孫への教育資金の贈与は非課税?一括贈与制度終了後でもできる贈与のやり方と注意点

「孫の教育費を援助してあげたいけど、贈与税や相続税がかかるか心配…」
そんな祖父母の方が多いのではないでしょうか。
実は、孫への教育資金は「必要な時に必要な分だけ」の贈与であれば、基本的には贈与税がかからない場合があります。
それとは別に、従来は「教育資金の一括贈与」という非課税で最大1,500万円までの贈与ができる制度がありましたが、こちらは2026年3月31日で新規契約受付を終了しています。
そこで今回は、孫に教育資金を非課税で贈与するにはどうしたらよいか、最新情報をわかりやすくお伝えします。
「非課税で教育資金を贈与したつもりなのに税金がかかってしまった」というケースもあるので、注意点も合わせて確認していきましょう。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
孫への教育資金を非課税で贈与する方法
必要な時にその都度贈与する
税法上、扶養義務者の間で生活費や教育費として、必要なタイミングで必要な範囲のお金が贈与される分には贈与税はかかりません。これを相続税法の非課税規定といいます。
「扶養義務者」とは、親族間で互いに扶養する義務がある人のことで、祖父母も孫に対して扶養義務を負う場合があります。
そのため、祖父母が孫の学費を直接負担することは、この非課税ルールの対象になりえるのです。
扶養義務者間には法律上の負担順位はなく、親に十分な収入があっても、祖父母が孫の教育費を直接負担する分には、通常必要と認められる範囲・都度払いである限り非課税となります。
毎年110万円以下の範囲で贈与する
通常の課税制度(暦年課税)では、教育資金に限らず、また孫への贈与に限らず、年間110万円の基礎控除があります。そのため、年に110万円までの贈与であれば贈与税がかからず、超えると超えた分に対して贈与税がかかります。
なお、この基礎控除は受贈者(贈与を受ける人)1人につき年間110万円です。
つまり、孫が父方の祖母と母方の祖父から教育資金を贈与された場合、両者からの合計額のうち、110万円までが非課税になります。
その都度必要な分だけ贈与するのではなく、ある程度まとまった金額を教育資金として孫に贈与したい場合は、暦年課税が向いているでしょう。
ただし、次に解説するように、基礎控除以内での贈与であっても税金が発生することがある点には要注意です。
関連記事
暦年贈与(暦年課税)とは?わかりやすく仕組み・やり方・注意点を解説
注意|基礎控除以内の贈与でも税金がかかるケースがある
暦年課税で110万円以下の贈与をしていても、それが「生前贈与加算」の対象となれば、贈与した教育資金に相続税がかかります。
生前贈与加算とは
贈与者が死亡した場合、その前3~7年に贈与された財産が相続財産に持ち戻され、相続税の対象になる制度
孫に贈与した教育資金が生前贈与加算の対象になるのは、祖父母が亡くなる前3~7年に孫が暦年課税で教育資金の贈与を受けており、なおかつ以下の形で相続時にも財産を受け取った場合です。
- 孫が代襲相続で相続人になる
- 孫が養子縁組により法定相続人になっている
- 遺言で孫が受遺者に指定されている
- 孫が生命保険金などの「みなし相続財産」の受取人になっている
生前贈与加算の対象期間は従来3年でしたが、2027年1月1日以降段階的に延長され、最終的に7年になります。
生前贈与加算の対象期間
| 被相続人の死亡日 | 遡る期間 |
|---|---|
| 〜2026年12月31日 | 死亡日前3年間 |
| 2027年1月1日〜2030年12月31日 | 2024年1月1日から相続開始日までの間の贈与 |
| 2031年1月1日〜 | 死亡日前7年間 |
ただし、相続開始の日が2027年1月2日以後の場合、延長された4年間(亡くなる3〜7年前)の贈与については、その4年間に行われた贈与額の合計から100万円を差し引いた残額のみが相続財産に加算されます。
孫が相続時に財産を受け取るケースについて詳しくは、関連記事『孫への相続を実現する方法|相続の割合や2割加算など注意点も解説』をご覧ください。
なお、ほかにも定期贈与や名義預金とみなされる場合は、基礎控除以下の贈与でも税金がかかるリスクがあります。
対策も含めた詳しい内容は、関連記事『生前贈与をわかりやすく解説!メリット・デメリットや注意点などがわかる』をご覧ください。
相続時精算課税でまとめて贈与する
相続時精算課税とは、年間110万円の基礎控除と、累計2,500万円の特別控除まで非課税で贈与できる課税制度です。
贈与をした年の1月1日において、60歳以上の父母・祖父母などから18歳以上の子・孫などへの贈与で適用できます。
暦年課税の基礎控除を超える大きな額の教育資金を孫に一括で贈与したい場合には、相続時精算課税が検討されるでしょう。
