土地の名義を変更したら相続税がかかる?名義変更と課税条件を解説

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土地名義変更と相続

「土地の名義を変更したら相続税がかかってしまう?」
「親名義の実家の土地建物を相続したけれど、どうすれば良いかわからない」

結論からいうと、相続した土地の名義を変更したからといって相続税が課税されるわけではありません。

相続税は、遺産総額が基礎控除額を超えた場合に課税されます。

この記事では、相続後に必要な土地の名義変更手続きと、どのような場合に相続税の申告・納付が必要なのかを解説します。

相続税がかかる条件

相続税は、基本的に遺産総額が基礎控除額を超える場合に発生します。

「土地名義変更をしたら相続税がかかる」と誤解されている方がいらっしゃるかもしれませんが、土地名義変更と相続税は直接的には関係ありません。

相続で取得した不動産の評価額と、預貯金等の相続財産を合計し、債務等を控除した総額が基礎控除額を超えるかどうかが基準です。

名義を変更しても遺産総額が基礎控除額を下回っていれば相続税はかかりませんし、名義を変更しなくても、遺産総額が基礎控除額を上回っていれば相続税はかかります。

基礎控除額は、以下の計算式で求められます。

「3,000万円+600万円×法定相続人の数」

例えば、相続人が配偶者、長男、長女の3人の場合、基礎控除額は、3,000万円+600万円×3=4,800万円になります。

したがって、この場合、遺産総額が4,800万円を超えれば基本的に相続税がかかります。

相続税の申告・納税が必要かどうか気になる方は、関連記事『相続税の基礎控除がわかる|計算方法や法定相続人の数え方も解説』を参考に、ご自身の基礎控除額を計算してみてください。

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土地の相続手続きの流れ

土地の相続手続きの主な流れは、以下のとおりです。

【土地の相続手続き】

①被相続人が所有していた土地を調査する
②遺言書がないか確認する
③遺言書がなければ遺産分割協議を行う
④土地の名義変更手続きを行う
⑤相続税の申告・納付を行う

以下、それぞれの手続きを解説します。

①被相続人が所有していた土地を調査する

被相続人が亡くなると、同人が所有していたすべての不動産が相続の対象になります。

実家の土地建物など分かりやすいものだけでなく、中には相続人がその存在を把握していない不動産もあるかもしれません。

そこで、相続対象になる不動産をすべて調査する必要があります。

具体的には、固定資産税納税通知書、名寄帳等を調べます。

固定資産税納税通知書は、毎年4月頃市区町村から送付されます。

名寄帳は、被相続人が所有する不動産の所在地の市区町村役場に申請すれば取得できます。

②遺言書の有無を確認する

遺言書があれば、遺言内容に従って分割することになります。

遺言書は、自宅の他、公証役場や法務局で保管されている可能性もあります。

公正証書遺言と法務局で保管されている自筆証書遺言以外の遺言書については、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。

検認が終わった後、土地の名義変更手続きを行うには、遺言書に検認済証明書が付いていなければなりません。

そのため、検認済証明書の申請も忘れずに行うようにしてください。

検認について、詳しくは裁判所ホームページ「遺言書の検認」をご参照ください。

③遺言書がなければ遺産分割協議を行う

遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。

相続人に該当する人を確実に見つけるには、被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍謄本を取得します。

遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書には、相続人全員が署名・押印しなければなりません。

④土地の名義変更手続きを行う

遺言書がある場合も、遺産分割協議を行った場合も、土地の名義変更を行う必要があります。

なお、相続した不動産を売却して売却代金を相続人で分割する場合も、その前提として相続人への名義変更が必要です。

相続を原因とする土地の名義変更手続きは、「相続登記手続き」と言います。

相続登記手続きの流れについて、詳しくは「相続登記手続きの基礎知識」でご説明します。

⑤相続税の申告・納付

相続財産が基礎控除額を超える場合、原則として相続税がかかります。

相続税の申告期限は、相続開始を知った日(通常、被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内です。

