自分で相続放棄の手続きをする方法|費用はかかる?どこで手続きする?

更新日:
相続放棄の手続き

亡くなった方に多額の借金などがある場合、相続人には「相続放棄」という手段があります。

相続放棄はすべての遺産を相続しないことをいうため、相続税がかかることも、相続税申告をする必要もなくなります。

では、相続放棄の手続きはどのような手順で進めるのでしょうか。

この記事では、相続放棄の手続きをご自身で行う方に向け、相続放棄の手続きの進め方や、相続放棄をする前に知っていただきたい注意点を解説します。

相続放棄の手続き方法

ご自身で相続放棄をする際の手続きの流れを解説していきます。

相続放棄することが決まったら、以下の手順で手続きしましょう。

1. 相続放棄の手続きにかかる費用を計算する

はじめに、相続放棄の手続きにかかる費用を計算します。

相続放棄の手続きにかかる費用は以下の通りです。

  • 収入印紙代:800円
  • 郵便切手代:目安400~500円
  • 被相続人の住民票除票または戸籍謄本の附票:300円
  • 相続放棄の申立をする人の戸籍謄本:450円
  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本:750円

相続放棄の手続きをするには、3,000円ほどの費用がかかります。

なお、相続放棄の手続きは、司法書士に依頼すると3万~5万円ほど、弁護士に依頼すると5万~10万円ほどが報酬相場だといわれています。

弁護士は相続人間のトラブルにおいて、依頼者の代理人として交渉や裁判への対応を行うことができるため、司法書士に比べて報酬相場が高額になっています。

2. 相続放棄の手続きに必要な書類を準備する

次に、相続放棄の手続きに必要な書類を用意・作成します。

被相続人と相続人の関係により、必要な書類は若干異なります。

すべてのケースで共通して必要な書類は以下の通りです。

  • 相続放棄申述書
  • 相続放棄の申立をする人の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票または戸籍謄本の附票
  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
  • 収入印紙
  • 連絡用の郵便切手

相続放棄申述書のダウンロードと、記入例の確認は、裁判所HPの『相続の放棄の申述書(成人)』、『相続の放棄の申述書(未成年者)』からできます。

3. 家庭裁判所で相続放棄の申立をする

相続放棄の手続きに必要な書類が準備できたら、家庭裁判所に相続放棄の申立をします。

相続放棄の申立先(書類の提出先)は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。具体的には、被相続人が亡くなったときの住民票の住所地を管轄する家庭裁判所です。

ただし、相続人の居住地によっては、申し立てを行う家庭裁判所が遠方で、提出が困難なケースもあると思います。

そういった場合には、必要書類を郵送で提出することも可能です。

また、戸籍謄本の入手の際にも、該当する市区町村役場から送付してもらえる場合がほとんどです。遠方で受け取りに行くのが難しい方は、ぜひ一度自治体にご確認ください。

なお、相続放棄申立の手続きができるのは、相続開始を知った日から3か月間です。ここまでの手続きを、相続開始を知った日から3か月以内に行う必要があります。

関連記事

相続放棄の期限は3か月!期限延長の方法と過ぎたときの対処法を解説

4. 申立後に届いた照会書を回答して再送する

家庭裁判所に提出した書類に不備などがなければ、家庭裁判所から「照会書」が送られてきます。

照会書とは、裁判所からの質問状のことで、「自分の意思で相続放棄をするのか」「相続放棄の意思に変わりがないか」などが記載されています。

最初に提出した相続放棄申述書の内容を確認しながら回答すると良いでしょう。

通常、家庭裁判所に相続放棄の申立をしてから照会書が届くまでは、3週間から1ヶ月程度かかります。

照会書の記入が終わったら家庭裁判所に返送してください。

5. 相続放棄が受理されると「相続放棄申述受理通知書」が届く

照会書の回答内容に問題がなければ、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」送られてきます。

この相続放棄申述受理通知書の送付をもって、相続放棄の手続きは終了となります。

通常、照会書を返送してから相続放棄が受理されるまでは、3週間から1ヶ月程度かかります。

相続税の相続税の無料相談

相続放棄が有効な手段となるケース

相続放棄を選択すると、プラスの財産もマイナスの財産も、すべての財産を取得できなくなります。

財産を相続しないわけですから、相続税がかかることもなく、相続税申告や支払いも不要です。

相続放棄が有効な手段となるのは、主に以下のケースです。

  • 被相続人に多額の借金や債務があった
  • 遺産相続のトラブルに巻き込まれたくない

被相続人に借金や債務があった場合、通常は相続人がその返済義務を引き継がなければなりません。

また、被相続人が借入金の連帯保証人だった場合も同様に、相続人がその立場を引き継ぎます。

そのため、預貯金や不動産などのプラスの財産よりも、借金や債務などのマイナスの財産が多い場合や、連帯保証人の立場を引き継がなくてはならないケースでは、相続放棄が有効な手段といえるでしょう。

