名誉毀損の被害は弁護士に相談!訴える条件と流れは?相談先選びのポイントも解説

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名誉毀損は弁護士へ

インターネットという匿名の場で名誉毀損を受けたと感じた方は、こうした疑問を持つことが多いです。

  • 書き込みが名誉毀損に該当するかどうかわからない
  • 名誉毀損の被害に対してどう対応すればよいのかわからない
  • 相手を特定し、法的措置をとるにはどうすればよいのかわからない

弁護士であれば、ご相談内容(書き込みの内容)をもとに判断できますし、具体的な対処法をお伝えすることが可能です。また、名誉毀損で相手を訴える条件を満たしているのかもアドバイスできます。

インターネット上の名誉毀損は、相手を特定できるかという点が難しいともいえます。そのため、いきなり正式に依頼するのではなく、弁護士への法律相談、できれば無料相談の活用がおすすめです。

名誉毀損で弁護士相談を活用するべき理由

名誉毀損で相手を訴えるためには、まずは弁護士との法律相談を検討していきましょう。

名誉毀損で訴えるための条件を満たしているのか、そもそも書き込んだ相手を特定できるのかといった事前情報の収集に役立ちます。

まずは名誉毀損にあたるかの判断をしてもらえる

弁護士との法律相談を活用すれば、書き込まれた内容を精査して、どういった権利侵害が生じているのかを教えてもらえます。

名誉毀損や侮辱罪、あるいはプライバシー侵害など、ネットトラブルで問題となりやすい権利侵害は様々で、それぞれに成立要件があります。

どんなに被害者が「書き込まれてショックだった」と主張しても、成立要件を満たしていない場合は、法的な問題としてあつかうことは難しいのです。

とくに無料相談であれば、ご自身では判断のつかない書き込み内容についても気軽に相談できます。

匿名の相手を特定できる見通しを聞ける

弁護士との法律相談を活用すれば、そもそも相手を特定できるのかを事前に知ることができます。

ネット上の名誉毀損で難しい問題は、書き込んだ人物の特定ができるかどうかです。そもそも特定できなければ、相手を訴えることは難しいでしょう。

名誉毀損について本格的に対処して成功する見通しはあるのか、まず確かめるという段階においては無料相談が非常に有効です。

名誉毀損の慰謝料を見積もってもらえる

弁護との法律相談を活用すれば、慰謝料の見積もりを依頼できます。とくに、被害者向けには無料相談をおこなっている法律事務所も多いです。

名誉毀損の慰謝料相場は個人の場合で10万円から50万円ほどですが、書き込み内容の悪質性や、その他の権利侵害が生じている場合などには増額される可能性があります。

名誉毀損に強い弁護士であれば、これまでの経験を元に、被害者の負った精神的苦痛に対して請求しうる慰謝料相場を見積もることが可能です。

弁護士費用を支払うリスクも説明してもらえる

弁護士との法律相談を活用すれば、本当に弁護士に依頼するべき事案なのかを事前に見極めることができます。

とくに無料相談であれば、弁護士費用をできるだけおさえることができるでしょう。

ネット上の名誉毀損では、相手を特定するための費用、相手に対する慰謝料請求費用などが必要となります。たとえ相手を特定して賠償を受けられても、十分な金額を回収できない可能性もあるのです。

名誉毀損の慰謝料相場は、個人の場合で10万円から50万円ほどで、弁護士費用も全額請求は難しいのが実情といえます。

弁護士費用の費用体系は各々異なりますが、多くのケースで「着手金」「成功報酬」「実費(郵送料など)」で構成されています。

弁護士費用を支払った結果、最初の想定よりもお金が手元に残らなかったり、最悪のケースとしては赤字になったりするケースもあるでしょう。

相手を特定するための開示請求費用の内訳や相場については、関連記事『発信者情報開示請求の費用相場と内訳は?弁護士費用は相手に請求できる?』にて詳細を解説しています。

名誉毀損で問える法的責任とは?

