相続税の税務調査の確率は8%|調査される確率を下げる方法も解説
相続税申告を終えた後、「税務調査の対象に選ばれてしまうのではないか」と不安を抱く方は少なくありません。
相続税の税務調査を受ける確率は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で一時的に減少したものの、今後は減少前の件数に戻ることが予想されています。
この記事では、相続税の税務調査を受ける確率や、調査される確率が高い人の特徴、そして税務調査される確率を下げるための対策について詳しく解説します。
目次
相続税の税務調査を受ける確率は約8%
相続税の税務調査を受ける確率は約8%です。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により一時は3%まで減少しました。
平成29年から令和4年の相続税の税務調査の件数まとめ
近年の、相続税に関する税務調査(実地調査)の件数について、国税庁の統計データをもとに表にまとめました。
相続開始年分・税務調査年度 | 申告件数 | 調査件数 | 調査される確率 |
---|---|---|---|
平成29年 | 143,881 | 12,576 | 8.7% |
平成30年 | 149,481 | 12,463 | 8.3% |
令和元年 | 147,801 | 10,635 | 7.1% |
令和2年※ | 153,023 | 5,106 | 3.3% |
令和3年 | 169,670 | 6,317 | 3.7% |
令和4年 | 189,138 | 8,196 | 4.3% |
相続税の税務調査は通常、相続税申告から1~2年後に来ることが多いです。
そのため、実際の割合とは若干の差異があるかもしれませんが、ここでは便宜上、「同じ年(1月~12月)に相続が発生して相続税の申告書が提出された件数」と、「同じ年度(4月~翌年3月)に税務調査が行われた件数」を用いて計算しています。
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税務調査には実地調査と簡易な接触がある
税務調査は、「実地調査」と「簡易な接触」の2つにわけられます。
実地調査は自宅に税務調査官がくる調査
まず実地調査とは、税務調査官が納税者の自宅や事務所を訪問し、詳細な調査を行うものです。多くの方がイメージする税務調査は、この実地調査ではないでしょうか。
実地調査のほとんどは「任意調査」といって、事前に相続人と税務調査官が税務調査の日を決めてから行われます。
ドラマでよく見るような、急に税務調査官が自宅にやってくる「強制調査」は、悪質な脱税が疑われる場合などに限られますのでご安心ください。
簡易な接触は実地調査よりも軽微な調査
次に簡易な接触とは、電話や文書による照会、または税務署への来署依頼によって行われる、比較的軽微な調査です。
簡易な接触は、実地調査よりも件数が多く、令和4年度の実地調査件数が8,196件なのに対し、簡易な接触は15,004件行われています。
すなわち、令和4年度における、実地調査と簡易な接触のどちらかを受ける確率は、単純計算で約12%となります。
実地調査は、より詳細な確認が必要と判断された場合に行われます。一方で簡易な接触は、申告内容に軽微な誤りや不明点がある場合に実施されることが多いです。
コロナウイルスの影響で一時的に実地調査数が減少
上記の【相続税の税務調査を受ける確率表】からもわかるように、令和2年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、税務調査の件数が大幅に減少しました。
これは、感染拡大防止の観点から、税務署が調査活動を縮小せざるを得なかったためです。しかし、令和3年度には徐々に調査件数が回復傾向にあることが見て取れます。
さらに令和2年度以降は、直接顔を合わせる必要がない簡易な接触の件数が増えていることから、相続税申告に関する、実地調査と簡易な接触を合わせた税務調査を受ける確率はあまり変化していないといえます。
年度 | 簡易な接触件数 | 実地調査件数 |
---|---|---|
平成29年 | 11,198 | 12,576 |
平成30年 | 10,332 | 12,463 |
令和元年 | 8,632 | 10,635 |
令和2年 | 13,634 | 5,106 |
令和3年 | 14,730 | 6,317 |
令和4年 | 15,004 | 8,196 |
相続税の税務調査を受ける確率が高い人の特徴
相続税の税務調査の対象となりやすい人の特徴として、以下のようなものが挙げられます。
- 相続税申告書に間違いがある
- 相続税申告が必要なのに申告していない
- 相続財産の総額が高額である
- 不動産や事業用資産など、評価が難しい財産が多い
- 生前贈与が多く行われている
- 相続人間で遺産分割に偏りがある
- 相続税の申告が期限間際や期限後に行われた
これらの特徴に当てはまる場合、税務署から詳細な確認が必要と判断され、相続税の税務調査の対象になる確率が高くなります。
すでに相続税申告した人が税務調査の確率を下げるには?
