【相続税の納付書の書き方がわかる】見本付きで簡単に作成できる!
相続税では、相続人ごとに納付書を作成し、税金を納付します。
申告の際に提出する相続税申告書は、書類が何枚にもわたり相続人自らで作成するのが困難な場合もありますが、相続税の納付書は、記入する情報さえわかっていれば簡単に作成することができます。
この記事では、相続税の納付書の書き方をゼロから丁寧に解説していきます。
また、相続税の納付書の入手方法や、納付書と相続税の納め方についても紹介します。
ぜひ最後までお読みください。
相続税の納付書とは
実は、相続税の納付書といっても、相続税を納めるためだけの専用の用紙があるわけではありません。
相続税の納付には「納付書(領収済通知書)」という用紙を使用します。この用紙は相続税以外にも、所得税をはじめとする様々な税金を払うときに使用することになります。
ただし、この記事ではわかりやすいように「相続税の納付書」と表記します。
相続税の納付書の書き方
相続税の納付書で、相続人が記入する欄は基本的に以下の11箇所です。
番号順に書き方や意味をひとつずつ紹介していきます。
※なお、相続税の納付書の入手場所については下記の『相続税の納付書の入手方法』で解説しています。
①年度
ここには相続税を納めるときの会計年度を記入します。
被相続人が亡くなった日や、相続があることを知った日ではなく、相続税を納めるときの会計年度なので注意しましょう。
会計年度の考え方は以下の図を参考にしてください。
たとえば、令和6年の1月に相続税を納める場合、まだ会計年度は令和5年度ですので「05」と記入します。
②税目番号
ここには、税目番号を記入します。
相続税の税目番号は「050」と決められているため、「050」と記入します。
※税目番号は納付書の裏面で確認できます。
③税目
ここには、税目を記入します。
今回は相続税の納付を目的としているので「相続」と記入しましょう。
なお、税目の下段にある「信託の名称」という欄の記入は必要ありません。
④税務署名
ここには、被相続人の最後の住所地を管轄している税務署名を記入します。この税務署が相続税の納付先になります。
相続人の最寄りの税務署ではないので注意しましょう。
管轄の税務署がわからない場合は、『国税庁|税務署の所在地などを知りたい方』で、郵便番号や都道府県から調べることができます。
また、税務署で納付書を受け取った場合には、受け取った税務署の名前がすでに印字されていることがあります。もし納付書を受け取った税務署と、被相続人の最後の住所地を管轄している税務署が違う場合には、二重線で消してから正しい税務署名を記入しましょう。
⑤税務署番号
ここには、上の「④税務署名」で記入した税務署の税務署番号を記入します。
税務署番号は『日本銀行|歳入金等取扱庁一覧』の一覧全文ダウンロードというPDFファイルで確認できます。PDF内の「取引庁コード」が税務署番号です。④で記入した税務署名を探して、該当の取引庁コードを⑤の欄に記入してください。
⑥納期等の区分
ここには、記入欄が2段あるうちの上段に被相続人が亡くなった日(相続が発生した日)を記入します。
令和5年の8月1日に亡くなった場合には、「05 08 01」と記入します。
下段の記入は必要ありません。
⑦申告区分
ここは、相続税の納付の場合、4番の確定申告に〇をつけます。
厳密にいうと相続税の納付は確定申告とは別物ですが、納付書上は4番の確定申告で問題ありません。
⑧住所(所在地)と電話番号
ここには、被相続人の住所と相続人の住所、電話番号を記入します。
上段には被相続人の最後の住所(亡くなった時点での住所)、下段には相続人の住所を記入します。電話番号は相続人の番号です。固定電話でも携帯電話でも問題ありません。
⑨氏名(法人名)
ここには、被相続人の氏名と相続人の氏名を記入します。
上段には被相続人の氏名、下段には相続人の氏名、フリガナ欄には相続人の氏名のフリガナを記入してください。
相続税の納付の際には(法人名)は気にしなくて大丈夫です。
⑩本税
ここには、納付する相続税の金額を記入します。
相続税申告書の「㉔申告期限までに納付すべき税額」に記入した数字をそのまま書けば問題ありません。
※仮に申告期限が過ぎてしまっている場合などでも、本税の下の「重加算税」「加算税」「利子税」「延滞税」を記入する必要はありません。これらの欄については税務署が計算をして、後日連絡が来るようになっています。
