名義変更の贈与税はいくら?家や土地など不動産の計算方法と注意点

家や土地、マンションなどの不動産を無償で名義変更すると、原則として受贈者に贈与税がかかります。一方、相続による名義変更や時価による売買では、原則として贈与税はかかりません。
贈与税は、不動産の税務上の評価額を基に計算します。たとえば、父から18歳以上の子へ評価額2,000万円の土地を暦年課税で贈与する場合、贈与税は585.5万円です。さらに、登録免許税や不動産取得税もかかります。
本記事では、不動産の名義変更で贈与税がかかるケース、税額の計算方法、利用できる制度、手続きの流れを解説します。相続による名義変更との税負担の違いや、名義変更前に確認すべき注意点も整理します。
目次
不動産の名義変更で贈与税はかかる?
名義変更=必ず贈与税がかかるわけではない
不動産の名義変更をしても、必ず贈与税がかかるわけではありません。贈与税の対象になるかどうかは、名義変更の原因や対価の支払いの有無によって異なります。
相続による名義変更や、適正な価格で売買した場合は、原則として贈与税はかかりません。一方、代金を支払わず、贈与を原因として不動産の所有権を移転した場合は、原則として受贈者に贈与税がかかります。
名義変更で贈与税がかかるケース・かからないケース【早見表】
不動産の名義変更における贈与税の扱いは、次の4つに整理できます。
| 区分 | 贈与税の扱い |
|---|---|
| 贈与による名義変更 | 原則、贈与税あり |
| 相続による名義変更 | 贈与税はかからない |
| 時価による売買 | 原則、贈与税はかからない |
| 離婚に伴う財産分与 | 原則、贈与税はかからない |
それぞれについて見ていきましょう。
贈与による名義変更
売買代金を支払わずに、不動産の名義だけを移す場合は、税務上「無償で財産を受け取った」と判断され、原則として贈与税がかかります。
たとえば、以下のようなケースは、典型的な贈与税の対象です。
- 親から子へ、あるいは夫婦間で無償で土地や家の名義を変更した
- 共有持分を対価なしで一方に移した
親子や夫婦など家族間の名義変更であっても、贈与契約により代金を支払わずに不動産の所有権を移転した場合は、受贈者が不動産を無償で取得したものとして、原則として贈与税の対象になります。
相続による名義変更
被相続人が亡くなり、相続によって不動産の名義を変更する場合は、贈与税ではなく相続税の対象になります。
この場合、以下のような扱いになります。
- 贈与税はかからない
- 代わりに、相続税がかかるかどうかを判断する
時価による売買
不動産を時価相当額で売買し、適正な代金の支払いがある場合も、原則として贈与税はかかりません。
ただし、以下のような場合は、差額部分が「みなし贈与」として贈与税の対象になることがあるため注意が必要です。
- 親族間で著しく安い価格で売買した場合
- 形式だけ売買で、実質的に代金を支払っていない場合
離婚に伴う財産分与
離婚に伴う財産分与として不動産の名義を変更する場合は、原則として贈与税はかかりません。
これは、財産分与が「夫婦の共有財産を清算する行為」と考えられているためです。
ただし、分与の内容が明らかに過大な場合などは、贈与と判断される可能性もあるため注意が必要です。
また、不動産を財産分与した側には、財産分与時の時価で不動産を譲渡したものとして、譲渡所得税がかかる場合があります。
名義変更で贈与税以外にかかる税金
登録免許税
登録免許税は、不動産の登記に関する手続きの際にかかる税金です。
登録免許税の税額は、不動産の固定資産税評価額に一定の税率を掛けて計算されます。贈与による所有権移転登記の場合、原則として税率は2%です。
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不動産取得税
不動産取得税の税率は本則4%ですが、2027年3月31日までに取得した土地と住宅については、原則として3%に軽減されます。
また、宅地等については、同日まで固定資産税評価額の2分の1を課税標準とする特例があります。このほかにも、住宅やその敷地の要件に応じて軽減制度を受けられる場合があるため、適用の可否を確認しましょう。
不動産の名義変更で贈与税はいくらかかる?
