相続税は誰が払う?いつまでに払う?代わりに払うことはできる?

更新日:
相続税は誰が払う?

「相続税は誰が払う?」
「相続税はいつまでに払う?」
「ほかの人の相続税を代わりに払うことはできる?」

そのような疑問をお持ちの方に向け、この記事では、相続税を支払うのは誰かについてわかりやすく解説します。

また、相続税が課税される条件や、相続税を払わなければいけない期限についてもご説明します。

相続税は誰が払う?

相続税を払うのは、原則として相続や遺贈により財産を取得した人全員です。

よくイメージされるのは、被相続人(亡くなった方)の配偶者や子どもかもしれませんが、実際には血縁などは関係なく、遺産を取得した人にそれぞれ課税されます。

相続税を支払うのは、相続や遺贈によって被相続人の財産を取得した以下の人たちです。

【相続税を払う人の種類】

①法定相続人
②代襲相続人
③受遺者
④特別縁故者
⑤特別寄与者
⑥相続時精算課税に係る贈与により財産を取得した人

上記に当てはまる人たちが、その取得した財産の額に応じて相続税を負担します。

ただし、財産を取得した人すべてに納税義務があるわけではありません。各人の課税価格の合計額が、基礎控除額を超える場合に限り、相続税を支払う義務が生じます。

相続税の支払い義務に関して詳しくは、本記事の『相続税はどんなときに払う?』をお読みください。

まずは相続税を払う人たちについて個別に解説をしていきます。

①法定相続人

相続は、被相続人の死亡により開始します。まず相続により相続財産を取得する権利があるのは、法定相続人です。

法定相続人の範囲は、以下のとおりです。

常に法定相続人になる人
配偶者

先順位の者から相続人になる人
第一順位 
子 ※子がすでに死亡した場合は、孫が代襲相続人になる。

第二順位
直径存続(父母など)

第三順位
兄弟姉妹 ※兄弟姉妹がすでに死亡した場合は、甥・姪が代襲相続人になる。

【注意点】

相続放棄をした人は、初めから相続人にならなかったものとみなされます。

相続放棄した人は、相続財産を一切受け継がないため、原則として相続税を支払う義務はありません。相続税の申告も不要です。

相続税の相続放棄や、手続きについて詳しく知りたい方は、関連記事『相続税で相続放棄するときの手続きと相続放棄すべき人とは?』をお読みください。

②代襲相続人

代襲相続人は、法定相続人が亡くなった場合に、代わりに相続人となる人をいいます。

例えば被相続人からみて子どもにあたる人物Aが亡くなっている場合、人物Aの子ども(被相続人からみた孫)が代襲相続人として相続を行います。

③受遺者

受遺者とは、遺贈によって財産を取得した人のことをいいます。

遺贈とは、遺言によって無償で財産を他人に与える行為です。遺贈の相手方(受遺者)は、法定相続人でなくても構いません。

遺贈により財産を取得すると、相続税以外にも税金がかかる可能性があります。遺贈にかかる税金については、関連記事『遺贈でかかる税金は?|相続税・不動産取得税・登録免許税を解説』をお読みください。

④特別縁故者

特別縁故者とは、被相続人と特別に親しいにあった人物です。具体的には、内縁の妻などをいいます。

「①法定相続人」で紹介した法定相続人にあたる人が誰もいない場合や、遺言で特別縁故者への財産の譲渡が指定されていた場合には、財産を受け取ることができ、相続税の支払い義務も生じます。

相続税と内縁の妻の関係については、関連記事『内縁の妻に相続税の支払義務がある場合とは?』をお読みください。

⑤特別寄与者

相続人以外で、被相続人の財産の増加や維持に寄与した人物です。具体的には、義父母の介護をしていた人などをいいます。該当の人物が財産を受け取った場合、特別寄与者として相続税の支払い義務が生じます。

⑥相続時精算課税に係る贈与により財産を取得した人

相続時精算課税制度とは、累計2,500万円の非課税枠(特別控除)の範囲内の贈与であれば、贈与税が課税されない制度です。

相続時精算課税制度を利用して贈与した財産の価額(令和6年1月以降の贈与については年110万円の基礎控除を除きます)は、すべて相続財産に加算され、相続税が課税されます。

関連記事

【最新】相続時精算課税制度のデメリットを7つ紹介!改正でメリットは増えた?

相続時精算課税で孫に贈与すると相続税が2割加算|計算方法も解説

相続税はどんなときに払う?

