相続税の税務調査とは?事前に準備することや調査対象にならない方法
相続税は、他の税金と比べて税務調査の対象となりやすいです。
また、相続税の税務調査はお金持ちのみを対象としているわけではありません。税務署は、いわゆる一般家庭の相続にも目を光らせています。
毎年、相続税申告書を提出した人の約20%が税務調査の対象になっていることからもわかるとおり、少しでも相続税を納めた人にとって、税務調査は他人事ではありません。
目次
相続税の税務調査とは
相続税の税務調査とは、税務署が「相続人が相続税申告した内容に誤りがないか」チェックするための調査です。
相続税申告の内容と、預貯金の流れや相続人の所有している財産などを照らし合わせて、不自然な部分がないか確認します。
相続税の税務調査には2種類ある
相続税の税務調査には、あらかじめ調査日時が知らされる「任意調査」と、抜き打ちで調査される「強制調査」の2種類があります。
脱税の疑いがなければ、基本的には任意調査ですのでご安心ください。
相続税の任意調査
相続税の任意調査では、事前に税務署から調査対象の相続人に、税務調査する旨の連絡があり、調査日時を決めて行われます。
相続税申告を税理士に依頼していた場合には、担当した税理士に連絡が届きます。
調査場所は被相続人(亡くなった方)が最後に過ごしていた自宅であることが多く、税務調査官からの質問に答えたり、通帳や土地の権利書類などを確認したりします。
税務調査には、できる限り相続人全員が立ち会う必要があります。税務署から税務調査の連絡を受けた相続人は、他の相続人にも連絡して、なるべく全員が立ち会えるよう調整しましょう。
見られたくない部屋やものを無理やり物色されることはありませんが、調査自体を頑なに断っていると、強制調査の対象となるおそれがあるので、任意調査の連絡を受けたら応じるようにしましょう。
相続税の強制調査
相続税の強制調査は、悪質な隠ぺい行為や脱税の疑いがある人や、任意調査を拒否し続けた人に対して行われます。
マルサで知られる国税局査察部の職員が、裁判所の令状を持って事前連絡なしに自宅などに調査に入ります。
もちろん強制調査を拒否することはできません。
相続税の税務調査が来やすい時期
相続税の税務調査は、相続税申告から1、2年後の秋に行われることが多いです。
これは、税務署の人事異動が7月に行われることに由来します。7月に新たに各部署に配属された税務調査官が、対象となる相続人や税理士に向けて、税務調査の日程調整の連絡をするのが例年7月になります。
そして、一般的には1ヶ月程度先の日程を指定されますので、8〜11月あたりの秋に税務調査されることが多いのです。
なお、相続税の時効は原則5年、悪意のある申告漏れや脱税をしていた場合には7年とされています。時効が過ぎると、相続税申告の内容や納税額が誤っていたとしても、税務署は追加で税金を徴収できなくなります。
相続税の時効が成立する可能性は極めて低いですが、時効が成立してしまえば、その後に相続税の税務調査が来ることはありません。
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相続税の税務調査を受ける人の割合
相続税申告書を提出した人の約20%が毎年、税務調査の対象になっています。約5人に1人が税務調査されていることになります。
これは、税務調査官が直接やって来る「実地調査」と、文書などによる「簡易な接触」という調査を合わせた割合です。
相続税は申告納税方式といって、納税者自らが納めるべき税額を計算して納税します。また、相続は人生で何度も当事者になるものではなく、手続きや相続税の計算に慣れていない人が多いです。
これらの要因が合わさって、相続税の申告・納付にはミスが多くなるため、税務署も重点的に相続税の税務調査をおこなっているのです。
相続税の税務調査の流れ
ここでは実際に相続税の税務調査の対象となった場合、税務調査がどのような流れで進んでいくのか、何を聞かれるのか、何を調査されるのかを、時系列に沿って解説していきます。
より多くの人に関係がある、任意調査を例に挙げます。
