住宅の生前贈与は非課税にできる?資金贈与の非課税制度と注意点

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住宅購入の生前贈与

住宅の生前贈与では、父母・祖父母から住宅購入資金の贈与を受けた場合、省エネ等住宅は1,000万円、一般住宅は500万円まで贈与税が非課税となる制度があります(租税特別措置法第70条の2)。また、婚姻期間20年以上の夫婦間では、居住用不動産またはその購入資金の贈与について、2,000万円まで贈与税の配偶者控除を受けられます。

一方で、贈与税が非課税でも、不動産取得税や登録免許税などがかかる場合があります。また、将来実家を相続する際には、マイホームを所有していることで相続税の特例を利用できず、不利になるケースもあります。

この記事では、住宅購入資金の生前贈与で利用できる2つの非課税制度の要件や手続き、注意点に加え、住宅そのものを生前贈与する場合にかかる税金についてもわかりやすく解説します。

住宅購入資金の生前贈与(1)子・孫への贈与での非課税制度

まずは、子・孫への住宅購入資金の生前贈与で使える非課税制度を紹介します。

最大1,000万円まで非課税|他の控除とも併用可

直系尊属(父母・祖父母)から、居住用住宅の新築や既存住宅の購入・増築などのための資金を贈与された場合には、以下の金額までが非課税です。

  • 省エネ等住宅:1,000万円
  • 一般住宅:500万円

※省エネ等住宅とは、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置において定められた省エネ性能・耐震性能・バリアフリー性能などの基準を満たす住宅をいいます。新築住宅と中古住宅では適用される基準が一部異なります。

  • 断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上である
  • 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物である
  • 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上である

この非課税制度は正式には「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」といいます(以下、住宅取得資金の非課税特例と表記します)。

住宅取得資金の非課税特例は、年間110万円の基礎控除や相続時精算課税の特別控除2,500万円とも併用可能です。

なお、現行制度では令和6年1月1日から令和8年12月31日までに受けた贈与が対象です(国税庁「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」)。延長の有無は現時点で未定です。

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「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」の適用条件

住宅取得資金の非課税特例が適用されるには、受贈者と対象となる住宅がそれぞれ条件を満たしている必要があります。

まず、受贈者の主な要件はこちらです。

  1. 贈与者の直系卑属(子や孫など)であること
  2. 贈与を受けたときに、原則として日本国内に住所を有していること
  3. 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること
  4. 贈与を受けた年の合計所得金額が原則2,000万円以下であること
  5. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用家屋の新築等を行うこと
  6. 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること、または、同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること

次に、対象になる住宅の主な要件は以下のとおりです。

  1. 登記簿上の床面積が50㎡以上240㎡以下であること(ただし、贈与を受けた年の所得金額が1,000万円以下の場合は床面積が40㎡から適用可能)
  2. 床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であること
  3. 既存住宅の場合は、新耐震基準に適合している住宅用家屋であること(なお、登記簿上の建築日付が1982年1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合している住宅用家屋とみなされる)

住宅購入資金の生前贈与(2)夫婦間の贈与での非課税制度

続いて、夫婦間での住宅購入資金の生前贈与で使える非課税制度を見ていきましょう。

2,000万円まで非課税|基礎控除とも併用可

20年以上の婚姻期間がある夫婦間で、居住用不動産、または居住用不動産の取得資金を贈与された場合には、贈与税が2,000万円まで非課税になります。

この非課税制度は正式には「贈与税の配偶者控除の特例」といい、通称では「おしどり贈与」とも呼ばれています(以下、配偶者の非課税制度と表記します)。

配偶者の非課税制度は年間110万円の基礎控除と併用できます。

「贈与税の配偶者控除の特例」の適用条件

配偶者の非課税制度の適用を受けるための主な要件は、次のとおりです。

  1. 贈与の時点で、婚姻期間が20年以上経っていること
  2. 同じ配偶者との間でこの制度の適用を受けたことがないこと
  3. 居住用不動産の購入に充てる金銭を贈与された場合は、翌年の3月15日までにその金銭で実際に居住用不動産を取得・居住して、その後も引き続き住み続ける見込みがあること

なお、この適用を受けるには、贈与税額がゼロとなるときでも贈与税の申告書を所轄税務署に提出しなければならないので注意してください。

住宅そのものを生前贈与する場合の税金

住宅購入資金ではなく、親が所有する住宅(土地・建物)そのものを生前贈与することも可能です。ただし、資金贈与のような専用の非課税措置はなく、以下のような税金がかかります。

