相続税は誰がいつまでに払う?納税義務者一覧と遺産から払う方法や納め方

相続税を払う義務があるのは、相続や遺贈によって財産を取得した人(みなし相続財産を含む)です。法定相続人はもちろん、遺言で財産を受け取った受遺者、家庭裁判所の審判で財産の分与を受けた特別縁故者なども対象となります。
相続税の支払いは、原則として各人がそれぞれ自分の分を納付しますが、一時的な立替払いは認められています。ただし、精算せずに放置すると贈与税がかかるおそれがあるため注意が必要です。
この記事では、相続税を払う人の範囲・負担割合の仕組み・代払いのルールを中心に、相続税に充てるお金を用意する方法や相続税の支払いが間に合わない場合の対処法まで詳しく解説します。
目次
相続税の納税義務者は誰?払う義務がある人一覧
相続税を払うのは、原則として相続や遺贈により財産を取得した人全員で、具体的には以下に該当する人たちです。
相続税を払う人の種類
- 法定相続人
- 代襲相続人
- 受遺者
- 特別縁故者
- 特別寄与者
- 相続時精算課税の贈与で財産を取得した人
ここからは相続税を払う人たちについて個別に解説をしていきます。相続税のシミュレーションは『相続税計算機』もご利用ください。
注意
相続税の支払いは各人で行うのが原則ですが、相続税の申告は相続人全員で共同して1つの申告書を提出するのが一般的です。
もし共同して申告書を提出しない相続人等がいる場合、その人は別途申告書を作成し、提出する必要があります。
(1)法定相続人
法定相続人とは、民法で定められた相続人のことです。配偶者は常に相続人となり、加えて相続順位に応じて法定相続人が選出されます。
- 常に法定相続人になる人
- 配偶者
- 先順位の者から相続人になる人
- 第一順位:子(子がすでに死亡した場合は、孫が代襲相続人になる)
- 第二順位:直系尊属(父母など)
- 第三順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹がすでに死亡した場合は、甥・姪が代襲相続人になる)

ただし、相続放棄をした人は、初めから相続人にならなかったものとみなされます。
相続放棄した人は、相続財産を一切受け継がないため、原則として相続税を支払う義務はありません。相続税の申告も不要です。
相続税の相続放棄や、手続きについて詳しく知りたい方は、関連記事『自分で相続放棄の手続きをする方法|放棄すべきケースや注意点も解説』をお読みください。
(2)代襲相続人
代襲相続人は、法定相続人が亡くなった場合に、代わりに相続人となる人をいいます。
例えば被相続人からみて子どもにあたる人物Aが亡くなっている場合、人物Aの子ども(被相続人からみた孫)が代襲相続人として相続を行います。

代襲相続の詳しい仕組みについては、関連記事『代襲相続とは?読み方・意味・範囲・割合をわかりやすく解説』をご覧ください。
(3)受遺者|2割加算に注意
遺言によって無償で財産を他人に与える「遺贈」で財産を相続した受遺者も、相続税を払わなければなりません。遺贈の相手方(受遺者)は、法定相続人でなくても構いません。
なお、受遺者が法定相続人でない場合、相続税が2割加算される点には注意してください。
遺贈により財産を取得すると、相続税以外にも税金がかかる可能性があります。遺贈にかかる税金については、関連記事『遺贈でかかる税金は?|相続税・不動産取得税・登録免許税を解説』をお読みください。
(4)特別縁故者|2割加算に注意
特別縁故者とは、被相続人と特別の関係にあった人で、相続人がいないときに家庭裁判所の審判によって財産の分与を受ける人をいいます。具体的には、内縁の妻などをいいます。
特別縁故者も、財産の分与を受けた場合は相続税の支払い義務が生じます。
なお、特別縁故者は法定相続人でないので、相続税が2割加算される点には注意してください。
相続税と内縁の妻の関係については、関連記事『内縁の妻に相続税の支払義務がある場合とは?』をお読みください。
(5)特別寄与者|2割加算に注意
相続人以外で、被相続人の財産の増加や維持に寄与した人物です。具体的には、義父母の介護をしていた人などをいいます。
該当の人物が特別寄与料を受け取った場合は、相続税の課税対象(みなし遺贈)となり、申告・納付が必要になることがあります。
なお、特別寄与者は法定相続人でないため、相続税が2割加算される点には注意してください。
(6)相続時精算課税の贈与で財産を取得した人
相続時精算課税制度とは、累計2,500万円の非課税枠(特別控除)の範囲内の贈与であれば、贈与税が課税されない制度です。
相続時精算課税制度を利用して贈与した財産の価額(令和6年1月以降の贈与については年110万円の基礎控除を除きます)は、すべて相続財産に加算され、相続税が課税されます。
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相続税を払わなくても良い人はいる?
