相続税の申告をネットでする方法|e-Taxの利用方法や注意点を解説

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相続税の申告

多くの手間や作業を伴う相続税の申告ですが、近年ではインターネットで電子申告(e-Tax)を行っている人も増えているようです。

e-Taxを利用すれば、インターネットにつながったパソコンやスマートフォンから、相続税の申告書の作成や送信ができます。

申告の手軽さをはじめ、多くのメリットがあるシステムですが、利用する上でいくつか注意しておきたい点もあるので確認していきましょう。

この記事では、e-Taxの申請手順や利用上の注意点について解説していきます。

ネットでの相続税申告はe-Taxで

e-Taxとは

e-Taxとは、所得税や贈与税の申告などの各種手続きを、インターネットを通じて行うことができるシステムです。2019年より相続税の申告にも利用できるようになりました。

本来であれば相続税の申告書は税務署に持参するか、郵送で提出する必要がありましたが、e-Taxを利用すればパソコンやスマートフォンから申告書を作成、送信することができます。

加えて、相続で頻繁に利用される、「配偶者控除」や「小規模宅地等の特例」など多くの控除にも対応しています。

相続税申告でe-Taxができること

相続税申告において、e-Taxでできることは主に以下の三つです。

・相続税申告書の作成
・相続税申告書、添付書類の送信
・電子納税

なお、e-Taxで「所得税」の申告をする際には、必要な情報を入力すると自動的に計算が行われ、申告書が作成されます。しかし、相続税に関しては自動計算の機能が搭載されていないため、e-Tax以外のソフトなどで別途計算をし、計算結果をe-Taxに入力する必要があります。

あくまでe-Taxは申告のためのソフトだと考えるのが良いでしょう。

相続税申告をe-Taxで行うときと紙で行うときの違い

e-Taxで申告紙で申告
申告方法自宅からインターネットで申告税務署の窓口に持参するか郵送
提出する書類の形式PDF形式の書類紙の書類
書類の保管電子データで保管紙の書類のまま保管
複数人が共同で申告できないできる
納税方法自宅からインターネットで納税税務署か金融の窓口で納税
クレジットカード使用時のみ
自宅から納税ができる

相続税の申告をe-Taxで行うメリットと、利用する際の注意点に関しては記事の後半で詳しく説明しています。

e-Taxで相続税を申告するときの手順

e-Taxで相続税の申告をするときの手順は、大きく以下の5ステップにわけられます。

1. 電子証明書を取得する
2. e-Taxの開始届出書を提出し、利用者識別番号を取得する
3. e-Taxソフトをインストールする
4. 相続税の申告書を作成する
5. 電子署名をして送信する

それでは1ステップずつ確認していきましょう。

1.  電子証明書を取得する

e-Taxで相続税の電子申告を行うためには『国税庁|電子証明書の取得』で紹介されている機関から、電子証明書を取得する必要があります。電子証明書は書類データの作成、送信元が利用者本人かどうかを確認するために用いられます。

また、マイナンバーカードなどを電子証明書として利用する場合には、別途カードリーダーを購入する必要がありましたが、現在ではスマートフォンの二次元バーコード読み取りで読み込めるようになりました。

2. e-Taxの開始届出書を提出し、利用者識別番号を取得する

e-Taxで相続税の電子申告を行うためには、「利用者識別番号」も取得する必要があります。利用者識別番号はなりすましを防止する目的で税務署が発行している16桁の番号です。利用者識別番号は管轄する税務署に「開始届出書」を提出すると発行してもらえます。

開始届出書は、税務署に書面で提出するほか、e-Taxを使ってインターネットで提出することもできます。書面で提出した場合には、最速だと一週間ほどで利用者識別番号が郵送されてきます。e-Taxで提出した場合には、利用者識別番号の通知もオンラインで届くことになります。

なお、すでに所得税の申告などで利用者識別番号を取得している場合は、再び発行手続きをする必要はありません。

3. e-Taxソフトをインストールする

国税庁のホームページでe-Taxソフトをダウンロードします。e-Taxソフトには、「e-Taxソフト」と「e-Taxソフト(Web版)」との二種類があります。相続税の申告を行う場合は、「e-Taxソフト」をダウンロードする必要があります。

なお、利用環境の条件は『国税庁|e-Taxのダウンロードコーナー』を、e-Taxソフトのダウンロードは『国税庁|e-Taxソフトについて』を参考にしてください。

4. 相続税の申告書を作成する

e-Taxソフトのインストールが完了したら、相続税の申告書を作成します。作成の手順は以下の流れで進むことが多いです。一つずつ確認していきましょう。

(1)第9表から第15表

まずは個別の計算や明細となる第9表から記入していきます。現金や保険金、不動産など、各相続財産の内容と評価額をすべて一覧にして計算します。

(2)第1表、第2表

課税価格や納税額などの最終結果を記入していきます。第9表から第15表をもとに、第1表には各相続人の納税額、第2表には相続税の総額を記入します。

(3)第4表から第8表

第4表から第8表の中で受けられる控除があれば、それを計算します。最後に誰がいくら納税するのかを計算して、第1表に記入して完成です。

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5. 電子署名をして送信する

相続税の申告書が完成したら、すべて作成完了の状態にして電子署名をします。電子署名は「1. 電子証明書を取得する」で取得した電子証明書やマイナンバーカードを使って行うことができます。

