相続税の税務調査が来る時期はいつ?申告から1~2年後って本当?

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相続税の税務調査

「相続税を申告したけれども、自分のところには税務調査がくるのだろうか」
「税務調査なんて経験したことがないから、いつ調査がくるのかとても不安だ」

このように相続税の税務調査について不安に思われている方も多いのではないでしょうか。

そもそも税務調査がくる時期はいつ頃なのか、税務調査の対象はどうやって選んでいるのか、以下にまとめましたので参考にしてください。

相続税の税務調査がくる時期はいつ?

税務調査は主に申告から1、2年後の秋に行われる

相続税の税務調査の時期は、相続税を申告してから1、2年後の秋であることが多いです。

そのため、申告期限から2年が過ぎればひとまず安心といって良いでしょう。

では、なぜ秋に税務調査が多いのでしょうか。

税理士の業界では、「税務調査の秋」といわれているほど、税務調査が行われるのは夏の終わりから秋にかけてが多いです。

その理由は、税務署の人事異動が7月に行われることにあります。7月に新たに各部署に配属された税務調査官が、納税者や税理士に向けて税務調査の日程調整の連絡をするのが例年7月になります。

そして、一般的な税務調査は、事前に税務署から連絡が来て、日程を調整した上で行われます。その際、1ヶ月程度先の日程を指定されますので、8~11月あたりの秋に調査されることが多いのです。

税務調査は事前に日程を調整して行われる

一般的な税務調査の日程は、税務署と調整した上で決定されます。ドラマのようにある日突然調査官が自宅に押しかけて来るのは、特に悪質な納税者の場合に限られると思っていただいて大丈夫です。

相続税の税務調査の連絡は税理士に相続税の申告書の作成をお願いしている場合、税務署から税理士に直接連絡がいきます。ごく僅かだと思いますが、ご自身で申告書を作成された方は申告書に記載した電話番号に税務署から連絡があります。一般の方は税務署から連絡を受けるとドキッとされるのではないでしょうか。

例えば、相続税の申告の対象となる被相続人が亡くなったのが、2023年4月1日であった場合、以下のようになります。

相続税 税務調査 時系列

相続税の税務調査が、申告期限より前に来ることはまずありえません。なぜなら日本は申告納税方式という自身の税金を自分で申告するシステムを採用しているからです。

そのため申告書を提出してから、税務署が提出された申告書をチェックして、1年後または2年後の夏ぐらいに税務調査の連絡がくるケースが多いです。

申告書を提出した後、2年間税務調査の連絡がなければ、調査の対象として選定されなかった可能性が高いといえます。

相続税の時効が過ぎるまでは税務調査が来る可能性がある

申告期限から2年が目安とはいえ、相続税の時効が過ぎるまでは税務調査が来る可能性は否定できません。

もっとも、相続税の時効を過ぎると、納税者の税金の申告が誤っていたとしても税務署が追加で税金を徴収できなくなります。

そのため、相続税の時効を過ぎた場合には、もう税務調査はこないと考えて良いでしょう。

相続税の時効は原則として5年ですが、悪意のある申告漏れや脱税をしていた場合には7年となります。

相続税の時効について詳しくは、関連記事『相続税の時効は原則5年|逃げ切りは不可能?バレたらペナルティ?』で解説していますのでぜひお読みください。

税務調査がくる割合は?

相続税申告をした人の中で税務調査がくる割合は、7%~10%といわれています。

国税庁が発表している資料によると、令和3年11月2日から令和4年10月31日までに提出された相続税の申告書はこの期間に亡くなった方約143万人に対して、相続税の申告書を提出した方169,670人(相続税額が0円の申告書も含む)となっています。

令和3事務年度に行われた実地での税務調査の件数は、6,317件となっており、厳密には期間が異なりますが、おおむね申告書を提出した方のうち約3.7%ほどが税務調査の対象となっています。しかし、これは新型コロナウイルス感染症の影響により大幅に調査件数が減っているものです。以前は令和3事務年度の2倍ほどになる年間12,000件前後行われており、7%〜10%程度は調査が行われるのが通常でした。今後は実地での調査が本格化するものと思われます。

出典:国税庁 令和3年分相続税の申告事績の概要
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf

出典:国税庁 令和3事務年度における相続税の調査等の状況
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf

相続税の税務調査がはじまるといつまでかかる?

