相続税の修正申告|申告方法は?申告すべきケースは?ペナルティは?

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相続税の修正申告

「相続税を申告した後で申告額が少なかったことに気がついた!」

相続税の申告をした後、申告期限が過ぎてから申告額が少なかったことに気がついた場合には、修正申告をしなければなりません。

修正申告をする場合、「どのような手続きが必要か」「税金は多くとられるのか」「税理士に依頼すると報酬はいくらなのか」など、気になるのではないでしょうか。

この記事では相続税の修正申告についてお悩みの方に向けて、修正申告が必要なケースや申告方法、延滞税などついて詳しく解説していきます。

相続税の修正申告とは

修正申告は期限後に申告をやり直す手続き

相続税の申告は、申告・納付期限である「相続発生を知った日(被相続人が死亡した日)の翌日から10か月以内」に行います。

しかし、申告期限後に計算ミスを見つけたり、新しい相続財産の存在が発覚したことで、相続財産の額や支払うべき相続税額が変わってしまうこともあるでしょう。

そういった場合には、相続税の修正申告が必要です。

相続税の修正申告とは、申告期限内におこなった相続税申告の内容が、正しい内容と比べて少なかったときに行う、期限後の再申告手続きのことです。

修正申告の際には、足りなかった分の相続税と延滞税(納付が遅れた日数にかかるペナルティ)を支払います。また、税務署に指摘されてから修正申告した場合には、過少申告加算税もかかってしまいます。

よって、相続税申告に誤りがあったとわかった時点で、「なるべく早く、自主的に」修正申告することが重要です。

なお、正しい内容と比べて多く相続税を払っていた場合には、差額分を返してもらうための「更正の請求」という手続きをおこないます。更正の請求について詳しくは、本記事の『修正申告と間違いやすい訂正申告と更正の請求』をお読みください。

相続税の修正申告の期限は原則5年

相続税の修正申告の期限は、相続税の申告期限の翌日から5年以内です。

これは相続税申告の時効の期限と同じです。相続税は、申告期限から5年が経過すると申告・納付の義務がなくなります。

すなわち、申告期限の翌日から5年が経過すると、修正申告する必要もなくなるのです。もちろん5年が経過すれば、修正申告をしなくても延滞税などのペナルティは課されません。

ただし、意図的に修正申告していない場合の相続税申告の時効は7年です。その場合は、修正申告の期限も7年になります。

「それなら修正申告して税金を多く払いたくないし、時効まで逃げ切ろう」と思った方もいるかもしれません。しかし、これだけの期間、税務署の目をかいくぐるのは不可能だと考えた方が良いです。

申告ミスに気がついていながら修正申告をしないままでいると、重加算税という重いペナルティを課されるおそれがあるため、なるべく早く申告するようにしましょう。

どうして相続税の申告漏れが税務署にばれてしまうのか気になる方は、関連記事『相続税の申告漏れは「ばれる」|なぜ税務署にばれるのか税理士が解説』をお読みください。

修正申告と間違いやすい「訂正申告」と「更正の請求」

修正申告と間違いやすい手続きに、「訂正申告」と「更正の請求」があります。

修正申告とその他の手続き比較表

訂正申告は、相続税の申告期限内におこなった申告にミスがあった場合に、「申告期限内に」正しい税額で申告しなおすことです。期限内に正しい申告ができていることになるため、延滞税は発生しません。

更正の請求は、正しい税額よりも多く相続税を納付してしまった場合に、還付(返還)を求める手続きのことです。

更正の請求が行えるのは原則、相続税の申告期限から5年以内です。

以下の事情があれば申告期限から5年を過ぎても更正の請求が認められますが、それぞれの事由が生じたことを知った日の翌日から、4か月以内に更正の請求をする必要がありますので注意してください。

【申告期限から5年経っても更正の請求が認められるケース】

  • 未分割だった被相続人の財産を分割した
  • 未分割の財産を分割したことで、特例の適用などが可能になった
  • 相続人の数が変わった
  • 遺留分侵害額請求により相続した財産の一部を譲った
  • 遺贈を放棄、または遺贈を示す遺言書が見つかった

相続税の修正申告をしなければならないケース

相続税の修正申告をしなければならないケースは以下の4つです。

  • 相続税申告の内容が間違っていた
  • 期限後に新たな相続財産が見つかった
  • 税務調査により相続税の申告漏れが発覚した
  • 遺産分割がまとまらず、申告期限後に分割する