税務調査前(事前の連絡)
相続税の税務調査は、税務署からの連絡を受けて始まります。
相続人自らで相続税申告した場合には本人に、税理士に依頼して相続税申告した場合は担当税理士に連絡が入ります。基本的に税務調査の連絡は電話で行われます。
税務調査では、相続人全員が立ち会うことが望ましいです。そのため連絡を受けた方は、ほかの相続人と日程を調整して、税務調査の日時を決めましょう。
もしご自身で相続税申告をおこなった方で、税務調査に不安がある場合には、この時点でも税理士に依頼することができます。
この時点で税理士に依頼できる内容は主に、税務調査への立ち会い、事前準備や税務調査での受け答えのアドバイスなどです。税理士が立ち会うことで、余分な税金を払ってしまうような金銭的負担や、税務調査への不安から来る相続人の精神的負担を軽減することができます。
税務調査当日
一般的な相続税の実地調査の流れを元に解説します。調査日時や状況によって、時間が異なる場合もあるのでご注意ください。
10:00 税務調査官が到着、税務調査開始
午前中は主に、税務調査官から相続人にヒアリングが行われます。ヒアリングの内容は、記事後半の「相続税の税務調査でよくされる質問」を参照してください。
特に、被相続人の生い立ち(出生や居住地、仕事、生活の様子、趣味など)を詳しく聞かれます。これは、のちに相続税申告に関する質問をするときに、矛盾していないか、嘘をついていないかを確認するための布石です。
また、ゴルフが趣味であればゴルフ会員権の相続が発生していないか海外に居住していた期間があれば国外に申告していない預貯金口座はないかなど、相続税の申告漏れの可能性を洗い出す目的もあります。
午前中は被相続人の生い立ちの話のみで終わることも珍しくありません。
12:00 昼休憩
12:00〜13:00は昼休憩です。税務調査官は食事を外で済ませるので、相続人が税務調査官の昼食を用意する必要はありません。
13:00 税務調査再開
午後の調査は、通帳や金庫、印鑑などの現物確認や、貴重品の保管場所の確認などを中心に行います。
事前に準備した資料や現物を自分から見せる必要はありません。税務調査官に求められたものを提出するようにしましょう。
調査の結果、不審な点や申告漏れの疑いがある場合には、税務調査官に指摘・質問されることになります。この質疑応答の内容は書面にまとめられます。まとめた書面は最後に相続人が確認して、署名押印をします。
この書面は、税務調査の記録として非常に重要なものです。何かあったときの証拠となる可能性も高いため、立ち会いの税理士がいる場合には必ず確認してもらいましょう。
17:00 税務調査終了
税務調査は基本的に1日で終了します。
ただし、相続した財産が多い場合をはじめ、調査内容が膨大になるときには、日を改めて再調査となる可能性もあります。
税務調査後(調査結果の通知)
税務調査後、税務調査官は調査の内容を元に申告漏れがないかどうか確認します。
確認の結果、「相続税申告の内容は正しかった」とされた場合には、正しい申告だったという内容の是認通知が相続人のもとへ届き、税務調査が終了します。
対して、「相続税申告の内容に誤りがあった」とされた場合には、修正申告をすすめられます。
修正申告とは、正しい申告額よりも少なく相続税申告をしてしまっていた場合に、申告期限を過ぎてから、申告をやり直す手続きのことです。修正申告すると、不足額に加え、延滞税や過少申告加算税を負担しなければなりません。
修正申告をしないでいると、税務署から更正通知書が届くことがあります。更正通知書とは、税務調査で発見された不備を指摘する内容が書かれた書類です。更正後に納付すべき税額も書かれています。
もし更正通知書の内容に不服がある場合には、裁判所に異議申立をすることもできます。
修正申告のペナルティについて詳しくは、記事後半の「相続税の税務調査で漏れがあったときのペナルティ」を参照してください。
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相続税の修正申告|申告方法は?申告すべきケースは?ペナルティは?