ネット上の書き込みが名誉毀損にあたる場合には、相手に対して民事責任と刑事責任の両方を問うことが可能です。

民事責任(損害賠償請求)

民事責任とは、民法709条にもとづき、名誉毀損という不法行為で負った精神的苦痛を緩和するために損害賠償を請求できるというものです。

名誉毀損の慰謝料は、被害者が個人のとき10万円から50万円、被害者が法人のとき50万円から100万円が相場となります。

そのほか名誉毀損で相手を訴えるまでにかかった弁護士費用の一部や裁判費用の請求も認められる場合があるでしょう。

刑事責任(刑罰)

刑事責任とは、刑法にもとづいて刑事罰を負わせるものです。

名誉毀損罪は刑法230条に定められており、3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金とされています。

刑法230条 名誉毀損

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

警察や検察が捜査をおこない、加害者に対する刑罰を決める流れです。後ほどくわしく解説しますが、名誉毀損罪は「親告罪」なので、被害者が被害を申告して、加害者に刑罰を望むと「告訴」しなくてはいけません。

名誉毀損で訴える条件は?

名誉毀損で訴える条件は以下の通りです。

名誉毀損で訴える条件

  • 名誉毀損が成立する条件を満たしていること
  • 名誉毀損した相手を特定できていること
  • 刑事告訴をすること
  • 時効を過ぎていないこと

各条件をくわしく説明します。

名誉毀損が成立する条件を満たしていること

名誉毀損が成立するためには、公然性、事実摘示性、名誉毀損性という条件を満たす必要があります。

名誉毀損の成立要件

概要
公然性不特定または多数の者によって認識される状態であること
事実摘示性事実を摘示していること
名誉毀損性人の社会的評価を低下させるような内容であること

ネット上では、メールやDMなどの一部例外を除き、多くのケースで公然性を満たしていると考えられます。

事実の摘示とは、何か具体的な事実を出していることです。たとえば「人をだましている」「窃盗を繰り返している」など具体的な事柄を摘示しているものが名誉毀損に該当します。

名誉毀損性とは、社会通念上でその人の評価を低下させるような内容のことです。「犯罪者」「前科者」「不貞行為」などが該当します。

名誉毀損の成立要件について詳しく知りたい方は、関連記事『名誉毀損とは?成立要件や被害者が行える法的請求の内容がわかる』も参考にしてください。

名誉毀損と侮辱罪の違い

名誉毀損と侮辱罪の違いは事実の摘示の有無です。具体的な事実のない場合は侮辱罪に該当する可能性があります。

「バカ」「不細工」などは主観的な表現にとどまるため、具体的な事実とまでは言えませんので、名誉毀損ではなく侮辱罪を検討する必要があるでしょう。

名誉毀損ではなく侮辱罪について知りたい方は、関連記事『侮辱罪の成立要件は?名誉毀損罪との違いや侮辱罪になる言葉の具体例を紹介』をお読みください。

名誉毀損した相手を特定できていること

ネット上の匿名の相手に対して権利侵害を主張する場合には、相手が誰なのかを特定していることが大切です。

相手の特定とは、住所や氏名といった個人情報を指します。「このアカウントが名誉毀損をしたアカウントだ」という特定ではなく、そのアカウントが「何者であるか」をはっきりさせねばいけません。

刑事告訴をすること(刑事罰を望む場合)

刑事罰を望む場合には、刑事告訴をする必要があります。

刑事告訴とは、犯罪の被害者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し、加害者への刑事処罰を望むことを意思表示するものです。

名誉毀損罪は親告罪といって、加害者を処罰する要件に刑事告訴が必要です。いいかえれば、被害者が捜査機関に申告しない限り、名誉毀損で刑事処分を求めることはできません。

刑事告訴のくわしい手続きや告訴費用については、関連記事『刑事告訴の方法と告訴費用を解説!ネットトラブル・誹謗中傷を警察に訴えたい』をお読みください。

時効を過ぎていないこと

時効については、民事と刑事で区別して理解しておきましょう。

民事上の時効

民事上の時効、つまり慰謝料を請求できる期間は名誉毀損の相手を知ったときから3年、または名誉毀損の事実から20年となっています。いずれかを経過すると、時効となり、慰謝料は請求できません。

