暦年贈与とは?読み方・意味・非課税枠の使い方をわかりやすく解説

暦年贈与は、生前贈与における贈与税の計算方法のひとつです。
しかし、「暦年贈与」とはどのような制度なのかよくわからないと感じている方は、多いのではないでしょうか。
そんな方に向けて、この記事では暦年贈与(暦年課税)の基本的な仕組みから、非課税枠の活用法・具体的なやり方・注意点まで、入門者にもわかりやすく解説します。
生前贈与による相続税対策を検討し始めた方、あるいは親や祖父母から毎年お金を受け取っている方は、ぜひこの記事を相続・贈与対策の出発点としてお役立てください。
生前贈与による相続税対策に関しては『生前贈与で相続税を安くする!対策7選と注意点を解説』の記事もご覧いただくと、より理解が深まります。
※本記事の情報は2026年3月時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
暦年贈与(暦年課税)とは?制度説明と読み方
暦年贈与(暦年課税)とは、1月1日~12月31日までの1年間(暦年)に贈与された財産から基礎控除額110万円を差し引いた残りに課税を行うという贈与税の課税方式のことです。
「暦年贈与」は「れきねんぞうよ」、「暦年課税」は「れきねんかぜい」と読みます。
この2つは同じ制度を指す言葉です。「暦年課税」が贈与税の課税方式としての正式な呼び方で、「暦年贈与」はその課税方式を使った贈与のことを指します。
暦年贈与の最大のポイントは、1年間に受け取った贈与財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税がかからないという点です。この110万円のことを「基礎控除額」と呼びます。
たとえば、親から年間100万円を受け取った場合、110万円以下なので贈与税は課されません。
これを毎年繰り返すことで、少しずつ財産を移転させながら、将来の相続税の負担を抑えることができます。この仕組みを活用するのが「暦年贈与」です。
暦年贈与の非課税枠と贈与税の計算方法
非課税枠である基礎控除額の110万円とは
暦年課税には、年間110万円の基礎控除があります。これは「1年間に受け取った贈与財産の合計が110万円以内なら、贈与税は一切かからない」というルールです。
注意したいのは、この110万円は「受贈者(もらった側)1人あたり」の金額だという点です。
たとえば、父から50万円、母から50万円を同じ年にもらっても、合計100万円なので贈与税はかかりません。
しかし、父から60万円、母から60万円をもらった場合は、合計120万円となり、110万円を超えた10万円部分に贈与税がかかります。
110万円を超えたときの贈与税の計算方法
110万円を超えた部分については、贈与税の対象となります。
贈与税を計算する際の税率は、直系尊属(父母・祖父母など)から18歳以上の子・孫への贈与である場合は「特例税率」を、それ以外の場合には「一般税率」を適用します。
それぞれの具体的な税率は以下の通りです。

例えば、父から18歳以上の子に対して年間で1000万円が贈与された場合の贈与税は、以下のように計算されます。
- 1000万-110万(基礎控除額)=890万
- 890万×30%-90万(特例税率から)=177万円
贈与を受けた子が、贈与税として177万円を支払う必要があります。
子や孫への贈与では、贈与を受けた本人が申告の必要性を理解していないケースも多いため、家族間でしっかり情報共有しておくことが大切です。
贈与税の計算方法について詳しく知りたい方は『贈与にかかる税金を計算|500万円を生前贈与するシミュレーションつき』の記事をご覧ください。
暦年贈与の対象者は誰でもOK
暦年贈与において、贈与する側(贈与者)と贈与する相手(受贈者)ともに特に制限はありません。
親子・祖父母と孫・兄弟姉妹・夫婦といった家族間だけでなく、赤の他人から贈与受けた場合も暦年贈与対象となるのです。
相続税対策の観点からは、将来の相続人となる子や孫への贈与を行うべきといえます。
ただし、後述する「相続時の持ち戻し加算ルール」の観点からは、相続人になる可能性がある人からの贈与では特有の問題が生じる点に注意が必要です。
未成年者への贈与は?
