【相続税の抜け道】税理士が厳選した4つの相続税対策を徹底解説!

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相続税の抜け道

相続税は、相続財産が多いほど税率が高くなります。税率は最低でも10%、最高税率は55%にも上ります。

そんな相続税の重い負担を避けるための「抜け道」を知りたいという方は、少なくないはずです。

そのような方に向け、この記事では、生前贈与や不動産相続の特例をはじめ、適法かつ安全な相続税の「抜け道」を解説します。

正しい「抜け道」を知って、賢く節税しましょう。

相続税の抜け道①|生前贈与を活用しよう!

暦年課税を活用した節税

相続税の「抜け道」として、最もポピュラーなのが、贈与税の暦年課税を活用した節税方法です。

これは、贈与税の計算上、受贈者1人当たり年間110万円の非課税枠が設けられていることを活用して、継続的に生前贈与を行う節税対策です。

非課税枠の範囲内の贈与であれば贈与税がかかりません。

さらに、長期間にわたり、多数の受贈者に生前贈与すれば相続財産を大きく減少できるため、相続税の節税にもなるのです。

ただし、注意点が2つあります。

1点目は、税務署に名義預金と判断されないよう対処が必要な点です。

名義預金とは、お金を拠出した人と預金口座の名義人が異なるケースを言います。

名義預金と認定されると、相続税の課税対象になるだけでなく、申告漏れに対する加算税等のペナルティを受ける可能性もあります。

名義預金と認定されないために、贈与ごとに贈与契約書を作成しましょう。

また、受贈者名義の通帳、印鑑、カードは受贈者本人が管理する点もポイントです。

贈与を名義預金と認定されないための詳しい対策方法は関連記事『名義預金は相続税・贈与税がかかる?|名義預金の認定の回避策』をお読みください。

2点目の注意点は、相続開始から3年以内の生前贈与は、相続財産に加算される点です。

しかも、加算期間は、2024年1月から段階的に7年に延長されます。

このデメリットを回避する1つの方法として、孫への生前贈与があります。

生前贈与加算の対象者は、相続又は遺贈により財産を取得した者です。

通常、孫はいずれにも該当しません。

したがって、暦年課税を活用して孫へ生前贈与すれば、生前贈与加算により結局相続税が課税される事態を回避できるのです。

相続税と贈与税の違いについて詳しく知りたい方は、関連記事『贈与税と相続税の違いは?贈与と相続はどちらが得か徹底比較!』をお読みください。

相続時精算課税制度を活用した節税

相続時精算課税制度とは、累計2,500万円の非課税枠の範囲内であれば、生前贈与を何回しても贈与税が課税されない制度です。

ただし、相続時精算課税制度を利用して贈与した財産の価額は、すべて相続財産に合算されます。したがって、必ずしも相続税の節税にはなりません。

しかし、賃貸アパートなどの収益物件を贈与する場合は、相続時精算課税を利用するメリットがあります。

なぜなら、賃貸物件を贈与する場合、その建物の評価額は、時価より相当安く算出されるからです。

具体的には、贈与する建物の評価額は、「固定資産評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」で算出されます。

固定資産評価額は時価の約70%、借家権割合は30%です。

この計算式で求められる贈与額が2,500万円以下であれば、贈与税をかけずに賃貸物件を贈与できます。

例えば、時価3,000万円、固定資産評価額2,100万円、賃貸割合100%の賃貸アパートを贈与するケースを考えてみましょう。

この場合の評価額は、2,100万円×(1-0.3×1)=1,470万円です。

相続時精算課税の非課税枠2,500万円の範囲に収まっているため、同制度を利用すれば、非課税で贈与できます。

さらに、家賃など贈与財産から生じる利益は受贈者のものになる点もメリットです。

受贈者は、この利益を相続税の納税資金として利用できます。

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賃貸アパートの相続税は安い?|賃貸アパートにかかる相続税などを解説

