入院給付金に相続税がかかるケース|死亡保険金との混同は過少申告の要因
入院給付金とは、入院したときに保険会社から受け取れる給付金です。
仮に保険の加入者が入院中、入院給付金を受け取る前に亡くなってしまった場合には、代わりに相続人が入院給付金を受け取ることになります。
この際、入院給付金が相続税の課税対象になるかは、保険契約において設定された「入院給付金の受取人」が誰かによって変わります。
この記事では入院給付金の受取人と相続税の関係や、同じタイミングで受け取ることが多い死亡保険金との違いについて解説していきます。
目次
死後に支払われた入院給付金に相続税はかかる?
受取人が被相続人なら相続税がかかる
入院給付金の契約上の受取人が被相続人(亡くなった方)になっている場合は、相続税がかかります。
被相続人が亡くなっている場合は、他の遺族などが代わりに入院給付金の請求・受け取りをします。しかし、契約上の受取人が被相続人である以上、その入院給付金は被相続人の財産として扱われるのです。
したがって、その他の被相続人の財産を相続する場合と同様、相続税がかかります。
入院給付金は全額相続税の対象
入院給付金に相続税がかかる場合、非課税枠はありません。受け取った入院給付金は全額、相続財産に加えて相続税を計算します。
ただし、相続税そのものには以下の基礎控除があります。
相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)
したがって、入院給付金とその他の相続財産の合計額のうち、上記の金額までは非課税となります。
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受取人が被相続人以外なら相続税はかからない
入院給付金の契約上の受取人が被相続人の配偶者や子など、被相続人以外になっている場合は、相続税の課税対象にはなりません。
この場合、被相続人の生死に関係なく、入院給付金は被相続人以外の人が受け取ることになっています。
したがってこの場合、入院給付金は「受取人固有の財産」とみなされ、相続により手に入れるものとは判断されないのです。
入院給付金の受取人を確認する方法
入院給付金の契約上の受取人は、保険証券で確認できます。保険証券はインターネット上で確認できる場合も多いです。
なお、入院給付金の振込に際して送られてくる支払い明細には、「口座名義人」が記載されています。しかし、これは実際に入院給付金が振り込まれる口座の名義人であり、必ずしも契約上の受取人と一致するとは限りません。
入院給付金に相続税がかかるか確認したい場合は、必ず保険証券で契約上の受取人を調べてください。
入院給付金と死亡保険金の相続税上の違い
死亡保険金とは、被保険者(保険に加入している本人)が死亡したときに、遺された家族に対して支払われる保険金です。
相続発生時には入院給付金と死亡保険金が同時に支払われることも多いですが、相続税に関する扱いは両者で違うため、きちんと区別しなければ相続税の過少申告が生じるリスクがあります。
詳しく見ていきましょう。
死亡保険金には相続税がかかる
死亡保険金は、「みなし相続財産」として相続税の対象になります。
みなし相続財産とは、被相続人の死亡を機に支払われる金銭などのことです。
通常の相続財産のように、被相続人が生前から所有していた財産ではありませんが、「被相続人の死によって遺族などに渡る財産」という点は共通なので、「みなし」相続財産となるのです。
死亡保険金は非課税枠あり|入院給付金との混同は過少申告の要因に
入院給付金には非課税枠はありませんが、死亡保険金には以下の非課税枠が設けられています。
死亡保険金の非課税枠=500万円×法定相続人の数
ここで要注意なのが、「入院給付金と死亡保険金がまとめて支払われたとしても、きちんと分けて相続税を計算する」ということです。
入院給付金と死亡保険金を分けるとは、具体的には以下の通りです。
- 入院給付金に相続税がかかる場合、全額を相続財産に加算する
- 一方、死亡保険金は非課税額を引いた金額を相続財産に加算する
もし両者を一緒にしたまま死亡保険金の非課税枠を適用すると、非課税枠が入院給付金分の金額にまで及ぶ可能性があります。
その結果、相続財産に加算する入院給付金が少なくなり、相続税の過少申告につながるのです。
相続税の過少申告では過少申告加算税や延滞税などのペナルティが発生することもあります。
万が一過少申告をしていた場合は、関連記事『相続税の修正申告とは?納めた相続税額が少ないことに気づいたら』を参考に適切に対処してください。
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死後に入院給付金が支払われる時の注意点
所得税はかからなくても医療費控除に注意
入院給付金の契約上の受取人が、被相続人の配偶者や子どもになっている場合、所得税や贈与税もかかりません。
所得税がかからない時の受取人
- 被保険者
- 被保険者の配偶者
- 被保険者の直系血族または同一生計となるその他の親族
理由は以下の通りです。
- 入院給付金のような、「身体の障害に起因して」支払われる給付金は非課税であると、所得税法施行令第30条によって規定されている
- 保険契約が傷害や疾病などを原因とする保険事故で死亡を伴わないものについては、贈与税を課税しないと相続税法で規定されている
所得税の対象外でも医療費控除を使うなら確定申告に要注意
入院給付金が所得税の対象外となる場合、相続人の確定申告時に所得税の申告は不要です。
しかし、確定申告時に医療費控除を使う場合は、入院費用から入院給付金で受け取った金額を差し引かなければなりません。
入院給付金は医療費を補てんする目的で支払われている給付金であるため、支払った医療費には含められないのです。
入院給付金を受け取ると相続放棄できなくなる可能性がある
受取人が被相続人になっている入院給付金を、被相続人の死亡後に相続人が受け取ると、「被相続人の財産の一部を取得した」とみなされます。
したがって、被相続人の所有していた財産すべての相続を放棄する「相続放棄」はできなくなる可能性があります。
被相続人に借金があることなどを理由に相続放棄を考えている場合、入院給付金の受け取りは、保険契約で定められている受取人が被相続人でないことを確認してからにしましょう。
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まとめ
入院給付金は保険契約時に設定した「受取人」により相続税がかかるかどうかが決まります。これから保険に加入される方は、この記事で解説したことを参考にして受取人の設定をしていただけると幸いです。
また、入院給付金と混同しやすい死亡保険金に関しても注意が必要です。
入院給付金の受取人が被相続人の場合、死亡保険金と合算して非課税枠を利用してしまうと、本来払うべき相続税額と比べて過少申告となってしまう恐れがあります。
各保険金の仕組みや性質を理解して、追徴課税などが発生しないよう正しい手続きを行いましょう。
もしご自身での手続きに不安がある場合や、悩みを抱えている場合には、一度相続問題に強い税理士にご相談ください。
監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士