配偶者と子供で家屋を相続する際に知っておきたいこと

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配偶者と子による家屋の相続

被相続人が亡くなり、配偶者と子供が相続人になった場合は、相続登記の申請や家屋の相続税評価、相続税の申告など、さまざまな手続きが発生します。この記事では、被相続人の配偶者と子供で家屋を相続する際の基本的なポイントについて、くわしく解説します。

『配偶者と子供による家屋の相続』に関する基本事項

家屋を相続するときの手続きの流れ

家屋を相続する場合は、以下のような流れで手続きを進めます。

1.遺言書の有無を確認する

被相続人が遺言書を作成していた場合は、遺言書の内容に従って相続手続きを行います。遺言書がない場合は、遺産分割協議などを行って相続手続きを進めます。

2.相続人を確認する

相続人となるのは、被相続人の配偶者、子供、父母、兄弟姉妹などです。このとき相続人調査を行い、誰が相続人になるのかを確認する場合もあります。

3.相続財産を確認する

相続財産調査を行い、宅地を含む不動産や預貯金など、どのような財産があるのか、評価額はいくらなのかを確認します。

4.遺産分割協議を行う(遺言書がない場合)

遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、相続財産をどのように分割するかを決めます。遺産分割協議が成立しない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てます。

5.相続登記の申請手続きを行う

遺産分割協議が成立したら宅地の相続登記の申請手続きを行い、名義を相続人に変更します。

6.必要に応じて相続税の申告・納税を行う

相続財産の評価額の合計が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要です。また、必要に応じて納税も行います。

相続手続きは時間と手間がかかるため、早めに準備を進めるようにしましょう。

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家屋の相続登記手続きと費用の相場

家屋などの不動産を相続した場合は相続登記の申請を行い、相続人に名義を変更する必要があります。相続登記の手続きは、民法上では被相続人の死亡日から10年以内が時効とされていましたが、2024年4月からは、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に行うことが義務付けられました。

相続登記の申請手続きに必要な書類

家屋の相続登記をするにあたっては、以下の書類が必要です。

  • 登記申請書
  • 被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍(出生から亡くなるまでのすべての謄本)
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
  • 相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書
  • 家屋を相続する相続人の住民票
  • 固定資産課税明細書
  • 相続関係説明図(戸籍謄本・除籍謄本の原本の還付を希望しない場合は不要)
  • 遺産分割協議書(遺産分割協議を行った場合のみ)

相続登記の申請手続きは法務局で行いますが、申請方法は、法務局の窓口または郵送の2パターンがあります。

相続登記の申請手続きにかかる費用

相続登記にかかる費用は、必要書類の取得費のほか、申請時に納める登録免許税、司法書士への報酬などがあります。

必要書類の取得費は、それぞれ数百円程度です。相続登記の登録免許税は、家屋の固定資産税評価額に税率(0.4%)を乗じて計算します。たとえば、3,000万円の家屋にかかる登録免許税は12万円です。

司法書士の報酬はさまざまですが、相場は10万円~20万円程度と考えておくとよいでしょう。司法書士に依頼する場合は、複数の司法書士から見積もりをとり、比較検討することをおすすめします。

相続登記は手続きが複雑で、費用もかかります。相続人が決まったら、早めに手続きを進めましょう。

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法定相続分による相続割合【配偶者と子供で相続する場合】

配偶者と子供の法定相続分は2分の1ずつです。子供が複数人いる場合は、遺産の2分の1を子供の人数で均等に分割します。

【相続割合】

法定相続人相続割合
配偶者+子1人配偶者:1/2
子:1/2
配偶者+子2人配偶者:1/2
子:1人あたり1/4
配偶者+子3人配偶者:1/2
子:1人あたり1/6

被相続人が亡くなって2億円の相続が発生し、配偶者と子供2人が相続人となった場合、配偶者の法定相続分は1億円、子供の法定相続分は5,000万円ずつになります。

法定相続分は、相続人の間で遺産分割協議を行う際に、法律上の分け方の目安となるものです。ただし、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割することも可能です。

相続税における基礎控除の概要と計算方法

相続税は、課税対象となる遺産の総額が基礎控除額を上回る場合に申告の義務が発生し、場合によっては相続税額が発生することもあります。相続税の基礎控除額の計算方法は、以下のとおりです。

【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

【相続人数別の基礎控除額】

法定相続人基礎控除額
1人3,600万円
2人4,200万円
3人4,800万円
4人5,400万円

たとえば、法定相続人が配偶者と子供1人の場合は4,200万円、配偶者と子供2人の場合は4,800万円が基礎控除として遺産総額から差し引かれます。遺産の総額が基礎控除額を下回る場合は相続税は発生せず、申告の必要もありません。

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相続税の申告方法と申告期限

遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告します。申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内です。

相続税の申告書は、税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。申告書の提出方法は、持参または郵送のほか、e-Tax(電子申告)でも可能です。

相続税の申告書作成は、自分で行うこともできますが、専門的な知識を要するため、税理士に依頼することをおすすめします。

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家屋の相続税評価額を計算する方法

家屋を相続する際は、家屋の評価額を算定する必要があります。家屋の評価額は、原則として固定資産税評価額を基準に算定します。固定資産税評価額とは、市区町村が個々の不動産について算定しているものです。