未成年者も受贈者になれます。
ただし、未成年者への贈与は、通常は親権者(法定代理人)が管理します。
親権者が贈与を受けた事実をしっかり管理し、子ども自身の財産として扱うことが重要です。
暦年贈与は相続税の対象となる(2024年改正)
相続開始前の一定期間内における贈与は相続税の対象
暦年贈与で毎年財産を移しても、相続開始前の一定期間内になされた贈与財産については、相続財産に持戻して相続税が計算されます。
これが「生前贈与の持ち戻し加算(生前贈与加算)」と呼ばれるルールです。
この際には、年間110万円の基礎控除額の範囲の贈与についても、持戻しの対象となります。
相続税の対象となる贈与は3年から7年へ:2024年以降の改正内容
2024年1月1日以降の贈与から、生前贈与加算ルールが改正され、加算される贈与の対象範囲が拡大していくこととなりました。
| 改正前(〜2023年12月31日の贈与) | 改正後(2024年1月1日〜の贈与) |
|---|---|
| 相続開始前3年以内の贈与を相続財産に加算 | 相続開始前7年以内の贈与を相続財産に加算(段階的に延長) |
加算の対象となるのは、原則として相続や遺贈によって財産を取得した相続人等が受けた贈与です。
つまり、亡くなる直前の贈与については、暦年贈与を行っていても相続税の計算に含まれてしまう可能性があります。
ただし、延長された期間(相続開始前3年超7年以内)の贈与については、加算対象額から100万円を控除する仕組みがあります(相続開始前3年以内の贈与にはこの控除は適用されません)。
この改正は段階的に適用されるため、具体的な計算には注意が必要です。
贈与税の課税方式は暦年贈与以外にもある
もう一つの方式である相続時精算課税制度との違い
日本の贈与税には、課税方式として暦年贈与の他に、相続時精算課税制度というものがあります。
相続時精算課税制度とは、贈与の時点での贈与税負担を大幅に抑えながら財産を移しつつ、贈与した財産は将来の相続のときにまとめて相続税として計算し直す仕組みの贈与です。
暦年課税と相続時精算課税制度の違いは以下のようになります。

まとまった金額を一度に移転したい場合や、値上がりが見込まれる資産(不動産・株式など)を贈与したい場合には、相続時精算課税制度が有利になることがあります。
相続時精算課税制度を利用する場合は申請が必要
暦年課税は、特に手続きをしなければ自動的に適用される課税方式です。
そのため、相続時精算課税制度を利用する場合にはその旨を申請する必要があります。
ただし、一度相続時精算課税を選択した贈与者からの贈与については、その後は暦年課税に戻すことができません。
2つの制度の詳しい比較や使い分けについては、『相続時精算課税制度と暦年贈与は併用できない|違いや選び方も解説』の記事で詳しく解説しています。
暦年課税による贈与をすべきケース
以下のようなケースでは、暦年課税による贈与を行うことが効果的といえます。
- 法定相続人以外への贈与
- 贈与者の年齢が若い
- 複数人への贈与
法定相続人以外に贈与するケース
法定相続人以外へ贈与を行っても生前贈与加算の対象とならないため、暦年贈与が活用できるケースといえます。
もっとも、遺贈による場合は対象となるため、生前の贈与を行いましょう。
例えば、子どもが存命であるうちに孫やひ孫に贈与を行えば、加算の心配をせずに暦年贈与が可能です。
また、子どもの配偶者や事実婚のパートナーなどへの贈与も有効でしょう。
ただし、孫を養子縁組していたり、子どもが亡くなっているために孫が代襲相続人となっているケースでは生前贈与加算の対象となるため注意が必要です。
贈与者の年齢が若いケース
贈与を開始する年齢が若ければ、生前贈与加算の対象期間の対象外となる贈与が長期に可能となるため、有利といえます。
若いうちから毎年110万円の基礎控除を活用して少しずつ資産を移転を行い、相続税の対象となる財産を減らしていくことが可能でしょう。
複数の人に贈与するケース
暦年贈与では贈与の相手に制限がなく、年間110万円の基礎控除額は受贈者ごとに適用されます。
そのため、複数の人に贈与する場合には、人数分だけ基礎控除枠を有効に活用しつつ贈与を行うことが可能です。
たとえば、贈与相手が3人いる場合には、それぞれ110万円ずつ、合計330万円を贈与税がかからずに贈与することができます。
贈与相手が生前贈与加算の対象となる場合には、早めに贈与を開始しておきましょう。
暦年贈与の具体的なやり方・実践手順
「制度はわかったけれど、実際にどうすればいいの?」という方のために、暦年贈与の具体的な流れをステップごとに説明します。
ステップ1:贈与契約書を作成する
贈与は口頭でも成立しますが、後から「贈与があった事実」を証明するためには、贈与契約書を書面で残しておくことが非常に重要です。
贈与契約書には以下の内容を記載します。
- 贈与者(あげる人)の氏名・住所
- 受贈者(もらう人)の氏名・住所