  • 贈与税
    住宅の評価額(建物は固定資産税評価額、土地は路線価等)を基に課税。暦年課税では年間110万円の基礎控除があり、相続時精算課税では年間110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除を利用可能
  • 登録免許税
    所有権移転登記に原則2%(相続による取得は0.4%)。一定の要件を満たす住宅用家屋には軽減措置が適用される場合あり
  • 不動産取得税
    贈与による取得は課税対象(相続による取得は非課税)

相続時精算課税では、年間110万円を超える贈与については、特別控除の範囲内で贈与税がかからない場合でも、原則として贈与税の申告が必要です。

また、相続時精算課税を選択して贈与した住宅は、贈与者が亡くなった際に、贈与時の価額を基に相続税の課税価格へ加算されます(令和6年以降の贈与は年間110万円の基礎控除後の残額が加算対象)。

登録免許税や不動産取得税の観点では、相続で取得したほうが取得コストを抑えられるケースが多くあります。贈与を急ぐ事情があるかどうかも含めて検討することが大切です。

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住宅購入資金に贈与税はかかる?非課税にする方法や親からの贈与について解説

住宅購入資金の生前贈与における注意点・デメリット

住宅購入資金の生前贈与では多額のお金を非課税で贈与でき、一見お得です。しかし、実は以下のような形で思わぬ税金が発生したり、思っていたほど節税にならなかったりすることがあります。

  • 家具購入費や余った資金は課税対象になる
  • 住宅取得資金の非課税特例以外の贈与は相続税の対象になることがある
  • 「小規模宅地等の特例」が使えず実家などの相続時に税金が高くなる
  • 取得した不動産には不動産取得税がかかる

それぞれについて詳しく確認していきましょう。

家具購入費や余った資金は課税対象になる

住宅購入資金は、住宅ローンの頭金など、住宅の購入や増改築のために使う資金です。

したがって、家具や家電製品など住宅そのもの以外を購入するために使ったお金は、非課税制度の対象外となります。

また、贈与された住宅購入資金が余り、別の用途で使った場合も、非課税にはなりません。

住宅取得資金の非課税特例以外の贈与は相続税の対象になることがある

贈与者が亡くなった場合、次の贈与は相続税の課税対象となることがあります。

  • 暦年課税で受けた贈与
  • 相続時精算課税制度を適用して受けた贈与

ただし、住宅取得資金の非課税特例の適用を受けて非課税となった金額は、原則として相続税の課税価格に加算されません

暦年課税で受けた贈与

暦年課税では、贈与者が亡くなった場合、一定期間内に受けた贈与は相続財産に加算され、相続税の対象となります。これを生前贈与加算といいます。

生前贈与加算の対象期間

相続開始日加算対象期間
令和8年(2026年)12月31日まで相続開始前3年以内(死亡の日から遡って3年前の日から死亡の日までの間)
令和9年(2027年)1月1日~令和12年(2030年)12月31日令和6年(2024年)1月1日から死亡の日までの間
令和13年(2031年)1月1日以後相続開始前7年以内(死亡の日から遡って7年前の日から死亡の日までの間)

相続開始の日が令和9年(2027年)1月2日以後の場合は、延長された4年間(死亡前3年超7年以内)の贈与について、その期間に受けた贈与額の合計から100万円を差し引いた残額のみが相続財産に加算されます。

参考

国税庁「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

相続時精算課税制度を適用して受けた贈与

相続時精算課税制度では、年間110万円の基礎控除額を超える部分が相続税の課税対象となります。

すでに納めた贈与税がある場合は相続税額から控除されるため、二重に課税されることはありません。

参考

国税庁「相続時精算課税の選択

「小規模宅地等の特例」が使えず実家などの相続時に税金が高くなる

父母や祖父母から住宅購入資金の贈与を受けてマイホームを取得した場合、父母や祖父母の宅地を相続するときに「小規模宅地等の特例」を利用できないケースがあります。

小規模宅地等の特例

取得した宅地の評価額を減額できる制度です。

たとえば特定居住用宅地等(自宅の土地)の場合は、330㎡までの部分について相続税評価額を最大80%減額できるため、相続税を大幅に軽減できる可能性があります(国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」)。

