相続で不動産取得税はかからない?例外でかかるケースと税額の計算方法

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不動産取得税とは?

不動産取得税は、不動産を取得した人に課せられる都道府県税です。

この不動産取得税は、相続による不動産の取得には課税されません。

しかし、遺言によって相続人以外が不動産を取得した場合や、生前贈与で不動産を取得した場合には、不動産取得税が課税されます。

そこでこの記事では、相続時に不動産取得税が課税されるケースと、不動産取得税の計算方法、控除制度を解説します。

原則、相続で不動産取得税はかからない

不動産取得税は、不動産を取得した場合に課せられる税金です。

不動産取得税の対象は、不動産の「売買」「新築」「増改築」「贈与」「交換」で、相続による不動産の取得は課税対象外となります。

相続による不動産取得は、売買や贈与のような経済的な移転ではなく形式的な所有権の移転に近いため、不動産取得税が課税されないのです。

なお、不動産取得税は不動産を譲り受けた人が負担しなければならず、宅地と住宅それぞれに課せられます。登記の有無、有償・無償にかかわらず、不動産取得税の課税対象です。

相続時に不動産取得税がかかるケース

不動産を相続した場合は不動産取得税がかかりませんが、遺言により財産を取得した場合や、相続税対策の一環としておこなった生前贈与による不動産の取得には、不動産取得税が課されることがあります。

特定遺贈で相続人以外が不動産を取得した場合

遺贈とは、遺言により財産を譲渡する方法です。

遺贈の中でも、財産を指定して遺贈する特定遺贈で、相続人以外が財産を取得した場合のみ、不動産取得税が課せられます。

たとえば、遺言で「不動産Xを隣人のAさんに譲る」とした場合の特定遺贈において、Aさんは不動産取得税を負担しなければなりません。

なお、あくまでも「相続人以外が不動産を取得する場合」が課税対象ですので、Aさんが相続人の場合には不動産取得税の課税対象ではなくなります。

相続人の範囲は?

ここでいう相続人とは、民法で財産を相続する権利があると定められた、法定相続人を指します。

法定相続人には相続順位という優先度が割り振られており、より上の順位の相続人がいる場合、それより下位は法定相続人にはなりません。

たとえば、被相続人に子がいる場合、原則、父母は法定相続人にはなりません。

相続税 法定相続人

遺贈には、包括遺贈もあります。包括遺贈とは、財産を指定して遺贈するのではなく、「Aに財産の50%を譲る」ように割合を指定する遺贈です。

包括遺贈で不動産を取得した場合は、取得者が相続人か、相続人でないかにかかわらず、不動産取得税の課税対象にはなりません。

遺贈と不動産取得税の課税関係まとめ

特定遺贈
取得者が相続人:課税されない
取得者が相続人ではない:課税される

包括遺贈
取得者が相続人:課税されない
取得者が相続人ではない:課税されない

遺贈によって発生する税金について、より詳しく知りたい方は、『遺贈でかかる税金は?|相続税・不動産取得税・登録免許税を解説』をお読みください。

死因贈与で不動産を取得する場合

死因贈与とは、「私が死んだら、今住んでいる住宅XをBに贈与する」「私が死んだら、現金500万円をBに贈与する」など、被相続人の死亡を条件に贈与する方法です。

死因贈与により不動産を取得した場合には、不動産取得税が課せられます。

死因贈与により取得した不動産には相続税は課せられますが、不動産登記する際には「相続」ではなく「贈与」として扱われます。そのため、死因贈与により不動産を取得した場合には、不動産取得税が課せられるのです。

死因贈与と遺贈の違い

遺言で財産を譲る遺贈との大きな違いは、契約の有無です。

贈与は、贈与者と受贈者の両人が合意して初めて成立します。死因贈与では、生前に贈与者と受贈者の間で契約を締結しなければなりません。

対して遺贈は、相手の合意を必要としない、一方的な財産譲渡の意思表示です。

死因贈与は確実に不動産を取得できる

「不動産取得税がかかってしまうのなら、死因贈与するメリットはない」と考える方もいるでしょう。

しかし、死因贈与は生前に贈与契約を交わすため、贈与者の死後に契約を破棄することができません。よって、不動産を必ず取得できるというメリットがあります。

不動産取得税の課税の有無だけではなく、総合的に判断して不動産の移転方法を決めましょう。

なお、法律上は口約束のみの贈与契約でも有効ですが、のちのトラブルを防ぐためにも、贈与契約時に死因贈与契約書の作成しておくことを強くおすすめします。

相続時精算課税制度で不動産を取得する場合

相続時精算課税制度とは、累計2,500万円までの贈与にかかる贈与税が非課税になる一方、贈与者が死亡した際に、贈与した財産を相続財産に足し合わせて、相続税の課税対象とする制度です。

