ホットペッパーやホットペッパービューティーの口コミの削除を依頼する方法は?
口コミはお店の売り上げにも直結する重要な集客源です。そのため口コミサイトを前向きな口コミでいっぱいにしたいと考えるのは自然なことでしょう。
しかし、なかには「他のお客さんに見られたくない」「乱暴な表現で店の評判が下がってしまうのでは?」と感じる口コミが書かれてしまうこともあり、悪質な口コミを削除したいと考えるのは自然なことでしょう。
結論として、ホットペッパーやホットペッパービューティーの規約に違反していたり、権利侵害にあたったりする口コミは削除できる可能性があります。ただし、一度審査を経て掲載されている口コミの削除は容易ではありません。
この記事では、ホットペッパーやホットペッパービューティーの口コミを削除する方法と、権利侵害とはどういうことかを説明します。
目次
ホットペッパーグルメの口コミ削除
ホットペッパーの口コミは「おすすめレポート」という名称でサービス展開されています。
ホットペッパーグルメのサイトに掲載された時点で既に口コミに対する精査が既に行われているため、掲載された投稿の削除の難易度は高い点には留意しましょう。
ホットペッパーグルメの口コミ投稿ルールと削除方法について解説します。
ホットペッパーグルメの口コミ削除基準
ホットペッパーグルメは、利用規約にて、第三者の権利を侵害しうる内容や、差別・誹謗中傷行為にあたるようなコメントをしないと定めています。
具体的には、ホットペッパーグルメの利用規約内にて次のような投稿をしないように求めているのです。
ホットペッパー グルメ利用規約(一部抜粋)
- 著作権、商標権、プライバシー権、肖像権、名誉等、第三者の権利を侵害する又はそのおそれのある内容を含むもの。
- 他人のプライバシーにかかる事項を含むもの。
- 本人・他人の名称・メールアドレス・住所・電話番号・人物が認識できる状態の写真等個人を特定しうる情報を含むもの(投稿者名や投稿内容において使用される場合を含むが、これらに限られない)。
- ポルノ小説・写真、性的交渉の勧誘、その他猥褻な内容を含むもの。
- 法令、公序良俗に反する又はそのおそれのある内容を含むもの。
- 他人を威圧・脅迫する旨が看取されるもの。
- 当社又は第三者を差別又は誹謗中傷する行為。
※ホットペッパー グルメ利用規約より一部抜粋
不適切な口コミの例
ホットペッパーグルメにおいては、次のような口コミは権利侵害などにより不適切であると判断される可能性があります。
- ここの店主はブス、だから料理の盛り付けも汚かった
- 国産と偽って外国産の材料を提供しているにちがいない
- 料理の中に異物が混入していた
- お釣りをもらうときに手を触られた!絶対わざとだ、セクハラだ!
口コミによる権利侵害の判断は慎重におこなうべきものです。誹謗中傷にあたると感じた口コミはスクリーンショットで保存しておき、弁護士に見せるようにしましょう。
ホットペッパーグルメへ口コミ削除を依頼する方法
ホットペッパーグルメの口コミについては、各口コミの右下に表示されている[違反レポートを報告する]を選択しましょう。
ただしこの報告機能を使っても削除されるという確約はなく、あくまで利用規約に反しているものについて審査がおこなわれ、削除される可能性があります。
ホットペッパービューティーの口コミ削除
ホットペッパービューティーの口コミ削除基準
ホットペッパービューティーは「口コミの掟」として、他者の権利を侵害する内容、誹謗中傷のほか、信用毀損にあたるものや必要以上に感情的と判断される投稿を規制しています。
ホットペッパービューティー口コミの掟の第4項には「内容に関する制限」として以下の制限について記載があります。
ホットペッパービューティー口コミの掟(一部抜粋)
- 事実と反する内容・虚偽の内容
- 著作権、商標権、プライバシー権、名誉等、他者の権利を侵害する内容
- 投稿者のみならず、他の施設利用者や施設従業員等、個人のプライバシーにかかる事項(利用日・企業団体名・役職名・特徴風貌・行為行動など個人が識別できてしまうような情報を含むが、これらに限らない)
- 本来公開されていない個人の名前・電話番号その他の連絡先が使用(投稿者名や投稿内容において使用される場合を含むが、これらに限らない)されているもの
- 誹謗中傷、差別表現、わいせつ、卑猥な表現などの不適切な表現
- 掲載施設や第三者に対する不当な利益誘導、信用毀損にあたる内容
- 法令、公序良俗に反する内容
- ナンセンス、グロテスクな内容
- 必要以上に感情的と判断される表現
- 投稿者の勘違いによる内容を含むもの
- 「利用しないほうがいい」「絶対に止めるべき」「最悪」「最低」等の独断的・断定的表現とリクルートが判断したもの
- その他、掲示板に掲示することが不適切な内容であるとリクルートが判断した内容
※ホットペッパービューティー口コミの掟より一部抜粋
不適切な口コミの例
ホットペッパービューティーの規約にてらすと、次のような口コミは権利侵害などにより不適切であると判断される可能性があります。
- カットが下手すぎて最悪!みんな絶対に行かない方がいい
- この美容院の店長はスタッフや客に手を出している
- 衛生管理が雑過ぎ!きっと器具を使いまわしてるに違いない
- クレジットカードの請求額がおかしい。水増し請求されました。
もっとも口コミ内容の判断は個々に異なるため、気になる口コミがあればスクリーンショットで保存しておき、弁護士に見せるようにしましょう。
