贈与にかかる税金を計算|500万円を生前贈与するシミュレーションつき

暦年課税では、1年間にもらった財産の合計から基礎控除110万円を差し引いた金額に、税率をかけて贈与税を計算します。
ただし、税率は贈与者(あげる人)との関係だけでなく受贈者(もらう人)の年齢によっても異なります。贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の人が父母や祖父母から贈与を受けた場合は特例税率、それ以外の場合は一般税率が適用されます。
適用する税率を間違えて申告すると、納税額が不足して追徴課税を受けるおそれがあります。逆に多く払いすぎた場合でも、税務署から還付の連絡が来ることはありません。
この記事では、贈与税の計算式と税率の速算表の見方を解説したうえで、500万円を生前贈与された場合の贈与税額の計算方法を、3パターンのシミュレーションと共に解説します。
※本記事の情報は2026年9月時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
贈与税計算の基礎知識
贈与税の課税方式
贈与税の課税方式には、暦年課税と相続時精算課税の2つがあります。
暦年課税は特に手続きをしなくても自動的に適用され、基礎控除年110万円を超えた場合に申告が必要になります。
相続時精算課税は一定の要件のもとで受贈者が選択届出をした場合にのみ適用されます。同様に年110万円の基礎控除があり、110万円以下の贈与なら申告は不要ですが、制度の選択には別途届出書の提出が必要です。
本記事では、暦年課税での贈与税の計算方法を解説します。
暦年課税方式の概要
暦年課税では、受け取る人(受贈者)ごとに、1月1日から12月31日までの1年間で110万円の基礎控除が設けられています。
1年間で受け取った贈与額が110万円以下であれば、贈与税はかからず、申告も不要です。110万円を超えた場合は、その超えた部分に対してのみ贈与税がかかります。
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贈与税の計算方法
暦年課税での贈与税の計算式
前述のとおり、暦年課税では年間110万円の基礎控除が設けられています。1年間で受け取った贈与額の合計から基礎控除を差し引き、その超えた部分に税率をかけて贈与税を計算します。
暦年課税での贈与税の計算式
①贈与された財産の合計-基礎控除額110万円=基礎控除後の課税価格
②基礎控除後の課税価格×税率-控除額=贈与税額
贈与税の税率と控除額については、以下で詳しく解説します。
特例税率と一般税率
暦年課税の税率には、特例税率と一般税率の2種類があります。
- 特例税率:贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の受贈者(受け取る人)が、直系尊属(父母や祖父母)から贈与を受けた場合に適用される税率
- 一般税率:特例税率以外の贈与に適用される税率。夫婦間の贈与や兄弟間の贈与、18歳未満の子どもへの贈与などが該当
受贈者の年齢は「贈与を受けた日」ではなく「贈与を受けた年の1月1日」時点で判定される点に注意が必要です。たとえば1月1日時点で17歳でも、その年の途中で18歳になったあとに直系尊属から贈与を受けた場合は、一般税率が適用されます
各税率と控除額は、以下の速算表を参照してください。
贈与税の税率と控除額の速算表
特例税率(特例贈与財産用)
父母・祖父母など(直系尊属)から、18歳以上の子・孫への贈与で適用されます。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | − |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
一般税率(一般贈与財産用)
特例税率の要件に当てはまらない場合に適用されます(兄弟間、夫婦間、18歳未満の子への贈与など)。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | − |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
生前贈与500万円の贈与税計算シミュレーション
同じ贈与額で、税率の適用方法が異なる計3パターンの贈与税の計算方法を確認していきましょう。
①特例税率のみの計算|子が親から生前贈与を受けた場合
前提条件
- 受贈者:25歳の子
(贈与を受けた年の1月1日時点) - 贈与者:父
(直系尊属) - 贈与額:500万円
①贈与額500万円-基礎控除110万円=課税価格390万円
25歳の子が父から贈与を受けた場合は、特例贈与が適用されるため、贈与税の税率と控除額の速算表から税率が15%、控除額が10万円とわかります。
②課税価格390万円×税率15%-控除額10万円=贈与税額48.5万円
25歳の子が父から500万円を贈与された場合の贈与税は、48.5万円となりました。
②一般税率のみの計算|孫が祖父から生前贈与を受けた場合
前提条件
・受贈者:12歳の孫(贈与を受けた年の1月1日時点)
・贈与者:祖父(直系尊属)
・贈与額:500万円
①贈与額500万円-基礎控除110万円=課税価格390万円
祖父は直系尊属ですが、12歳の孫は贈与を受けた年の1月1日において18歳未満のため、特例税率の対象外となり、一般税率が適用されます。速算表から、税率が20%、控除額が25万円とわかります。
②課税価格390万円×税率20%-控除額25万円=贈与税額53万円
12歳の孫が祖父から500万円を贈与された場合の贈与税は、53万円となりました。
③特例税率と一般税率を併用した計算|配偶者と親から贈与を受けた場合
- 受贈者:30歳の妻
- 贈与者:夫、実父
- 贈与額:合計500万円
- 夫から200万円
- 実父から300万円
夫からの贈与は一般税率、実父からの贈与は特例税率の対象となり、一般贈与財産と特例贈与財産の両方を取得したケースにあたります。まず、贈与額の合計から基礎控除を差し引きます。