この相続時精算課税制度を利用して不動産を取得した場合には、不動産取得税が課せられます。

この制度を利用して不動産を取得した場合、2,500万円の非課税枠であれば課税されるのは相続税のみですが、不動産登記する際には、「贈与」の扱いとなるため、不動産取得税の課税対象になります。

相続時精算課税制度は、適切に利用できれば非常に大きな節税効果が期待できます。しかしその分、制度の詳細を知っておくことがとても重要です。

知っておきたい相続時精算課税制度のデメリットは、関連記事『【令和6年最新】相続時精算課税制度のデメリット7つとメリット5つ』で詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。

相続登記後に遺産分割をやり直した場合

遺産分割を終えて相続登記したあとに、遺産分割をやり直して不動産を取得した場合には、不動産取得税が課せられます。

相続登記が終わってからの不動産の取得は、相続人間の贈与で取得したことになるためです。

不動産取得税の計算方法

不動産取得税は「不動産価格×税率」

不動産取得税は、「不動産価格×税率」で計算できます。

不動産価格には原則、市区町村の固定資産課税台帳に登録されている固定資産税評価額を用います。

税率は宅地・住宅ともに3%です。住宅以外の家屋については4%です。

なお、不動産取得税には軽減措置があり、取得した不動産が一定要件を満たす場合には、不動産価格から一定額を控除することができます。

住宅にかかる不動産取得税の控除

一定の要件を満たせば、住宅(建物)が新築された時期に応じて、最大1,200万円まで控除できます。

<住宅にかかる不動産取得税の控除額>

新築年月日控除額
昭和57年1月1日から昭和60年6月30日まで420万円
昭和60年7月1日から平成元年3月31日まで450万円
平成元年4月1日から平成9年3月31日まで1,000万円
平成9年4月1日から1,200万円

<不動産取得税の控除要件(中古住宅)>

住宅の取得にかかる不動産取得税の控除を受けるためには、下記の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 取得者が自らその取得した住宅に居住すること
  2. 住宅の新築後の経過年数等について、次のいずれかの要件に該当すること
    ・昭和57年1月1日以降に新築された住宅を取得した場合
    ・新耐震基準に適合している事が証明されている住宅を取得した場合
  3. 住宅の床面積が、50㎡以上240㎡以下であること