なお、提出先の税務署を選択するときには、「被相続人の死亡時における住所地」を管轄する税務署を選びましょう。相続人の現在の住所地を管轄する税務署ではないので注意が必要です。

また、e-Taxにはほかの相続人が作成した申告書のデータを共有し、参考にしたり、途中から作成したりできる「参照作成機能」があります。参照作成機能を用いると申告書の作成が効率的に行えるため、積極的に活用していきましょう。

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e-Taxで相続税申告をするメリット

平日なら24時間相続税の申告ができる

e-Taxで相続税の申告をするメリットは、なんといっても申告の手間が少なく済むことです。e-Taxは平日であれば24時間相続税の申告が可能です。

e-Taxを利用しないで相続税の申告をするとなると、税務署が開庁している時間に提出に行くか、郵送で送るしかありません。

郵送ならポストには24時間投函できるので、あまり違いを感じないかもしれません。しかし、相続税の申告が申告期限ぎりぎりになってしまったときのことを考えると、すぐに送信できるe-Taxの方が時間にゆとりを持つことができます。

提出書類のデータ管理が簡単

e-Taxではすでに税務署に送信したデータもアカウント上で管理されます。

アカウントのIDとパスワードがあれば提出後でも内容の確認ができることに加えて、アカウントを共有すればほかの相続人もデータにアクセスし、内容を把握することができます。

相続税申告に関する書類は枚数が多くなりがちなので、紙の書類だと失くしてしまう可能性もありますが、e-TaxはアカウントのIDとパスワードさえ覚えていれば、すべての書類にアクセスできます。

本人確認の書類を添付する必要がない

e-Taxを利用しないで相続税の申告をする場合には、番号確認書類および身元確認書類としてマイナンバーカードの写し等の提出が必要になります。

しかし、e-Taxで相続税の申告をする場合には、e-Taxの利用登録をする際にマイナンバーカードなどで本人確認が行われるため、相続税申告時にあらためて本人確認の書類を添付する必要がなくなります。

印鑑証明書の原本を提出する必要がない

相続税を申告する際の提出書類は基本的にコピーでも認められますが、遺産分割協議で相続する場合に提出する「印鑑証明書」だけは原本でなければならないとされています。

しかし、e-Taxで相続税申告を行う場合には、印鑑証明書もスキャンしたイメージデータで良いとされているため、スキャンしたデータがあれば印鑑証明書を取得する費用を節約できます。

納税もインターネット上で行える

e-Taxは相続税申告が終わった後の納税にも対応しています。納税の際には、簡単なクリック操作で納税できる「ダイレクト納税」というシステムを利用します。

ダイレクト納税とは、e-Taxにより申告書等を提出した後、事前に登録した納税者名義の銀行口座から、即時または期日を指定して相続税を納めることができる手続きです。

e-Taxで相続税申告をするときの注意点

自動計算機能がついていない

e-Taxには財産や家族の情報を入れると、自動で税額を計算してくれるような機能は搭載されていません。そのため、手計算やほかの相続税を計算できるソフトで課税価格や相続税額を計算した後に、計算結果をe-Taxに記入していく必要があります。

所得税の申告については自動的に計算してくれる機能がついているので、同じような感覚で相続税の計算も出来ると考えている場合には注意が必要です。

添付書類を省略できる制度はない

所得税の確定申告をe-Taxで行うと、いくつかの書類の省略が認められますが、相続税の申告ではe-Tax利用により省略できる書類はないので注意が必要です。

また、e-Taxで一回で送信できるファイルの容量は上限が8MBで、合計でも88MBとなっています。必要書類の容量がこの範囲内に収まらなかった場合には、DVDなどに記録して税務署に郵送しなければなりません。

複数の相続人の相続税申告をまとめてできない

本来、相続税の申告書は一枚の申告書で、相続人全員が共同で申告することが認められています。しかしe-Taxは、一人ひとりが申告するという仕組みになっているため、相続人の誰かが全員分をまとめて申告することはできません。

すなわち、相続人が各々でインターネットを使って相続税申告の手続きをしなければならないため、全員がe-Taxの利用手順やしくみを理解していないと利用は難しくなります。

なお、e-Taxでの申告と書類での申告は併用することができます。そのため、相続人の一人がe-Taxを利用したとしても、ほかの相続人たちは紙の書類を作成して、共同で申告をすることができます。しかし、ほかの相続人たちが共同で書類を作成するのなら、全員で共同申告をした方が簡潔に済むので、一人だけe-Taxで申請をするメリットはあまりありません。

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まとめ

e-Taxでの相続税申告は、相続人が離れているところに住んでいたり、インターネットを活用できる人が多くいたりする場合には、相続人の強い味方になるでしょう。

しかし、相続税の計算を相続人自身でしなければならないなど、インターネット以外の部分でも必要となる知識は多くあります。

電子申告に不安があり、利用を迷っている方は、相続に強い税理士に相続申告書の作成や申告代行を任せることも視野に入れてみてください。

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監修者情報

アトムグループ 協力税理士

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