ただし、2,500万円の特別控除を超えた部分には一律20%の贈与税が課されます。
また、相続時精算課税で贈与した財産は基礎控除分を除き、贈与者が亡くなった際に相続税の対象となります。
将来的には相続税が発生するという点には注意しましょう。
また、一度相続時精算課税にすると暦年課税には戻れません。この点も踏まえ、どちらを選ぶか慎重に判断する必要があります。
関連記事
暦年贈与と相続時精算課税は併用できない?違い・どっちが得かを解説
孫への教育資金に相続税がかかる場合は2割加算に注意
孫に相続税が発生する場合、代襲相続でない限り2割加算の対象となります。
つまり、孫が代襲相続人ではなく、遺言や養子縁組で相続財産を取得する場合、相続税が通常よりも2割多くなるのです。
ポイント
- 2割加算
養子縁組によって一親等の血族(子)となった孫であっても、その孫の親(被相続人の子)が健在である場合は、例外的に相続税額の2割加算の対象となる - 代襲相続
亡くなるなどして相続人になれない親(被相続人から見た子)の代わりに孫が相続人になること
孫に教育資金を渡したい場合は、こうした点も踏まえてどの方法を選ぶか検討することが重要です。
関連記事
都度贈与で孫に教育資金を贈与するやり方
以下のような場合は、都度贈与で孫に教育資金を渡すことがおすすめです。
- 暦年課税での贈与では、生前贈与加算の対象になる可能性がある
- 一度にまとまった金額を贈与する必要性が低い
- 別の贈与で暦年課税の基礎控除に達してしまう
都度贈与で孫に教育資金を贈与するには、「必要な時に必要な分だけ贈与する」「実際に教育資金として使い切り、貯めない」という点を守ることが重要です。
都度贈与として認められやすい教育資金の渡し方も合わせて、確認していきましょう。
(1)必要な時に必要な分だけ贈与する
都度贈与が非課税になるためには、必要な時に必要な分だけ贈与することが重要です。
たとえば以下のように、用途を明確にし、そのうえでいくら渡せばよいのか事前によく確認しておきましょう。
- 学校の授業料
- 教材費
- 文具費
- 通学のための交通費
- 修学旅行の費用
(2)実際に教育資金として使い切り、貯めない
祖父母から孫への教育資金の都度贈与でも、あらかじめ大きな金額を一括で贈与し、すぐに使わない部分がある場合は非課税にならないことがあります。
また、教育資金として贈与され、余ったお金を別の用途で使った場合も、非課税とはならず贈与税の対象となることがあります。
都度贈与として認められやすい教育資金の渡し方
祖父母から孫へ教育資金を非課税で都度贈与する場合は、以下のような形で贈与すると、「必要な時に必要な分だけ渡し、教育資金として使い切る」という形をとりやすくなります。
- 学校の入学金や授業料などの請求があったタイミングで、祖父母が直接支払いをする
- 必要な金額だけを孫の口座に振り込み、すぐに教育資金として使う
- 文具費や通学定期代などは購入時に祖父母がお金を出したり、孫に渡したりする
教育資金の一括贈与制度は終了|使いきれない分はどうなる?
終了前の契約分は引き続き非課税
教育資金の贈与には、「教育資金の一括贈与」という制度がありました。
これは、祖父母や父母が30歳未満の子・孫に対し、教育資金を一括して贈与した場合、最大1,500万円まで贈与税が非課税になる制度です(租税特別措置法の教育資金の一括贈与に係る非課税措置)。
金融機関に専用口座を開設し、その口座を通じて資金を管理・使用する仕組みです。
| 用途 | 非課税の上限額 |
|---|---|
| 学校等への支払い | 1,500万円 |
| 学習塾・習い事などへの支払い | 500万円* |
*1,500万円のうち500万円まで
この制度は2026年3月31日をもって新規の契約受付を終了しました。よって、今後新たにこの制度を利用することはできません。
しかし、終了前に契約し、現在も継続しているものについては、引き続き非課税での払い出しが可能です。
使い切れない分があると税金がかかる
教育資金の一括贈与では、最大1,500万円までの贈与が非課税になります。しかし、使い切れない分がある場合、贈与税や相続税がかかることがあるので、解説します。
専用口座終了時に残高があると贈与税がかかる
専用口座が終了するタイミングで残高がある場合、贈与税がかかります。
専用口座が終了するタイミングは、以下の通りです。
- 受贈者(孫)が30歳に達したとき
- 受贈者が30歳未満で死亡したとき
- 受贈者が30歳に達する前に、在学や教育訓練の受講状況が確認できなくなったとき
ただし、残額が110万円の基礎控除内で、その年に他に贈与を受けていなければ、贈与税はかかりません。
また、受贈者である孫が30歳に達しても、まだ大学院などの学校に在籍していたり、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合には、手続きをすることで契約継続が可能です。