相続税申告の内容が間違っていた

納付する相続税の計算を間違えてしまったり、相続した土地や建物などの評価額の計算が間違っていたりするケースです。

誰にでも起こり得ますが、特に相続人が自らで相続税申告した場合は注意が必要です。

間違えた申告をしてしまい修正申告を行う手間や、課税される延滞税などの金銭的負担を考えると、相続税申告に不安がある方は、はじめから相続税に強い税理士に依頼することをおすすめします。

なお、令和4年度の相続税申告における税理士関与割合は85.9%となっており、9割近くの相続人が、相続税申告を税理士に依頼していることがわかります(令和4事務年度 国税庁実績評価書より)。

例えば、入院給付金と死亡保険金がまとめて支払われ、両者を区別せず相続財産に加算した場合には、相続税の加算申告が生じることがあります。

詳しくは『入院給付金に相続税がかかるケース|死亡保険金との混同は過少申告の要因 』をご覧ください。

期限後に新たな相続財産が見つかった

相続税の申告期限後に、新たな相続財産が見つかったケースです。

新たに見つかった相続財産を追加で相続する場合は、その分納めるべき相続税も増えますので、修正申告しなければなりません。

また、一度目の相続税申告時にすでに存在は知っていけれど、相続財産に含めて計算することを知らなかった相続財産がある場合にも修正申告の必要があります。

たとえば、保険料を被相続人が負担していた死亡保険金や、相続発生前3年以内(※)に受けた贈与財産などは、相続税の課税対象となります。

※令和5年 税制改正により相続発生前3年から7年に変更

税務調査により相続税の申告漏れが発覚した

上記の2つともに関連しますが、税務調査によって税務署から相続税の申告漏れを指摘され、修正申告をしなければならなくなるケースもあります。

相続税は、税金の中でも特に税務調査を受けやすく、自分ではちゃんと納付したと思っていても、その後の税務調査によって申告漏れが発覚するケースは多いです。

相続税を納めてから数年経って、ようやく申告漏れが発覚するといったケースもあります。

いずれにせよ、申告漏れが発覚した場合には速やかに修正申告を行いましょう。

関連記事

相続税の税務調査とは?対象になる人の特徴やならない方法を解説

遺産分割がまとまらず、申告期限後に分割する

遺産分割協議で相続人の合意が得られず、相続税の申告期限までに分割が間に合わないケースです。

遺産分割が相続税の申告期限までにまとまらない場合は、いったん、法定相続分で分割したものとして相続税の申告・納付をします。

なお、このような場合、基本的には延滞税の負担を考えて少し多めに相続税を納付し、後から更正の請求をすることが多いです。ただし、もし申告・納付額が少なかった場合には修正申告が必要です。

関連記事

遺産未分割で相続税申告する方法とデメリット|遺産分割に期限はある?

相続税の修正申告の手続きの流れ

修正申告は以下の流れで行います。

(1)修正申告に必要な書類を用意する

(2)修正申告書を記入する

(3)不足分の相続税額を納付する

(4)税務署に修正申告を行う

(1)修正申告に必要な書類を用意する

相続税の修正申告には、以下の書類が必要です。

  • 相続税の修正申告書
  • 納付書
  • 本人確認ができる書類

相続税の修正申告で必ず提出が求められる修正申告書は、「相続税の修正申告書(第1表)」と「相続財産の種類別価額表(第15表 修正申告用)」です。

相続税の修正申告書は税務署の窓口に備えられているほか、国税庁のホームページからでもダウンロード可能です。またe-Taxによるインターネット上での提出(送信)も可能です。

納付書は税務署の窓口、または金融機関の窓口で入手できます。なお、インターネットバンキングやクレジットカードなどの電子納付であれば、納付書は不要となります。

平成28年以降の相続を修正申告する場合には、「マイナンバーカード」か、「マイナンバーを確認できる通知カードなどと本人確認書類の写し」も必要です。

修正する内容によってはさらに必要な書類が追加されることもあるため、ご不安な方は一度税務署に確認することをおすすめします。

修正申告書のダウンロードはこちら
相続税の申告書等の様式一覧
(下にスクロールしていくとあります)

e-Taxはこちら
申告手続(相続税申告)

