支援ローンを組んで相続税を納付|知っておきたいメリットと注意点

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支援ローンを組んで相続税を納付する

相続税額が大きくなりやすい不動産などを相続すると、相続税の支払いが困難になってしまうことがあります。

相続税は現金で一括納付するのが原則であるため、もし現金が足りない場合は、不動産をやむを得ず安く売って、なんとか現金を調達する、といったケースも考えられます。

また、納付期限までに支払うことができないと、延滞税をはじめとする追徴課税の支払いが必要となってしまいます。

こういった状況を回避するために、金融機関などが提供している「相続税納付を支援するローン」が利用できます。

この記事では、相続税の支払いのためにローンを組むメリットとデメリット、そしてローンを組む以外の解決方法について解説していきます。

相続税の納付を支援するローンがある

相続税納付を支援するローン

銀行や信用金庫などの金融機関、一部の不動産会社により、相続税の支払いが厳しい方の支援を目的としたローンが提供されています。

支援ローンという名称だけでなく、「相続税支払資金ローン」や「相続税サポートローン」など、提供元により名称は異なります。

ローンの仕組みはさまざま

ある金融機関では、「大型フリーローン相続関連資金」として相続や贈与に関する資金を借り入れられるサービスを提供しています。限度額は3億円で、証書貸付の借入期間が20年以内、手形貸付が1年以内と決められています。

また、ある不動産会社は、不動産を売却して納税資金を得ようとする方々へ向けて、「相続税立替払」というサービスを提供しています。これは、相続税の納税に必要な費用などを立て替えてもらえるというもので、限度額が1億円、立て替え払いの期間は最長で1年となっています。なお、サービス利用の条件として、同社が提供している売却保証システムを利用する必要があります。これは、不動産を一定期間内に売却できなかった場合に、あらかじめ取り決めた金額で同社が購入するという内容です。

相続税の納付期限

相続税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、申告・納付する必要があります。10か月を過ぎてから納付した場合は延滞税がかかります。

なお、申告・納付が必要なのは、相続財産の課税価格が基礎控除額を上回った場合です。基礎控除額とは課税価格から差し引くことができる金額で、基礎控除を差し引いた後の金額が0円以下なら相続税は発生しません。また、相続税の申告も必要ありません。

相続税の基礎控除について詳しく知りたい方は、関連記事『相続税は基礎控除以下なら無税!計算方法やその他の控除も解説』をお読みください。

ローンを組んで相続税を支払う「メリット」

金利支払額が低い

金融機関によっては、相続税を延納するときの利子税よりも、ローンで発生する金利支払額が低い場合があります。ローンの金利支払額が延納の利子税よりも低ければ、金融機関から借り入れをおこなって相続税を支払ってしまったほうが費用を少なく済ませられます。

相続財産をそのまま保有できる

相続税を現金で支払えない場合は、不動産などの相続財産を売却して現金を確保するか、物納として相続財産そのものを納める必要があります。順調に売却が進めば良いですが、現金の確保を優先するあまり、やむを得ず安く売却してしまうケースも考えられます。

また、どうしても手放したくない相続財産がある場合にも、ローンを組むことができれば、相続財産を手元に残しつつ相続税の支払いをすることができます。

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ローンを組んで相続税を支払う「デメリット」

担保や保証人が必要なことが多い

相続税の支払いを目的に借り入れをする場合は、数千万円など大きな金額になることが想定されます。そのため担保や保証人が必要となるケースがほとんどです。

相続税の納付期限までに借入できない場合がある

相続税の支払いを目的とした借り入れをする場合は、審査が厳しくなる傾向にあります。住宅ローンなどのほかのローンと比べて、審査にかかる期間も長くなることも多いため、相続税の納付期限までに借り入れができないおそれがあります。

ローンを組む以外の解決方法

相続税の支払いが困難なとき、ローンを利用する以外にも解決方法がいくつかあります。

相続税の延納

相続税を現金一括で納付できない場合は、相続税延納の制度を利用することができます。相続税の延納とは、相続税を最大で20年間にわたり、分割で支払うことができる制度です。以下の条件をすべて満たしていれば利用できます。

・相続税額が10万円を超えること
・現金一括納付が困難であること
・延納税額と利子税の額に相当する担保を提供すること
・相続税の納付期限までに延納申請書などを税務署長に提出すること

なお、延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下の場合には、担保を提供する必要はありません。

延納で発生する利子税と、ローンで発生する金利支払額を比べて、費用が低く済むほうを選択するという判断方法もあります。

相続税の物納

相続税の物納とは、延納での相続税納付も困難な場合に、相続した財産の中から現物で相続税を納付することができる制度です。物納には以下のように順位が定められており、上位の財産を相続している場合には、下位の財産で物納することはできません。

・第1順位
不動産、上場株式・国債・地方債などの有価証券、船舶

・第2順位
非上場株式などの有価証券

・第3順位
絵画や貴金属などの動産

物納で納める財産は相続税評価額で評価されます。そのため、不動産は時価よりも低い金額で評価されることになります。

また、相続税の延納と同じく、相続税の納付期限までに物納申請書などを税務署長に提出し、物納の申告手続きを終了させる必要があります。

相続税の延納・物納について詳しくは、関連記事『相続税の延納・物納|利用条件や利子税、担保、申請手続きを解説』をお読みください。

不動産を売却し、現金化する

もし相続した財産の中に価値の高い不動産が含まれていれば、その不動産の売却代金から相続税を支払う方法もあります。しかし、記事の冒頭でも触れたように、現金を用意するために焦って安く売却することは避けたほうが良いです。不動産を売却するときはできるだけ早く行動しましょう。

不動産を時価で売却できれば、相続税評価額で評価される物納よりもメリットがあります。その反面、相続税の納付期限までに買い手が現れなかった場合には、別の方法を考えなければならなくなることがデメリットといえるでしょう。

もし不動産が購入額よりも高額で売れた場合には、譲渡所得税がかかります。しかし、相続が始まってから3年10か月以内の売却であれば、「取得費加算の特例」で減額することができます。

相続放棄する

相続税の支払いが困難な場合の解決方法としては、相続放棄も選択肢に入るでしょう。相続放棄とは、被相続人が所有していたすべての財産の相続を放棄することです。したがって、もちろん相続税の納税義務は生じません。

しかし、すべての財産の相続を放棄するわけですから、現金や預貯金なども相続できなくなってしまいます。相続放棄をおこなう際には慎重に検討しましょう。

また、自己のために相続の開始があったことを知った日から、3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。そのため、相続放棄をする可能性があるときも早めに行動するようにしましょう。

相続放棄の手続きや注意点を詳しく知りたい方は、関連記事『自分で相続放棄の手続きをする方法|放棄すべきケースや注意点も解説』をお読みください。

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おわりに

ここまで、相続税の支払いが困難なときに支払いを支援してくれるローンと、ローンを借りる以外の解決方法を解説してきました。

ローンを借りられれば、相続財産を手元に残しつつ相続税を支払っていくことができます。しかし、担保や保証人が必要だったり、審査が納付期間までに終わらなかったりと相応のリスクも抱えています。

相続税をいち早く納付したい場合や、どうしても手元に残したい不動産がある場合など、ご自身の状況にあった選択を考えるときに、この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。

実は相続税対策は、被相続人がご存命の頃からおこなうことができます。生前の相続税対策に興味がある方は、関連記事『【相続税の抜け道】税理士が厳選した4つの相続税対策を徹底解説!』をお読みください。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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