また、遺産を相続するとなると、ほかの相続人と遺産分割について話し合うことになります。

相続争いなどが予想される場合に、トラブルに巻き込まれたくないという理由で相続放棄を選択する人も少なくありません。

関連記事

相続放棄したら相続税は払わなくていい?ほかの相続人への影響も解説

相続税の相続税の無料相談

相続放棄する前に知っておきたい注意点

ここでは相続放棄を検討している人に向け、ぜひ知っておいていただきたい注意点を紹介します。

相続放棄の手続きができる期間は3か月

相続放棄の手続きができるのは、相続開始を知った日から3か月以内です。

相続開始を知った日とは、「被相続人の死亡によって、自分が相続人になった」と知った日をいいます。

具体的には、上記の相続放棄の手続きの流れの、「3.家庭裁判所で相続放棄の申立をする」までを、相続開始を知った日から3か月以内に済ませるようにしましょう。

この3か月が過ぎると、被相続人のすべての財産の相続を承認したとみなされ(単純承認)、原則、その後は相続放棄の手続きができなくなります。

期限内に相続放棄の手続きが間に合わないおそれのある方、すでに期限を過ぎているけれど相続放棄をしたい方については、関連記事で対処法を解説していますので、ぜひお読みください。

関連記事

相続放棄の期限は3か月!期限延長の方法と過ぎたときの対処法を解説

負債の相続で悩んでいる場合は限定承認も検討する

借金などの負債(マイナスの財産)を含む財産の相続に不安がある方には、限定承認という選択肢もあります。

限定承認は、相続財産にプラスの財産とマイナスの財産がある場合に、プラス財産の範囲内でマイナス財産も相続します。

つまり、プラスの財産がマイナスの財産よりも多いケースでは、手元に財産が残ります。反対に、マイナスの財産の方が多いケースでは、プラスマイナスゼロになって、財産を相続することはなくなります。

限定承認も、相続放棄と同様に相続の開始を知った日から3ヵ月以内に、家庭裁判所に申立をします。

なお、相続放棄は相続人単独で行えますが、限定承認は相続人全員で申立を行う必要があります。

相続人のうち、1人でも単純承認をすると限定承認は選択できなくなってしまうため、限定承認を希望する場合は事前に相続人同士で相談しましょう。

被相続人の死亡前に相続放棄の手続きはできない

相続放棄は、被相続人の死亡前に行うことはできません。

相続放棄を考えている場合は、相続開始を知った日から3ヵ月間で手続きをしましょう。

同様に、相続人のなかに相続放棄したい人がいて、事前に相続放棄する旨を発言していたとしても、それをもって相続放棄させることはできません。相続が発生すると気が変わり、相続放棄しないことも考えられます。

相続放棄を希望する人がいて、相続放棄を前提に遺産分割を進めたい場合は、生前贈与で財産の大部分を分割してしまう方法があります。生前贈与をする場合には、遺留分に気を付ける必要があります。

遺留分とは「遺言であっても、奪うことができない相続財産の割合」を意味します。たとえば、配偶者と子1人が相続人の場合、それぞれ4分の1が遺留分割合となります。

遺留分を奪うことはできませんが、裁判所の許可があれば、相続前に放棄することができます。相続放棄を希望している人に遺留分の放棄を依頼しておきましょう。

相続放棄は撤回できない

一度相続放棄すると、撤回することはできません。

たとえ、相続放棄の手続きが完了した後に、新たな財産が見つかったとしても、相続放棄を撤回して財産を相続することはできません。

そのため、相続放棄や限定承認を選択する場合は、相続財産を正確に把握しておきましょう。

なお、家庭裁判所が相続放棄を認めて、相続放棄申述受理通知書を送付するまでは申立を取り下げることができます。

相続放棄前に遺産を処分しないようにする

相続放棄する前に、プラス財産を自分のものとしたり、生活費に使ったりすると、その時点で単純承認されたものとみなされます。

もちろんその後に相続放棄を選択することはできません。

金融機関に相続用の残高証明書の発行を依頼すると、金融機関は口座の名義人の死亡を確認でき次第、当該口座を凍結します。口座凍結されれば、預貯金を誤って引き出すことはなくなります。

そのため、口座凍結前に預貯金を引き出し、使ってしまわないよう注意してください。

たとえ引き出してしまっても葬儀費用であれば問題ないとされていますが、生活状況より高額な葬儀費用である場合には認められません。

相続放棄を考えている場合は特に、相続放棄前に預金口座からの引き出しなどで遺産処分をしないように注意しましょう。

弁護士アイコン

監修者情報

アトムグループ 協力税理士

全国/電話相談可能

相続税の無料相談をする