相続税を支払うかどうかは「基礎控除額」を超えるかどうかポイントになります。
基礎控除以下なら納税不要
相続や遺贈によって財産を取得した場合でも、各人の課税価格の合計額が基礎控除額を超えなければ、相続税を支払う義務はありません。この場合、相続税の申告も不要です。
課税価格とは、プラスの相続財産から債務・葬式費用等を差し引いて、相続開始前3年以内の贈与財産の価額を加算した額です(なお、加算期間は今後、段階的に延長される予定です。詳しくは最新の税制をご確認ください)。
基礎控除を超えていても相続税が発生しないケース
課税価格の合計額が基礎控除を超える場合でも、特例や税額軽減制度を適用した結果、相続税が発生しないケースもあります。
ここでは、「小規模宅地等の特例」と「配偶者の税額軽減」についてご紹介します。
- 小規模宅地等の特例
- 配偶者や親族が相続等で土地を取得した場合、一定の要件を満たせば、その土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。
- 詳細:ケース別・小規模宅地等の特例の計算方法と計算例!適用要件や注意点も解説
- 配偶者の税額軽減
- 「課税価格の合計額×法定相続分」または「1億6,000万円」のうち、いずれか大きい金額まで配偶者の相続財産について相続税額がかからない制度です。
- 詳細(1):相続税の配偶者控除の要件・計算方法・注意点も解説
- 詳細(2):二次相続の相続税に注意|二次相続に有効な節税対策5選も紹介
相続税は誰がいくら払う?負担割合の計算方法
相続税は「相続人全員でまとめて計算した総額」を、「各人が実際に取得した財産の割合」に応じて分担する仕組みになっています。まず全体の税額を一括で計算してから個人の負担額を按分するという、2段階のステップを踏む点が特徴です。
相続税の総額はまず一括で計算
相続税の総額は、実際の遺産分割の内容に関係なく、法定相続人が法定相続分どおりに財産を取得したと仮定して計算します。各人の仮の税額を求めてすべて合算したものが、相続税の総額です。
各人の負担割合で按分
相続税の総額が決まったら、各人が実際に取得した財産の割合に応じて比例配分(按分)し、それぞれの納付税額を算出します。
各人の納付税額=相続税の総額×(各人の課税価格÷課税価格の合計額)
つまり、多く財産を受け取った人ほど、相続税の負担も大きくなります。
簡単な例
夫が亡くなった時の相続税の総額が630万円で、相続財産の総額が1億円(妻8,000万円・長男・長女各1,000万円)のケースを考えてみます。
課税価格が8000万円の妻の納付税額は504万円、1,000万円の長男は63万円、1,000万円の長女は63万円となります。
もっとも、特例「配偶者の税額軽減」を適用すれば、妻の納付税額は0円となります。
簡単な例のまとめ
| 実際に納付する相続税 | |
|---|---|
| 妻 | 0円※ |
| 長男 | 63万円 |
| 長女 | 63万円 |
※配偶者の税額軽減の特例適用
計算の具体的な手順や数値例は関連記事『相続税はいくらからかかる?何円から申告?相続税の計算方法も解説』をご覧ください。
相続税は誰が払ってもいい?代払い・立替のルール
結論からいうと、相続税は原則として各相続人が自分の分を自分で納付する必要があります。ただし、一時的な立替払いは認められており、その後きちんと精算すれば問題ありません。
原則は各人がそれぞれ納付
相続税は、財産を取得した各人がそれぞれ自分の納付税額を納めるのが原則です。税務署は誰が申告・納付の義務者かをきちんと把握しています。
そのため、納税資金は各自で早めに準備しておくことが基本です。
一時的な立替払いは可能でも精算必須
相続税は各人でそれぞれ払うことが原則ですが、一時的であれば誰かが立て替えて他の人の分を代わりに支払ったり、まとめて支払ったりすることもできます。ただし、立替払いをした場合は必ず後から精算することが前提です。
立替分を返済してもらうことを明確にするため、口頭ではなく金銭消費貸借契約書を作成しておくと安心です。
精算しないと「みなし贈与」のリスクあり