相続税の税務調査は「1日で終わる」ことがほとんど

税務調査はほとんどの場合、1日で終わります。もっとも財産が多額にあるなど場合によっては2日間になることもあります。

調査が行われるのはその日の10時から16時までです。税務調査官は公務員なので、税務署に9時に出勤した後、調査現場に赴き、調査後に現場から報告のため税務署に戻り、17時に退勤するためです。

そのため、夜遅い時間まで粘って調査するようなことは、原則としてありません。

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実際の税務調査ではどんなことをされる?

税務調査(午前)

10時に調査官が来て、被相続人に関する質問を中心に調査が始まります。

調査官は被相続人が生前どのような収入源を持ち財産を形成したのかを確認していきます。たとえば被相続人の生前の収入について、それがサラリーマンとしての給与なのか、家賃収入なのか、あるいは他に事業の収入があるのか等をひとつずつ確認していきます。被相続人が海外に居住している期間があれば、国外にも財産を持っている可能性があるため、そのことも聞かれるでしょう。

これらの質問で疑わしい点があれば、午後の調査では重点的にチェックされる可能性があります。

税務調査(午後)

午後は具体的に財産の調査を行います。

手順としては、まず預貯金の動きを確認することから始まります。

生前の被相続人の銀行口座を過去10年〜5年分確認することにより、例えば、親族に対して贈与を行っていたことや、過去に高額な資産の購入がないか、確認していきます。

特に金額の大きい取引であれば、あるほど銀行口座を通さずに取引をすることはあまりないはずだからです。

その他にも被相続人が書画骨董などの美術品を所有していないか、家の中を確認したりします。

勝手に家の中の別の部屋を確認したり、引き出しを開けたりすることはなく、必ず見ても良いか、触れても良いかなど確認されますので、それは安心してください。

一般的な税務調査は、強制捜査ではなく、あくまで任意の調査であるためです。

税務調査後の流れ

1日〜2日間の税務調査が終わると確認した事項について、追加で納税者に質問をしたり、税務署内で検討を行ったあと、財産の申告もれについて納税者に修正申告をするように依頼をしてきます。

納税者が納得して、修正申告書を作成、追徴税額を納付することによって相続税の税務調査は終了となります。実地での調査後も修正申告書を提出するまでだいたい1ヶ月〜3ヶ月程度の期間がかかります。

税務署は事前に情報を持っている

税務署は税務調査に臨む際、事前に以下のような情報を持った上で調査にきます。

市区町村役場からの死亡届、固定資産税の課税通知書などの情報

人が亡くなると市町村役場に死亡届を提出します。死亡届を受理した市町村役場は亡くなった方の住所氏名とともに、住所地の市町村内に所有している不動産を税務署に通知するのです。

市町村は固定資産税を課税するために、市区町村内の不動産所有者を把握しています。この固定資産税の課税状況を税務署は既に把握しているのです。

住所地以外の市町村であっても税務署は簡単な手続きで、各市町村役場に照会をして、亡くなった方が所有している不動産を確認することが可能です。

亡くなった方の収入に関する情報

税務署は生前に被相続人から提出された確定申告書や、被相続人に家賃の支払いをしている法人から提出される支払調書、配当金を支払った際に提出される支払調書、提出が義務とされている国外財産に関する調書などから被相続人の収入や財産を把握しています。

税務調査の午前中は、被相続人の生前の状況を聞くとご説明しましたが、これらの資料と合致するか、確認しています。

死亡保険金の受取りや金融資産に関する情報

死亡保険金を支払った保険会社は誰に支払ったのか、支払調書という書類を税務署に提出しています。また、証券会社は特定口座(証券会社が所得税額の計算などを行う口座)の情報や特定口座以外でも株式の売買などが行われた場合には支払調書を税務署に提出しています。

税務署はいくら保険金を受け取っているか、どこの証券会社に口座を持っているか、既に把握しているのです。

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税務調査の対象になりやすい相続税申告とは?

