相続税の延滞税とは?計算方法・税率・延滞税を回避する方法を解説

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相続税の延滞税

相続税の延滞税とは、相続税の申告・納付期限までに正しく納付できなかった場合に課せられるペナルティのことです。

相続税の申告・納付期限は被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。

延滞税は、本来納付すべき相続税とは別に納めるものですので、延滞税が課されると税負担が重くなります。

この記事では相続税の延滞税の計算方法や税率、延滞税を課税されないための対策などを解説します。

相続税の延滞税とは

延滞税は納付期限に遅れたときに課される

相続税の延滞税とは、相続税の納付期限までに、正しい相続税額を納められなかった場合に課される附帯税です。

附帯税とは、納税者が申告期限までに申告書を提出しなかったり、納付期限までに税金を納付しなかったときに課せられる税金です。

相続税の納付期限は、被相続人(亡くなった方)が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。たとえば、被相続人が2023年5月1日に死亡した場合、相続税の納付期限は2024年の3月1日となります。

たまに相続税の申告期限を6か月と勘違いしている方がいますが、平成4年の税制改正以降は、10か月となっているので注意してください。

相続税の延滞税が課せられる人

相続税の延滞税が課されるのは以下のようなケースです。

  • 納付期限までに相続税を納付していない
  • 相続税の修正申告をした
  • 相続税の期限後申告をした
  • 税務調査で更正・決定処分を受けた

すべての項目に通じているのが、納付期限までに正しい相続税額を納付していないことです。

相続税の修正申告とは、本来納めるべき税額よりも少なく納めてしまった場合に、納付期限が過ぎてから正しい税額に申告しなおすことです。詳しくは、関連記事『相続税の修正申告が必要な人とは?申告すべきケースや申告方法を解説』をお読みください。

税務調査の更正処分とは、申告書の内容に誤りがある場合に申告内容を修正し、正しい税額を確定させる処分です。

決定処分とは、期限までに申告書を提出していない場合に調査に基づいて課税額を決定する処分です。更正処分との違いは、申告書を提出しているかどうかです。

相続税の延滞税の税率

延滞税の税率は2段階で設定

延滞税の税率は、納付期限の翌日から2か月以内か、2か月を経過しているかで異なります。

延滞税の税率は原則、納付期限の翌日から2か月以内に納付した場合が「年7.3%」、納付期限の翌日から2か月経過してから納付した場合が「年14.6%」と決められています。

しかし、平成12年以降は長期化する低金利に対応するため、延滞税特例基準割合に基づき、延滞税の税率が変動しています。

たとえば、令和6年1月1日~令和6年12月31日の延滞税の税率は、納付期限の翌日から2か月以内に納付した場合が「年2.4%」、納付期限の翌日から2か月経過してから納付した場合が「年8.7%」です。

延滞税特例基準割合とは、金利に連動して変動する割合のことで、金利が低くなると延滞税も低くなり、金利が高くなると延滞税も高くなります。

以下が、納付期限からの期間と延滞税の税率の一覧表です。

期間延滞税の税率
納付期限の翌日から2か月以内・年7.3%
・延滞税特例基準割合+1%
のいずれか低い割合
納付期限の翌日から2か月経過・年14.6%
・延滞税特例基準割合+7.3%
のいずれか低い割合

相続税の延滞税の税率は毎年変動する

延滞税の税率の算定根拠となる延滞税特例基準割合は、銀行の「新規の短期貸出約定平均金利」という指標に連動しているため、毎年変動します。

新規の短期貸出約定平均金利とは、銀行や信用金庫といった金融機関が、資金を個人や法人に貸し出す場合の金利を平均した数値のことをいいます。数値は日本銀行が毎月公表しています。

【参考】延滞税特例基準割合の算出方法

各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の、新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として、各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算。

引用:国税庁『延滞税の割合

平成30年から令和6年の延滞税の税率は、以下のとおりです。

期間納付期限の翌日から2か月以内納付期限の翌日から2か月経過
令和6年1月1日~令和6年12月31日年2.4%年8.7%
令和5年1月1日~令和5年12月31日年2.4%年8.7%
令和4年1月1日~令和4年12月31日年2.4%年8.7%
令和3年1月1日~令和3年12月31日年2.5%年8.8%
平成30年1月1日~令和2年12月31日年2.6%年8.9%

