相続放棄の相談先は税理士・弁護士・司法書士|専門家ごとの使い分けも解説

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相続放棄と相続税

相続放棄の相談先は、内容によって税理士・弁護士・司法書士の3つに分かれます。

相続税のシミュレーションや申告への影響を確認したいなら税理士、相続放棄手続き全体の代行や債権者との交渉を任せたいなら弁護士、書類作成や戸籍収集だけを頼みたいなら司法書士と、専門家ごとに対応できる範囲が異なります。

また、相続放棄には、被相続人が亡くなったこと、および自分が相続人になったことを知ったときから原則3か月という申述期限があり、この期間を過ぎると単純承認(被相続人の財産や債務を相続)したことになります。

この記事では、相続放棄の基本的な制度・期限を確認したうえで、税理士・弁護士・司法書士それぞれに依頼できる内容やメリット、相続放棄が相続税の計算(基礎控除・生命保険金の非課税枠・2割加算など)に与える影響を解説します。

※本記事の情報は2026年9月時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。

相続放棄とは?

相続放棄の意味

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)のプラスの財産(預貯金、不動産など)もマイナスの財産(借金、未払い税金など)も一切引き継がないことを選択する手続きです。家庭裁判所に申述して受理されることで、「最初から相続人ではなかった」扱いになります。

その結果、被相続人の借金を負担する義務はなくなり、遺産分割協議に参加する必要もなくなります。相続財産を一切受け継がないため、相続税を支払う義務も原則としてなく、申告も不要です。

相続放棄の手続き

相続放棄をするには、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に「相続放棄申述書」の提出が必要です。提出時には、被相続人や相続放棄する人の戸籍謄本等の添付が必要です。

管轄の家庭裁判所や必要書類の確認、相続放棄申述書のダウンロードは、裁判所のホームページから可能です。

相続放棄の期限

相続放棄の申述期限は、「被相続人が亡くなったこと、および自分が相続人になったことを知ったとき」から3か月以内です。

この期限を過ぎてしまうと、単純承認したことになってしまいます。単純承認とは、被相続人(亡くなった方)のプラスの財産もマイナスの財産(借金など)も、無制限・無条件にすべて引き継ぐ、最も基本的な相続方法です。

ただし、被相続人の死亡を知らなかった場合は、その時点で熟慮期間はまだ始まっていません。

また、死亡や自己が相続人になったことを知っていた場合でも、相続財産が全く存在しないと信じ、そう信じたことについて相当な理由があるときは、相続財産の存在を認識したときから3か月以内に申述すれば、相続放棄の申述が受理される可能性があります。

さらに、期限内に家庭裁判所へ申し立てて許可を得れば、相続放棄の申述期限を延長できます。

相続放棄をすると相続税はどうなる?

相続放棄者には原則として相続税はかからない

相続放棄をした人には、原則として相続税を支払う義務はなく、申告も不要です。

ただし、遺言による財産(遺贈)や、生命保険金・死亡退職金といった「みなし相続財産」を受け取った場合、また相続時精算課税制度の適用を受けていた場合には、相続放棄をしていても相続税の課税対象となり、申告や納税が必要になることがあります。

相続放棄と相続税の関係について詳しくは、関連記事『相続放棄で相続税は払わなくていい?ほかの相続人への影響も解説』をお読みください。

相続放棄がある場合の相続税の計算の間違えやすいポイント

相続放棄した人がいる場合、相続税の計算上、以下の点にご注意ください。

間違えやすいポイント

  1. 生命保険金等の非課税限度額は、相続放棄がなかったものとして計算する
  2. 基礎控除額は、相続放棄がなかったものとして計算する
  3. 相続税の総額は、相続放棄がなかったものとして計算する
  4. 相続人が2割加算の対象になる可能性がある

以下、それぞれのポイントについて、次の具体例をもとに解説します。

前提条件

被相続人の親族は母(直系尊属)と妹(兄弟姉妹)2人のみ、母が相続放棄をして、妹が相続したというケースを考えます。

遺産の内容は以下のとおりです。

  • 生命保険金1,000万円(受取人は被相続人の母)
  • 預貯金4,000万円

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生命保険金等の非課税限度額は相続放棄がなかったものとして計算

生命保険金の非課税限度額の計算式は「500万円×法定相続人の数」です。非課税限度額の計算でも、相続放棄はなかったものと仮定して計算します。

今回のケースでは、母の相続放棄はなかったものとして考えるので、非課税限度額の計算上での法定相続人の数は1人です。

よって、生命保険金の非課税限度額は500万円×1=500万円です。

ただし、相続放棄した人には非課税枠は適用されません。

したがって、母が受け取った生命保険金1,000万円は、全額が相続税の課税対象になります。

基礎控除額は相続放棄がなかったものとして計算

相続税の基礎控除額の計算式は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。基礎控除額の計算では、相続放棄を無かったものと仮定して計算します。

今回のケースでは、母の相続放棄はなかったものとして考えるので、基礎控除の計算での法定相続人の数は1人です。

よって、基礎控除額は、3,000万円+(600万円×1)=3,600万円になります。

相続税の総額も相続放棄がなかったものとして計算

以下の手順で相続税を計算します。

  1. 正味の遺産額から基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を算出する
  2. 相続放棄はなかったと仮定して、課税遺産総額を法定相続分で按分し、各法定相続人の取得金額を算出する
  3. 取得金額に税率をかけて控除額を差し引き、各法定相続人の税額を求める
  4. 各法定相続人の税額を合計する