【注目】暦年課税と相続時精算課税が大きく変わる

2023年(令和5年)税制改正大綱により、2024年(令和6年)1月1日以降、暦年課税と相続時精算課税制度が大きく変わることが決まりました。

①暦年課税の改正点

暦年課税制度は、相続財産への加算期間が3年から7年に段階的に延長されます。

この改正により、相続税対策として生前贈与をしても、結局は相続税がかかってしまう財産の範囲が大幅に増えることになります。

②相続時精算課税の改正点

相続時精算課税制度は、年間110万円の基礎控除が新設されることになりました。この基礎控除は、暦年課税の基礎控除とは別枠です。

新たな相続時精算課税制度を選択した場合、年110万円以下の贈与であれば贈与税が非課税で、申告も不要です。

③相続税対策への影響

従来、相続税の「抜け道」と言えば、暦年課税を活用した生前贈与が一般的でした。

しかし、今後は、暦年課税よりも相続時精算課税制度を利用した方が、節税効果が高くなるケースが増えることが予想されます。

ご自身に合った最適な相続税対策を立てるには、相続専門の税理士への相談がおすすめです。

知っておきたい相続時精算課税制度のデメリットとメリットは、関連記事『相続時精算課税制度のデメリット|改正でメリットは大きくなる?』をお読みください。

住宅取得等資金の一括贈与を活用した節税

父母や祖父母などの直系尊属が、18歳以上の子や孫に対し、マイホームの新築費用等を贈与する場合、最大1,000万円が非課税になります。

適用期限は、2023年(令和5年)12月31日です。

相続財産が減少するため、相続税の節税対策にもなります。

まとまった金額を子などに贈与できるため、受贈者には大変喜ばれるでしょう。

その反面、贈与を受けなかった相続人は不満を抱きやすく、後々相続トラブルにつながるおそれもあります。

相続トラブルを避けたい方は、弁護士や税理士などの専門家に相談の上、贈与するのがおすすめです。

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住宅購入資金の生前贈与で活用できる非課税制度|要件や注意点を解説

教育資金の一括贈与を活用した節税

父母や祖父母などの直系尊属が、30歳未満の子や孫に対し、教育資金を贈与する場合、最大1,500万円が非課税になります。

適用期限は、2026年(令和8年)3月31日です。

相続財産が減少するため、相続税の節税対策にもなります。

ただし、贈与者が死亡した場合、受贈者が在学中の場合などを除き、その時点の残額に原則として相続税がかかる点にご注意ください。

また、受贈者が30歳に達するなどの理由により契約が終了した場合、その時点の残額に対し贈与税がかかります。

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教育資金贈与は相続税の節税に有効|適用の要件や手続き、注意点を解説

結婚子育て資金の一括贈与を活用した節税

父母や祖父母などの直系尊属が、18歳以上50歳未満の子や孫に対し、結婚・子育て資金を贈与する場合、最大1,000万円が非課税になります。

適用期限は、2025年(令和7年)3月31日です。

相続財産が減少するため、相続税の節税対策にもなります。

ただし、贈与者が死亡した場合、その時点の残額に原則として相続税が課税される点にご注意ください。

また、受贈者が50歳に達するなどの理由により契約が終了した場合、その時点の残額に贈与税がかかります。

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結婚・子育て資金の贈与の非課税制度|要件や手続き、注意点を解説

相続税の抜け道②|生命保険を活用しよう!