参考:国税庁『No.9205 延滞税について

納付期限は相続税の納付が遅れた理由によって異なる

納付期限の翌日から2か月以内か、2か月を経過しているかで延滞税の税率が変わると解説しました。この「納付期限」は、相続税の納付が遅れた理由によって異なります。

※以下の解説で出てくる相続税の延滞税の税率は、令和6年のものです。

法定納付期限内に相続税申告をしたが、相続税が未納付の場合

期限内に相続税申告したものの、納付はしていない場合の納付期限は、法定納付期限の日(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内)です。

すなわち、相続税の法定納付期限と同じです。

相続税の延滞税の税率は、法定納付期限の翌日から2か月間が年2.4%、それ以降が年8.7%となります。

法定納付期限後に相続申告や修正申告した場合

法定納付期限後に相続税申告(期限後申告)や修正申告した場合の納付期限は、期限後申告書や修正申告書を提出した日です。

つまり、期限後申告書や修正申告書を提出した日の翌日から2か月間は相続税の延滞税の税率が年2.4%となり、それ以降は年8.7%に変わります。

税務署によって更正処分・決定処分を受けた場合

税務署による更正処分・決定処分を受けて納税する場合の納付期限は、更正通知書を発した日から1か月後の日です。

したがって、法定納付期限の翌日から納付期限までと、納付期限の翌日から2か月間は相続税の延滞税の税率は年2.4%です。

ほかのケースと同様に2か月経過した後は、年8.7%の延滞税がかかります。

相続税の延滞税の計算方法

相続税の延滞税の計算式

相続税の延滞税の計算式は次のとおりです。

延滞税の計算式

追加で納める税額×延滞税の割合(税率)×延滞日数÷365日

相続税の延滞税の計算ルール

相続税の延滞税を計算するときは、以下の点をご留意ください。

  1. 追加で納める税額に、10,000円未満の端数があるときは切り捨てて計算。
  2. 算出した延滞税の額が1,000円以上で、100円未満の端数があるときは切り捨てて納付。
  3. 算出した延滞税が1,000円未満の場合、納付の必要はなし。

相続税の延滞税を実際に計算してみる

相続税の延滞税を計算する流れを、以下の2つの具体例を使って解説します。

(1)期限内に申告したが、未納付の場合
(2)期限後に修正申告した場合

延滞税の計算例① 期限内に申告したが、未納付の場合

法定納付期限内に相続税申告はしたけれど、相続税の納付はしていない場合にかかる延滞税の計算例です。

法定納付期限の翌日から実際に納付された日まで、延滞税が課税されます。

納付期限から2か月以内に納付を済ませた場合には、2か月以内の税率で計算、納付期限から2か月を経過していた場合は、2か月以内の税率と2か月経過の税率の両方を使用して計算します。

【条件】

法定納付期限が令和4年3月31日、相続税額100万円

【令和4年4月30日に納付した場合】

100万円×2.4%×30日÷365日≒1,900円(100円未満切捨)

相続税の延滞税は1,900円となります。

【令和4年6月30日に納付した場合】

①法定納付期限から納付するまでの3か月のうち、税率が2.4%の2か月間の延滞税
100万円×2.4%×61日÷365日≒4,010円(1円未満切捨)

②法定納付期限から納付するまでの3か月のうち、税率が8.7%の1か月間の延滞税
100万円×8.7%×30日÷365日≒7,150円(1円未満切捨)

①+②
4,010円+7,150円≒1万1,100円(100円未満切捨)

相続税の延滞税は1万1,100円となります。

延滞税の計算例② 期限後に修正申告した場合

修正申告書を提出した日が納付期限です。実際に納付された日まで、延滞税が課税されます。納付期限から修正申告書を提出した日までについても延滞税が課税される点に注意しましょう。

ただし、期限内または期限後に相続税申告(納付)をしてから1年以上経過し修正申告をした場合、納付期限から1年を経過した日から修正申告の提出日までの期間の延滞税が免除される「延滞税の計算期間の特例」という特例制度があります。