相続税を払うのは基礎控除額を超える場合

相続や遺贈によって財産を取得した場合でも、各人の課税価格の合計額が基礎控除額を超えなければ、相続税を支払う義務はありません。この場合、相続税の申告も不要です。

課税価格とは、プラスの相続財産から債務・葬式費用等を差し引いて、相続開始前3年以内の贈与財産の価額を加算した額です。

相続税の基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算します。

相続税のシミュレーションは『相続税計算機』もご利用ください。

【基礎控除額以下で相続税がかからない具体例】

相続関係
・被相続人
・配偶者
・長男
・長女

遺産総額:預貯金6,000万円
債務・葬式費用:2,000万円

課税価格の合計額は、6,000万円-2,000万円=4,000万円です。

基礎控除額は、3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円です。

課税価格の合計額4,000万円が、基礎控除額4,800万円を下回っているため、相続税の納税義務はありません。申告も不要です。

関連記事

相続税の基礎控除額は?|法定相続人について詳しく解説

基礎控除額を超えても相続税がかからない場合がある

課税価格の合計額が基礎控除を超える場合でも、特例や税額軽減制度を適用した結果、相続税が発生しないケースもあります。

ここでは、「小規模宅地等の特例」と「配偶者の税額軽減」についてご紹介します。どちらも大幅に相続税を減らすことができるため、ぜひご参考ください。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、配偶者や親族が相続等で土地を取得した場合、一定の要件を満たせば、その土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。

例えば、被相続人の自宅敷地(200㎡、相続税評価額5,000万円)を相続した場合、相続税評価額を80%減額した1,000万円が課税価格となります。

【注意点】

小規模宅地等の特例を適用した結果、相続税額が0円になった場合でも、申告書の提出が必要です。

関連記事

小規模宅地等の特例で相続税を大幅減額|適用要件・計算方法を解説

配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減とは、「課税価格の合計額×法定相続分」または「1億6,000万円」のうち、いずれか大きい金額まで配偶者の相続財産について相続税額がかからない制度です。

つまり、配偶者は最低でも1億6,000万円までの相続財産については、相続税を支払う必要がないのです。

そのため、多くの場合、配偶者の納税額は0円になります。

【注意点】

  • 配偶者の税額軽減を適用した結果、相続税額が0円になった場合でも、申告書の提出が必要です。
  • 配偶者の相続割合が多すぎると、二次相続の相続税が多額になる可能性があります。

配偶者の税額軽減を適用する際は、税理士に相談の上、二次相続を見据えたシミュレーションを行うのがおすすめです。

関連記事

相続税の配偶者控除の要件・計算方法・注意点も解説

二次相続の相続税に注意|二次相続に有効な節税対策5選も紹介

相続税の相続税の無料相談

相続税はいつまでに払う?

相続の開始があったことを知った日の翌日から「10か月以内」に払う

相続税は、相続の開始があったことを知った日(被相続人の死亡を知った日)の翌日から10か月以内に、申告と納付をする必要があります。この期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、これらの日の翌日を期限とみなしています。

なお、申告と納付の順番は決められていないため、申告に必要な相続税申告書が完成していない場合でも、払うべき相続税の金額がわかっているなら先に納付しても問題ありません。

相続税申告書の提出先は、被相続人が住んでいた住所地を管轄する税務署です。相続税を払う人の住所地を管轄する税務署ではないので注意しましょう。

相続税が払えない場合の対応

相続税は、現金一括納付が原則です。

しかし、多額の相続税を一括納付するのが困難な場合もあります。そのような場合、一定の要件を満たせば、例外的に「延納」または「物納」による納付が認められます。

以下で、延納・物納の概要をご説明します。

延納

延納とは、納付すべき相続税額を分割して納付する方法です。

延納の要件は以下の4つです。詳しくは、関連記事をご覧ください。

【相続税の延納の適用要件】

①納付すべき相続税額が10万円を超えること
②納期限までに、または納付すべき日に金銭納付が困難な事由があること
③延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること
(ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合は、担保は不要)
④納期限または納付すべき日までに「延納申請書」および「担保提供関係書類」を税務署長に提出すること

関連記事

相続税の延納とは?|適用要件・担保・利子税について解説

物納

物納とは、延納によっても金銭納付が困難な場合、納付すべき相続税額を不動産などの財産で納付する方法です。

物納の要件は以下の3つです。

【相続税の物納の適用要件】

①延納によっても金銭での納付が困難な金額の範囲内であること
②物納申請財産が相続税の申告の対象となっている不動産等の財産のうち定められた種類の財産であり、かつ、定められた順位によっていること
③納期限または納付すべき日までに「物納申請書」および「担保提供関係書類」を税務署長に提出すること

相続税は遺産から払える?

