一人っ子の相続税は高くなる!3つの理由と対策を事例つきで解説

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一人っ子の相続税

一人っ子が親の財産を相続する場合、兄弟姉妹など他の相続人がいない分、揉めるリスクは低くなります。しかし一方で、一人っ子であるがゆえに相続税が高くなる点には要注意です。

そこでこの記事では、なぜ一人っ子の相続税が高くなるのか具体例を交えて解説した後、有効な相続税対策を紹介します。

ぜひ参考にしてみてください。

一人っ子の相続税が高くなる理由|具体例つきで解説

一人っ子の相続税は、一般的な相続に比べて高くなる傾向にあります。

その理由として以下の3つを解説し、実際の相続税額にどれくらいの差が出るのか計算例を紹介します。

  • 相続人が1人なので基礎控除が少ない
  • 相続税をすべて1人で負担する
  • 累進課税制度で税率が高くなる

理由(1)相続人が1人なので基礎控除が少ない

相続税には「基礎控除」があり、基礎控除額までの財産には相続税がかかりません。一人っ子の場合はこの基礎控除額が少なくなるため、相続税が高くなりがちです。

ここで、相続税の基礎控除額の計算方法を見てみましょう。

相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)

計算式からもわかるとおり、基礎控除額は法定相続人の人数が多いほど大きくなります。一人っ子の場合、両親共に亡くなっているなら法定相続人は一人っ子本人のみです。

したがって、非課税枠が小さくなり、一般的な相続よりも相続税が高くなってしまうのです。

両親共に亡くなっているケースにおける、基礎控除額の具体例を見てみましょう。

  • 相続人が一人っ子の場合の基礎控除額
    3,000万円+(600万円×1人)=3,600万円
  • 相続人が3人兄弟の場合の基礎控除額
    3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円

例えば相続財産が4,500万円だった場合、一人っ子だと900万円(4,500万円−4,600万円)に対して相続税がかかります。

しかし、3人兄弟なら相続財産より基礎控除額の方が大きいので、相続税は発生しないのです。

なお、相続税には基礎控除以外にも適用できる控除があります。基礎控除も含めて詳しく知りたい場合は関連記事『相続税は基礎控除以下なら無税!計算方法やその他の控除も解説』をご覧ください。

理由(2)相続税をすべて1人で負担する

複数の相続人がいる場合、相続税は遺産分割の割合に応じて分けて負担します。しかし、両親共に亡くなっている一人っ子の場合は、相続税をすべて1人で負担しなければなりません。

そのため、相続税の負担額が大きくなってしまうのです。

なお、相続税は原則として現金一括払いとなります。不動産など換金性の低い財産が含まれる場合は特に、相続税に充てるお金の調達が重要です。

相続税として払うお金の調達方法については、関連記事『相続税は誰がいつまでに払う?遺産から払う方法や納め方』で解説しています。参考にしてみてください。

理由(3)累進課税制度で税率が高くなる

同じ相続財産でも、相続人が一人っ子のみだと税率が高くなります。これも、一人っ子の相続税が高額になる理由です。

このことを理解するために、まず相続税の計算方法を簡単に確認しましょう。相続税の計算方法は以下のとおりです。

  1. 相続税を計算する際、通常は課税価格*を一旦法定相続分**に基づいて各相続人に分配する
  2. それぞれに分配された課税価格に合わせた税率をかけ、相続税を算出
  3. 各相続人の相続税を合計して相続税の総額を出し、実際の遺産分割の割合に合わせて改めて分割
  • 課税価格*
    相続財産から基礎控除額などを差し引いた、実際に相続税がかかる金額
  • 法定相続分**
    民法で定められた、遺産分割の割合

2で適用される税率は累進課税制度により決まり、金額が大きいほど税率が大きくなる仕組みです。

相続人が複数人いれば、各人の課税価格が小さくなるため税率も低くなります。しかし、相続人が一人っ子しかいない場合は課税価格が分割されないため、税率が高くなってしまうのです。