【条件】

  • 法定納付期限が令和3年3月31日、相続税額100万円。
  • 期限内に相続税申告・納付した
  • 期限から1年後の令和4年3月31日に修正申告を行い、追加の納付額が20万円の場合。

【令和4年4月30日に納付した場合】

①法定納付期限から修正申告するまでの1年の延滞税
20万円×2.4%=4,800円

②修正申告してから納付するまでの1か月の延滞税
20万円×2.4%×30日÷365日=365円

①+②
4,800円+365円≒5,100円(100円未満切捨)

相続税の延滞税は5,100円となります。

【令和4年6月30日に納付した場合】

①法定納付期限から修正申告するまでの1年の延滞税
20万円×2.4%=4,800円

②修正申告してから納付するまでの3か月のうち、税率が2.4%の2か月間の延滞税
20万円×2.4%×61日÷365日=802円

③修正申告してから納付するまでの3か月のうち、税率が8.7%の1か月間の延滞税
20万円×8.7%×30日÷365日=1,430円

①+②+③
4,800円+802円+1,430円≒7,000円(100円未満切捨)

相続税の延滞税は7,000円となります。

延滞税の計算期間の特例とは

期限内に申告書を提出していて、法定期限後1年を過ぎてから修正申告や更正した場合、通常は修正申告書を提出した日(または更正通知書を出した日)まで延滞税が計算されます。

しかし特例として、修正申告書を提出した日(または更正通知書を出した日)までの期間は、延滞税の計算期間から除外されます。これが延滞税の計算期間の特例です。

なお適用は、申告者が意図的に財産を隠ぺいしていたなどの悪意がない場合に限ります。

相続税の延滞税を回避するためには

(1)なるべく早く納付する

相続税は申告と納付の順番が決められていません。そのため、相続税として納める税額が計算できていれば、申告の前に納付をすることも可能です。

申告後に納付を忘れてしまうケースもありますので、納めるべき税額が計算できた時点で納付することをおすすめします。

また、申告・納付に間違いがあった場合、相続税の申告期限内であれば、ペナルティ無しで修正することができます。これを訂正申告といいます。万が一のことも考えて、なるべく早く申告・納付しておいて損はないでしょう。

(2)特例の適用で納税義務がなくなった場合も申告する

「配偶者の税額軽減」や、不動産の相続に使われる「小規模宅地等の特例」の適用により相続税額が0円になり、相続税の納付が必要がなくなったとしても、相続税申告しなければなりません。

申告書の提出が特例適用の「要件」になるため、適用により相続税がかからなくなったとしても相続税申告は忘れないようにしましょう。

もし後から申告を忘れてしまっていたことが発覚すると、特例の適用要件を満たしていないことになるため、特例を適用していない相続税額に対して追徴されるほか、それとは別に無申告加算税や延滞税も支払わなければならなくなります。

どの特例は相続税申告が必要なのか気になる方は、関連記事『【保存版】相続税が軽減される特例と控除一覧をまとめて紹介』をご確認ください。

(3)相続税に強い税理士に相談する

相続税の申告や納付、その手前の相続税の計算などで不安がある場合には、相続税に強い税理士に相談しましょう。

相続税に強い税理士に相談することで、申告ミスで追徴課税を受けるリスクを極限まで減らせるほか、効果的な節税方法なども聞くことができます。

相続税の相続税の無料相談

相続税を納付できないときの対処法

相続税は、納付期限までに現金一括で納めることが原則です。しかし、相続する財産に現金が含まれていない場合などは、10か月以内に現金を用意できないこともあるでしょう。

そういったケースでいくつか利用できる制度があるのでご紹介します。

相続税の延納制度で分割払い

まずは相続税の延納制度です。相続税の延納制度は、一定の要件を満たした場合に相続税を分割払いできるというものです。納付を分割払いで先延ばしできるという利点がありますが、利息を意味する「利子税」が発生するため注意が必要です。

延納制度を利用するためには、相続税の納付期限までに延納金額や担保財産を記載した延納申請書を提出します。もし期限までに「延納申請書に添付する担保提供関係書類」を準備できない場合には、最大で6か月提出期限を延長できます。