①贈与額500万円-基礎控除110万円=課税価格390万円
この課税価格390万円に対して、適用される税率ごとに税額を分けて求め、贈与税額を算出します。
②一般税率分:
贈与額500万円全てが一般税率の対象と仮定して税額を求めた後に、実際に受け取った200万円分に対応する税額を求めます。
課税価格390万円×税率20%-控除額25万円=仮の税額53万円
仮の税額53万円×(200万円/500万円)=21.2万円
一般税率が適用された贈与税額は21.2万円とわかります。
③特例税率分:
贈与額500万円全てが特例税率の対象と仮定して税額を求めた後に、実際に受け取った300万円分に対応する税額を求めます。
課税価格390万円×税率15%-控除額10万円=仮の税額48.5万円
仮の税額48.5万円×(300万円/500万円)=29.1万円
特例税率が適用された贈与税額は29.1万円とわかります。
④21.2万円+29.1万円=贈与税額50.3万円
30歳の妻が、夫から200万円、実父から300万円の贈与を受けた場合の贈与税は、50.3万円となりました。
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贈与税を計算するときのポイント
特例税率と一般税率を間違えないようにする
特例税率が適用されるのは、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の受贈者が、直系尊属(父母や祖父母)から贈与を受けた場合です。
この直系尊属には、受贈者自身の父母・祖父母のみが含まれ、配偶者の父母(義父母)は含まれません。そのため、結婚後に配偶者の親から住宅資金などの援助を受けた場合は、直系尊属からの贈与にはあたらず、一般税率が適用されます。
贈与税を必要以上に多く納税してしまった場合でも、税務署から還付の連絡が来ることはありません。また、少なく納税した場合には、追加で過少申告加算税などのペナルティが課せられるおそれがあります。
もし贈与税の計算に不安がある方は、一度税理士に相談してみてください。
金銭以外の贈与を受けた場合は相続税評価額で計算する
現金や預貯金を贈与された場合は、その金額がそのまま財産の評価額になり、贈与税の計算に使えます。
しかし、土地や建物、株式など、金額の算出が難しい財産を贈与された場合は、原則として相続税と共通する財産評価のルールに基づいて評価額を算出します。ただし、負担付贈与などの場合は、通常の取引価額に相当する金額で評価することがあります。
以下で、いくつかメジャーな財産の評価額の計算方法を紹介します。
建物の評価額の計算方法
家屋の相続税評価額は「固定資産税評価額×1.0」で算出します。
固定資産税評価額とは、固定資産税を求めるときに使われる家屋や土地の評価額のことをいいます。毎年市町村から送られてくる固定資産税課税明細書、もしくは市町村役場で取得できる名寄帳に記載されています。
建物の評価額の計算方法について、詳しくは以下の記事で解説しています。
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土地の評価額の計算方法
土地の評価額は、路線価が定められている地域かどうかで計算方法が分かれます。
路線価がある地域では「路線価方式」(路線価を土地の形状などに応じて補正した金額×土地の面積)、ない地域では「倍率方式」(固定資産税評価額×評価倍率)で算出します。
土地の評価額の計算方法について、詳しくは以下の記事で解説しています。
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有価証券(株式)の評価額の計算方法
上場株式の評価額は、「1株あたりの評価額×保有株式数」で算出します。
1株あたりの評価額は、以下の4つのうち一番金額が低いものを用います。
- 贈与があった日の終値
- 贈与があった月の毎日の終値の平均額
- 贈与があった月の前月の毎日の終値の平均
- 贈与があった月の前々月の毎日の終値の平均額
※相続税の評価の場合は「相続があった日」「相続があった月」の終値で評価しますが、贈与税の場合は「贈与があった日」「贈与があった月」と読み替えて計算します。
ただし、借入金などとあわせて贈与を受けた場合(負担付贈与)や、個人間で対価を伴う取引によって取得した場合は、この4つから選ぶことができず、贈与があった日の終値のみで評価します。
なお、非上場株式(自社株など)の評価方法は、会社の規模や株主の立場によって異なります。
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贈与税が非課税になる制度がある
贈与された資金を特定の目的で使う場合、110万円を超えても贈与税が一定額非課税になる制度があります。
たとえば、婚姻期間が20年以上の夫婦間で住宅または住宅購入資金を贈与する場合は、2,000万円まで非課税になります(贈与税の配偶者控除)。
贈与税の非課税制度は相続税対策にも有効です。使用目的がはっきりしている資金を贈与する場合は、利用できる非課税制度がないか、『生前贈与の非課税はいくらまで?年間110万円の基礎控除と特例制度を解説』で確認してみてください。
贈与税の計算に不安がある場合は税理士に相談
ここまで暦年課税での贈与税の計算方法を解説してきました。
税率の判定や、金銭以外の財産の評価、非課税制度の適用可否など、間違えやすいポイントも多いです。
誤って贈与税を払い過ぎてしまっても、税務署から還付できる旨の連絡はもらえません。また、納税額が足りない場合には、追徴課税を受ける可能性もあります。
正しく納税して無用なトラブルを避けるためにも、贈与税の計算について不安を抱えている方は、ぜひ一度税理士にご相談ください。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士