(2)修正申告書を記入する

「相続税の修正申告書(第1表)」には修正前の課税金額と、修正申告金額を記入します。

「相続財産の種類別価額表(第15表 修正申告用)」には修正後の相続財産の種類別価額を記入します。

また、修正申告の内容に合わせた書類の提出が必要なこともありますので、ご自身の修正申告にどの申告書が必要か不安な方は、申告前に税務署に確認してみてください。

なお、平成28年以降の相続を修正申告する場合には、相続人全員のマイナンバーを記入する必要があります。

(3)不足分の相続税額を納付する

納付先は、通常の相続税と同じく被相続人の最後の住所地を管轄する税務署です。

(4)税務署に修正申告を行う

最後に、税務署に相続税の修正申告書と添付書類を提出して、修正申告は終了となります。

ちなみに、手続きの順で納付の後に申告(書類の提出)がきている理由は、延滞税の特性にあります。

延滞税は申告期限から遅れた日数を基に計算されるため、申告書が完成し、納付額がわかった時点で先に納付したほうが、延滞税の納付額が少なくなります。そのため、「納付→申告」の順で紹介しています。

なお、納付も税務署で行う場合は、申告も同時にしてしまって構いません。

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相続税の修正申告時に支払う税金

修正申告書を提出する日までに納税しなくてはなりません。

不足分の相続税

まず修正申告の際には、不足している相続税額を支払う必要があります。

仮に不足分の相続税額が少額だったとしても、修正申告せずに放っておくと、以下で解説する延滞税の負担が重くなってしまったり、重加算税の課税対象になってしまう可能性があるため、必ず申告するようにしましょう。

延滞税

延滞税とは、相続税の納付期限までに正しく納付できず、不足分が生じた場合に課せられる税金です。

修正申告は期限内に正しく納付できなかった場合に行う申告手続きなので、延滞税も支払う必要があります。

延滞税の税率は毎年変化し、かつ申告期限から2か月以内と2か月経過後でも変わります。

相続税の延滞税の計算方法や年ごとの税率については、関連記事『相続税の延滞税とは?計算方法・税率・延滞税を回避する方法を解説』で詳しく取り扱っています。あわせてお読みください。

過少申告加算税(税務署からの指摘後の場合)

過少申告加算税とは、申告期限内に納付した相続税額が「本来納付すべき税額よりも少なかった場合」に課される税金です。

ただし、税務署から申告ミスを指摘される前に、自主的に修正申告をおこなった場合は過少申告加算税は課税されません。

過少申告加算税として払う金額は、不足していた相続税額の10%です。

さらに、この過少申告加算税額が、「期限内に申告した相続税額」と「50万円」の両方の金額を超えていた場合は、その超過分に対して15%の税金が追加で課されます。

つまり、申告漏れが大きいほど、より高いペナルティが課されるということです。

過少申告加算税の課税条件と税率を以下の表にまとめました。

過少申告加算税 税率

重加算税(故意に少なく申告していた場合)

相続税を払いたくないなどの理由で、故意に相続財産を隠していたり、少なく申告していた場合には、過少申告加算税の代わりに重加算税が課されます。

修正申告における重加算税の税率は35%です。

うっかりの申告漏れではなく、悪意を持った申告漏れに対する課税なので、税率が非常に高く設定されています。

相続税の修正申告を税理士に依頼する

修正申告を税理士に依頼するメリット

相続税の修正申告を税理士に依頼するメリットは、正確さとスピードです。

相続税の計算や相続財産の評価は、かなり複雑で時間がかかります。前述したように、修正申告するまでに発生する延滞税は、納付が遅れるほどに税額も大きくなっていきます。

日常生活を送りながら少しずつ修正申告の準備をしていると、その分延滞税も膨れ上がってしまうのです。

しかし、税理士に依頼することで最小限の延滞税で済ませることができます。

関連記事

相続税の申告期限が過ぎたらどうなる?間に合わないときの対応を解説

相続税の修正申告の税理士報酬について

税理士に相続税の修正申告を依頼したときの報酬相場は「5万円から」といわれています。

ただし、相続人の数や財産の種類によって報酬額は変わるため、いくつか依頼先の税理士事務所をリストアップして、事前に見積もりをとることをおすすめします。

相続税の相続税の無料相談

最初から相続税に強い税理士に依頼したほうが良いケースも

相続の手続きについて、税理士などの専門家への依頼は、費用が気になるかもしれません。

しかし、相続税の申告書に誤りがあったり、遺産分割協議がなかなかまとまらなかったりすると、延滞税や加算税を負担しなければならず、かえって支払いが多くなってしまうこともあります。

修正申告が発生する可能性は誰にでもありますので、スムーズに相続手続きを進めたい場合は、相続税に強い税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

全国/電話相談可能

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