二次相続の相続税は高くなる!相続税の早見表や節税対策を解説

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二次相続の相続税

たとえば父親が先に亡くなり、母親と子供が遺産を相続したあと母親が亡くなった場合、子供は二次相続という形で再度相続を受けます。

一般的に二次相続では一次相続の時より相続税が高くなる傾向にあるため、その仕組みを理解し、一次相続の時点で対策しておくことが重要です。

この記事では、二次相続の基礎知識と、一次相続で発生する相続税との比較、税理士お墨付きの二次相続に有効な節税対策を5つ紹介します。

相続税の二次相続とは?相続税が高いって本当?

まずは二次相続とは具体的にどのようなもので、なぜ一次相続より相続税が高くなるのか、どれくらい高くなるのかを見ていきましょう。

二次相続とは?

父親が先に亡くなったとして、母親と子どもが父親の財産を相続することを「一次相続」、次に母親が亡くなって、子どもが母親の財産を相続することを「二次相続」といいます。

もともとは父親の財産だったものを、一度母親が相続してその後に子が相続するという2段階を踏むため、二次相続と呼ばれます。

一次相続と二次相続の大きな違いは「法定相続人の人数」です。一般的には、一次相続が「配偶者+子ども」なのに対し、二次相続は配偶者が抜けて「子ども」のみとなります。

二次相続の相続税が高い理由

二次相続では、以下の理由から一次相続よりも相続税がかかりやすいです。

二次相続で相続税が多くなる理由

  • 一次相続の時より相続財産が多くなりがち
  • 相続人が減ることで非課税枠が縮小する
  • 二次相続では使えない、あるいは使いにくい減税制度がある

例えば最初に父親が亡くなり、その後に母親が亡くなった場合、二次相続では一次相続で母親が得た財産に加え、もともと母親のものだった財産も相続財産になります。

よって、相続財産が一次財産の時よりも多くなりがちです。

加えて、先述の通り二次相続では一次相続よりも相続人が少なくなります。相続税の非課税枠には相続人の人数により変わるものがあるため、相続人が減ることで非課税枠も少なくなってしまうのです。

さらに、一次相続では適用できた減税制度などが、二次相続では使えないこともあります。こうした事情から、二次相続では一次相続よりも相続税が高くなることがあるのです。

一次相続と二次相続における相続税の比較早見表

ここでは、一次相続と二次相続とではどれくらい相続税が違うのか、子供が一人っ子の場合、2人の場合について早見表で紹介します。

なお、子どもが3人以上いる場合などの、一次相続と二次相続でかかる相続税を知りたい方は、当サイトの『相続税計算機』をご利用ください。

子どもが一人っ子の場合の相続税の早見表

子どもが一人っ子の場合に、一次相続と二次相続でかかる相続税は、以下の早見表のとおりです。

【子どもが一人っ子の場合にかかる相続税】

課税価格一次相続
(配偶者+子ども1人)
二次相続
(子ども1人)
4,000万円040万円
5,000万円40万円160万円
6,000万円90万円310万円
7,000万円160万円480万円
8,000万円235万円680万円
9,000万円310万円920万円
1億円385万円1,220万円
2億円1,670万円4,860万円
3億円3,460万円9,180万円
4億円5,460万円1億4,000万円
5億円7,605万円1億9,000万円

一次相続では法定相続分通りに「配偶者50%、子ども50%」で相続し、二次相続では子どもが全額相続した想定のシミュレーションです。小規模宅地等の特例や相次相続控除は計算に入れていません。

※課税価格とは相続する財産から、借金やローンなどのマイナスの財産や、葬式費用、非課税財産を差し引いたものです。

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子どもが二人の場合の相続税の早見表

子どもが二人いる場合に、一次相続と二次相続でかかる相続税は、以下の早見表のとおりです。

【子どもが二人の場合にかかる相続税】

課税価格一次相続
(配偶者+子ども2人)
二次相続
(子ども2人)
4,000万円00万円
5,000万円10万円80万円
6,000万円60万円180万円
7,000万円113万円320万円
8,000万円175万円470万円
9,000万円240万円620万円
1億円315万円770万円
2億円1,350万円3,340万円
3億円2,860万円6,920万円
4億円4,610万円1億920万円
5億円6,555万円1億5,210万円

一次相続では法定相続分通りに「配偶者50%、子ども50%」で相続し、二次相続では子どもが全額相続した想定のシミュレーションです。小規模宅地等の特例や相次相続控除は計算に入れていません。

※課税価格とは相続する財産から、借金やローンなどのマイナスの財産や、葬式費用、非課税財産を差し引いたものです。

二次相続で一次相続より縮小する非課税枠とは?

