が指定した作業工程の不備も同様で、発注側に損害発生の原因があるときには、受注側は賠償を免れるのです。

(4)代金減額請求権が認められた

代金減額請求権とは、有償契約において、引き渡された目的物が契約内容に適合していない場合に、発注者が受注者に対して代金の減額を請求できる権利です。

システム開発費用として支払いを予定していたものの、そのシステムが契約内容と異なる場合には、その代金の減額請求ができることになります。

目的物が契約内容からどの程度不整合になっているか、それによってどういった価値の減少が起こっているのかなどの要素から金額を決めることになるでしょう。

(5)契約解除の規定を変更

瑕疵担保責任では、契約目的が達成されなかった場合のみ契約の解除できるとされていましたが、契約不適合責任においては契約を存続させる必要があるかどうかがポイントです。

契約解除権は催告解除と無催告解除の2つが認められています。

催告解除は、相当期間を定めて追完するよう催告したが、その期間内に追完がなかった場合には契約解除できるという流れです。

無催告解除は催告なしに契約を解除できるものをさします。たとえば、契約不適合の状態にもかかわらず受注側が追完を拒絶したり、追完が不可能だったりして、契約目的を果たせないケースに認められます。

(6)責任を負う期間の変更

瑕疵担保責任と契約不適合責任では、システムの不具合に対して責任を負う期間の考え方が変わりました。

瑕疵担保責任では、引き渡しを受けたとき・仕事が完了したときから1年以内に「賠償請求をおこなう」とされていましたが、契約不適合責任は不具合を知ったときから1年以内に「通知をおこなう」に変わっています。

通知さえしてしまえば民法の消滅時効が適用されるので、契約不適合責任の期間は5年または10年です。

具体的には、権利者が「権利を行使できる」と知ったときから5年で時効が成立します。

あるいは権利を行使できることに気づかなくても、客観的に権利行使できる状態になってから10年が経過すると消滅時効が成立します。

なお、発注者が企業・業者であれば、商法が適用されます。

商法では、発注側は納品物の内容を遅滞なくチェックすることが求められているので、契約不適合を発見したらすぐに通知しないと、損害賠償請求ができなくなる恐れがあるでしょう。

注意

発注者と受注者がどういった業態の企業か、あるいは一般消費者なのかでケースバイケースです。具体的には弁護士に相談をして、ご自身のケースにおける期限を確かめるようにしてください。

ITシステム開発の契約不適合責任問題は契約書が大事

システム開発においては、契約書の内容が非常に重要です。契約不適合責任に関する条項をしっかりと盛り込むことで、双方の権利を守り、円滑なシステム開発につながるでしょう。

契約不適合責任のトラブルを防ぐためには「システムの実情に合致すること」と「法的リスク」の両面から考える必要があります。

そのため、IT業界にくわしい弁護士に相談をして、契約書作成を任せたり、リーガルチェックを依頼したりすることが重要なのです。

弁護士に契約書作成・リーガルチェックを任せるメリット

システム開発において弁護士に契約書の作成やリーガルチェックを任せると、次のようなメリットがあります。

弁護士に契約書の作成やリーガルチェックを任せると、次のようなメリットがあります。

  • 不当に不利な契約を避けることができる
  • 双方に納得のいく契約となり、信頼につながる
  • 法的リスクを検討した契約書が作成できる

システム開発における契約書は他の雛形を流用するのでは実情に適していません。システムの実情に合った契約書作成が必要です。

契約書作成におけるリーガルチェックの重要性は、関連記事『契約書作成時のリーガルチェックはメリット多数!弁護士が必要なケースとは?』にてくわしく解説しています。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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