先述の国税庁の資料によると、1年間に税務調査を受けた件数6,317件のうち、87.6%は財産の申告もれとして修正申告をしているというデータがあります。修正申告による追徴税額は平均で1件あたり886万円となっています。(令和3事務年度)

このように相続税の税務調査を受けると、かなりの割合で追徴課税されていることが分かります。

税務調査の対象になりやすい申告

では、どのような申告書が税務調査の対象となりやすいのでしょうか。税務調査の対象に選ばれやすい相続税の申告は、以下のようなものです。

相続財産の金額が大きい

そもそも相続財産の金額が大きい場合には、累進課税である相続税の税率が高いため、申告漏れの財産があった場合に徴収できる税金の額が大きくなります。

明らかに申告書に誤りがある

申告書に税額の計算方法などの明らかな誤りがある場合、実地調査に行っても必ず修正申告を取ることができるわけです。調査官も修正申告の件数、追徴税額が成績になりますから、どうせ調査に行くのであれば確実に税金を取れる案件を狙うということです。

税務署が持つ情報に比較して相続財産が少ない場合

先ほど説明した税務調査時に税務署が持っている情報について、提出された申告書と突合せをしています。この時点で財産の申告漏れが強く疑われる場合、実地調査の対象となる可能性が高いです。

相続時精算課税分の贈与が漏れている

相続時相続時精算課税制度とは、生前の贈与の際、累計で2,500万円まで(令和6年1月1日以降については2,500万円に加えて、年間110万円まで)贈与税を無税とする代わりに贈与した財産を相続税の対象とする制度です。

この制度を利用して贈与を行なった場合には、必ず贈与により受けた財産を相続税の申告書に記載しなければいけないのですが、これが漏れていることが多いのです。なぜなら、両親が相続税の対策として贈与していることが多く、贈与を受けた側の記憶、印象に残りづらいのが原因です。

相続税の申告の際には、両親は不在ですから、贈与を受けた本人が失念してしていると相続財産の漏れとなってしまいます。

相続時精算課税制度は、贈与後に税務署への申告が必須とされていますので、税務署は提出された相続時精算課税制度の財産が相続税の申告時に申告されているか、必ずチェックしていると思ってください。

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税務署は追徴課税の可能性が高い案件を狙っている

税務署は、このようにすでに申告書に誤りがあったり、相続時精算課税制度の申告が漏れているような確実に追徴課税が取れる案件を重点的に調査しているため、調査を受けた件数のうち87.6% という高い割合で修正申告となっているのです。

税理士に頼むと料金が高いからと言って、料金の安い税理士やご自身で申告書を作成すると、上記のような税務調査の対象として選ばれやすい申告書を提出して、税務調査に悩まされることになるかもしれません。そのため、相続税の申告は相続税に強い税理士に頼んだ方が税務調査の観点からも良いのではないでしょうか。

相続税の相続税の無料相談

税務調査の不安は税理士まで

ここまで税務調査が行われる時期や税務調査の内容などをご説明しました。この記事をご覧になっている方は、少なからず税務調査への不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。

基本的に税理士に相続税申告をお願いしている場合には、相続税の税務調査には申告書を作成した税理士が立ち会いをしますが、実は相続税申告をお願いした税理士があまり相続税に詳しくない場合があります。

相続税の申告書は年間で約16万件提出されますが、税理士の人数は約8万人です。つまり税理士によっては相続税の申告は数年ぶりといったこともめずらしくありません。その場合、最新の税制に疎かったりしますので、誰に相続税の申告をお願いするのかはとても重要です。

既に相続税申告を行っている場合には、税理士に税務調査の立ち会いのみをお願いすることもできます。相続税に強い税理士であれば相続税の税務調査での注意点をよく把握していますので、調査前の打ち合わせなどを重ねて、安心して調査に臨むことができます。

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アトムグループ 協力税理士

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