相続税は現金一括納付が原則であるため、手持ちの現金では足らず、相続する遺産から払いたいという方もいらっしゃると思います。

しかし、遺産から相続税を払えるかどうかは、遺産の種類や遺産を相続するタイミングによって変わります。

たとえば、預貯金を相続した人は、相続税の納付期限までに相続の手続きを終了させることができれば、遺産から相続税を払うことができるでしょう。

反対に、納付期限までに相続の手続きが終わらない場合には、遺産はまだ相続人全員の共有財産という扱いになるため、そこから個人の相続税を払うことはできません。また、不動産などの現金以外を相続した場合には、現金化するプロセスも必要になります。

関連記事

相続税が払えないときの解決方法を7つ紹介!【税理士監修】

相続税の相続税の無料相談

相続税を誰が払うかについてよくある質問

Q1. ほかの相続人の相続税を代わりに払うことはできる?

A. 一時的に立て替えることは可能。

相続税は各人でそれぞれ払うことが原則です。

しかし、一時的であれば相続税の支払いを立て替えることは可能です。

ただし、立て替えた後、精算せずそのまま放置すると、税務署によって立替分が「みなし贈与財産」と判断される可能性があります。

そうなると、立て替えた(相続税を払った)相続人等に贈与税がかかるおそれがあります。そのような事態を避けるため、相続税の納付は原則として各人で行う必要があることを念頭に置き、納税資金対策を早めにとっておくことが大切です。

Q2. 相続税はまとめて払える?

A. 相続税は、納付期限内に相続人等が各人で納付するのが原則

もっとも、相続人等の中で誰か1人が代表して納税することも可能です。

しかし、上記のQ1でも解説したように、まとめて支払った後に精算しないでいると、贈与税が課されるおそれがあります。

Q3. 相続税を支払わない人がいる場合は誰が払う?

A. 代わりに別の相続人が払わなければいけない

相続税は各人が支払うのが原則であるとご説明しました。

では、相続人等の中に相続税を納付しない人がいた場合、どうなってしまうのでしょうか?

そのような場合、他の相続人等は、自分が取得した財産の範囲内で未納の相続税を納付する義務を負います。これを「連帯納付義務」と言います。

すなわち、各相続人がお互いに連帯して納付しなければなりません。

連帯納付義務者が相続税を肩代わりしなければならなくなった場合、ただ支払っただけだと贈与とみなされる可能性があり、税務署に贈与と判断されると、本来の納税義務者に贈与税がかかるおそれが生じます。

そのような事態を回避するため、相続税の肩代わりをすることになった場合は、連帯納付義務者と本来の納税義務者との間で金銭消費貸借契約を結び、契約書を作成しておくと良いでしょう。

関連記事

相続税の連帯納付義務の納税額や手続き|回避方法も解説

Q4. 相続税の申告は誰がする?

A. 申告は相続人の中の代表者がすることが多い。

相続税の申告は、相続人が2名以上いる場合、それらの者全員で共同して1つの申告書を提出するのが一般的です。

もし共同して申告書を提出しない相続人等がいる場合、その人は別途申告書を作成し、提出する必要があります。

Q5. 相続税はどうやって払う?

A. 相続税の支払い方法は4つある。

相続税は、以下の4つの方法で納付できます。

  • 金融機関の窓口で納付
  • 申告書を提出した税務署の窓口で納付
  • コンビニエンスストアで納付(税額30万円以下の場合のみ)
  • クレジットカード決済で納付(税額1,000万円未満の場合のみ)

また、相続税の支払いには「相続税納付書」が必要です。これはお近くの税務署でももらえますが、管轄の税務署でもらうと、税務署名と税務署番号が印字されているため、わざわざ調べて記入する手間が省けます。なお、インターネットでダウンロードすることはできないため注意してください。

相続税納付書の詳しい書き方については、関連記事『相続税納付書の書き方を紹介!相続税納付までの流れを解説』をお読みください。

Q6. 税理士に依頼した場合、税理士報酬は誰が払う?

A. 税理士報酬は誰が払っても問題ない。

相続税申告を税理士に依頼した場合、税理士報酬が発生します。税理士への報酬は誰が払っても問題ありません。

相続人の一人が全額払っても、相続人全員で均等に負担しても構いません。

相続税の税理士報酬について詳しくは、『相続税申告の税理士報酬相場|遺産総額の「1%」が報酬って本当?』をお読みください。

弁護士アイコン

監修者情報

アトムグループ 協力税理士

全国/電話相談可能

相続税の無料相談をする