- 贈与する財産の内容と金額
- 贈与した年月日
- 双方の署名・捺印
贈与者と受贈者の両者が署名・捺印した書類を、それぞれ1部ずつ保管しましょう。
契約書の信頼性を高めたい場合は、確定日付を取得することをおすすめします。
確定日付とは、その日に書類が存在していたことを証明するものであり、公証人役場で取得することが可能です。
ステップ2:贈与者の口座から受贈者の口座に振り込む
現金を手渡しするのではなく、銀行振込で贈与するのが基本です。振込記録が通帳や明細に残るため、「贈与が実際に行われた」ことを客観的に証明できます。
- 贈与者名義の口座から振り込む
- 受贈者名義の口座で受け取る
- 受贈者が自分で管理・使用できる口座を使う
ステップ3:受贈者が自分でお金を管理する
贈与を受けたお金は、受贈者本人が自由に使える状態にしておくことが重要です。
贈与したはずのお金を贈与者が引き続き管理していると、税務署から「名義預金(名ばかりの贈与)」と判断されるリスクがあります。
ステップ4:必要であれば贈与税の申告をする
贈与を受けた金額が年間110万円を超えた場合は、贈与税の申告が必要です。
贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間に、受贈者の住所を管轄している税務署に申告を行ってください。
贈与税の申告方法については『贈与税の申告方法|必要書類や申告書の書き方、納付方法を解説』の記事で詳しく知ることが可能です。
贈与税の申告は必要?確定申告との違いは?
「確定申告」と「贈与税の申告」は別物
よくある誤解として、「贈与を受けたら確定申告が必要なのでは?」というものがあります。
しかし、贈与税の申告と、所得税の確定申告はまったく別の手続きです。
| 申告の種類 | 対象 | 申告書の種類 | 申告期間 |
|---|---|---|---|
| 贈与税の申告 | 1年間に受けた贈与の合計が110万円を超えた場合 | 贈与税申告書 | 翌年2月1日〜3月15日(期限が閉庁日の場合は翌開庁日) |
| 所得税の確定申告 | 給与所得以外の収入・控除の申請など | 確定申告書 | 翌年2月16日〜3月15日 |
贈与を受けても所得税の確定申告をする必要はなく、必要であれば「贈与税の申告書」を別途提出します。
贈与税の申告が必要なケース・不要なケース
申告が不要なケース(主なもの)
- 1年間に受け取った贈与の合計が110万円以下の場合
申告が必要なケース
- 1年間に受け取った贈与の合計が110万円を超えた場合
- 夫婦間の婚姻期間20年以上の居住用不動産の贈与で贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)を利用する場合(贈与税額がゼロであっても申告が適用要件のため必要)
申告手続きの詳細(申告書の書き方・提出先・添付書類など)については、別の記事で詳しく解説しています。
贈与税の申告が不要なケースを詳しく知りたい方は『贈与税が申告不要なケースとは?非課税でも申告が必要な場合も解説』の記事をご覧ください。
暦年贈与の注意点:失敗しないための5つのポイント
注意点①:名義預金と認定されるリスク
「名義預金(めいぎよきん)」とは、名義は家族になっているけれど、実態は被相続人が管理・支配していた預金口座のことです。
たとえば、親が子ども名義の通帳を作り、毎年お金を積み立てていても、子どもがその存在を知らず、通帳も印鑑も親が管理しているような場合、税務署はこれを「贈与ではない」と判断し、相続財産に含めることがあります。
名義預金と認定されないためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 贈与契約書を毎年作成する
- 振込で贈与し、記録を残す
- 受贈者が自分で通帳・印鑑を管理する
- 受贈者が実際にお金を使う
名義預金が贈与税・相続税で問題になるリスクと対策については『名義預金は贈与税・相続税がかかる?名義預金の認定の回避策も解説』の記事でより詳しく知ることが可能です。
注意点②:連年贈与が定期贈与と見なされるリスク
「連年贈与」とは、毎年贈与を行うことです。
年間110万円の基礎控除額があることから、毎年110万円以下の贈与を繰り返し行うという連年贈与により、贈与税を避けつつ相続税対策するということが考えられるでしょう。
しかし、毎年同じ金額を、同じ時期に、同じ相手に贈与し続けると、税務署から「最初から一定額を贈与する約束があった(定期贈与)」と見なされる場合があります。
たとえば「10年間にわたって毎年100万円を贈与する」という約束をした場合、これは「1,000万円の贈与」と見なされ、1000万円に対して一気に贈与税が課せられる可能性があるのです。
これを防ぐためには、次のような工夫が有効になります。
- 毎年、金額・時期を少し変える
- 毎年、新しい贈与契約書を作成する(前年と同じ内容の使い回しはNG)