これから相続税の税務調査を受ける人の準備
相続税の税務調査で準備しておくもの
相続税の税務調査では、相続税申告に使用した資料や、相続した財産が確認できるものの提出を求められます。以下のような資料が用意できていれば安心です。
- 相続税申告で使用した資料の原本すべて
- 被相続人の預貯金通帳すべて
- 相続人の預金通帳すべて
- 相続人が所有している不動産(土地や建物)の権利証や、購入時の資料
- 相続人の認印
相続税の税務調査までにやるべきこと
相続税の税務調査の対象となった旨の連絡を受けてから、税務調査当日までにやるべきことを解説します。
場合によっては延滞税の税負担を軽減できることもありますので、ぜひご確認ください。
相続税申告の内容に間違いがないか確認
相続税の税務調査の対象となったということは、申告に間違いがある可能性が高いということです。
そのため、税務調査の前に自分でも、相続税申告の内容に間違いがなかったかどうか再確認しましょう。
相続税を本来よりも少ない金額で納めてしまっていた場合、ペナルティとして延滞税が加算されます。
延滞税は、相続税申告の期限から日が経てば経つほど金額が大きくなります。よって、もし税務調査前に申告漏れを発見できた場合には、早めに修正申告を行うことで、延滞税の負担を軽くできます。
ただし、修正申告でミスをしてしまっては元も子もありません。相続税申告を依頼した税理士と一緒に確認するか、新たに相続税に強い税理士に相談して修正申告することをおすすめします。
相続税申告していない財産はないか確認
相続税申告時に見落としていた財産はないか、再確認しましょう。ここでは特に見落としてしまうことが多い財産を一部紹介します。
- 名義預金
- 美術品、骨董品、装飾品など
- タンス預金(現金)
- 生命保険金
- 貸付金、売掛金、未収入金などの債権
- 自宅以外の土地(田、畑、山林など)
- 亡くなる前3年以内に贈与された財産(税制改正により、段階的に7年まで延長される)
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相続税の税務調査でよくされる質問
相続税の税務調査で、税務調査官からよくされる質問をまとめました。以下のような質問への回答を用意しておくと、安心して税務調査を迎えられるでしょう。
被相続人に関する質問
- 被相続人の出身地や職業
- 被相続人の結婚歴や結婚の時期、家族構成
- 被相続人の趣味
- 被相続人の収入源(職業の収入、不労所得の収入など)
- 被相続人の月々の出費(生活費や医療費など)
- 被相続人の投資の状況
- 被相続人が取引していた金融機関や支店
- 被相続人の生前の大きな出費
- 被相続人の海外の渡航歴
- 被相続人の両親の相続
- 被相続人が死亡したときの状況(入院していたか、介護施設に入居していたかなど)
- 被相続人の入院、治療、介護などにかかった費用
- 被相続人の贈与歴
- 被相続人の寄付歴
- 被相続人の印鑑の保管場所
相続人に関する質問
- 相続人の出身地や職業
- 相続人の現在の住まい
- 相続人が取引している金融機関や支店
- 相続税を納付した金融機関
- 相続人の投資の状況
- 相続人の自宅の購入金額、売却金額など
- 相続人は生前贈与を受けていたか(受けた場合は金額や時期)
- 相続人は貸金庫を持っているか
- 相続人と、相続税申告を依頼した税理士の関係
- 相続人の配偶者や子どもに関しての質問
相続税の税務調査を受けやすい人
相続人が自分で申告書を作成している人
相続税の計算方法はとても複雑で不備が生じやすいです。
そのため、相続人が自分で申告書を作成したケースでは申告漏れの可能性が高く、税務調査の対象になりやすいです。
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そもそも相続税申告していない人
「相続税申告をしなければそもそも税務署にばれない」と考える方もいるかもしれません。しかし、それは大きな間違いです。
税務署は、被相続人が死亡すると、市町村役場などから自動的に連絡を受けます。さらに、被相続人の資産状況を推測するための情報をすぐに入手できます。
したがって、たとえ無申告であっても、相続税申告が必要な可能性がある場合には、税務調査の対象になります。
また、相続した財産が相続税申告が必要な金額まで達しておらず、本当に相続税申告する必要がないケースでも、税務調査の対象になってしまうことはあります。
その場合には、税務調査で相続税申告に使った資料や計算過程を提出して、「自分は相続税申告が必要ない」と証明しましょう。
