相続税申告で「死亡診断書」の費用を債務控除できる|控除で相続税減額

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死亡診断書の費用

死亡診断書とは、人が死亡した際に医師が作成する、死亡時間や死因などを記載した書類です。

亡くなったときの状況によって、代わりに死体検案書が発行されることもあります。

死亡診断書がないと死亡届の提出ができず、葬儀や火葬の手続きも進められませんが、死亡診断書の発行にかかる費用は保険診療外となっています。

しかし、相続税の計算上は死亡診断書の費用を葬式費用として控除することができます。

葬式費用は、被相続人が亡くなったときの必要費用とされており、相続税の計算に含めないと決められているためです。

この記事では、死亡診断書と相続税の控除の関係や、死亡診断書を受け取ってから相続手続きをするまでの流れを解説していきます。

死亡診断書の費用は控除できる

葬式費用として相続財産から控除できる

被相続人が亡くなると、医師または歯科医師が作成した死亡診断書が発行されます。

死亡診断書の発行にかかる費用は約3,000円〜1万円といわれており、この費用を葬式費用として、相続財産から控除することができます。(相続税法基本通達13-4)

また、死亡診断書の費用は保険診療外となっているほか、被相続人が死亡した年の医療費控除に含めることもできないため注意が必要です。

死亡診断書のほかにも、お通夜や告別式の費用、火葬や埋葬料なども葬式費用として控除できる対象となっています。

葬式費用として控除するためには、証拠書類として領収書などの添付が必要です。僧侶へのお布施や葬儀を手伝ってくれた方への心づけなどで領収書がない場合は、「いつ、誰に、何のために、いくら支払ったか」を記録したメモやノートでも問題ありません。

病院への入院費や死亡診断書の費用など、どの費用がどの控除を受けられるか、以下にまとめました。

  • 生前に病院へ払った治療費や入院費
    被相続人の準確定申告で医療費控除申請できる
  • 死亡後病院に払った治療費や入院費
    被相続人と生計を一にしていた親族の確定申告で医療費控除申請できる
  • 死亡診断書の発行費
    相続税申告で葬式費用として債務控除できる

死亡診断書の費用を債務控除するメリット

葬式費用として相続財産から死亡診断書の費用が控除できると、相続税の課税対象となる財産の総額が減るため、結果的に支払う相続税が減額されます。

基本的に、相続財産の総額が大きいほど、かかる相続税も大きな額になります。

本来手持ちのお金から死亡診断書の費用を払うところを、相続する財産の中から払うことで、相続する財産の総額が少し減り、その分かかる相続税も減額される、というイメージです。

死亡診断書の費用を債務控除できる人

死亡診断書の費用を、葬式費用として相続財産から控除できる人は、相続人もしくは、遺言により全てまたは一定の財産を遺贈された包括受遺者に限られます。

遺言により特定の財産のみを遺贈された特定受遺者、相続放棄を選んだ人や相続廃除者は控除できません。

死亡診断書の取得から相続税申告までの流れ

(1)死亡診断書を取得する

死亡診断書の取得は、亡くなった場所や状況によって異なります。

まず、入院中など病院で亡くなった場合は、亡くなったことを確認した医師または歯科医師が死亡診断書を発行します。入院中に亡くなったケースでは、最後の入院費などと一緒に死亡診断書の費用を支払うこともありますが、この場合も死亡診断書の費用分は控除することが可能です。

次に、自宅で亡くなった場合は、自宅で亡くなったことを確認した医師または歯科医師が発行します。

最後に、事故で亡くなった場合には、死亡診断書ではなく死体検案書が発行されます。警察による検死が行われ、判明した死因や死亡時刻を医師が死体検案書に記載します。

(2)死亡届を提出する

死亡診断書(死体検案書)を取得したら、次は市町村役場の窓口に死亡届を提出します。提出先の役所は届出人の住所地の役所でも問題ありませんが、被相続人の死亡を知った日から7日以内に提出する必要があるので注意しましょう。国外で亡くなった場合は3か月以内です。

