相続税の脱税は税務調査でばれる?|ペナルティや回避方法を解説

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相続税の脱税

「相続税の脱税が税務調査でばれないか不安」

そのような方に向け、この記事では、税務署に脱税を疑われやすいケースや、脱税がばれたときのペナルティについて解説します。

相続税の脱税は、悪質なものだと相続税法違反として刑事罰に問われる可能性もあります。

相続税の脱税や申告漏れを疑われないための対策もご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。

相続税の脱税は税務調査でばれる?

相続税の脱税は税務調査でばれる

相続税の脱税は、税務調査でばれます。

なぜなら、税務署は、国税庁のKSK(国税総合管理)システムを使い、被相続人の資産状況に関するあらゆる情報を把握しているからです。

さらに、脱税や申告漏れが疑われる事案では、金融機関に照会して、被相続人と家族の取引履歴を過去10年分ほど取り寄せて調べます。

税務署は、これらの情報を駆使して、脱税や申告漏れを見抜くのです。

では、脱税や申告漏れを疑われやすいのは、どのようなケースなのでしょうか?

具体的に見ていきましょう。

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税務署に脱税や申告漏れを疑われやすいケースは?

①金融資産が多いケース

相続財産のうち金融資産(預貯金、株式、債券など)の割合が高いケースは、脱税や申告漏れを疑われやすいです。

その理由は、金融資産は不動産に比べて隠ぺいするのが簡単だからです。

金融資産が多い事案では、下記②の名義預金の有無を重点的に調査されます。

名義預金が見当たらなくても、タンス預金や海外口座への送金など別の方法で財産隠しをしていないか徹底的に調べられます。

②名義預金の疑いがあるケース

名義預金とは、預貯金口座の名義人とお金を支出した人が異なるケースを言います。

名義預金を疑われる典型例は、専業主婦、未成年、孫など、収入がない家族名義の預金口座に多額の預金がある場合です。

預金の原資を被相続人が拠出している、預金通帳や印鑑を被相続人が管理している等の事情があると、預金は名義預金である、すなわち相続財産であると認定される可能性が高いでしょう。

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③相続開始直前に多額の引き出しがあるケース

相続開始直前に、被相続人名義の預金口座から多額の引き出しがあると、脱税のためにどこかにお金を移動したのではないかと疑われやすいです。

税務調査では、この点を明らかにするために「被相続人の病歴や症状」について、それとなく質問されます。

例えば、被相続人自身が寝たきりで預金の引き出しなどできない状態だった時期に多額の引き出しがあった場合、家族の誰かが預金を引き出し脱税したのではないか、と追及されることになるでしょう。

相続税の脱税に時効はある?

相続税の時効(正しくは除斥期間)は、原則として申告期限から5年です

相続税の申告期限は、相続開始があったことを知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内です。

ただし、「偽りその他不正の行為」により納税を免れた場合は、時効期間は7年になります。

「偽りその他不正の行為」の典型例は脱税です。

例えば、相続税を免れる意図をもって、あらかじめ遺産から預貯金や債券などを除外して課税価格を減少させる脱税行為は「偽りその他不正の行為」に該当します。

このような脱税行為がある場合、7年の時効が経過する前に税務署に発覚する可能性が極めて高いです。

なぜなら、税務署はKSKシステムを始めとする広大な情報網を有しているからです。

脱税が発覚すると、重加算税や延滞税に加え、刑事罰を科される可能性があります。

脱税をしても何一つ利益はありません。脱税について不安がある方は、今すぐ弁護士など専門家に相談することをおすすめいたします。

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相続税の脱税や申告漏れに対するペナルティ

相続税の脱税や申告漏れに対するペナルティは、大きく分けて以下の3つです。

1 加算税
2 延滞税
3 刑事罰(相続税法違反)

以下、それぞれのペナルティについてご説明します。

1 加算税

①無申告加算税

【無申告加算税の計算方法】

申告の種類計算方法
税務調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告した場合納付すべき税額×5%
税務調査後に期限後申告した場合
(納税額が50万円までの部分)
納付すべき税額×15%
税務調査後に期限後申告した場合
(納税額が50万円を超える部分)
納付すべき税額×20%

【無申告加算税が課されない場合】

申告期限内に申告しなかったことに正当な理由があり、期限後1か月以内に申告する等の要件を満たせば、無申告加算税は課されません。

②過少申告加算税

【過少申告加算税の計算方法】

申告の種類計算方法
税務署に指摘されて修正申告した場合納付すべき税額×10%
※追加納税額が、当初の申告税額又は50万円を超えているときは、その超えている部分×15%