以下の表をもとに、具体例を紹介します。

相続税の税率

法定相続分に応ずる取得金額相続税の税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

例えば相続税の課税価格が2,000万円だった場合、2人兄弟で相続人が2人なら、一旦課税価格を半分ずつに分けて税率をかけます。

よって、相続税の合計は「(1,000万円×10%)×2人」で200万円です。さらに、実際の遺産分割の割合に応じてこの200万円を2人で分割します。

一方、同じ課税価格2,000万円でも、相続人が一人っ子だけなら相続税の総額は「2,000万円×15%-50万円」で250万円になってしまうのです。

一人っ子の相続税と一般的な相続税を具体例で比較

ここまで解説で、一人っ子の相続税は基礎控除額が少なく、そのうえ相続税を他の相続人と分割できないことをお伝えしました。

さらに累進課税制度で税率も高くなることから、一人っ子の相続税は高くなりがちです。

では、これらを踏まえて、一人っ子の相続税と4人兄弟の場合の相続税とを比較してみましょう。

相続財産の総額は4億5,000万円とします。

相続人が子1人相続人が子4人
基礎控除3,600万円5,400万円
課税遺産額4億1,400万円3億9,600万円
各人の法定相続分4億1,400万円×1/1=4億1,400万円3億9,600万円×1/4=9,900万円
相続税額4億1,400万円×50%-4,200万円=1億6,500万円9,900万円×30%-700万円=2,270万円
相続税合計1億6,500万円×1人=1億6,500万円2,270万円×4人=9,080万円

相続税のシミュレーションは『相続税計算機』もご利用ください。

親がいる間にすべき、一人っ子のための相続税対策

一人っ子の相続税対策は、親の生前から計画的に行うことが重要です。ここでは、親の生前からしておくべき一人っ子のための相続税対策を解説します。

親が生命保険に加入しておく

相続税の計算上、生命保険金には「500万円×法定相続人の人数」の非課税枠があります。

一人っ子の場合は「500万円×1人=500万円」までは相続税がかからないのです。それなら、その500万円を現金などで相続するよりも生命保険金として相続する方がお得です。

ただし、生命保険金には所得税や贈与税がかかることもあります。これを防ぐには、「被保険者と契約者が同じ人物(両親のいずれか)」「受取人が一人っ子」としておく必要があります。

詳しくは関連記事『死亡保険金にかかる税金|相続税・所得税・贈与税について解説』にてご確認ください。

一人っ子の子(孫)と親で養子縁組をする

一人っ子の子、つまり親から見た孫と親とが養子縁組しておけば、相続時、孫も子として法定相続人になれます。

これにより法定相続人が2人になるメリットは、以下のとおりです。

  • 基礎控除額が1人分多くなり、相続税の対象となる金額が減る
  • 生命保険金の非課税枠も広がる
  • 相続税の税率が低くなることがある

ただし、実子が1人いる場合、法定相続人に含められる養子は1人までです。

また、養子として法定相続人になった孫の相続税には「2割加算」が適用されます。しかし、多くの場合、孫を養子にすることによる節税効果の方が大きいです。

関連記事

孫に財産を相続させる方法は?孫の相続税は2割加算?節税方法も解説

不動産を「小規模宅地等の特例」を使える状態にする

小規模宅地等の特例とは、自宅や賃貸用不動産の敷地などの相続税評価額(相続税がかかる金額)が最大80%減額される制度です。

親の生前に以下の対策をしておけば、相続時に小規模宅地等の特例を適用できます。

  • 生前から親と一人っ子で同居しておき、一人っ子がそのまま自宅の敷地を相続する
  • 親と一人っ子が同居しない場合は、自宅の相続開始まで一人っ子は持ち家などを所有せず賃貸などで暮らし、自宅の敷地を相続する
  • 相続の対象となる不動産を賃貸として人に貸しておき、一人っ子がその敷地を相続し、不動産賃貸業を継続する

上記のような対策をしておけば、相続時、自宅の敷地の評価額は80%、賃貸用不動産の敷地の評価額は50%評価減らされます。

小規模宅地等の特例の内容や要件についてさらに詳しい情報は、関連記事『ケース別・小規模宅地等の特例の計算方法と計算例!適用要件や注意点も解説』にてご確認ください。

親から一人っ子、またはその子(孫)へ生前贈をする

生前贈与による相続税対策もおすすめです。

生前贈与(暦年贈与)の場合、年間110万円までは非課税で贈与できます。よって、親の生前からコツコツ一人っ子に財産を贈与しておいた方がお得です。

また、一人っ子に贈与する子育て・結婚資金については1,000万円の非課税枠があるので、こうした制度を使って生前贈与をするのも相続税対策になります。

さらに、一人っ子の子ども、つまり親から見た孫に対する教育資金は、孫1人あたり最大1,500万円まで非課税で贈与できる制度があります。

ただし、暦年贈与については贈与者の死亡前3〜7年分の贈与額に相続税がかかります。詳しくは以下の関連記事からご確認ください。

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一人っ子の相続税に関するQ&A

続いて、一人っ子の相続税に関してよくある以下の質問にお答えします。

  • 一人っ子の相続のメリットは?
  • 片方の親と一人っ子で相続する場合の注意点と対策は?
  • 一人っ子が相続する場合の手続きの流れは?

