相続登記の登録免許税を計算する|免税措置や計算例も解説

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登録免許税はいくら

相続で不動産を取得した場合、相続登記をして名義を変更し、登録免許税の納付を行います。

相続登記とは、相続した不動産の名義を被相続人から相続人に変更することです。
そして、相続登記に際して「登録免許税」が課せられることがあります。

そこでこの記事では、登録免許税の計算方法や、登録免許を支払う必要がなくなる免税措置について解説していきます。

※令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。本記事の『【最新】令和6年4月1日から相続登記が義務化された』で義務化について詳しく解説しています。

相続登記でかかる登録免許税の計算方法

相続の登録免許税の計算式

相続登記の場合、登録免許税は以下の計算式で算出できます。

登録免許税の計算式

不動産の価格(課税価格)×0.4%

不動産の価格(課税価格)

計算式の「不動産の価格(課税価格)」とは、不動産の固定資産税評価額を意味します。

固定資産税評価額は、毎年度初めに市町村役場から送付される固定資産税課税明細書で確認できます。また、不動産所在地の市区町村役場で取得できる固定資産評価証明書にも記載されています。

なお、登録免許税の計算で用いる固定資産税評価額は、相続が発生した年度ではなく、「相続登記を申請する年度」のものを使用するようご注意ください。

加えて、計算の際には固定資産税評価額の1,000円未満を切り捨てます。不動産が複数ある場合は、固定資産税評価額を合計した後、最後に1回切り捨てます。

例えば、固定資産税評価額が12,588,569円の場合、課税価格は12,588,000円となります。

登録免許税は100円未満切り捨て

上記の計算式で算出した「登録免許税」は、100円未満を切り捨てて納付します。

例えば、登録免許税の計算結果が50,352円であれば、登録免許税として納める金額は50,300円となります。

相続の登録免許税の計算例

ここでは、【ケース1】一戸建て(土地と建物)を相続した場合と、【ケース2】被相続人の持分を相続した場合を例に、登録免許税を計算してみましょう。

【ケース1】一戸建て(土地と建物)を相続したケース

土地の固定資産税評価額 7,582,074円

建物の固定資産税評価額 4,223,640円

①土地と建物の固定資産税評価額の合計額は、11,805,714円です。1,000円未満を切り捨てると、課税価格は、11,805,000円になります。

②11,805,000円(課税価格)×0.4%(税率)=47,220円

100円未満を切り捨てると、登録免許税は、47,200円になります。

【ケース2】被相続人の持分を相続したケース

土地の持分 被相続人(夫)1/2 妻1/2

土地の固定資産税評価額 8,801,178円

被相続人の死亡により、妻が被相続人の持分1/2を相続することになった場合、登録免許税は以下の手順で計算します。

①評価額に被相続人の持分をかけます。8,801,178円×1/2=4,400,589円

②1,000円未満を切り捨てると、課税価格は、4,400,000円になります。

③4,400,000円(課税価格)×0.4%=17,600円になります。

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相続の登録免許税の免税措置

相続登記を行う際に以下の2つのケースに該当する場合は、登録免許税の納付が免除されます。

  1. 相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡したケース
  2. 不動産の価額が100万円以下の土地のケース

1. 相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡したケース

被相続人Aからの相続により妻Bが土地の所有権を取得したとします。本来であればここでBが相続登記をして、登録免許税を納めるはずですが、Bは相続登記をしないまま亡くなってしまいました。そして、子CがBからの相続により土地の所有権を取得しました。

このとき、Bを土地所有者とする相続登記については、登録免許税が免税されます。

すなわち、現在土地を所有しているCは、本来Bが納付するはずだった登録免許税を負担する必要はなく、Bからの相続で発生する登録免許税のみを納めれば良いということです。

また、Bが生前に土地を第三者Dに売却した場合も、Bを土地所有者とする相続登記については登録免許税が免税となります。

【注意点】

  • 免税措置の適用期間は、平成30年4月1日から令和7年3月31日までです。
  • 免税措置を受ける場合、登記申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載する必要があります。この記載がないと、免税措置が受けられませんのでご注意ください。
  • 登記申請書の記載例について、詳しくは『法務局ホームページ|申請書の記載例』をご参照ください。

