IT企業法務は弁護士に相談!依頼のメリットとセカンド顧問弁護士の選択肢

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IT企業の法務は弁護士に依頼・相談

IT企業の経営にとって、法的リスクの回避は事業活動を円滑に進めるための重要な要素です。法務体制を強化することは、企業の持続的な成長の実現につながります。

  • 最新の法的規制を追いかけることがむずかしい
  • 複雑な案件は法律の専門家である弁護士に任せたい
  • 法務部門の強化をはかりたい

こういった問題に直面しているなら、ITにくわしい弁護士に相談して、必要性を考慮しながら依頼を検討することをおすすめします。

本記事を読めば、IT企業において弁護士が果たす役割がみえてきます。弁護士に相談するメリット、IT法務とは何か、IT企業に強い弁護士を見つける方法について整理していきましょう。

IT企業の法務を弁護士に依頼するメリット

IT企業は急速な発展を遂げ、社会における役割も益々重要性を増しています。しかし、その一方で、IT企業は複雑な法令や規制、そして新たな法的リスクに直面する機会も増加しているのです。

法律の専門家である弁護士に相談するメリットには次の事柄があげられます。

弁護士依頼のメリット

  • 法的リスクの早期発見と予防
  • トラブルへの迅速で的確な対応による被害の最小化
  • 高い専門性で依頼者の的確な判断と意思決定を支援

IT企業の法務について弁護士に依頼するメリットについて詳細をみていきましょう。

法的リスクの早期発見と予防

弁護士は、IT企業が直面する法的リスクを分析し、リスクに応じた適切な法的アドバイスを提供可能です。また、これまでの知見にもとづいたリスクの余地と事前対応策も提案できます。

法的リスクをかかえるケースの一例を以下に示します。

事例

  • 契約書の作成・レビュー
  • 知的財産権の権利保護(商標権、著作権、特許権、意匠権、実用新案権)
  • 損害賠償請求や訴訟対応
  • 労働問題
  • 情報漏洩対策(機密情報や個人情報の取り扱いなど)

たとえば、システム開発においては契約不適合責任のリスクがつきまといます。

システムの種類・品質・バグの発生など、契約と合わない事象が発生した場合には、発注側から損害賠償請求を受けることも十分考えられます。

ただし過失が争点となり、受注側が賠償義務を負わないと判断できるケースもあるのです。

発注側・受注側の両面からみても、自社のシステム開発体制や製品、そして従業員を守るためにも適切な契約を結ぶことが重要になります。

IT法務にくわしい弁護士ならば、契約書の作成やレビューを任せることが可能です。

法律の専門家の目線で、不当に不利な契約内容ではないこと、契約内容が製品やシステムの内容に合致するものであることなどを確認でき、最適な契約書作成に貢献します。

トラブルへの迅速で的確な対応による被害の最小化

トラブルが発生した場合においても、弁護士は迅速かつ的確な対応できます。

迅速な対応は被害の拡大を食い止め、企業の存続を守るために極めて重要です。弁護士は、法的な観点から最善の解決策を提示し、クライアントにとって最適な解決を目指します。

たとえば、自社のロゴと見分けのつかないほど類似したロゴがパッケージに描かれ、安価かつ粗悪な製品が市場に出回ってしまったとしましょう。

そうなるとオリジナルである自社の評判も落ちますし、消費者に迷惑が掛かってしまいます。また、相手方に不当な利益を与えてしまいかねません。

法令違反を見過ごすことは、企業イメージを毀損し、顧客や取引先からの信頼も失いかねません。法令遵守の徹底は、企業イメージの向上と信頼関係の構築につながります。

弁護士であれば、消費者に対してどんな対応が望ましいかどんな法的根拠にもとづいて被害を訴えるのか、民事面と刑事面のどちらで対応できるのかなど、ひとつずつ冷静に整理できます。

