相続登記にかかる登録免許税の計算方法と軽減措置を解説

相続で不動産を取得した場合、相続登記をして名義を変更する際に「登録免許税」が発生します。税率は固定資産税評価額の0.4%です。たとえば評価額1,000万円の不動産を相続した場合、登録免許税は4万円となります。
登録免許税は相続税とは別の税金で、相続税がかからないケースでも、相続登記の際には原則として納付が必要です。
ただし、一定の要件を満たす場合は登録免許税が免除されます。令和7年度税制改正により、軽減措置の適用期限は令和9年(2027年)3月31日まで延長されています(租税特別措置法第84条の2の2)。
この記事では、登録免許税の計算方法や計算例(一戸建て・マンション・持分)、軽減措置の要件と適用期限、相続登記の手続き方法を解説します。
相続登記にかかる登録免許税とは
登録免許税とは?なぜかかる?
登録免許税とは、不動産や船舶・航空機の登記、会社の商業登記、弁護士などの資格登録といった手続きを行う際にかかる税金です。
不動産を相続すると所有者が変わるため、登記の内容を書き換える「相続登記」が必要になります。
この相続登記を行う際に、不動産の価額(固定資産税評価額)に対して税率0.4%の登録免許税が発生します。
たとえ相続税が0でも登録免許税は発生する
登録免許税は登記手続きに対してかかる税金であるのに対し、相続税は財産を受け継いだことに対してかかる税金です。
両者は課税の目的も対象も異なる別の税金なので、相続税がかからないケースでも登録免許税の納付は原則として必要です。
なお、一定の要件を満たす場合は登録免許税が免税となる特例措置が設けられています。詳しくは後述します。
関連記事
令和6年(2024年)以降、相続登記は義務
令和6年(2024年)4月1日から、所有者不明土地の解消を主な目的として、相続登記の申請が義務化されました。
義務化以前に発生した相続であっても、まだ相続登記が済んでいない不動産は義務化の対象となります。
相続登記の期限
- 令和6年4月1日以降(義務化以降)の相続
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内
※その後に遺産分割が成立した場合は、成立日から3年以内に分割内容を反映した登記が必要 - 令和6年3月31日(義務化以前)までの相続
原則として2027年3月31日まで
※不動産を相続したことを2024年4月1日以後に知った場合は、その日から3年以内
正当な理由なく放置した場合は、10万円以下の過料が科されます(不動産登記法第164条)。
相続登記でかかる登録免許税の計算
相続登記の登録免許税の計算式と早見表
相続登記の登録免許税は、以下の計算式で算出します。
登録免許税の計算式
不動産の価格(課税価格)×0.4%
※不動産の価格(課税価格)は1,000円未満を切り捨てとする。
※登録免許税の納付額は、100円未満を切り捨てる。例えば、登録免許税の計算結果が50,352円なら、実際に納める金額は50,300円。
計算式の「不動産の価格(課税価格)」とは、「相続登記を申請する年度」における不動産の固定資産税評価額のことです。
例えば、固定資産税評価額が2,000万円なら登録免許税は約8万円です。おおよその金額は以下の早見表でも確認できます。
固定資産税評価税額ごとの登録免許税を早見表にまとめると、以下の通りです。
※100円未満は切り捨てて計算しています。
| 固定資産税評価額 | 登録免許税(0.4%) |
|---|---|
| 500万円 | 2万円 |
| 1,000万円 | 4万円 |
| 2,000万円 | 8万円 |
| 3,000万円 | 12万円 |
| 5,000万円 | 20万円 |
| 1億円 | 40万円 |
固定資産税評価額は、以下の方法で確認できます。
- 毎年度初めに市町村から送付される固定資産税課税明細書を確認する
- 不動産所在地の市区町村役場で固定資産評価証明書を取得する
ただし、課税対象となる固定資産税評価額の算出方法は、不動産の種類により異なる場合があります。詳しくは次から紹介する計算例で確認してみましょう。
固定資産税評価額については、関連記事『相続税評価額とは?土地や建物ごとの計算方法・調べ方と固定資産税評価額との違い』で解説しています。