なお、死亡診断書はこの後の相続の手続きでも必要になりますので、提出する前にコピーを取っておきましょう。

死亡届の形式ですが、一般的には死亡診断書と1枚の用紙でセットになっています。中心で分けて、左側が死亡届、右側が死亡診断書です。この形式の場合は、右側の死亡診断書を病院で医師または歯科医師に記入してもらい、左側の死亡届は届出人自らが記入することになります。

病院によっては死亡診断書のみの用紙を使用しているところもありますので、その場合は役所の窓口で死亡届を記入し、2枚合わせて提出することになります。

(3)戸籍謄本などに反映される

死亡届を提出すると、戸籍謄本などに被相続人が死亡したことが反映されます。相続の手続きは、この反映が行われた後でないとできないため、まずは死亡診断書の取得と死亡届の提出をする必要があります。

(4)相続の手続きをする

死亡届を提出したら、相続手続きが始められます。相続財産と相続人を把握し、どの財産を誰が相続するか、そしてその結果自身が相続した財産にどのくらいの相続税がかかるのかを計算していきます。

相続税の計算の際に、相続財産の総額が基礎控除額を下回っていれば、相続税を申告・納付する必要はありません。また、葬式費用などを控除した結果、基礎控除額を下回った場合にも、相続税の申告・納付は不要です。

相続税の申告・納付が必要で葬式費用の控除をする場合には、申告書を作成する必要があります。第1表から第15表まであるうちの、申告書第13表「債務及び葬式費用の明細」に記載します。

相続税の申告書は税務署で入手できるほか、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。

債務控除を含む相続税計算については、関連記事『借金があった場合の相続と相続税|財産の承継と相続税のしくみを解説』をお読みください。

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死亡診断書に関するよくある質問

Q1. 死体検案書も死亡診断書と同じように債務控除できる?

A. 死体検案書も葬式費用として控除することができます。

死体検案書は費用が3万円〜10万円ほどかかり、死亡診断書よりも高額であるため、控除できる金額も大きくなります。

控除できる以外にも、発行費用は保険診療外であることや、提出する前にコピーを取る必要があることなど、基本的には死亡診断書と同じ扱いと思っていただいて問題ありません。

Q2. 死亡診断書の再発行はできる?

A. 基本的に死亡診断書は再発行してもらえます。

まずは、役所に死亡診断書を提出した後、手元に残してあったコピーをなくしてしまった場合です。死亡診断書の原本はもらえませんが、死亡診断書を提出した役所にいくと「死亡届の記載事項証明書」という死亡届の写しがもらえます。

死亡届の記載事項証明書は、年金に関わる手続きや、100万円以上の郵便局の簡易保険支払い手続きを目的とした再発行のみ受け付けられます。

なお、再発行できるのは被相続人の3親等以内の親族または配偶者のみで、身分証明書や戸籍謄本などの書類が必要です。

次に、死亡届の記載事項証明書が発行できない場合や、原本をなくしてしまった場合です。死亡診断書を取得した病院にいけば再発行してもらえますが、役所での発行と同じく被相続人の3親等以内の親族または配偶者のみに限られます。

また、一度目に発行したときと同額の費用がかかります。

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まとめ

死亡診断書や死体検案書の費用は、葬式費用として相続財産から控除できます。その結果、支払うべき相続税を減額することができます。

葬式費用として控除するためには、領収書やレシートもしくは費用の使い道を記したメモなどと、相続税申告の際に申告書第13表「債務及び葬式費用の明細」の提出が必要です。

死亡診断書の債務控除のみであれば、そこまで複雑な作業ではありませんが、相続税にはさまざまな控除や特例が存在します。

さらに、相続する財産の中に不動産などの評価が難しいものが含まれている場合は、支払う相続税を計算するだけでも一苦労でしょう。

もし、相続税に関しての不安や悩んでいることがある場合には、ぜひ一度相続税に強い税理士に相談してみてください。

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監修者情報

アトムグループ 協力税理士

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