また、延納制度の分割払いでも支払いが難しい場合には、不動産などの相続財産で納付できる物納制度もあります。

相続税の延納・物納について詳しくは、関連記事『相続税の分割払いができる【延納】とは?要件や利子税についても解説』をお読みください。

相続税納付の支援ローンを組む

次に、相続税を納付するためのローンを組むこともできます。金融機関や不動産会社が提供している支援ローンを活用して、相続税を期限内に払い切ることができます。

延納制度と支援ローンのどちらを利用するかは、延納制度で発生する利子税と、ローンで発生する金利支払額を比べて、費用が低く済む方を選択すると良いでしょう。

相続税の支援ローンについては、関連記事『支援ローンを組んで相続税を納付|知っておきたいメリットと注意点』をお読みください。

相続税の相続税の無料相談

延滞税以外に加算されるペナルティ

延滞税に加えて、ペナルティとして以下の税金が課される場合があります。課される税金の種類と理由は以下のとおりです。

無申告加算税|相続税の申告自体していない場合

相続税の法定納付期限後に税務調査を受ける前に申告した場合や、税務調査を受けたあとに申告した場合は、延滞税に加えて無申告加算税が課税されます。

無申告加算税の税率は以下のとおり、税務調査の事前通知を受けたか、受けていないかによって異なります。

無申告加算税 税率

関連記事

相続税の税務調査が来る時期はいつ?申告から1~2年後って本当?

無申告加算税が課税されないケース

相続税の法定納付期限後に申告した場合でも、以下の2点を両方満たす場合、無申告加算税は課税されません。

  • 法定申告期限から1か月以内に自主的に相続税申告がされている
  • 期限内申告する意思があったと認められる一定の場合※に該当すること

※一定の場合とは、以下の(1)(2)いずれの要件にも該当する場合をいいます。

(1)法定期限後に申告する相続税の税額全額を、法定納付期限内に納付している

(2)法定期限後に相続税の申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、無申告加算税が課税されないケースに該当した場合の適用を受けていない

過少申告加算税|税務署の指摘で追加納付した場合

税務署の指摘により、実際の相続税額よりも少ない金額を申告していたことが発覚した場合は、延滞税に加えて過少申告税が加算されます。

過少申告加算税が課税されるのは、税務調査の事前通知を受けたあとに追加納付の必要が生じた場合です。

過少申告加算税 税率

参考:No.2026 確定申告を間違えたとき|国税庁

過少申告加算税の計算

過少申告加算税の計算式は次のとおりです。

過少申告加算税の計算式

追加で納める税額×過少申告加算税の税率

過少申告加算税の計算方法

たとえば、相続税の申告期限が令和4年3月31日、申告期限内に申告と相続税を納税後、令和4年6月30日に修正申告をおこない、追加の納税額が50万円となった場合の過少申告加算税は、以下のとおりになります。

申告のタイミング過少申告加算税計算式
税務調査の事前通知前に修正申告なし
税務調査の事前通知から税務調査までに修正申告2万5000円50万円×5%
税務調査を受けてから申告5万円50万円×10%

重加算税|悪質な虚偽記載・意図的な課税逃れの申告をした場合

課税を免れるために財産を隠し虚偽の申告をした場合や証拠書類を偽装した場合、過少申告加算税や無申告加算税の代わりに重加算税が課税される場合があります。

無重加算税の税率は以下のとおり相続税申告書を提出しているか、提出していないかで異なります。

申告書を提出していた場合は35%、提出していなかった場合は40%となります。

さらに、過去5年以内に相続税で無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合は、上記の税率に加え10%税率が加算されます。

相続税の延滞税について不安がある方は税理士に相談

相続税申告・納付にミスがあり、延滞税が発生してしまっている方は、早急に納付しましょう。

前述したとおり、延滞税は納付までの期間が長くなるほど、税負担も増える性質を持っています。

もしご自身で延滞税を納付することに不安がある場合は、相続税に強い税理士に相談しましょう。税理士報酬を気にされる方もいるかと思いますが、延滞税の納付を放っておくことは非常に危険です。

相続税に強い税理士に相談すれば、延滞税の計算や手続きもスムーズに進み、納めるべき税額が最小限になる上、納付のための現金が足りない場合の対処法も提案してもらえます。

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監修者情報

アトムグループ 協力税理士

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