<控除額を含めた不動産取得税の計算式>

(建物の不動産価格-控除額)×3%

<控除額を含めた不動産取得税の計算例>

平成5年1月1日に新築された、不動産価格1,200万円の住宅を贈与された場合、1,000万円を控除できるため、

 (1,200万円-1,000万円)×3%=6万円

よって、建物にかかる不動産取得税は、6万円となります。

もし控除しないと36万円もの不動産取得税がかかるため、忘れないように注意してください。

宅地かかる不動産取得税の控除

上記の住宅と一緒に宅地(土地)も贈与された場合は、土地にかかる不動産取得税の控除を受けられます。宅地の取得前後1年以内に住宅も取得した場合も対象です。

<宅地かかる不動産取得税の控除額>

宅地かかる不動産取得税の控除額は、以下のいずれか高い方が適用されます。

  • (土地1㎥あたりの固定資産額×1/2)×(住宅の床面積×2)×3%
    (住宅の床面積×2)は200㎡が限度
  • 4万5,000円

<控除額を含めた不動産取得税の計算式>

(土地の不動産価格×1/2×3%)-控除額

<控除額を含めた不動産取得税の計算例>

住宅(床面積100㎡)のための価格2,000万円、面積200㎡の土地(1㎡あたり10万円)を贈与された場合、

◇控除額
(10万円×1/2)×(100㎡×2)×3%=30万円>4.5万円

◇不動産取得税
2,000万円×1/2×3%-30万円=0

控除により、宅地にかかる不動産取得税はゼロとなります。

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不動産取得税の納税方法

不動産取得税の流れは以下のとおりです。

(1)都道府県税事務所へ申告する
(2)納税通知書が送付されたら納税

(1)都道府県税事務所へ申告する

不動産取得税は都道府県税なので、都道府県税事務所に申告します。

申告期限は都道府県によって異なります。たとえば東京都だと、不動産を取得した日から30日以内に、贈与された不動産がある都道府県税事務所で申請する必要があります。

申告は、各都道府県税事務所のWebサイトから申告用紙をダウンロードして行います。郵送での申請とと直接窓口での申請、どちらでも可能です。

なお、不動産取得日から30日以内に登記申請した場合、原則、不動産取得税の申請は不要となります。

※「都道府県名 不動産取得税」で検索すると、該当の都道府県の不動産取得税の申請書や、申請期限が確認できます。

(2)納税通知書が送付されたら納税

基本的には、不動産取得から1年以内に不動産取得税の納税通知書が送られてきます。

納税通知書に記載されている金額を、都道府県税事務所や金融機関で支払いましょう。地域によってはクレジットカードでの支払いに対応している場合もあるため、ご希望の方は確認してみてください。

基本的には納税が必要な人にのみ納税通知書が送付されます。もし不動産取得税がかからないのに納税通知書が送られてきた場合は、通知書に記載されている問い合わせ先に、本当に納税が必要なのか確認しましょう。

不動産の相続にかかる他の税金

不動産取得税は原則、相続による不動産の取得には課税されません。

しかし、不動産登記にかかる登録免許税や、不動産を保有している人を対象にした固定資産税は課せられます。

相続で中古住宅を取得した場合の登録免許税と固定資産税についてまとめます。

登録免許税

不動産を相続した場合には不動産登記を行います。この登記のときに負担するのが登録免許税です。

登記は土地と建物それぞれ必要であるため、登録免許税もそれぞれにかかります。

ちなみに、相続で不動産を取得したときの不動産登記を「相続登記」といいます。

<登録免許税の計算式>

固定資産税評価額×税率

<登録免許税の税率>

不動産の取得方法登録免許税の税率
贈与2%
相続0.4%

<登録免許税の計算例>

固定資産税評価額が土地2,000万円、建物500万円、固定資産税評価額の合計額が2,500万円の場合。

◇贈与で不動産を取得した場合
2,500万円×2%=50万円
登録免許税額は50万円

◇相続で不動産を取得した場合
2,500万円×0.4%=10万円
登録免許税額は10万円

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相続登記の登録免許税を計算する|免税措置や計算例も解説

固定資産税

固定資産税は、不動産を保有している人に課せられる市町村税(東京都は都税)で、毎年負担します。また住んでいる地域によって(市街化区域内の不動産)は都市計画税も課税されます。

<固定資産税と都市計画税の計算式>

固定資産税
課税標準額×1.4%

都市計画税
課税標準額×0.3%

固定資産税の税率は原則1.4%ですが、市町村は必要に応じて税率を変更することができます。一方、都市計画税の税率は上限が決まっており、市町村は0.3%を超えない税率を定めています。

<住宅用地の特例>

住宅やアパートなどの居住用の家屋が建てられている宅地(住宅用地)については、固定資産税・都市計画税がそれぞれ軽減されます。

固定資産税都市計画税
200㎡以下の部分6分の13分の1
200㎡超の部分3分の13分の2

<固定資産税と都市計画税の計算例>

◇土地
課税標準額:1,800万円/面積200㎡
固定資産税 1,800万円×1/6×1.4%=4.2万円
都市計画税 1,800万円×1/3×0.3%=1.8万円
合計 6万円

◇建物
課税標準額:600万円
固定資産税 600万円×1.4%×1/2=4.2万円
都市計画税 600万円×0.3%=1.8万円
合計 6万円

よってこの場合、固定資産税と都市計画税を合計して、12万円を負担します。

なお、今回は新築住宅を例に計算しました。

建物の場合、新築に限り原則として3年間(認定長期優良住宅は5年間)、一定の面積分について固定資産税額が2分の1になります。

評価額や適用する特例などによって税額は異なります。不動産の贈与・相続を実行する前に、目安額を調べておくと安心です。

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相続人が相続で不動産を取得する場合、相続では不動産取得税はかからないものの、登録免許税や固定資産税などの税負担は発生します。

相続税や贈与税に強い税理士に依頼すれば、不動産の譲渡を贈与にするか相続にするか、最適な方法を提案してもらえるでしょう。相続に不安を感じたら、ぜひ一度税理士にご相談ください。

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