高い専門性で依頼者の的確な判断と意思決定を支援

ITをめぐる法律は、サイバーセキュリティ基本法、個人情報保護法、不正アクセス禁止法、電子契約法、サイバー犯罪に関連する刑法、商法など広いです。

そして、技術革新や社会情勢の変化に伴って常に見直しが図られ、規制やルールが変わります。

IT問題にくわしい弁護士は、常に最新の情報収集を行い、最新の法令や判例に基づいた的確なアドバイスを提供することが可能です。

弁護士の助言を受けることで、法的なリスクを正しく理解し、適切な判断と意思決定を行うことができます。

IT法務とはどんなもの?主な業務内容を解説

IT法務を重視することは、企業経営におけるリスク管理と成長戦略の両面において重要です。弁護士に相談し、自社に合ったIT法務体制を構築することで、企業の競争力を高め、持続的な成長を実現することができます。

ここからはIT法務が重要となる場面をみていきましょう。

契約書の作成・レビュー

弁護士は想定されるあらゆるケースを網羅し、依頼者と綿密な協議を重ねながら、最適な契約内容を策定します。

成果物の定義、開発業務の範囲、検収方法と期間、損害賠償責任の所在、知的財産権など、契約書はプロジェクトの根幹をささえるものです。

契約内容に反する事案が発生した場合、契約解除や損害賠償請求を伴う可能性があります。幅広いリスクを想定した契約書としておくことで、不当な不利益を徹底的に排除可能です。

プロジェクトやシステムの内容を理解・反映させた契約書の作成が必須といえます。書式に一定の雛形や形式はあっても、ひとつのものを使いまわすことにはリスクがあるでしょう。

契約書の作成から依頼を受ける弁護士もいれば、内容のレビューだけを依頼できるケースもあります。プロジェクトやシステム開発の段階に応じて弁護士に任せていきましょう。

機密情報管理や情報漏洩の対策

IT企業は、自社サービスのユーザーはもちろん、取引先や提携先の企業の重要な機密情報を利用することがあります。

適切な製品開発のため、そして取引先や提携先企業からの信頼を得るためにも、機密情報管理や情報漏洩の対策には注力せねばなりません。

弁護士であれば法令で求められる機密情報管理のレベルを熟知しています。最新の動向もおさえたうえで、契約者にとって最適な対策を一緒に考えることが可能です。

関連記事では秘密保持契約書(NDA)にはどういった項目を入れるべきか、契約書作成の方法を解説しています。あわせてお読みください。

新規事業やスタートアップ企業のサポート

IT法務に精通した弁護士であれば、スタートアップや新規事業に関する法的なリスクを事前に洗いだすことが可能です。

IT企業は、AIやIoTなどの新しい技術を活用した新規事業に積極的に取り組んでいます。しかし、これらの新しい技術には、特有の法的な課題が存在するでしょう。

スタートアップ企業や新規事業は、スピード感のある対応はもちろん、予期しない課題が発生したときに対応を間違えないことも大切です。

法務部門を充実させることで、リスクを最小限に抑えながら、新規事業の運営に集中しやすい環境を整えていけます。

損害賠償請求や訴訟への対応

訴訟は、時間と費用がかかるだけでなく、企業の経営に大きな打撃を与える可能性があります。IT法務を重視することで、契約書などの法的文書を厳格にレビューし、訴訟リスクを低減することにつなげるべきです。

また、逆に相手方の契約違反についてのチェック体制も必要といえます。相手方の対応に疑問を持った時、契約上問題ないのかを法律の専門家に質問できると安心です。

関連記事では、システム開発において契約不適合があった場合の損害賠償責任について解説しています。あわせてお読みください。

セカンド顧問弁護士を契約する選択肢もおすすめ

セカンド顧問弁護士とは、企業の法務部や従来の顧問弁護士とは別に、顧問弁護士として契約することです。現状の体制をさらに万全なものにすることで、更なるメリットを得ることができます。

セカンド顧問弁護士のメリット

  • 複数の視点・新しい視点の意見がもらえる
  • 企業法務部の人材確保は難しい傾向もある
  • 費用や契約形式・期間が柔軟な弁護士も多い

セカンド顧問弁護士のように、複数の弁護士・法務部門の体制を整えるメリットをみていきましょう。

複数の視点・新しい視点の意見がもらえる

複数の弁護士が関わることで、法務リスクの網羅性が高まり、抜け漏れのない法務体制を構築することができます。

また、従来の顧問弁護士が得意としていない分野についてセカンド顧問弁護士を依頼することで、あらゆる分野の専門家によるサポートを受けることが可能です。

IT分野はこれまでの経験や知識が重要

IT分野は、特に専門性の高い知識と経験が必要とされる分野です。セカンド顧問弁護士として、IT法に精通した弁護士を契約することで、より強固な法務体制を構築することができます。