相手を知ったときとは、発信者情報開示請求を通して相手を特定できた時期を起点と考えておきましょう。

名誉毀損の事実とは、名誉毀損にあたる投稿がなされたときから20年と考えます。

刑事上の時効

刑事告訴は犯人を知ったときから6ヶ月以内におこなう必要があります。犯人を知ったときとは、発信者情報開示請求を通して相手を特定できた時期を起点と考えておきましょう。

名誉毀損罪の公訴時効は3年ですが、告訴の期限である6ヶ月を過ぎると、刑事責任を問うことが出来なくなってしまいます。

名誉毀損で訴える場合の流れ

相手を特定するまでの流れ

とくに民事責任として慰謝料を請求する場合には、発信者情報開示請求によって特定する必要があります。発信者情報開示請求の大まかな流れは以下の通りです。

  • サイト運営者に書き込んだ人物のIPアドレスなどの情報開示を求める
  • IPアドレスの開示を受けたらプロバイダーを特定する
  • 特定したプロバイダーに対して発信者情報(契約者情報)の開示を求める

こうした一連の流れは、裁判所における仮処分や発信者情報開示請求、もしくは発信者情報開示命令という法的な手続きをとることになります。

名誉毀損における相手方の特定を考えている方は、法的な手続きにくわしい弁護士に相談・依頼することがおすすめです。

関連記事『発信者情報開示請求の要件と流れ|誹謗中傷の投稿者を特定する方法を解説』でくわしく説明していますので、併せて参考にしてください。

相手に対して損害賠償請求する

発信者情報開示請求が認められた場合、書き込んだ人物の住所、氏名などの個人情報が開示されます。

その開示内容をもとに、いきなり慰謝料請求の民事訴訟を起こすのではなく、内容証明などで直接請求することが基本です。

こうした裁判外での話し合いは「示談」ともいわれる方法で、双方の合意をもって解決を図る方法です。

しかし慰謝料額に関する話し合いがまとまらない場合や、そもそも名誉毀損の書き込みをしていないなど、相手方が話し合いを拒否する場合などは民事訴訟を起こすことも視野に入れていきます。

警察に名誉毀損の被害について告訴する

警察に対して、名誉毀損の被害について告訴をおこないます。

刑事責任を問うには、国が加害者(被疑者)を訴えることになるため、告訴後は捜査機関に任せることになるでしょう。

告訴後の流れ

  • 捜査機関に名誉毀損について刑事告訴をおこなう
  • 告訴を受理した警察は捜査を開始して記録や証拠を集める
  • 警察の記録や証拠が検察へ届けられ、さらに捜査が進められる
  • 検察は捜査の結果、加害者を起訴するかどうか決める
  • 起訴後は裁判で刑事処分が下される

相談先選びのポイントと準備しておきたいもの

弁護士との法律相談前には、事前に次のようなものを用意・確認しておくとスムーズです。

  • 証拠の準備(名誉毀損かもしれないと感じた書き込みのスクリーンショット)
  • 法律事務所の相談形式(電話相談、メール相談、対面相談など)
  • 相談料・相談受付回数・相談時間
  • 名誉毀損に強い弁護士かどうか

まず、名誉毀損かもしれないと感じた書き込みを証拠として保存しておきましょう。スクリーンショットをとる際には、書き込みの日時や、URLが映る状態で残しておいてください。

また、法律事務所ごとに電話相談、メール相談、対面相談などの様々な相談形式があります。ご自身の希望する相談形式に対応しているのかを確かめておきましょう。

相談料については無料かどうか、あるいは初回相談無料なのか、数回無料なのかも確認しておくと安心です。法律事務所ごとで相談時間も設定している場合がほとんどなので、聞きたい内容を整理しておくと良いでしょう。

そして、弁護士によって力を入れている分野はさまざまです。ホームページの解決実績や弁護士のプロフィールなどで調べることができるので、インターネットにくわしく、名誉毀損に強い弁護士への相談がおすすめです。

なお相談時には名誉毀損が疑われる書き込みのスクリーンショットなど、証拠となる資料を持参すると良いでしょう。関連記事『名誉毀損で訴えるにはどんな証拠がいる?開示請求は必須?』を読めば、証拠の重要性や保存すべき証拠について理解が深まります。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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