土地を相続したときの相続税に関して詳しくは、関連記事『土地を相続したら相続税はかかる?相続税の計算や土地の評価方法を解説』をお読みください。

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相続登記手続きの基礎知識

相続登記手続きの流れ

相続登記手続きの主な流れは、以下のとおりです。

【相続登記手続きの流れ】

相続登記を行う前提として、誰が不動産を相続するか決める必要があります。

遺言書があれば、その内容に従います。

遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成します。

ここでは、誰がどの不動産を相続するか決まった後の流れをご説明します。

①登記申請書を作成する
②登記申請書を提出する
③登記識別情報通知書等を発行してもらう

以下、それぞれの手続きを解説します。

①登記申請書を作成する

●登記申請書は、どのような相続方法の場合でも提出する必要があります。

法務局ホームページ「不動産登記の申請書様式」からダウンロードできますので、ご自身の相続方法と同じ項目を参考になさってください。

例えば、自筆証書遺言による相続の場合は「所有権移転登記申請書(相続・自筆証書遺言」を、遺産分割協議を行った場合は「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)の様式・記載例をそれぞれご参照ください。

●登記申請書に記載する「登録免許税」は、登記申請の際に必要な税金です。

相続登記の場合、登録免許税は「不動産の価額(課税価格)×0.4%」で算出します。

固定資産税課税明細書の「価格」または「評価額」に記載されている価格が登録免許税の計算に必要な「課税価格」に当たります。

「固定資産税課税標準額」は関係ありませんのでご注意ください。

なお、登録免許税には免税措置が設けられています。

例えば、相続を原因とする所有権移転登記を行う場合、不動産価額が100万円以下であれば、登録免許税は免税されます。適用対象は全国の土地です。

この免税措置は、平成30年11月15日から令和7年3月31日まで適用されます。

登録免許税や免税措置について、さらに詳しく知りたい方は関連記事もぜひご覧ください。

関連記事

相続登記の登録免許税を計算する|免税措置や計算例も解説

②登記申請書を提出する

登記申請書と必要書類は、申請する不動産の所在地を管轄する法務局の窓口に持参するか、または郵送する方法により提出します。

管轄については、法務局ホームページ「管轄のご案内」から検索できます。

また、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を通じたオンライン申請も可能です。

オンライン申請の手順については、法務局ホームページ「不動産の所有者が亡くなった(相続の登記をオンライン申請したい方)」をご参照ください。

③登記完了証及び登記識別情報通知書を発行してもらう

登記が完了すると、法務局から、登記完了証及び登記識別情報通知書を発行してもらえます。

これらは再発行してもらうことができませんので、受領後は大切に保管するようにしましょう。

相続登記の申請期限|令和6年から申請が義務化

令和6年(2024年)4月1日から相続登記の申請が義務化されました。

この義務化により、相続を原因として不動産を取得した相続人は、その不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならなくなります。

正当な理由がないにもかかわらず、相続登記をしないままでいると、10万円以下の過料が科されるおそれがあります。

このルールは、令和6年4月1日以前に相続が発生し、まだ相続登記が完了していない不動産にも適用されます。

これから相続を控えている方は、相続登記がスムーズに行えるよう専門家に早めに相談しておくと安心です。

また、過去に相続で取得した不動産の名義を変更しないままでいる方は、早急に相続登記をおこなってください。

相続登記の必要書類

ここでは、相続登記の申請をする際の必要書類をご説明します。

必要書類は、遺言書がある場合と、遺産分割協議を行った場合で異なります。

【共通で必要な書類】

必要書類入手先備考
登記申請書自分で作成法務局ホームページ「不動産登記の申請書様式」からダウンロード可能。
相続関係説明図自分で作成
収入印紙法務局、郵便局
不動産を相続する者の住民票市区町村役場
固定資産評価証明書市区町村役場
委任状自分で作成司法書士等に依頼する場合に作成。

【遺言書がある場合】

必要書類入手先備考
被相続人の戸籍・除籍謄本市区町村役場転籍等により本籍が変わっている場合は、その本籍ごとに、本籍のある市区町村役場に請求する。
被相続人の住民票除票市区町村役場
不動産を相続する者の戸籍謄本市区町村役場
遺言書被相続人の自宅、公正役場、法務局公正証書遺言と法務局で保管されている自筆証書遺言以外の遺言書については、家庭裁判所の検認済証明書付きのものであることが必要。

【遺産分割協議をした場合】

必要書類取得先備考
被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改正原戸籍謄本市区町村役場
被相続人の住民票除票市区町村役場
相続人全員の戸籍謄本市区町村役場
遺産分割協議書相続人全員で作成
相続人全員の印鑑登録証明書市区町村役場遺産分割協議書に押印した実印の印鑑証明書を各1通添付する。ただし、登記申請人である相続人を除く。

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監修者情報

アトムグループ 協力税理士

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