⑪合計額
ここには、上の「⑩本税」に記入した金額と同じ金額を記入します。金額の頭に「¥」を付ける必要がありますので注意してください。
なお、もしこの「合計額」の欄を書き間違えてしまうと、二重線での訂正ができないため、新しい納付書に一から書き直す必要があります。
記入は慎重に行うようにしてください。
相続税の納付書の入手方法
相続税の納付書は、税務署か金融機関で受け取ることができます。
①相続税の納付書を税務署で入手する
税務署で相続税の納付書を入手する場合には、窓口で受け取る方法と、郵送で受け取る方法の2つがあります。
窓口で受け取る
納付書の受け取りは、相続税の納付先である、被相続人の最後の住所地を管轄している税務署でなくても可能です。また、窓口で納付先の税務署を伝えると、上記で解説した納付書の、④税務署名と⑤税務署番号を印字してくれます。
納税地と異なる税務署名で、印字済みの納付書しかない場合は二重線で訂正して、正しい税務署名と税務署番号を記入しましょう。
郵送で受け取る
税務署に納付書の送付を依頼することで、自宅に郵送してもらうこともできます。
すべての税務署が納付書の郵送に対応しているかどうかは不明なため、一度電話で確認してから依頼すると確実です。
郵送を依頼したい場合には、以下の情報をまとめて送ることをおすすめします。
- 納付書の送付依頼
- 納付書の必要部数
- 相続税を納付する税務署名
- 受け取り人の連絡先
- 返送用の封筒と切手
②相続税の納付書を金融機関で入手する
納付書は銀行をはじめとする金融機関でも受け取ることができます。
しかし、取り扱いがある機関とない機関があったり、在庫の関係で必要枚数もらえない場合もあるため、こちらに関しても事前に電話で問い合わせてから受け取りに行くのが良いでしょう。
※相続税の納付書の入手に関する注意点
相続税の納付書を受け取る際の注意点をいくつか紹介します。
書き損じに備え複数枚もらっておく
納付書の書き方でも解説したように、納付書の「合計額」の欄を書き間違えてしまうと、二重線での訂正ができず、新しい納付書に書き直すしかなくなってしまいます。
そのため、書き損じてしまった時のことも考えて、納付書は多めにもらっておきましょう。
納付書は納付者一人につき一枚作成する
相続税の納付書は、納付者一人につき一枚作成して提出しなければなりません。相続税の申告書は複数の相続人でまとめて作成できますが、納付書は一人ずつ作成する必要があります。
納付書は税務署側から勝手に送られてくるわけではない
相続税の納付書が、税務署から自動で送られてくることはありません。そのため、相続人自身が、相続した財産にかかる相続税を計算し、もし納付の必要がある場合には、自ら受け取りにいかなければいけません。
納付書はインターネットでダウンロードすることはできない
相続税の納付書はインターネットでダウンロードすることができません。そのため、上記で解説した入手方法で入手して作成してください。
相続税の納付方法
相続税の納付方法は、以下の5つです。
- 金融機関で納付
- 税務署で納付
- コンビニエンスストアで納付
- クレジットカードで納付
- ダイレクト納付
それぞれ解説していきます。
金融機関で納付
まずは銀行や信用金庫、郵便局などの金融機関です。おそらくは金融機関で納付される方が一番多いのではないでしょうか。
基本的には住所地などにかかわらず、全国の金融機関から納付できます。
ただし、ATMからの振り込みはできないため、ご利用予定の金融機関の窓口が開いている時間を確認してから納付に向かいましょう。
税務署で納付
相続税を税務署で納付する場合は、被相続人の最後の住所地を管轄している税務署で納付しなければなりません。
納付書の受け取りはどの税務署でもできますが、相続税の納付自体は被相続人の最後の住所地を管轄している税務署でしかできません。そのため、被相続人が遠方に住んでいた際には、ほかの納付方法を選んだ方が良いかもしれません。
しかし、納付について不明点があったり、なにか問題が起きてしまった場合には、その場で税務職員に確認できるメリットもあります。
なお、税務署で納付できるのは、開庁時間の平日8:30~17:00です。
コンビニエンスストアで納付
相続税はコンビニエンスストアで納付することもできます。
コンビニエンスストアで納付する場合には、納付書とは別に、納付用QRコードが必要になります。詳しくは『国税庁|コンビニ納付(QRコード)』をお読みください。