二次相続の際、一次相続時よりも縮小する非課税枠には「基礎控除による非課税枠」と「死亡保険金と死亡退職金の非課税枠」があります。

それぞれどういった仕組みでどれくらい非課税枠が少なくなるのか、見ていきましょう。

基礎控除による非課税枠

相続税には誰でも利用できる基礎控除が存在し、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」までの金額は非課税です。

二次相続では一次相続で法定相続人になっていた「被相続人の配偶者」が被相続人になるため、その他の法定相続人に変動がない限り、法定相続人は1人減ります。

この場合、基礎控除による非課税枠は一次相続の時よりも600万円少なくなってしまうのです。

基礎控除が少なくなる仕組み

  • 例えば一次相続で父親が被相続人となり、法定相続人が配偶者(子から見た母親)、子2人だった場合、基礎控除額は以下のとおり。
    3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
  • 一次相続で配偶者として法定相続人だった母親が死亡し、二次相続が発生した場合、法定相続人は子2人。したがって、基礎控除は以下のとおり。
    3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円

よって、この事例では二次相続の基礎控除額が、一次控除の時よりも600万円少なくなる。

相続税の基礎控除や法定相続人について詳しく知りたい方は、関連記事『相続税は基礎控除以下なら無税!計算方法やその他の控除も解説』をお読みください。

死亡保険金と死亡退職金の非課税枠

死亡保険金と死亡退職金については、「500万円×法定相続人」が相続税の非課税枠として設けられています。

しかし、基礎控除の場合と同様、二次相続では法定相続人の人数が一次相続の時より少なくなることが多いため、その分非課税枠が縮小されます。

死亡保険金と死亡退職金の注意点

死亡保険金は生命保険の契約の内容により、相続税以外の所得税や贈与税がかかることがあります。

死亡保険金にかかる税金について詳しくは、関連記事『死亡保険金にかかる税金は契約によって変わる!早見表で簡単確認しよう』をお読みください。

また、被相続人が死亡し弔慰金を受け取った場合、一定額以上の部分は死亡退職金として相続税の対象となることがあります。

この点については関連記事『弔慰金に相続税はかかる?死亡退職金として課税されるケースに要注意』をご確認ください。

相続税の相続税の無料相談

二次相続では使えない・使いにくい減税制度もある

続いて、二次相続では使えない「配偶者の税額軽減制度」や、適用条件が厳しくなる「小規模宅地等の特例」について解説します。

配偶者の税額軽減制度は使えない

被相続人の配偶者は、一定の要件を満たせば「配偶者の税額軽減」という制度を利用できます。

配偶者の税額軽減とは、法定相続分か1億6,000万円のいずれか大きい金額までの財産について相続税がかからないという、大幅な相続税の軽減が見込める制度です。

しかし、二次相続では相続人の中に、「配偶者」にあたる人がいません。したがって、二次相続では配偶者の税額軽減は適用されません。

一次相続で配偶者への相続財産を増やせば、その時は大幅な節税効果が期待できます。しかし、二次相続が生じたときに相続財産が多くなり、相続税の負担が重くなる可能性があるのです。

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小規模宅地等の特例は適用条件が厳しくなる

小規模宅地等の特例は、要件を満たす土地(宅地等)の相続税評価額を最大で80%減額できる制度です。この制度が適用されると、宅地等の相続で生じる相続税が大幅に抑えられます。

しかし、二次相続では小規模宅地等の特例は使えないことが多いです。

二次相続で相続人となる「被相続人の子」がこの制度を使うには、以下の条件を満たしていなければならないからです。

  • 相続開始時に、相続する自宅で同居している
  • 相続開始時に相続する自宅には同居せず、持ち家ではない賃貸などに住んでいる

一次相続なら、配偶者が自宅を相続すれば小規模宅地等の特例は無条件で適用されました。しかし、「被相続人の配偶者」が存在しない二次相続では、この制度の適用ハードルが高くなってしまうのです。

持ち家にかかる相続税について詳しくは、関連記事『持ち家の相続税はどのくらい?|特例を利用すれば大幅節税できる!』をお読みください

二次相続に備えて行うべき節税対策5選

二次相続の相続税負担を軽減するための相続税対策を5つ紹介します。

  1. 一次相続で資産性の高い財産を子どもに相続させる
  2. 一次相続で実家を同居している子どもに相続させる
  3. 生前贈与を活用する
  4. 生命保険の非課税枠を活用する
  5. 相次相続控除を活用する