ホットペッパービューティーへ口コミ削除を依頼する方法
ホットペッパービューティーへ口コミの削除を依頼する専用フォームはありません。また、「※※お問い合わせいただきましても修正・削除はお受けできません※※」とサイトに明記されているので、削除を依頼することは難しいといえます。
削除依頼に対応する窓口ではありませんが、お問い合わせフォーム自体は設置してあります。
ホットペッパーの口コミ削除を裁判所に申立てる方法
ホットペッパーグルメ・ホットペッパービューティーそれぞれにガイドラインが設けられており、一度審査を経ていることからも、ネット上に公開された口コミを削除する難易度は高いです。
削除に応じてもらえないときには、裁判所の仮処分申立ての利用も検討しましょう。
仮処分とは、正式な判決言い渡しではなく、緊急的に一定の措置を命じる制度です。正式な判決言い渡しを待つ間の権利侵害の拡大を防ぐためのもので、被害者の権利保護を目的とします。
仮処分命令は裁判所から発令されるもので、ホットペッパー側も口コミの削除に応じる可能性は高いです。
裁判所の仮処分を利用して口コミ削除
裁判所の仮処分手続きは以下の流れで進行します。
- 被害を訴える側が仮処分申立て書を裁判所に提出する
- 裁判所で申立内容が審理される
- 被害を訴える側が仮処分申立てに伴う担保金を納付する
- 裁判所から削除の仮処分命令が出される
- 仮処分命令に基づいて口コミが削除される
裁判所は仮処分申立ての内容を十分に検討します。口コミを削除してほしい側の「権利」と、口コミを投稿した人の「権利」は相反するものであって、どちらか一方の言い分を聞けば、もう一方の権利は侵害される側面があるのです。
いよいよ仮処分命令が出るとなったときには、口コミ削除によって何らかの損害が発生した場合の補てん金として「担保金」を納めることも必要です。正当な申立てであれば後から担保金は返還されます。
その後、仮処分命令が出されると、おおかたの口コミサイトは口コミの削除に応じてくれるでしょう。
仮処分申立てによって口コミを削除したいとお考えの方は、よりくわしい解説記事『削除請求の仮処分申立てとは?ネット上の誹謗中傷や名誉毀損への法的手続き』も参考にしてください。
【注意】削除の申立てと投稿者の特定は別
口コミの削除を求める仮処分申立てと、口コミの投稿者を特定するための仮処分申立ては別です。
削除を求める仮処分申立てでは、結局だれが口コミを特定したかはわかりません。そのため、口コミによって何らかの財産的損害が出ていても、請求は難しいのです。
もし口コミ投稿者に賠償請求したい場合は、投稿者を特定するための「発信者情報開示請求」という手続きが必要になります。
削除される口コミとされない口コミの違い
削除される口コミと削除されない口コミについては、口コミサイトごとの利用規約によって異なります。
ただし法的な問題としては、権利侵害の有無と同定可能性の有無に注目すべきです。
権利侵害の有無
権利侵害とは、人がもっている様々な権利について、他者から害されることをいいます。口コミの内容によって侵害される権利は様々ですが、おもに問題となるのは「名誉権」や「肖像権」などがあげられるでしょう。
口コミによって他者をけなす、ばかにする、個人情報や顔写真を晒すといった行為は権利侵害にあたる可能性があるものです。民事上の不法行為として、損害賠償請求も可能となります。
あるいは口コミによって虚偽や脅迫をおこなうことは威力業務妨害罪にあたるものとして、刑罰の対象となることもあります。
口コミは個人の感想や論評の範囲においては尊重すべきですが、他者の権利を侵害するものについてはしかるべき手段で削除を検討すべきでしょう。
ネット上の代表的な権利侵害については下記の解説記事も参考にしてください。
同定可能性の有無
ネット上の誹謗中傷では同定可能性の有無も問題になります。同定可能性とは、その書き込みが、実在する人物と容易に結びつくことです。
つまり「客観的にみて誰を対象としているかわからないとき、どんなにひどい暴言や罵詈雑言が書かれていても、権利侵害には問えない」といえます。
たとえば、口コミで「長髪の客がブスだった」と書かれても、誰のことを指しているのかは断定できません。そのため書き込み内容はひどいものでも権利侵害とはいえないのです。
逆に、店ごとの口コミにおいて「店長」だったり「店員の〇〇」などと名指しされている場合には、同定可能性があるものとして権利侵害が認められる可能性もあります。
ネット上における同定可能性については、関連記事も参考にしてください。
ホットペッパーの口コミ削除は弁護士に相談しよう
ホットペッパーグルメやホットペッパービューティーに掲載されている口コミは、投稿後すぐに反映されるのではなく、一度審査を経ています。そのため簡単には削除依頼に応じてもらえない見込みです。
そのためまずは弁護士にその口コミを見せて、権利侵害といえるのかを判断してもらいましょう。なぜなら、裁判所への仮処分申立てにも費用がかかるためです。
法律の専門家の目から見ても「権利侵害があるだろう」といえる場合には、弁護士への依頼もふまえて、削除の申立てを検討していくことをおすすめします。
関連記事『店への悪口は名誉毀損や営業妨害になる?誹謗中傷への対処法がわかる』もあわせてお読みください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了