また、納付できる上限額が30万円以内と定められている点にも注意が必要です。
クレジットカードで納付
平成29年から、クレジットカードでの納付も可能になりました。
クレジットカードで納付する場合は、納付書の作成が不要になり、代わりに『国税クレジットカードお支払サイト』に必要事項を入力することになります。
また、納付できる上限額が1,000万円未満と定められているほか、相続税額に応じた決済手数料がかかります。なお、決済手数料の金額については、上記の国税クレジットカードお支払いサイトで試算できます。
ダイレクト納付
相続税の申告をe-Taxでおこなった場合は、続けてe-Taxで納付することができます。続けてe-Taxで納付することをダイレクト納付といいます。
e-Taxやネットでの相続税申告については、関連記事『相続税の申告はネットで可能!やり方やe-Taxが使えない人も解説』をお読みください。
相続税の支払い方法について詳しく知りたい方は、関連記事『相続税の支払い方法を5つ解説|本人以外でも納付できる?注意点は?』をお読みください。
相続税の納付についてよくある質問
Q1.相続税の納付書を書き損じた場合はどうすれば良いですか?
A. 「合計額」欄以外は二重線の訂正で対応できる
相続税の納付書で書き間違えてしまった場合は、「合計額」の欄以外は二重線で訂正することができます。訂正印も必要ありません。
しかし、「合計額」の欄を書き間違えてしまった場合には、新しい納付書に書き直す必要がありますので、納付書を受け取りに行く際に多めにもらっておきましょう。
Q2.相続税の納付期限はいつですか?
A. 被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内
相続税の納付期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日(=相続開始日)から10か月です。
たとえば、令和5年2月2日が相続開始日だとすると、納付期限は10か月後の令和5年12月2日です。
もし納付期限日が休日や祝日の場合には、次の平日が納付期限となります。
令和5年12月2日は土曜日であるため、次の平日である令和5年12月4日の月曜日が納付期限です。
Q3.現金がなく、納付が期限内に間に合わない場合はどうすれば良いですか?
A. 延納制度と物納制度の活用が考えられる
相続税の納付が期限に間に合わない場合、延納制度と物納制度の活用が考えられます。
まず相続税の延納制度とは、担保を提供することで、分割納付が認められる制度です。
ただし、金銭的に納付が困難な理由があることが条件なので、「現金はあるけど分割で払いたい」といった希望は認められません。
次に物納制度です。物納制度は言葉通り、現金の代わりに不動産などの物を納めることで、相続税の納付とする制度です。
なお、延納と物納は自由に選べるのではなく、延納が困難な理由がある場合に、申請により物納が認められるといった関係です。また、延納と物納では利子税がかかり、場合によっては延滞税が課せられるため注意しましょう。
相続税の延納・物納について詳しくは、関連記事『相続税の延納・物納|利用条件や利子税、担保、申請手続きを解説』をお読みください。
Q4.相続税の納付書と贈与税の納付書の書き方は同じですか?
A. 相続税の納付書と贈与税の納付書の書き方は一部異なる
納付書の用紙は、相続税、贈与税ともに「納付書(領収済通知書)」を使用しますが、書く項目や内容は一部異なります。
贈与税の納付書の書き方については、関連記事『贈与税の納付書の書き方が見本つきでわかる|入手方法や提出先も解説』をお読みください。
相続税について不安がある方は税理士に相談を!
この記事では相続税の納付書の書き方を解説してきました。
冒頭でも述べた通り、納付書の作成自体の難易度は高くなく、相続人自身でも正しく作れるでしょう。
ですが、納付書作成の前段階である、相続財産の評価や、相続税申告書の書き方は一筋縄ではいきません。納付書は正しい形式で作成できたとしても、その前段階でミスがあっては元も子もありません。
そのため、もし相続税に関して不安がある方は、一度、相続税に強い税理士に相談してみてください。
監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士