結婚・子育て資金の一括贈与は1,000万円まで非課税|適用条件も解説

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子育て資金の贈与

子どもや孫に、結婚・子育てのための資金を一括贈与する場合、1,000万円まで贈与税が非課税になります。

子供や孫の結婚・子育てを応援したい方にとっては非常に魅力的な非課税制度ですが、挙式費用に使うのは認められるのに、結婚指輪の購入資金にするのは認められないなど、いくつか複雑な条件があります。

そこでこの記事では、結婚・子育て資金の一括贈与が非課税になる条件や、制度を利用するまでの手続き、契約終了時にかかる税金について解説します。

贈与をする人だけでなく、贈与を受ける人にとっても役に立つ情報をまとめていますので、ぜひ最後までお読みください。

結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度とは?

両親や祖父母の資産を若年層に移動しやすくし、経済的な不安を抱える子どもや孫の結婚・出産・子育てを支援することを目的に設けられた制度です。

結婚・子育て資金の一括贈与は1,000万円まで非課税

結婚・子育て資金の一括贈与は、受贈者(贈与される人)1人あたり1,000万円が非課税となります。この1,000万円のうち、結婚資金に充てられるのは300万円までです。

ただし、非課税制度が適用されるのは、直系尊属(父母や祖父母)から、18歳以上50歳未満の直系卑属(子や孫)への一括贈与に限ります。また、受贈者の前年の所得が1,000万円以下でなければなりません。

贈与者に年齢要件はありませんが、受贈者は年齢要件に加えて所得要件を満たしている必要があるため注意してください。

なお、令和5年度の税制改正で、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度の適用期限は2025年3月31日まで延長されました。

一括でなければ制度を利用しなくても非課税

実は通常の贈与においても、父母や祖父母などの扶養義務者が、結婚・子育ての費用に充てるために、通常必要と認められる範囲内で子や孫に行う贈与には、原則として贈与税が課税されません。

ただし、通常の贈与で非課税となる結婚・子育ての費用は、必要な都度、直接結婚や子育ての費用に充てるためのものに限られるので、多額の資金をまとめて贈与する場合には、贈与税の課税対象になります。

結婚・子育て資金として贈与したい金額や頻度を考えて、非課税制度を利用するのか、通常の贈与で足りるのか判断しましょう。

結婚・子育て資金の一括贈与で非課税になる使い道

非課税制度の対象となる結婚・子育て資金は、結婚に際して支払う金銭と、妊娠や出産および育児に際して支払う金銭にわけられます。

前述したように、贈与税が非課税になるのは、結婚資金と子育て資金の合計が1,000万円まで、そのうち結婚資金として使えるのが300万円までです。

ただし、この範囲の中でも、結婚・子育て資金として適切でないとされている使い方をしてしまうと、贈与税の課税対象になります。

結婚資金と子育て資金、それぞれ非課税制度が適用される使い道と、適用されない使い道を紹介します。

結婚資金として適切な使い道

結婚資金として適切であり、非課税制度の対象となる費用は以下の通りです。

【非課税制度の対象となる費用】

  • 挙式費用
  • 衣装代等の婚礼費用
  • 結婚を機に新たに賃借した物件の家賃
  • 敷金等の新居または転居費用

なお、挙式費用や衣装代等の婚礼費用は、婚姻の日の1年前の日以後に支払われるものに限ります。

次に、結婚資金として不適切で、非課税制度の対象とならない費用は以下の通りです。

【非課税制度の対象とならない費用】

  • 結納式の費用
  • 結婚情報サービスの利用代金
  • 結婚コンサルサービスの費用
  • 結婚指輪購入の費用
  • 新婚旅行の費用
  • エステ代
  • 駐車場代、光熱費、家具家電の購入費用

これらのような、非課税制度の対象とならない使い方をしてしまうと、非課税上限の300万円に達していなくても、贈与税の課税対象となってしまうため注意してください。

子育て資金として適切な使い道

子育て資金として適切であり、非課税制度の対象となる費用は以下の通りです。

【非課税制度の対象となる費用】

  • 不妊治療・妊婦健診に要する費用
  • 分娩費等・産後ケアに要する費用
  • 出産にかかる入院費、検査費、薬剤料等
  • 子の医療費
  • 幼稚園・保育所等の保育料

次に、子育て資金として不適切で、非課税制度の対象とならない費用は以下の通りです。

【非課税制度の対象とならない費用】

  • 妊娠が原因でない疾患の治療費
  • 治療を目的とした遠方への移動費、宿泊費
  • 処方箋に基づかない医薬品代

結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度の手続き

結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度を利用するためには、資金贈与専用の口座を開設し、その口座で贈与を行います。

以下で、資金贈与専用の口座の開設から、受贈者が資金を受け取るまでの手続きの流れを解説します。

①受贈者が贈与専用の口座を開設する

結婚・子育て資金の一括贈与の手続きは、すべて金融機関を通して行います。

まず、受贈者が金融機関と「結婚・子育て資金管理契約」を締結し、受贈者名義の資金贈与専用の「結婚・子育て資金口座」を開設します。

②結婚・子育て資金非課税申告書を提出する

資金の預入れをする日までに「結婚・子育て資金非課税申告書」と添付書類を、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出します。