生命保険の非課税枠を活用した節税

死亡保険金のうち「500万円×法定相続人の人数」に達するまでの金額は、相続税が非課税とされています。

この仕組みを活用すれば、相続税をかけずに家族に遺産を遺すことが可能です。

以下の具体例をご覧ください。

【具体例】

●相続関係
・被相続人
・妻
・長男
・二男

●遺産の内容
・預貯金 1,000万円
・不動産 3,000万円
・生命保険 1,500万円

プラスの相続財産は、預貯金1,000万円+不動産3,000万円+生命保険1,500万円=5,500万円です。

法定相続人は妻と2人の子の合計3人です。

したがって、生命保険の非課税枠として、500万円×3=1,500万円をプラスの相続財産から差し引きます。

そうすると、課税価格の合計は、5,500万円ー1,500万円=4,000万円です。

基礎控除額は3,000万円+(600万円×3)=4,800万円です。

課税価格の合計から基礎控除額を差し引くと、4,000万円ー4,800万円<0となります。

よって、相続税はかかりません。

他方、「生命保険1,500万円」ではなく「現金1,500万円」を保有していた場合、課税価格の合計額は5,500万円のままです。

この場合、課税価格の合計額が基礎控除額を上回るため、相続税が課税されます。

生命保険の非課税枠を超える場合の対処法

生命保険の非課税枠を超える保険に加入する場合、相続税の負担なしで保険金を取得する方法があります。

それは、被保険者を被相続人、契約者及び受取人を子とする契約を締結する方法です。

こうすれば、子が受け取った保険金は一時所得となり、相続税ではなく、所得税及び住民税が課税されます。

遺産総額が多額に上るケースでは、保険金を相続税の対象とするより、所得税及び住民税の対象とした方が、税金の負担が大幅に軽減される可能性があります。

具体的にどのような契約形態が税金面で有利になるか知るには、実際にシミュレーションしてみるのが一番です。

生命保険を活用した節税をお考えの方は、相続専門の税理士を通じ、契約形態ごとの税額を一度シミュレーションしてみることをおすすめします。

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相続税の抜け道③|小規模宅地等の特例を活用しよう!

小規模宅地等の特例で自宅用敷地を減額

小規模宅地等の特例とは、相続等で土地を取得した場合、一定の要件を満たせば、その土地の相続税評価額を大幅に減額できる特例です。

特に多くの方が活用しているのが、「特定居住用宅地等」の減額です。

特定居住用宅地とは、被相続人が自宅用敷地として使用していた土地を意味します。

この土地を配偶者や親族が相続した場合、330㎡を上限として80%評価額を減額できます。

ただし、誰が土地を取得するかによって、適用要件が異なります。

詳しくは『小規模宅地等の特例で相続税を大幅減額|適用要件・計算方法を解説』をご参照ください。

小規模宅地等の特例で事業用宅地等を減額

小規模等宅地等の特例は、被相続人が事業用に使用していた土地にも適用できます。

代表的なものが、「特定事業用宅地等」と「貸付事業用宅地等」です。

特定事業用宅地は、400㎡を上限として80%評価額を減額できます。

ここで言う「事業」には、貸付事業は含まれません。

貸付事業用宅地は、200㎡を上限として50%評価額を減額できます。

貸付事業の例として、不動産貸付業、駐車場業等が挙げられます。

ただし、誰が土地を取得するかによって、適用要件が異なります。

相続税の抜け道④|養子縁組を活用しよう!

養子縁組を活用した節税

養子縁組をすると、法定相続人の数が増えます。

その結果、基礎控除額や生命保険金・死亡退職金の非課税枠が増えるため、相続税の節税になります。

【基礎控除額の計算式】
3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)

【生命保険金・死亡退職金の非課税枠の計算式】
500万円×法定相続人の数

ただし、法定相続人に算入できる養子の数には以下の上限があります。

●被相続人に実子がいる場合は1人まで
●被相続人に実子がいない場合は2人まで
※相続税の負担を不当に減少させる目的の養子の数は、上記の養子の数に含めることはできません。

孫養子に対する2割加算に注意

養子縁組を行って相続税を節税したいとお考えの方に注意していただきたいのが、相続税の2割加算です。

2割加算とは、「被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫を含む)または被相続人の配偶者」以外の者が、相続や遺贈によって財産を取得した場合に、相続税が2割加算される制度です。

通常、孫は2割加算の対象になります。

節税になると考え孫と養子縁組した結果、反対に相続税の負担が増えてしまう可能性もあるのです。

養子縁組は、相続人間のトラブルが発生しやすい節税方法でもあります。

実行前に、弁護士や税理士などの専門家に十分なアドバイスを受けることをおすすめいたします。

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孫が相続すると相続税が2割加算?孫に相続する方法と注意点を解説

相続税の相続税の無料相談

安全な相続税の「抜け道」を知りたいなら税理士へ!

今回は相続税を節税できる抜け道として以下の4つを紹介しました。

  • 生前贈与を活用する
  • 生命保険を活用する
  • 小規模宅地等の特例を活用する
  • 養子縁組を活用する

しかし、相続する財産や相続人によって、相続税の節税につながる「抜け道」は多岐にわたります。

そして、それぞれの節税方法に気を付けるべきポイントが存在するため、適法かつ安心な「抜け道」を知るには、専門家への相談が最善策です。

相続に強い税理士に相談すれば、相続税の節税対策だけでなく、納税資金対策や相続トラブルを防止する遺産分割方法についてもアドバイスを受けられます。

大切なご家族のため、ぜひ早いうちからお気軽に税理士にご相談ください。

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アトムグループ 協力税理士

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