家屋は3種類に大別され、それぞれ評価方法が異なります。

自宅家屋(一軒家やマンションなど)

自宅家屋の相続税評価額は、固定資産税評価額に1.0を乗じて算定します。

自宅家屋の評価額=固定資産税評価額×1.0

自宅家屋の固定資産税評価額が1,700万円の場合、相続税評価額は1,700万円です。

貸家

貸家の相続税評価額は、固定資産税評価額に1から借家権割合を引いたものを乗じて算定します。借家権とは、借り手が家屋を借りて使用する権利のことで、借家権割合は30%と定められています。

貸家の評価額=家屋の固定資産税評価額×(1−借家権割合0.3)

貸家の家屋の固定資産税評価額が1,700万円の場合、相続税評価額は1,190万円です。

賃貸アパート

賃貸アパートの相続税評価額は、1から借家権割合と賃貸割合を乗じたものを引いたものと、固定資産税評価額を乗じて算定します。

賃貸アパートの評価額=建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合0.3×賃貸割合)

賃貸アパート(建物部分)の固定資産税評価額が1億2,000万円で賃貸割合が80%の場合、相続税評価額は9,120万円となります。

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小規模宅地等の特例で敷地部分の相続税評価額を最大80%減額

土地付きの家屋を相続する場合、土地部分に対して小規模宅地等の特例を適用できます。小規模宅地等の特例とは、要件を満たす土地の評価額を最大で80%減額できる制度です。

小規模宅地等の特例の適用要件は、以下のとおりです。

  • 被相続人などの居住用地や事業用地であったこと
  • 配偶者または要件を満たす親族が相続すること
  • 適用できる土地の面積は、居住用地の場合は330㎡(約100坪)に対応する部分まで、事業用地の場合は400㎡(約121坪)に対応する部分まで
  • 居住用地の場合、配偶者以外の相続人は相続税の申告期限まで居住すること

被相続人が居住していた約100坪の宅地の評価額が5,000万円の場合、小規模宅地等の特例を適用することにより、1,000万円に減額されます。

このように、小規模宅地等の特例を使うことで、相続税の負担を大きく軽減できます。土地付きの家屋を相続する際には、適用可能かどうかを確認しましょう。

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配偶者控除で配偶者分の相続税負担を軽減

相続税における配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは、被相続人の配偶者が取得した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額までは相続税が課税されない制度です。配偶者控除の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 被相続人と法律上の結婚関係にある
  • 遺産分割が完了している
  • 相続税の申告期限までに相続税の申告書を提出する

たとえば、被相続人が配偶者と子供2人を残して亡くなり、相続財産の合計が2億円の場合、配偶者の法定相続分は1億円です。このとき配偶者控除を適用することで、配偶者分の相続税は0円になります。

ただし、のちに配偶者が亡くなって配偶者の財産を子供が相続するときに、相続税負担が増える可能性があるため注意が必要です。そのため、相続税を節税するための最善策を検討する場合は、税理士に相談することをおすすめします。

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配偶者の居住権を守る配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、被相続人(配偶者)が亡くなった後も、配偶者が被相続人の自宅に住み続けることができる権利です。配偶者居住権を設定するには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 被相続人と法律上の結婚関係にある
  • 被相続人の死亡当時に配偶者が居住していた家屋である
  • 遺産分割や遺贈、死因贈与、家庭裁判所による審判のいずれかにより配偶者居住権を取得している

要件を満たせば配偶者居住権を設定できますが、第三者に対して居住の権利を主張するためには、登記をしておく必要があります。

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『配偶者と子供による家屋の相続』に関するよくある質問

家屋を相続すると、相続税は必ずかかりますか?

家屋を含む、相続財産の合計が基礎控除額を超える場合は相続税の申告義務が発生し、相続税がかかることもあります。ただし、相続税が発生したとしても、小規模住宅地等の特例や配偶者控除といった控除を適用することにより、相続税額をおさえることは可能です。

相続税の申告はいつまでに行う必要がありますか?

相続税の申告が必要な場合は、被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内に申告を行います。期限内に申告しなかった場合は、延滞税や加算税などのペナルティが科せられる可能性もあります。

相続税の申告に必要な書類はどのようなものがありますか?

相続税を申告する際は、相続税の申告書に加え、遺言書または遺産分割協議書の写し、戸籍謄本、住民票、相続財産の評価額を証明する書類などが必要になります。

相続税の申告サポートを税理士に依頼するメリットは何ですか?

税理士に依頼するメリットとして、相続税評価額を適切に算定してもらえたり、相続税の申告書の作成をサポートしてもらえたりするといったことが挙げられます。

相続税の申告を自分で行う際に注意すべき点はありますか?

相続税の申告を自分で行う際には、内容に誤りがないか、念入りな確認が大切です。相続税の申告は、法律や税制に関する専門知識が必要となります。申告内容に誤りがあった場合、追徴課税などのペナルティを受ける可能性があるので十分注意しましょう。

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アトムグループ 協力税理士

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