立て替えた後、精算せずそのまま放置すると、立替分が「みなし贈与財産」であると税務署に判断される可能性があります。そうなると、立て替えてもらった(相続税を自分で払わなかった)相続人等に贈与税がかかるおそれがあります。
相続税の負担を減らそうとして誰かにまとめて払ってもらうと、かえって贈与税という別の税負担が生じるリスクがある点に注意が必要です。
関連記事
みなし贈与税がかかる9ケース|計算方法や取り消し・軽減法を解説
相続税はいつまでにどうやって払う?
続いて、相続税はいつまでに払うのか、どのように払うのかをみていきましょう。
相続税は「10か月以内」に原則一括で払う
相続税は、相続の開始があったことを知った日(被相続人の死亡を知った日)の翌日から10か月以内に、申告と納付をする必要があります。この期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、これらの日の翌日を期限とみなしています。
なお、申告と納付の順番は決められていないため、申告に必要な相続税申告書が完成していない場合でも、払うべき相続税の金額がわかっているなら先に納付しても問題ありません。
相続税申告書の提出先は、被相続人が住んでいた住所地を管轄する税務署です。相続税を払う人の住所地を管轄する税務署ではないので注意しましょう。
相続税の納め方は5種類
相続税は、以下の5つの方法で納付できます。
- 金融機関の窓口で納付
- 申告書を提出した税務署の窓口で納付
- コンビニエンスストアで納付(税額30万円以下の場合のみ)
- クレジットカード決済で納付(1回あたりの決済額に上限あり)
- 決済アプリで納付(税額30万円以下の場合のみ)
また、相続税の支払いには「相続税納付書」が必要です。これはお近くの税務署でももらえますが、管轄の税務署でもらうと、税務署名と税務署番号が印字されているためわざわざ調べて記入する手間が省けます。
なお、インターネットでダウンロードすることはできないため注意してください。
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相続税で払うお金はどう用意する?遺産から払える?
相続税は大きな金額になりがちなので、どのようにお金を用意するか悩まれる方もいるでしょう。
そこでここからは、相続税に充てるお金の用意方法を4つ解説します。
(1)遺産から払う|遺産分割後なら可能
相続税の申告期限までに遺産分割が完了していれば、相続した遺産から相続税を支払えます。
納付期限までに相続の手続きが終わらない場合、遺産はまだ相続人全員の共有財産という扱いになるため、原則として自由に取り崩して納付することはできません。
なお、不動産などの現金以外を相続し、現金で納付する場合は不動産を現金化するプロセスも必要になります。
(2)被相続人の口座の預金を充てる
預貯金の仮払い制度を使うと、被相続人の口座にある預貯金を引き出して相続税の支払いに使えます。この場合、遺産分割が終わっている必要はありません。
ただし、仮払い制度を利用する場合は以下の点にご注意ください。
- 仮払い制度で引き出せるのは、一定額に限られる(上限あり)
- 仮払い制度で引き出した金額は、自身の相続分と相殺される
- 仮払い制度を利用して預貯金を引き出すと、相続放棄できなくなる可能性がある
(3)被相続人の生命保険から払う
生命保険から支払われた保険金を相続税の支払いに充てることも可能です。
生命保険金は受取人固有の財産とみなされ遺産分割の対象にはならないため、遺産から払うときのように遺産分割を待つ必要はありません。
ただし、生命保険金には、被保険者・契約者・受取人の関係性に応じて税金がかかります。
この点については『死亡保険金にかかる税金を早見表で確認|非課税枠やお得な契約形態』にてご確認ください。
(4)自分の財産から用意
上記の方法でも相続税の支払いができない場合は、自分の財産から相続税を支払う方法もあります。
相続税は現金一括納付が原則であるため、原則として現金で用意しましょう。
相続税の支払いが間に合いそうにない時はどうする?