遺産総額が多く相続税額も高額な人
遺産総額や相続税額が多い人は、脱税や申告漏れの疑いが強くなくても税務調査の対象になりやすいです。
遺産が多いということは、それだけ申告漏れの可能性が増えるためです。
また、相続税は累進課税ですので、相続する財産が増えるほど相続税額も高くなります。税額が高いということは、それだけ申告漏れがあった際の追徴課税額も高くなるため、税務署も念入りに調査を行います。
一般的には遺産総額が2億円を超えると、税務調査の対象になる可能性が大幅に上がるとされています。
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名義預金の疑いがある人
名義預金とは、預貯金口座の名義人と実際に入金している人が異なる場合をいいます。
たとえば父が子に内緒で、子名義の預金口座に預金しているケースが名義預金に当たります。このケースだと、子名義の預金は実質的には父の財産とみなされ、父の死亡時に相続税の課税対象になるのです。
名義預金の疑いが向けられる典型例は、収入がない家族名義の口座に多額の預金がある場合です。さらに、入金記録しかない口座も名義預金が強く疑われます。
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相続開始直前に大きな金額の移動があった人
相続開始直前に、お金に不審な動きがあるケースも税務調査の対象になりやすいです。
たとえば、相続開始直前に100万円単位の出金があれば、相続税対策としてどこかにお金を移動させたのではないかと申告漏れを疑われます。
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相続税の税務調査で漏れがあったときのペナルティ
相続税の申告漏れに対するペナルティは、延滞税、無申告加算税、過少申告加算税、重加算税の4つです。
①延滞税
法定納期限(相続開始があったことを知った日の翌日から10か月目の日)までに相続税を納付しない場合、延滞税が課されます。延滞税は、下記②〜④の加算税に加えて課税されます。
延滞税の税率は、毎年変動します。以下では令和6年の延滞税の税率を紹介します。
相続税の延滞税の税率
- 法定納期限の翌日から2カ月以内に納付した場合は、2.4%
- 法定納期限の翌日から2カ月経過後に納付した場合は、8.7%
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②無申告加算税
納付すべき相続税を申告期限までに申告しなかった場合、無申告加算税が課されます。
無申告加算税は、税務調査の事前通知から税務調査までの間に期限後申告を行うことで、低い税率で納付することができます。
もし相続税申告をしておらず、税務調査の対象となった方は、本当に相続税申告が必要ないのかどうか、念入りに確認しましょう。
③過少申告加算税
相続税を、本来納めるべき税額よりも過少に申告していた場合、過少申告加算税が課されます。
税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税は課されません。通知を受けた後でも、税務調査の前に修正申告すれば低い税率が適用されます。
④重加算税
隠ぺいや偽装をおこなって申告を逃れる悪質なケースでは、無申告加算税や過少申告加算税に代わり重加算税が課されます。
過少申告加算税に代えて課されるケースでは、「納付すべき税額×35%」の重加算税が課されます。
無申告加算税に代えて課されるケースでは、「納付すべき税額×40%」の重加算税が課されます。
相続税の税務調査の対象にならない方法
相続税に強い税理士に依頼する
相続税の税務調査を回避する最大のポイントは、税理士に相続税申告を依頼することです。
相続税申告を税理士に依頼すれば、申告漏れや計算ミスのない申告書を提出できます。さらに税理士は、税務署が指摘しそうな問題点を事前に把握し、適切に申告します。
これらの対応により、税務調査の可能性を最小限にできます。
また、万が一税務調査の対象になった場合も、税理士に調査への立ち会いを依頼できます。税理士が関与すれば、十分な事前準備をした上で税務調査に臨めます。
適切に相続税申告を行う
当然のことだと思われるかもしれません。
しかし、相続税の申告漏れの原因で多いのは「計算ミス」と「把握していない遺産があった」の2つです。
相続税申告の段階で税理士に相談し、正しく申告・納付をおこなっていれば、税務署に申告漏れの疑いをかけられる可能性が減ります。
また、万が一税務調査の対象となっても、追徴課税が課されることはなくなります。