特例の適用対象となる代表的なケースは、次のとおりです。

  • 被相続人の配偶者
  • 被相続人と同居していた親族
  • 上記に該当する人がいない場合で、持ち家に関する一定の要件を満たす別居親族(いわゆる「家なき子」)

住宅購入資金の生前贈与を受けてマイホームを取得すると、「家なき子」の要件を満たせなくなることがあります。その結果、小規模宅地等の特例を利用できず、父母や祖父母の宅地を相続した際の相続税が高くなる可能性があります。

取得した不動産には不動産取得税がかかる

贈与された資金で不動産を購入した場合は、不動産取得税登録免許税がかかります。なお、贈与税については、住宅取得資金の非課税特例などの適用により課税されない場合があります。

不動産取得税は、不動産を取得したときに課される税金です。

登録免許税は、不動産の所有権移転登記などの登記手続きに課される税金です。

既存住宅を購入した場合、贈与による所有権移転登記の登録免許税率は原則2%です(軽減措置が適用される場合があります)。一方、相続による所有権移転登記の税率は0.4%であるため、登録免許税の負担は相続の方が小さくなるケースが一般的です。

不動産取得税と登録免許税について詳しく知りたい方は、関連記事『土地の生前贈与は相続税対策になる?手続きや相続とどちらが得かも解説』をお読みください。

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住宅購入資金の生前贈与を非課税にする手続き

まず、子や孫が父母・祖父母から住宅資金の生前贈与を受ける場合は、「住宅取得資金の非課税特例」の適用を受けるため以下の手続きが必要です。

贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、この特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に以下の必要書類を添付して、所轄税務署に提出する。

  • 受贈者の戸籍謄本
  • 受贈者の所得金額が確認できる書類(源泉徴収票など)
  • 登記事項証明書
  • 売買契約書または工事請負契約書の写し

その他、期限までに住宅に居住できないなど特別な事情がある場合や、対象の住宅が省エネ等住宅の場合は、別途所定の書類が必要。

続いて、「贈与税の配偶者控除の特例」を受けるためには以下の手続きが必要です。

贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、この特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に以下の必要書類を添付して、所轄税務署に提出する。

  • 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の謄本または抄本
  • 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
  • 居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの
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住宅の生前贈与についてよくある質問

Q. 住宅そのものの生前贈与に非課税制度はある?

住宅そのものの生前贈与には、住宅購入資金のような専用の非課税措置はありません。

暦年課税の年間110万円の基礎控除、または相続時精算課税を選択した場合の基礎控除や特別控除の範囲内であれば、贈与税はかかりません。ただし、登録免許税や不動産取得税などは別途発生します。

Q. 住宅購入資金の生前贈与は、頭金の援助でも非課税になる?

住宅ローンの頭金に充てるための贈与は非課税措置の対象です。

一方、すでに組んだ住宅ローンの返済資金に充てる場合は対象外となります(租税特別措置法第70条の2)。資金は住宅の取得対価に直接充てる必要があります。

Q. 住宅の生前贈与の非課税を使うと、相続時精算課税は選べなくなる?

選べます。住宅取得等資金の非課税特例と相続時精算課税は併用でき、非課税枠を超えた部分に相続時精算課税を適用できます(租税特別措置法第70条の3)。

Q. 夫婦間で住宅資金を贈与して離婚した場合、非課税は取り消される?

贈与時点で婚姻期間20年以上などの要件を満たし、適法に配偶者控除の適用を受けていれば、その後に離婚しても適用は取り消されません(相続税法第21条の6)。

適用の判定は贈与時を基準に行われます。

住宅購入資金の生前贈与のご相談は税理士へ

今回紹介した2つの住宅購入資金の贈与の非課税制度を利用して生前贈与を行うと、非課税内であれば贈与税がかからずに資金または居住用不動産を贈与できます。

しかし、場合によっては生前贈与ではなく相続で財産を取得した方が節税になることもあります。

もしご自身の状況にあった贈与や相続の仕方がわからないという方は、ぜひ一度税理士にご相談ください。

「両親や祖父母が元気なうちから財産や相続の話をするのは気が引ける」と思われる方もいるかもしれませんが、少しでも多くの財産を子ども・孫世代に渡すためには、税理士への相談が最も確実です。

実際に相続が始まってから「生前贈与を活用しておけばよかった」と後悔することはだれも望んでいないはずです。

また、生前贈与を受けたものの税金がいくらかかるかわからないとお困りの方や、贈与税の手続きに不安がある方も、お気軽に税理士にお問い合わせください。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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