(1)一次相続で収益性の高い財産を子どもに相続させる

資産性の高い財産は、一次相続で子どもが相続することをおすすめします。

たとえば、一次相続で配偶者が「家賃収入があるアパート」や「利回りの高い有価証券」などを相続したとします。

すると、この配偶者が死亡した際に、そのアパートで生じた家賃収入や有価証券の配当金などが二次相続で相続税の対象となってしまいます。

一次相続の時点でこうした財産を子に相続しておけば、のちに配偶者が死亡しても、二次相続の対象にはなりません。

(2)一次相続で実家を同居している子どもに相続させる

一次相続で子どもに実家を相続させて、小規模宅地等の特例を適用することも、相続税対策になります。

一次相続で配偶者は、配偶者の税額軽減を適用することで相続税がかからなくなることが多いです。そのため、配偶者が実家を相続すると、せっかく小規模宅地等の特例が適用できても、そもそも配偶者の税額軽減ですでに相続税が0円になっている、というケースが少なくありません。

であれば、同居の子どもがいる場合、実家は子どもが相続し、その敷地について小規模宅地等の特例を適用して相続した方が、より有効に制度を使って相続税対策できるでしょう。

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持ち家の相続で重要な【同居】って?同居で相続税が控除される?

(3)生前贈与を活用する

相続時の財産を減らしたり、財産の種類を調整したりするために、生前贈与を活用する方法があります。

生前贈与では毎年110万円までなら非課税で贈与できます。なお、毎年110万円の非課税枠は受贈者(受け取り側)単位です。

そのため、両親それぞれから110万円ずつ、合計220万円を贈与された場合、非課税になるのは110万円のみです。しかし、子どもが2人いれば、それぞれに毎年110万円まで、合計で220万円まで贈与可能です。10年あれば、2,200万円まで非課税で贈与できます。

注意|亡くなる前の一定期間の贈与は相続税の対象になる

相続税対策として活用できる生前贈与ですが、注意点もあります。

亡くなる前3年(税制改正により順次7年まで延長)以内の贈与は相続税の課税対象となるため、予定どおりに贈与できないこともあります。生前贈与で二次相続の相続税対策をするつもりの方は、早いうちから動き始めるようにしましょう。

生前贈与の注意点や非課税枠については、関連記事『生前贈与は110万円まで非課税|制度利用で2500万円も非課税になる』をお読みください。

(4)生命保険の非課税枠を活用する

二次相続で相続税額が増えることを想定し、生命保険で相続税対策をする方法もあります。

生命保険の死亡保険金は相続税の課税対象にはなりますが、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を活用できます。

本記事で解説したように、二次相続では一次相続よりも死亡保険金の非課税枠は小さくなります。しかし、死亡保険に加入せずそもそも全く死亡保険の非課税枠がないよりは節税対策になるのです。

なお、受取人固有の財産の財産として扱われるため、遺産分割の対象にはなりません。

親の死亡保険金と相続税の関係は、関連記事『親の死亡保険金には相続税がかかる?|非課税枠の計算方法を解説』で詳しく紹介しています。

(5)相次相続控除を適用する(二次相続発生後にできる対策)

相次相続控除とは、文字通り「相次いで相続が発生したとき」に、今回の相続で発生した相続税の一部を控除できる制度です。もちろん二次相続でも利用できます。

ただし、相次相続控除は、以下の条件にすべて当てはまる場合のみ適用できます。

  • 控除を受ける人が、今回の相続の相続人であること
  • 今回の相続の開始前10年以内に、前回の相続が発生していること
  • 今回の相続の被相続人が、前回の相続で相続税を課されていること

相次相続控除の控除額は、二次相続の被相続人が一次相続で課税された相続税額のうち、経過年数1年につき10%の割合の金額です。

ただし、上記はあくまでもおおまかな計算方法であり、厳密な控除額の計算は非常に複雑です。

相次相続控除について詳しく知りたい方は、『国税庁|相次相続控除』をお読みください。

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二次相続の相続税に不安がある方は税理士に相談

この記事で紹介した二次相続の節税対策は、「5.相次相続控除を活用する」以外すべて、二次相続が発生する前でないとできない対策です。

一次相続が発生する前に、二次相続まで見越した相続税対策ができれば理想ですが、一次相続の時点や、それよりも前の段階で対策を考えるのは簡単ではありません。

二次相続がはじまってから後悔することがないよう、少しでも不安がある方は相続税に強い税理士に相談されることをおすすめします。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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