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生前贈与の方法に気を付ける
相続税対策として生前贈与を活用している方も多いと思います。
生前贈与は相続税対策として有効ですが、税務調査を誘発しやすいポイントでもあります。
ここでは、税務調査の対象にならないための生前贈与のポイントを2つ紹介します。
①定期預金とみなされないようにする
最初から贈与額と期間を決めている「定期贈与」とみなされると、贈与税が課税される可能性があります。
たとえば、毎年100万円を、10年に渡り子どもに送金していた場合、「1,000万円を10年かけて贈与する」という定期贈与だったとみなされ、1,000万円に贈与税がかかるおそれがあります。
定期預金とみなされないためには、贈与のたびに「贈与契約書」を作成することをおすすめします。
②名義預金とみなされないようにする
前述したとおり、相手に内緒で相手名義の口座にお金を振り込み続けると、名義預金とみなされる可能性があります。
名義預金と判断されると、相続財産に加算され相続税の負担が重くなります。
対策として、お金を贈る相手名義の通帳、印鑑、キャッシュカードは本人に管理させることが大切です。
また、お金を贈られた人が実際にそのお金を使うことも、名義預金とみなされないためのポイントです。
相続税の税務調査に関するQ&A
Q. 税務調査の質問に嘘をつくとペナルティがある?
A. 税務調査で、税務調査官からの質問に対し嘘をつくと、重加算税を課されるおそれがあります。
重加算税とは、隠ぺいや偽装をおこなって相続税申告を逃れようとする悪質なケースで課されるペナルティです。
税務調査で噓をつくと、何か隠蔽しようとしているのではないかと疑われることになるため、重加算税の課税対象になるおそれがあります。
また、税務調査官はすでに知っていることでも、知らないふりをして質問することがあります。これは相続人が嘘をつく人物なのかどうか確認するためです。
そのため、質問されたことに対しては嘘をついたりごまかしたりせず、正しく回答しましょう。
Q. 一般家庭も相続税の税務調査の対象になる?
A. 一般家庭も相続税の税務調査の対象になります。
税務調査というと富裕層を対象にしているイメージがあるかもしれません。しかし、2015年の相続税法改正により、相続税の基礎控除額が約6割に縮小されたことで、相続税の課税対象となる一般家庭が増加しました。
それに伴い相続税の税務調査件数も、相続税法改正前と比べると、2倍近くまで増えました。
「うちはお金持ちじゃないから税務調査なんて入らない」という油断は禁物です。もし相続で基礎控除額を超える財産を取得した場合は、適切に相続税申告を行い、税務調査で申告漏れを指摘されないようにしましょう。
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Q. 税務調査で申告漏れが発覚すると、何円くらい追加で課税される?
A. 令和4事務年度(令和3年7月〜令和4年6月)の相続税の追徴課税額は、1件当たりなんと816万円にものぼります(参考:国税庁作成「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」)。
また、令和4事務年度に行われた相続税の税務調査のうち、85.8%の事案で申告漏れ等のミスが指摘されました。
これらの数字から、相続税の税務調査が実施されると、大きな経済的負担を負う可能性が高いことが分かります。
まとめ
相続税の税務調査は、相続税申告や納付額に誤りがないか確認するために税務署が行う調査です。通常は事前に日程を話し合ってから調査が行われます。
税務調査当日は、被相続人や相続人についての質問に回答したり、相続税申告に関係する資料や現物を提出します。スムーズに進められるよう、事前に準備しておくことが大切です。
もし税務調査で申告漏れが発覚すると、不足額に加えて、延滞税や過少申告加算税の支払いが必要となります。
「相続税申告の内容が正しかった」とされた場合はそこで終了しますが、相続人の時間的、精神的負担は少なくありません。
これから税務調査を受ける方や、現在相続税申告の準備をしている方で税務調査への不安がある場合には、相続税に強い税理士に相談することをおすすめします。
支払う税金や税務調査の準備に要する時間を最大限抑えられるのはもちろんのこと、「税務調査を受けるかもしれない」という不安を和らげることもできます。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士