計算例(1)一戸建て(土地と建物)
一戸建てを相続した場合を例に、登録免許税を計算してみましょう。
- 土地の固定資産税評価額 7,582,074円
- 建物の固定資産税評価額 4,223,640円
- 固定資産税評価額を求める
土地と建物の固定資産税評価額の合計額は、11,805,714円です。1,000円未満を切り捨てると、課税価格は、11,805,000円になります。 - (1)に税率をかける
11,805,000円(課税価格)×0.4%(税率)=47,220円 - 100円未満を切り捨てて納付額を確認
登録免許税の納付額は、47,200円になります。
計算例(2)持分(共有不動産)
被相続人(夫)の持分を妻が相続した場合を例に計算します。
- 土地の持分 被相続人(夫)1/2 妻1/2
- 土地の固定資産税評価額 8,801,178円
被相続人の死亡により、妻が被相続人の持分1/2を相続することになった場合、登録免許税は以下の手順で計算します。
- 固定資産税評価額に被相続人の持分をかける
8,801,178円×1/2=4,400,589円 - 1,000円未満を切り捨てて、登録免許税の課税価格を算出
4,400,000円 - (2)に税率をかける
4,400,000円(課税価格)×0.4%=17,600円
計算例(3)マンション
マンション(敷地権付き区分建物)を相続した場合、登録免許税の計算は一戸建てよりも手順が増えます。
「専有部分(部屋)の評価額」と「敷地部分の評価額(土地全体の評価額×敷地権割合)」を合算して課税価格を求める必要があります。敷地権割合が不明な場合は、法務局等で登記事項証明書を取得して確認してください。
ここでは、以下の条件のマンションを相続したケースで計算します。
- 専有部分(建物)の固定資産税評価額 2,500,000円
- 敷地全体の固定資産税評価額 120,000,000円
- 敷地権割合 10,000分の200
- 敷地部分の固定資産税評価額に敷地権割合をかける
120,000,000円×200/10,000=2,400,000円 - 専有部分(建物)と敷地部分の固定資産税評価額を合算する
2,500,000円+2,400,000円=4,900,000円 - 1,000円未満を切り捨てて、登録免許税の課税価格を算出
4,900,000円(切り捨てなし) - (3)に税率をかける
4,900,000円×0.4%=19,600円
なお、古いマンションでは「敷地権なし」の形式で土地の持分が別の登記簿になっている場合があります。その場合でも、建物と土地の評価額を合算して1つの申請書でまとめて登記申請することが可能です。不明な点は管轄の法務局にご確認ください。
相続登記の登録免許税の軽減措置
相続登記の登録免許税については、一定の要件を満たす場合の軽減措置(免税措置)が設けられています。
軽減措置は以下の2種類です。
- 相続により土地を取得した人が、その相続登記をしないまま死亡した場合
- 相続により取得した土地の価額が100万円以下の場合
令和7年度税制改正により、いずれの軽減措置も令和9年(2027年)3月31日まで適用期限が延長されています(租税特別措置法第84条の2の2)。
それぞれの要件と手続きを以下で解説します。
軽減措置(1)相続登記をしないまま死亡した方がいる場合
相続により土地を取得した個人が、その相続登記をしないまま死亡した場合、令和9年3月31日までに、その亡くなった方を登記名義人とするための相続登記については登録免許税が免税となります(租税特別措置法第84条の2の2第1項)。
免税の対象となるのは「登記未了のまま亡くなった方を名義人とするための登記」のみで、最終的に不動産を取得する相続人への移転登記には通常どおり登録免許税が発生します。
例えば…
Bさん(Aさんの配偶者)がAさんから土地を相続した際、Bさんは相続登記をしていませんでした。
その後Bさんが亡くなり、同じ土地をBさんの子であるCさんが相続するとします。
この場合、CさんはBさんが支払っていなかった登録免許税を支払う必要はありません。