申告書の提出は、口座を開設した金融機関を経由して行います。

申告書を提出する際に、添付する書類は以下の通りです。

【添付する書類】

  • 贈与契約書
  • 受贈者の戸籍の謄本または抄本
  • 受贈者の源泉徴収票または確定申告の控え

結婚・子育て資金非課税申告書のダウンロードはこちらから

国税庁:結婚・子育て資金非課税申告の手続

③贈与者が受贈者の口座に入金する

「結婚・子育て資金非課税申告書」と添付書類を提出したら、いよいよ贈与者が資金贈与専用の口座に入金します。

結婚・子育て資金は、税務署長に提出した贈与契約書に記載されている金額を一括で入金します。

④受贈者が口座から資金を引き出す

受贈者が資金贈与専用の口座から、払出しや結婚・子育て資金の支払いをおこなった場合には、口座の開設時に選択した払出し方法に応じて、領収書を提出期限までに金融機関に提出する必要があります。

領収書の提出期限は、選択した払出し方法により変わります。

費用の支払い後に口座から引き落とす場合
領収書記載日から1年後まで

支払いと引き落としの順序を問わない場合
領収書記載日の翌年の3月15日まで

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結婚・子育て資金管理契約の終わり方

結婚・子育て資金管理契約が終了するのは、以下の3ケースに該当する場合です。

  • 受贈者が50歳に達した場合
  • 受贈者が死亡した場合
  • 口座の残高がゼロになり、かつ契約を終了させる合意があった場合

契約終了時の残額に贈与税がかかる

結婚・子育て資金管理契約について、受贈者の死亡以外の事由で契約が終了した場合には、資金贈与専用の口座にある残額が、贈与税の課税対象になります。

その残額はその契約終了年の贈与税の課税価格に算入されます。

その結果、その年の贈与税の課税価格の合計額が暦年課税の基礎控除額を超えるなどの場合には贈与税が課税されますので、贈与税の申告期限までに贈与税の申告をしなければなりません。

また、本来、直系尊属(父母や祖父母)から18歳以上の者への贈与は特例税率で贈与税が課税されます。

しかし残額のうち拠出時期が2023年4月1日以降の部分については、特例税率よりも高い、一般税率で贈与税が課税されます。

そのため、契約終了時までに贈与された資金を使いきれるよう、必要額を計算してから贈与額を決めるようにしましょう。

なお、受贈者の死亡により契約が終了した場合には、残額があっても贈与税は課税されません。

贈与者が死亡すると残額に相続税がかかる

贈与者が契約期間中に死亡した場合、資金贈与専用の口座内に残額があるときには、相続または遺贈により取得したものとみなされて、相続税の課税価格に加算されます。

その結果、相続税の課税価格の合計額が、相続税の基礎控除額を超える場合には相続税が課税されることになりますので、相続税の申告期限までに相続税の申告をしなければなりません。

また、2021年4月1日以降に取得した結婚・子育て資金の残額については、受贈者が贈与者の子である場合を除いて相続税額の2割加算の対象になります。

結婚・子育て資金の一括贈与についてよくある質問

Q1. 結婚・子育て資金の一括贈与は相続税対策になる?

A. 結婚・子育て資金の一括贈与は、相続税対策として有効な生前贈与です。

生前贈与とは、相続税の課税対象となる財産を減らして、相続税の負担を軽減する目的で、保有する財産を生前に子や孫に移転するというものです。

結婚・子育て資金の一括贈与については、本来相続で受け渡すはずの現金を、事前に非課税で贈与することができるため、有効な相続税対策といえます。

また、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度は、暦年課税の基礎控除や相続時精算課税の特別控除のほかに、住宅取得等資金の贈与の非課税、教育資金の贈与の非課税とも併用することができますので、非常に活用しやすいといえます。

Q2. 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度の期間はまた延長される?

A. 2025年3月末以降の延長は確定していません。(2024年3月7日現在)

前述したように、令和5年度の税制改正で、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度の適用期限が2025年3月31日まで延長されました。

この制度は過去にも何度か適用期間が延長されており、2025年3月31日以降も期間延長によって、制度が適用できる可能性はあります。

ただし、令和5年度税制改正大綱には、この制度の利用件数が低迷している等の状況にあり、次の適用期限到来時には、利用件数や利用実態を踏まえ、制度の廃止も含め改めて検討する旨が記載されています。

したがって、2025年3月31日をもって制度自体が廃止されることも予想されますので、ご利用の際には早めに検討していただくと良いかもしれません。 

相続税の相続税の無料相談

結婚・子育て資金の贈与など生前贈与のご相談は税理士へ

このように、結婚・子育て資金の一括贈与は一般的には相続税の節税対策としても有効な方法ですが、実際に利用するにあたっては、適用要件などを満たしているかなどを判断するとともに、その手続きや注意点なども把握しておかなければなりません。

また、結婚・子育て資金の贈与などの生前贈与の非課税枠を利用すれば贈与税はかかりませんが、生前贈与を相続税の節税対策として活用するときには、相続税と合わせた納税額全体で節税につながるかどうかを確認しなければなりません。

そのため、贈与税だけでなく相続税の負担も検討したうえで生前贈与の非課税枠を適切に活用するためにも、早めに税理士に相談することをおすすめいたします。

税理士は、税金の申告など個別具体的な税務相談に応じることができる唯一の専門家です。税理士は贈与税の申告のサポートや代行にとどまらず、節税や相続などについても有効なアドバイスを提供してくれます。

また、贈与を受けたものの税金がいくらかかるかわからないとお困りの方や贈与税の手続きに不安がある方も、お気軽に税理士にお問い合わせください。

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