今回のケースに当てはめると、以下のようになります。

  1. 正味の遺産額は、預貯金4,000万円と生命保険金1,000万円を合わせた5,000万円です。ここから基礎控除額3,600万円を差し引くと、課税遺産総額は1,400万円になります。
  2. 母の相続放棄がなかったものと仮定するため、法定相続人は母のみで法定相続分は1です。母の取得金額は、課税遺産総額1,400万円×1=1,400万円になります。
  3. この取得金額に対応する税率は15%、控除額は50万円のため、相続税の総額を計算するための税額は1,400万円×15%-50万円=160万円です。
  4. 相続放棄がなかったと仮定した場合の法定相続人が母1人のみであるため、この160万円がそのまま相続税の総額になります。

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相続人が2割加算の対象になる可能性がある

相続税額の2割加算とは、財産を取得した人が被相続人の配偶者・父母・子(一親等の血族)以外である場合に、相続税額の2割相当額が加算される制度です。

先述した3つのポイントとは異なり、2割加算の有無は、財産を取得した人と被相続人との続柄によって判断します。

今回のケースでは、母が相続放棄をしたことで、次順位である妹が実際の相続人になります。妹は被相続人の配偶者・父母・子のいずれにも当たらないため、妹が納める相続税額には2割加算が適用されます。

もし母が相続放棄をせず、そのまま相続していれば、母は被相続人の一親等の血族にあたるため、2割加算の対象にはなりませんでした。

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相続放棄を税理士に相談する

相続税のシミュレーションができる

財産の全容がつかめず、借金とプラスの財産のどちらが多いか判断がつかないため、放棄すべきかどうか迷っている方は少なくありません。

また、放棄を検討している場合でも、自分が放棄した後にほかの相続人の税負担がどう変わるのか、不安に感じることもあるでしょう。こうしたケースでは、相続税のシミュレーションが欠かせません。

税理士に相談すれば、相続財産の評価や相続税額の試算を依頼できるため、相続放棄をした場合に自分やほかの相続人の税負担がどう変わるのかを、様々なパターンで確認できます。

早めに相談すれば、最も適切な対応を余裕をもって検討できます。

相続手続きの負担が軽くなる

相続放棄には、「被相続人が亡くなったこと、および自分が相続人になったことを知ったとき」から3か月以内という期間制限があります。この期間内に、財産調査から申述までを終える必要があるため、相続人の負担は重くなります。

税理士に依頼すれば、この期間内の財産調査を任せられます。調査の結果、相続放棄をやめて相続することにした場合も、放棄した後に遺贈やみなし相続財産を受け取って申告が必要になった場合も、同じ税理士にそのまま依頼できます。

相続放棄を弁護士に相談する

相続放棄の手続きを代行してもらえる

相続放棄の手続きを、相続人に代わって行うことができるのは弁護士のみです。

ほかの専門家が代行できるのは書類作成など手続きの一部分に限られますが、弁護士に依頼した場合は書類集めから手続きまですべてを代行してもらえます。

その分司法書士に比べて費用は高くなってしまうことが多いですが、代行してもらえる幅が広いのが大きなメリットです。

債権者とのやり取りも任せられる

マイナスの財産(借金)が多いために相続放棄をする場合、放棄が受理されるまでの間や、受理された後も、債権者から相続人に直接連絡が来ることがあります。

弁護士に依頼すれば、債権者とのやり取りの窓口を弁護士に一本化できます。相続放棄をした(またはする予定である)ことを債権者に伝え、督促を止めてもらう連絡や、必要な交渉も弁護士が行うことができます。

相続放棄を司法書士に相談する

戸籍収集や書類作成を依頼できる

司法書士には、相続放棄の手続きに必要な戸籍の収集や、相続放棄申述書(相続放棄を受理してもらうために家庭裁判所に提出する書類)の作成を依頼できます。

戸籍謄本は、本籍地の市区町村に請求できるほか、2024年3月からは、一定の戸籍について本籍地以外の市区町村窓口でも取得できる「広域交付」が始まりました。広域交付では、請求できる本人・配偶者・直系尊属・直系卑属が窓口に出向く必要があり、郵送や代理人による請求はできません。

ただし、相続放棄の手続きそのものを相続人に代わって行えるのは弁護士のみで、司法書士に依頼できるのは書類作成の代行とそれに伴う相談業務に限られます。

その分、司法書士は弁護士より費用を抑えられることが多いため、戸籍収集や書類作成だけを任せ、申述は自分で行えるという方には司法書士が向いています。

まとめ

相続放棄は、家庭裁判所への申述が受理されることで、初めから相続人でなかった扱いになる手続きです。期限は、被相続人が亡くなったこと、および自分が相続人になったことを知ったときから3か月以内で、受理後は撤回できません。

相続放棄をした人に相続税は原則かかりませんが、遺贈や生命保険金・死亡退職金を受け取った場合は相続税の課税対象となり、申告や納付が必要になることがあります。

こうした税負担への影響まで踏まえて放棄すべきか試算したいなら税理士、手続き全体と債権者対応まで任せたいなら弁護士、費用を抑えて戸籍収集・書類作成だけ任せたいなら司法書士に相談しましょう。

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