つまり、AさんからBさんへの登記(Bさんを名義人とするための登記)は免税、BさんからCさんへの相続登記には通常どおり登録免許税が発生します。
二次相続の定義や注意点は『二次相続の相続税はいくら上がる?計算例と対策を解説』にてご確認ください。
軽減措置(2)相続により取得した土地の価額が100万円以下の場合
相続により土地を取得した個人が、令和9年3月31日までに所有権の移転登記または所有権の保存登記を受ける場合、その土地の固定資産税評価額が100万円以下であれば登録免許税が免税となります(租税特別措置法第84条の2の2第2項)。
この軽減措置は土地のみが対象です(建物は対象外)。
所有権の持分を取得する場合は、「不動産全体の価額×持分割合」で計算した評価額が100万円以下であれば免税の対象となります。
なお、複数の土地を相続する場合でも、免税措置の適用は土地ごとに判定されます。そのため、固定資産税評価額が100万円以下の土地は免税対象となる一方、100万円を超える土地は免税の対象になりません。
相続登記で軽減措置を受けるための手続き
相続登記で登録免許税の軽減措置を受けるためには、登記申請書に免税の根拠となる法令の条項を記載する必要があります。記載がない場合は、軽減措置は受けられません。
上記の軽減措置(1)のケースであれば「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」、軽減措置(2)のケースは「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」と記載します。
申請書の具体的な記載例は、法務局『相続登記の登録免許税の免税措置について』をご確認ください。
相続登記の手続きと登録免許税の納め方
相続登記の方法と必要書類
相続登記では、登記申請書と必要書類を「申請する不動産の所在地を管轄する法務局」の窓口に持参または郵送して提出します。
オンライン申請を利用する場合は、法務省『不動産登記の電子申請(オンライン申請)について』をご参照ください。
なお、必要書類は遺言書がある場合と遺産分割協議の場合で異なるため、分けて紹介します。
共通で必要な書類
- 登記申請書
法務局のホームページから様式をダウンロードして作成 - 相続関係説明図
被相続人と相続人の関係を一覧にした表。自分で作成 - 被相続人の住民票除票
登記簿上の住所・本籍地の記載があるもの
※登記簿上の住所と最後の住所が異なる場合は、住所の変遷を証明するために戸籍の附票などの追加書類が必要になることがある - 収入印紙または領収証書
登録免許税の納付後に取得 - 不動産を相続する者の住民票
市区町村役場で取得 - 固定資産評価証明書
市区町村役場で取得(納税通知書・課税明細書でも可) - 委任状
専門家等に依頼する場合に作成
なお、固定資産評価証明書の代わりに、固定資産税納税通知書の課税明細書が使える場合があります。詳しくは管轄の法務局にご確認ください。
遺言書がある場合
- 被相続人の戸籍・除籍謄本
被相続人の死亡の事実が記載されたもの。法定相続情報一覧図の写しでも可 - 不動産を相続する者の戸籍謄本
市区町村役場で取得 - 遺言書
被相続人の遺言書
遺言書による相続登記では、被相続人が亡くなった事実を証明できればよいため、戸籍・除籍謄本は死亡の記載があるものだけで原則として足ります。必要な書類はケースによって異なる場合があるため、詳しくは管轄の法務局にご確認ください。
なお、公正証書遺言以外は家庭裁判所の検認が必要です。自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合は検認不要で、代わりに法務局で「遺言書情報証明書」を取得して添付します。
遺産分割協議をした場合
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
法定相続情報一覧図の写しでも可 - 相続人全員の戸籍謄本
相続放棄した人がいる場合は相続放棄受理証明書も必要 - 遺産分割協議書
相続人全員で作成 - 相続人全員の印鑑登録証明書
市区町村役場で取得
登録免許税の納付方法
登録免許税の納付方法は、以下のとおりです。
- 現金で納付
- 収入印紙による納付