IT法務の実績がある弁護士、企業法務にくわしい弁護士、システム開発出身の弁護士など、弁護士のキャリアやスキルをみながら選ぶことがおすすめです。

企業法務部のさらなる強化にもつながる

企業に法務部門を設置して、事業を進めている企業も多いです。

ただし、企業の法務部に信頼して任せているという場合も、人材は流動的なものであることも留意しておきましょう。

もし欠員が出た場合には、新たな人材確保をすることが難しい可能性があります。しかし企業活動を止めるわけにもいきません。

法務部門をアウトソースするIT法務は外部のくわしい弁護士を顧問として任せるなどの柔軟かつ万全の対策によって既存の企業法務部の強化にもつながるのです。

費用や契約形式・期間が柔軟な弁護士も多い

IT法務の弁護士費用は、時間単価制成果報酬制定額制のいずれかの費用体系が採られています。ご自身が希望する費用体系に対応できることを確認しておきましょう。

弁護士費用の体系(一例)

費用体系概要
時間単価制※弁護士が費やした時間に応じて費用が発生。案件の規模・複雑さで単価が決まる。
成果報酬制案件の成果に応じて報酬が発生。成果の基準は、契約締結、訴訟勝利、ライセンス取得など案件による。
定額制毎月一定額の費用が発生。顧問契約など長期的な関係を築く場合に適した方式。

※時間単価制はタイムチャージとも呼ばれる

どの費用体系が適しているのかは案件によるので、弁護士との法律相談で打ち合わせることをおすすめします。

ITに強い弁護士を探す3つの方法

ITに強い弁護士を探す方法について、以下の3つの方法を示します。

3つの方法

  1. 専門分野を確認する
  2. 過去のIT案件の実績を確認する
  3. 法律相談を通して弁護士と直接話をする

それぞれの方法についてくわしくみていきましょう。

(1)専門分野を確認する

IT法務は、契約書作成とレビュー、知的財産権、サイバーセキュリティなど、様々な専門分野にわかれています。

法律事務所のウェブサイトや弁護士が発信するSNS・ブログなどの情報から、専門分野を知ることが可能です。

弁護士は法律の専門家ですが、各弁護士によってこれまで対応してきた事案は様々といえます。ITの技術的な知識についてはIT問題を解決してきた実績に左右される可能性が高いです。

ITにくわしい弁護士はハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなどの技術的な知識を持っていることも強みといえます。

(2)過去のIT案件の実績を確認する

過去のIT案件の実績は、弁護士の経験やスキルを知る手がかりとなります。

具体的には、法律事務所のホームページを確認しておきましょう。これまで扱ってきたIT問題の概要、成果などがわかります。

IT問題の解決実績といっても幅広いので、ご自身のお悩みやトラブルに近い事案を扱っているかを確認しておくと安心です。

(3)法律相談を通して弁護士と直接話をする

弁護士と依頼者のあいだには信頼関係が必要不可欠です。依頼者がかかえる困りごとについて、共に向き合ってくれる弁護士かどうかは、最終的に依頼者が判断せねばなりません。

そのためには、まず法律相談の機会を設けることが大切です。

無料相談で初期費用を抑える

IT問題に注力する弁護士は法律相談を無料としている場合も多いため、初期費用をかけずに弁護士への依頼を検討できます。

法律相談の結果、「この弁護士への依頼はやめておこう」と感じたとしても、相談者の負担は最小限で済むでしょう。

また、セカンドオピニオンをもらいたいという場合も気軽に利用できる点は魅力です。

有料相談も目的に応じて検討すべき

法律相談料を支払ってでもご自身の悩みや不安について納得のいく助言を受けられるなら、法律相談を受けるメリットは大きいです。

たとえばオンライン相談、電話相談など希望する相談形式に合致する場合、有料相談であっても満足度は高いでしょう。

また自身の相談内容にぴったりと合致した分野を専門とする弁護士を見つけた場合には、たとえ有料相談であっても利用を検討する価値は大きいといえます。

法律相談料だけが全てではないので、自身の目的を達成できる・納得できる相談先を見つけましょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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