一人っ子の相続のメリットは?

一人っ子の相続で得られるメリットは、以下のとおりです。

  • 相続手続きがスムーズ
  • 相続人が1人なら相続争いは起こらない

相続手続きがスムーズ

複数の相続人がいる場合、不動産の名義変更や銀行口座の相続手続きなどのために遺産分割協議書や相続全員の戸籍謄本、印鑑証明などが必要になります。

他の相続人が遠方に住んでいるなら、相続手続きのために書類を取得、受け渡しするのに手間と時間がかかり、とても煩雑です。

しかし、一人っ子で相続人が1人しかいない場合、これらの手続き書類は1人分で済むため、負担が軽減されます。

相続人が一人なら相続争いは起こらない

相続人が一人しかいなければ、相続に際して親族が骨肉の争いをするようなことは考えられません。

親族間でトラブルが起きたり、遺産未分割の状態で一旦相続税申告したりといったことを回避できます。

片方の親と一人っ子で相続する場合の注意点と対策は?

例えば「父が亡くなり母と一人っ子とで財産を相続する」など片方の親が存命の場合は、以下の点に注意しなければなりません。

  • 親ともめる可能性はゼロではない
  • 二次相続の相続税の負担が重い

それぞれの詳細と対策を解説します。

親ともめる可能性はゼロではない

一人っ子で相続人が親と自分だけの場合、親子間でも相続争いはゼロではありません。

例えば亡くなったのが父で、残されたのが母である場合、母が老後の生活を考えて多くの財産を相続したいと主張し、相続争いが起きる可能性があります。

親と揉めないためには、以下の対策が重要です。

  • 早い段階から相続について親と一人っ子とで話し合っておく
  • 税理士など専門家を立てて、話し合いをする

二次相続の相続税の負担が重い

例えば父が亡くなり母と一人っ子で財産を相続する場合、一人っ子は母が亡くなった時に再度相続を受けることになります。この2度目の相続のことを「二次相続」と言います。

二次相続では以下の点から、相続税が高額になりがちです。

  • 一次相続では適用できた、「配偶者の税額軽減」が適用できない
  • 一次相続時よりも法定相続人が少なくなるため、基礎控除額が少なくなる

それでも兄弟が複数人いれば、ある程度相続税の負担を分配できたり、基礎控除額がそれなりに大きかったりします。しかし、一人っ子の場合は本記事でも解説した事情から、相続税が高くなりがちです。

したがって、本記事で紹介した一人っ子のための相続税対策に加え、一次相続の段階で以下のような対策をしておきましょう。

  • 一次相続で収益性の高い財産を子どもに相続させる
  • 一次相続で実家を同居している子どもに相続させる

一人っ子なら知っておきたい二次相続の相続税対策については、関連記事『二次相続の相続税は高くなる!相続税の早見表や節税対策を解説』をお読みください。

一人っ子が相続する場合の手続きの流れは?

一人っ子が相続する場合の主な流れは、以下の通りです。

  1. 被相続人(親)の死亡届の提出
  2. 他に相続人がいないか確認
  3. 相続財産を把握して相続税を計算
  4. 相続税の申告と納付

たとえ相続人が一人っ子のみだと思っても、念のため他にも相続人がいないか確認することは重要です。戸籍謄本・除籍謄本などから相続人にあたる人はいないか確認してみましょう。

相続財産の把握では、本当に全ての財産を把握できているか、徹底的確認することが重要です。もし申告漏れがあれば、申告内容の修正が必要になったり、税務署からべナルティを受けたりする可能性があります。

特に借金など負の財産は見落としがちです。借金については相続により一人っ子に弁済義務が生じてしまうので、この点も含めて関連記事『【借金の相続税】弁済負担の軽減法と借金の節税効果』をご覧ください。

相続税の計算については、各種特例の適用などもあり厳密な確認が難しくなっています。一度税理士に相談することがおすすめです。

相続税の相続税の無料相談

一人っ子の相続税対策は税理士に相談

一人っ子の相続は手続きが簡便など楽な点もありますが、相続税の負担については逆に重くなることが多いと説明しました。

相続税の負担を軽減するには、親の生前からの対策が重要です。相続が発生する前に、相続税専門の税理士に相談して、安心して相続を迎えましょう。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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