病気や留学で休学し、学業が長引いている場合も同様です。
具体例
孫が30歳になった時点で専用口座の残額が200万円あった場合
→ 200万円 − 110万円(基礎控除)= 90万円に贈与税が課税される
残額が多いほど課税額も増えるため、使い切りを意識した計画的な贈与が重要です。
贈与者の死亡時に残高があると相続税がかかることがある
一括贈与制度には、贈与者(祖父母)が死亡したときに一定の残額が相続税の課税対象(相続財産に加算)になるというルールがあります。
ただし、贈与者の死亡時に受贈者が23歳未満、または在学中・教育訓練受講中であれば原則として加算されません。
なお、令和5年4月1日以降の拠出分については、これらの要件を満たす場合でも、贈与者の相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは加算の対象となります。
また、令和5年度税制改正により、相続税の課税価格に加算された残額について、受贈者が孫(代襲相続人を除く)である場合は、対応する相続税額に2割加算が適用されることになりました。これは令和5年4月1日以降の拠出分に適用されます。
拠出時期・受贈者の年齢・在学等の状況・経過措置により取り扱いが異なるため、制度利用前に国税庁の最新情報や専門家に確認することが重要です。
教育資金の贈与は相続税対策になる?活用ポイント
教育資金として贈与することで相続財産が減る
教育資金として孫に生前に贈与しておけば、相続財産が減るため相続税を抑えられる場合があります。
遺言や養子縁組で孫に財産を渡すと2割加算が適用されてしまうので、その点でも贈与をしておいた方が節税になりやすいです。
なお、孫が相続人として祖父母の財産を相続できるのは、孫の親(祖父母から見た子)が亡くなるなどして相続人になれず、代わりに相続人になる場合です。
これを代襲相続といい、代襲相続なら2割加算は適用されません。
一方、孫の親が相続人となる場合、孫に財産を相続させるには遺言を残すか、養子縁組で養子にする必要があります。
こうした手間を考えても、贈与で孫に資金を渡す方がメリットが大きいといえるでしょう。
関連記事
代襲相続とは?相続税の基礎控除・甥姪への2割加算と法定相続分を解説
他の相続税対策と組み合わせるとより効果的
教育資金以外の財産も孫に贈与したい場合には、合わせて様々な対策ができます。
たとえば、以下の通りです。
- 暦年課税の基礎控除を活用する
- 結婚・子育て資金の一括贈与を活用する
暦年課税の基礎控除を活用する
暦年課税では、年間110万円の基礎控除があり、この範囲内であれば非課税で贈与可能です。
教育資金以外の財産を贈与したい場合には、この基礎控除を活用すると節税効果が期待できます。
結婚・子育て資金の一括贈与を活用する
父母・祖父母などから、18歳以上50歳未満の子や孫へ、結婚・出産・育児費用に充てる資金を贈与する場合は、最大1,000万円(うち結婚資金は300万円まで)が非課税になります。
例えばまだ孫が小さいなら、育児費用として子に資金を贈与すれば、間接的に孫のためになります。
育児費用として認められている用途は、保育園の入園料や入園のための試験の検定料、予防接種費用などです。
孫が18歳以上で孫自身が結婚・子育てをするなら、孫に直接資金を贈与するのもよいでしょう。
この制度は2027年3月31日まで適用可能ですが、贈与者が亡くなった時点で残金があれば、相続税の対象となります。
【注意】生命保険金は、孫にとっては節税効果が薄い
相続税対策としては、生命保険も活用されることが多いです。
生命保険金はみなし相続財産として相続税の対象になりますが、法定相続人が受け取る場合には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があるからです。
しかし、孫については「代襲相続」が発生したり養子縁組で養子にしたりしない限り、この非課税枠は使えないうえ、2割加算の対象になります。
「孫の相続税負担を減らすために生命保険金の受取人にしておく」というのは、期待するほどの節税効果が得られにくいので注意しましょう。
関連記事
生前贈与による相続税対策とは?相続税の負担を減らす方法と注意点
まとめ:孫への教育資金贈与のポイント
孫への教育資金の贈与は、年間110万円までの基礎控除に加え、「都度贈与」などを活用すれば非課税で行うことが可能です。
一方で、教育資金の一括贈与制度は2026年3月末で新規受付が終了しており、すでに契約している場合でも使い切れない残額には贈与税や相続税がかかる可能性があります。
特に相続発生時には、拠出時期や受贈者の状況によって課税関係が異なるため注意が必要です。制度の違いを正しく理解したうえで、計画的に使い切りましょう。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