【過少申告加算税が課されない場合】

税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合、過少申告加算税は課されません。

③重加算税

【重加算税の計算方法】

申告の種類計算方法
財産を隠ぺい又は仮装し、過少申告した場合納付すべき税額×35%
財産を隠ぺい又は仮装し、申告しなかった場合納付すべき税額×40%

【重加算税が課される具体例】

国税庁は、重加算税の対象となる隠ぺい・仮装に当たる例として、以下の事実がある場合を挙げています(「相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」参照)

重加算税の対象となる隠ぺい・仮装に当たる例

●相続人が、帳簿、決算書類、契約書、請求書、領収書等について改ざんをしたり、隠したりしていること

●相続税が、課税財産を隠したり、架空の債務をつくるなどして課税財産の価額を圧縮していること

●相続人が、虚偽の答弁を行っていることやその他の事実関係を総合判断して、相続人が課税財産の存在を知りながらそれを申告していないことが合理的に推認できること

など

2 延滞税

法定納期限(相続開始があったことを知った日の翌日から10カ月目の日)までに相続税を納付しない場合、延滞税が課されます。延滞税は、加算税に加えて課税されます。

【延滞税の利率】

納付の時期延滞税の割合
法定納期限の翌日から2カ月以内に納付した場合「年7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合
(令和5年は2.4%)
法定納期限の翌日から2カ月経過後に納付した場合「年14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合
(令和5年は8.7%)

※延滞税の割合は変動する可能性があります。最新情報は、国税庁ホームページ内の「延滞税の割合」をご参照ください。

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3 刑事罰(相続税法違反)

偽りその他不正行為により相続税を免れた者は、相続税法違反として、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処せられます。

懲役と罰金が併科される可能性もあります。(相続税法68条1項)

悪質な脱税行為の場合は、加算税、延滞税に加え、上記の刑事罰が科される可能性があります。

【裁判例】

●相続人が、相続財産から現金、預貯金等の一部を除外するなどして内容虚偽の相続税申告書を提出し、相続税合計1億7,676万円を免れた事案。

裁判所は、被告人を懲役1年6月、罰金2,500万円、懲役につき執行猶予3年に処しました。(名古屋地判平成29年6月1日)

●相続人が、架空の債務を計上して相続税課税価格を減少させた上、虚偽の相続税の申告をし、2億2,734万円余の相続税を免れた事案。

裁判所は、被告人を懲役2年、罰金5,400万円、懲役につき執行猶予3年に処しました。(東京地判平成29年8月22日)

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相続税の脱税や申告漏れを疑われないための対策3選!

税理士から適切な節税方法のアドバイスを受ける

相続税の節税対策を間違った方法で行うと、脱税や申告漏れとみなされ、ペナルティを科される可能性があります。

例えば、被相続人が、生前贈与のつもりで家族に内緒で家族名義の口座に預金をしていた場合、税務署に名義預金とみなされ追徴課税されるケースが少なくありません。

被相続人は生前贈与のつもりでも、名義人に「お金をもらった(=贈与を受けた)」という認識がなければ、贈与は成立しないのです。

税務署に名義預金とみなされないためのポイントは、贈与ごとに贈与契約書を作成することと、通帳や印鑑を名義人が管理することです。

相続税の節税対策として贈与を行う場合、贈与契約書は相続税に強い税理士に作成してもらうと、より一層安心です。

節税対策は様々です。

どの節税対策をとるにしても、事前に相続税に強い税理士からアドバイスを受けると脱税の疑いを回避するのに非常に効果的です。

相続税に強い税理士に申告を任せる

相続税の脱税や申告漏れを疑われないためには、相続税の申告を税理士に任せるのが最善策です。

なぜなら、相続税の申告はとても複雑だからです。

相続人本人が申告すると、それだけで税務署に脱税や申告漏れを疑われやすくなります。その結果、税務調査の対象になる可能性がぐんと上がってしまうのです。

一方、税理士が関与すれば、初めから正しい申告ができるため、加算税や延滞税などの余分な税金を払うリスクを回避できます。

ただし、相続税は、税理士によって申告実績にかなり差があります。中には、相続税申告の経験がほとんどない税理士がいるのも事実です。

相続税申告を依頼するなら、申告実績が豊富な相続税に強い税理士がおすすめです。

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書面添付制度を活用する税理士を選ぶ

書面添付制度とは、税理士が「申告書の記載内容は正しい」というお墨付きを与える書面を添付して申告する制度です。

書面添付制度を利用した場合、税務調査の確率が大幅に下がります。

なぜなら、書面添付をする場合、税理士は税務署に疑念を持たれるであろうポイントをあらかじめ洗い出し、その疑念を払拭するための詳細な説明を加えるからです。

書面添付制度を活用するには、相続税申告の実務に精通している必要があります。

この制度を利用して税務調査を回避したいとお考えの方は、ぜひ相続税に強い税理士にご相談ください。

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