すでに相続税申告を済ませた方が税務調査を受ける確率を下げるためには、申告した内容に書き忘れや書き間違いがないか、改めて確認しましょう。
もし書き忘れや書き間違いを見つけた場合には、税務調査される前に自主的に「修正申告」を行いましょう。
修正申告とは、相続税の申告期限後に、相続税申告をやり直すことをいいます。修正申告で正しい内容を申告することで、税務調査を受ける確率を下げられます。
さらに、自主的に修正申告を行う場合と、税務調査で申告ミスを指摘されてから修正申告する場合では、延滞税や加算税などのペナルティの重さが違います。
相続税の納付が遅れたことに対して発生する延滞税は、「遅れた日数に対して課税」されるため、申告ミスに気がついてからなるべく早く修正申告することで、税額が抑えられます。
また、申告額が本来の税額よりも少なかったときに発生する過少申告加算税は、税務調査の通知が来る前に修正申告することで、課税されなくなります。
相続税の延滞税や加算税については、関連記事『相続税の延滞税とは?計算方法・税率・延滞税を回避する方法を解説』をお読みください。
税務調査を受ける確率が下がる相続税申告とは?
これから相続税申告をする方に向けて、税務調査を受ける確率が下がる相続税申告の方法をご紹介します。
正確に相続税申告を行う
当たり前だと思われるかもしれませんが、もっとも重要なことです。
相続税申告では、財産の評価や相続税額の計算など、さまざまな過程で計算が行われます。
この計算のどこか一部でもずれてしまうと、相続税申告書にも間違いが生じてしまうため、税務調査の対象に選ばれやすくなってしまうのです。
ご自身で相続税額の計算を行う予定の方は、関連記事『【計算例つき】自分で相続税を計算する方法|自分で計算できるケースもわかる』をお読みください。
相続税申告で財産の詳細を記した添付書類を提出する
相続税申告書に加えて、財産の詳細な情報や評価方法を記した添付書類を提出することで、税務署側の疑問を解消し、税務調査の必要性を低減させられます。
特に、以下のような資料の添付が有効です。
- 不動産の固定資産税評価証明書
- 預貯金や有価証券の残高証明書
- 生命保険金や退職金の支払証明書
- 債務や葬式費用の領収書
死亡前に相続する財産を確認しておく
被相続人の財産を正確に把握できていないと、相続税申告も正しく行えず、相続税の税務調査の対象になりやすくなります。
そのため、被相続人が元気なうちに、財産内容を記入した「財産目録」を作成しておくことをおすすめします。
財産目録の作成後は、定期的に更新を行い、常に最新の情報を維持することが大切です。
相続税申告に備えて財産目録を作成する方はぜひ、関連記事『【記載例付き】相続税の財産目録の書き方|作成のメリットや下準備も解説』をお読みください。財産目録の書き方から、作成後のチェックポイントまで解説しています。
相続税に強い税理士に依頼する
相続税申告において、税務調査を受ける確率を抑える最も効果的な方法は、相続税の専門知識と豊富な経験を持つ「相続税に強い税理士」に依頼することです。
相続税に強い税理士に相続税申告を依頼すれば、税務署が疑問を抱きそうなポイントを事前に見極め、適切な添付書類を用意することで、税務調査のリスクを大幅に減らすことができます。
また、万が一税務調査の対象になったとしても、税理士が税務調査に立ち合い、相続人の不利益が生じないようにサポートいたします。
たとえば、税務調査官は税務に関する専門知識を駆使して、相続人に不利な情報を引き出そうとします。相続人のみで対応してしまうと、不必要な追徴課税を招いてしまう可能性も高くなります。
しかし、相続税に強い税理士であれば、税務調査官に対抗できるだけの専門知識を持ち合わせています。必要に応じて資料を提示したり、相続人に回答のアドバイスをしたりすることで、相続人に不利益が生じるのを防ぎます。
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監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士