相続税の納付期限を過ぎてしまった場合はペナルティが発生し、他の相続人に迷惑をかけるおそれもあります。
また、どうしても期限内に一括納付できない場合は、「延納」や「物納」という例外的な納付方法も用意されています。
間に合わなかった時のペナルティと連帯納付義務
相続税の支払いが間に合わなかった場合、加算税や延滞税がかかります。
また、相続人の中に期限までに相続税を支払わない人がいたら、他の相続人は「連帯納付義務」を負います。
連帯納付義務とは
相続人の中に相続税を払わない人がいた場合、各相続人が自分の取得した財産の範囲内で未納の相続税を納付する義務。
つまり、各相続人がお互いに連帯して滞納分を納付しなければならないのです。
連帯納付義務者が相続税を肩代わりしなければならなくなった場合、ただ未納分を支払っただけだと贈与とみなされる可能性があり、本来の納税義務者に贈与税がかかるおそれが生じます。
そのような事態を回避するため、相続税の肩代わりをすることになった場合は、連帯納付義務者と本来の納税義務者との間で金銭消費貸借契約を結び、契約書を作成しておくと良いでしょう。
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延納する|分割での納付
多額の相続税を一括納付するのが困難な場合は、一定の要件を満たせば、例外的に分割払いによる「延納」が認められます。延納を申請するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
延納の要件
- 納付すべき相続税額が10万円を超えること
- 納期限までに、または納付すべき日に金銭納付が困難な事由があること
- 延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること
(ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合は、担保は不要) - 納期限または納付すべき日までに「延納申請書」および「担保提供関係書類」を税務署長に提出すること
詳しくは『相続税の延納・物納|利用条件や利子税、担保、申請手続きを解説』をご覧ください。
物納する|現金以外での納付
延納によっても金銭での納付が困難な場合は、不動産などの財産で相続税を納付する「物納」が認められることがあります。物納を申請するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
物納の要件
- 延納によっても金銭での納付が困難な金額の範囲内であること
- 物納申請財産が相続税の申告の対象となっている不動産等の財産のうち定められた種類の財産であり、かつ、定められた順位によっていること
- 納期限または納付すべき日までに「物納申請書」および「担保提供関係書類」を税務署長に提出すること
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相続税が払えない場合の解決方法を8つ紹介|払わないとどうなる?
相続税でお困りなら税理士に相談を
相続税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、法定相続人や受遺者など相続を受けた全員が納めなければなりません。
すでに遺産分割が終わっている場合は遺産から相続税を払うことも可能ですが、遺産分割が終わっていない場合は各相続者の財産や、仮払い制度で引き出した被相続人の預貯金などを使う方法があります。
誰かの相続税を代わりに支払うことも可能ではありますが、場合によっては贈与税が発生することもあるので注意しましょう。
このように相続税にはさまざまな注意点があります。よくわからず不安な場合は税理士にご相談ください。
税理士への報酬に関しては相続人の一人が全額払っても、相続人全員で均等に負担しても構いません。
相続税の税理士報酬について詳しくは、『相続税申告の税理士報酬相場|遺産総額の「1%」が報酬って本当?』をお読みください。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