- オンラインでの納付
相続登記では収入印紙または領収証書も提出書類に含まれます。これは登録免許税を支払うことで取得できるものなので、登録免許税は登記申請に伴って納付する必要があります。
それぞれの納付方法を確認していきましょう。
現金で納付
銀行や郵便局などの金融機関、税務署で、所定の納付書に必要事項を記入して登録免許税を支払います。支払いが完了すると、領収証書が交付されます。この領収証書を登記申請書または台紙に貼付して法務局に提出しましょう。
収入印紙による納付
登録免許税額が3万円以下の場合、収入印紙での納付も可能です。もっとも、実務上は3万円を超える場合でも収入印紙による納付が一般的です。
収入印紙は郵便局の窓口で購入でき、法務局で購入できる場合もあります。
なお、収入印紙は申請書に直接貼り付けるのではなく、別の白紙(台紙)に貼り付けて申請書と一緒につづります。
オンラインでの納付
オンライン申請の場合、歳入金電子納付システムを利用して登録免許税を納付することが可能です。しかし、利用を考えている金融機関が登録免許税の電子納付に対応しているかどうか確認が必要であったりと、いくつか注意点も存在します。
相続登記にかかる費用の目安
相続登記にかかる費用は、登録免許税だけではありません。戸籍謄本などの必要書類の取得費用や、司法書士などの専門家へ依頼する場合の報酬もかかります。
主な費用の目安は以下のとおりです。
| 費用 | 目安 |
|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額×0.4% |
| 戸籍謄本・住民票・固定資産評価証明書などの取得費用 | 数千円~1万円程度 |
| 司法書士への依頼費用 | 5万円~10万円程度(登録免許税などの実費を除く) |
自分で相続登記を行う場合は、登録免許税と必要書類の取得費用のみで手続きを進められます。
一方、相続人が多い場合や、不動産が複数ある場合、戸籍の収集や登記申請に不安がある場合は、司法書士へ依頼するのが一般的です。
また、相続税の申告が必要なケースでは、相続登記とあわせて税理士へ相談することで、相続手続きをまとめて進められるケースもあります。相続登記と相続税申告の両方が必要か判断に迷う場合は、一度専門家へ相談するとよいでしょう。
相続に関する依頼・相談は、内容によって対応できる専門家が異なることがあります。詳しくは関連記事『相続手続きは誰に頼む?相談先の選び方と専門家の違いを徹底解説』をご覧ください。
相続登記の登録免許税についてよくある質問
Q. 登録免許税の計算式ではいつの固定資産税評価額を使う?
相続登記の登録免許税は、登記を申請する年度の固定資産税評価額を基に計算します。
評価額は、市区町村から送付される固定資産税課税明細書や、固定資産評価証明書で確認できます。
Q. 相続登記の登録免許税はいつ払う?
相続登記の登録免許税は、法務局への申請時に納付します。
収入印紙を別の白紙(台紙)に貼り付けて申請書と一緒に提出する方法が一般的で、登記申請前に郵便局などで購入します。現金納付やオンライン納付も可能です。
Q. 相続登記の登録免許税に最低額はある?
登録免許税の最低額は1件あたり1,000円です(登録免許税法第19条)。計算の結果が1,000円未満となる場合でも、1,000円を納付します。
ただし、免税措置(租税特別措置法第84条の2の2)が適用される場合は、登録免許税は全額免除(0円)となります。
Q. 相続登記の登録免許税に軽減措置はある?
相続登記の登録免許税には、全額免除となる軽減措置が2種類あります。
「相続により土地を取得した人が、その相続登記をしないまま死亡した場合」「土地の価額が100万円以下の場合」です。いずれも令和9年3月31日まで適用されます(租税特別措置法第84条の2の2)。
Q. 相続登記の費用は登録免許税だけ?
相続登記の費用は登録免許税だけではありません。
戸籍謄本・住民票など必要書類の取得実費が数千円~数万円かかります。また、司法書士や弁護士に依頼する場合は別途報酬が発生しますが、ご自身で手続きを行う場合は不要です。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