- 毎年の贈与が「独立した贈与である」ことを意識する
注意点③:相続時精算課税制度を選択すると暦年課税に戻れない
一度「相続時精算課税制度」を選択した贈与者への贈与は、その後は暦年課税に戻すことができません。
どちらの制度を選ぶかは慎重に検討する必要があります。
不安な方は、専門家である税理士に相談して判断を行うと良いでしょう。
注意点④:贈与が成立していないと相続財産に含まれる
贈与が有効に成立するには、贈与者と受贈者の両方の合意が必要です。
一方的に「あなたにあげる」と言っただけでは、法的に有効な贈与とはなりません。
贈与契約書の取り交わし、資金の移動、受贈者による管理と使用、これらをしっかり行うことで初めて「贈与が成立した」と認められます。
注意点⑤:併用できる減税制度を利用すべき
暦年贈与と併用することができる、他の減税制度がないかどうかを確認しましょう。
以下の制度は暦年贈与と併用することが可能です。
ただし、それぞれ要件や期限があることがありますので、注意してください。
- 贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)
- 住宅取得等資金贈与の特例
- 教育資金の一括贈与の特例
- 結婚・子育て資金の一括贈与の特例
贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)
婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産の取得資金の贈与をする場合、最高2,000万円の控除が可能です。
この控除制度は、婚姻期間20年以上という適用要件から「おしどり贈与」と呼ばれています。
住宅取得等資金贈与の特例
父母や祖父母から、18歳以上の子や孫に、住宅の新築・取得等のための資金を贈与する場合、一定の金額(省エネ等住宅は1,000万円、一般住宅は500万円)まで贈与税が非課税となります。
受贈者が贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下(ただし、住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)であることや、贈与を受けた年の翌年の3月15日までに住宅用家屋の新築等を行うといった要件が存在します。
また、現行の適用期限は令和8年12月31日までとなっているため注意してください。
住宅取得等資金贈与の特例について詳しく知りたい方は『住宅購入資金の生前贈与|非課税制度の要件や手続き、注意点を解説』の記事をご覧ください。
教育資金の一括贈与の特例
父母や祖父母から30歳未満の子や孫に、教育資金を一括贈与する場合、1,500万円(学校以外への支払はその内500万円)まで贈与税が非課税となります。
この適用を受けるには「教育資金管理契約」の締結が必要です。
現行の適用期限は令和8年3月31日までとなっているため注意してください。
教育資金の一括贈与の特例に関して詳しく知りたい方は『教育資金の贈与に相続税はかかる?相続税対策になるって本当?』の記事をご覧ください。
結婚・子育て資金の一括贈与の特例
父母や祖父母から18歳以上の50歳未満の子や孫に、結婚・子育て資金を一括贈与する場合は、1,000万円(結婚費用はその内300万円)まで贈与税が非課税となります。
この適用を受けるには結婚・子育て資金管理契約の締結が必要です。
現行の適用期限は令和9年3月31日までとなっています。
結婚・子育て資金の一括贈与の特例について詳しく知りたい方は『子育て・結婚資金は1,000万円まで非課税|条件や注意点、手続きは?』の記事をご覧ください。
まとめ:暦年贈与を正しく理解して生前対策のスタートを
この記事でお伝えした暦年贈与のポイントを整理しておきましょう。
- 「暦年贈与」「暦年課税」は同じ意味で、読み方はそれぞれ「れきねんぞうよ」「れきねんかぜい」
- 毎年1月1日〜12月31日の1年単位で、年間110万円まで非課税で贈与できる
- 贈与できる相手に制限はなく、誰に対しても暦年贈与は可能
- 有効な贈与の実態を残すために贈与契約書の作成・銀行振込・受贈者による管理が不可欠
- 贈与税の申告は確定申告とは別で、110万円超の場合は翌年3月15日までに贈与税申告書を提出
- 2024年以降、相続開始前7年以内の一定の贈与は相続財産に加算される(段階的適用・改正後のルール)
- 名義預金・定期贈与と認定されないよう、毎年の手続きを丁寧に行うことが重要
暦年贈与は、正しく継続すれば相続税の節税につながる、非常に有効な生前対策です。ただし、手続きを疎かにすると思わぬ落とし穴があります。
自分のケースでどのように活用すればよいかわからない場合は、専門家である税理士に相談することをおすすめします。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士