2. 不動産の価額が100万円以下の土地のケース

相続による所有権移転登記を行う場合、不動産の価額が100万円以下であれば、登録免許税は免税になります。適用対象は全国の土地です。

なお、不動産の所有権の持分を取得した場合は、「不動産全体の価額×持分割合」が100万円以下であれば登録免許税はかかりません。

【注意点】

  • 免税措置の適用期間は、平成30年4月1日から令和7年3月31日までです。
  • 免税措置を受ける場合、登記申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載する必要があります。この記載がないと、免税措置が受けられませんのでご注意ください。
  • 登記申請書の記載例について、詳しくは『法務局ホームページ|申請書の記載例』をご参照ください。
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相続登記の必要書類

相続登記を申請する場合に必要な書類について解説します。
遺言書がある場合と、遺産分割協議の場合で必要になる書類が変わるため、分けて紹介していきます。

共通で必要な書類

  • 登記申請書
    法務局ホームページ』から登記申請書の様式をダウンロードして自分で作成
  • 相続関係説明図
    被相続人と相続人の関係が一覧になってまとまっている表。自分で作成
  • 被相続人の住民票除票
    登記簿上の住所・本籍地の記載があるもの
  • 収入印紙
    法務局、郵便局で取得
  • 不動産を相続する者の住民票
    市区町村役場で取得
  • 固定資産評価証明書
    市区町村役場で取得。納税通知書と課税明細書でも良い
  • 委任状
    専門家等に依頼する場合には作成

遺言書がある場合

  • 被相続人の戸籍・除籍謄本
    被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本。法定相続情報一覧図の写しでも良い
  • 不動産を相続する者の戸籍謄本
    法務局、郵便局で取得
  • 遺言書
    被相続人の遺言書
  • 検認調書
    遺言が公正証書遺言以外の場合には家庭裁判所の検認を受けて検認調書を作成してもらい、持参する必要がある

遺産分割協議をした場合

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改正原戸籍謄本
    法定相続情報一覧図の写しでも良い
  • 相続人全員の戸籍謄本
    相続放棄を選んだ人がいる場合は、相続放棄受理証明書も持参する
  • 遺産分割協議書
    相続人全員で作成する
  • 相続人全員の印鑑登録証明書
    市区町村役場で取得

登録免許税の納付方法

①現金で納付

銀行や郵便局などの金融機関、税務署で、所定の納付書に必要事項を記入して登録免許税を支払います。支払いが完了すると、領収証書が交付されます。この領収証書を登記申請書または台紙に貼付して法務局に提出します。

②収入印紙による納付

登録免許税額が3万円以下の場合、収入印紙での納付も可能です。もっとも、実務上は登録免許税が3万円を超える場合でも、収入印紙による納付が一般的です。

収入印紙は郵便局の窓口で購入できます。法務局で収入印紙を購入できる場合もあります。

③オンラインでの納付

オンライン申請の場合、歳入金電子納付システムを利用して登録免許税を納付することが可能です。しかし、利用を考えている金融機関が登録免許税の電子納付に対応しているかどうか確認が必要であったりと、いくつか注意点も存在します。

オンラインで登録免許税を納付しようと考えている方は、『法務省ホームページ|不動産登記の電子申請(オンライン申請)について』をご参考ください。

登記申請書の提出先

登記申請書と必要書類は、申請する不動産の所在地を管轄する法務局の窓口に持参または郵送して提出します。

【最新】令和6年4月1日から相続登記が義務化された

令和6年(2024年)4月1日から相続登記の申請が義務化されました。

義務化の主な理由としては、所有者不明土地の解消が目的とされています。

相続登記が義務化される前に相続が発生したケースでも、相続登記を完了していない不動産については、登記が義務化されます。

相続により不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

また、正当な理由がないにもかかわらず相続登記を放置すると、10万円以下の過料が科されるおそれがあります。

相続登記を速やかに行うことができるよう、早い段階から準備を整えておくことが重要です。

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この記事では、簡単な計算例で、相続登記における登録免許税の計算方法をご説明しました。

もっとも、実際には、ご本人では登録免許税の計算が難しいケースも少なくありません。登録免許税を正確に算出し、相続登記を早期に完了するためには、ぜひ専門家にご相談ください。

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監修者情報

アトムグループ 協力税理士

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