暦年課税による贈与税の計算
暦年課税とは、その年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産の合計額を基に、贈与税を計算する方式です。
暦年課税では、受贈者1人について、その年に受けた贈与財産の合計額から年間110万円の基礎控除額を差し引けます。
具体的な計算式は以下の通りです。
贈与税の計算(暦年課税)
贈与税額 = (贈与を受けた財産の評価額 – 110万円) × 税率 – 控除額
不動産の贈与税評価額
贈与税や相続税では、不動産の価値を実際に売れる価格(実勢価格)ではなく、税務上の評価基準に基づいて計算します。
- 土地
路線価方式(または倍率方式)→国税庁が公表する「路線価図」や倍率表で確認します。 - 建物(家屋)
固定資産税評価額→毎年届く固定資産税の納税通知書で確認できます。 - マンション
建物の専有部分と土地の敷地利用権をそれぞれ評価します。2024年1月1日以後に贈与で取得した一定の居住用マンションについては、区分所有補正率を反映して評価します。
路線価は、一般に地価公示価格水準の80%程度を目安に設定されています。ただし、個別の土地の相続税・贈与税評価額が、実際の売買価格の80%になるとは限りません。
建物は原則として固定資産税評価額で評価します。建築費に対する割合は、構造、築年数、再建築価格や経年減点補正などによって異なるため、一律の割合では判断できません。
路線価の詳しい調べ方は、関連記事『相続税における路線価の調べ方と計算方法【土地の評価額がわかる】』にて解説しています。
暦年課税の税率と控除額
贈与税の税率と控除額は、以下の通りです。
特例税率は、直系尊属(父母や祖父母など)から、その年の1月1日時点で18歳以上の子・孫などへの贈与に適用されます。なお、配偶者の父母(義父母)は直系尊属に該当しないため、特例税率の対象外です。
贈与税率表※()は控除額
| 基礎控除後の課税価格 | 特例税率 | 一般税率 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10%(0円) | 10%(0円) |
| 300万円以下 | 15%(10万円) | 15%(10万円) |
| 400万円以下 | 15%(10万円) | 20%(25万円) |
| 600万円以下 | 20%(30万円) | 30%(65万円) |
| 1,000万円以下 | 30%(90万円) | 40%(125万円) |
| 1,500万円以下 | 40%(190万円) | 45%(175万円) |
| 3,000万円以下 | 45%(265万円) | 50%(250万円) |
| 4,500万円以下 | 50%(415万円) | 55%(400万円) |
| 4,500万円超 | 55%(640万円) | 55%(400万円) |
【注意】生前贈与は相続開始日によって加算対象期間が変わる
暦年課税で贈与を受けた人が、その贈与者から相続または遺贈により財産を取得した場合、加算対象期間内に受けた贈与財産は、原則として相続税の課税価格に加算されます。
加算対象期間は、相続開始前3年から段階的に延長され、2031年1月1日以後に開始した相続では相続開始前7年以内となります。
| 被相続人の死亡日 | 遡る期間 |
|---|---|
| ~2026年12月31日 | 死亡日前3年間 |
| 2027年1月1日~2030年12月31日 | 2024年1月1日から相続開始日までの間の贈与 |
| 2031年1月1日~ | 死亡日前7年間 |
ただし、相続開始の日が2027年1月2日以後の場合、加算対象期間のうち相続開始前3年以内を除いた期間の贈与については、その贈与額の合計から総額100万円を差し引いた残額が相続税の課税価格に加算されます。
相続時精算課税による贈与税の計算
相続時精算課税制度とは、2024年1月1日以後の贈与について年間110万円の基礎控除があり、これとは別に、贈与者ごとに累計2,500万円の特別控除を利用できる制度です。
2024年1月1日以後の贈与については、贈与を受けた年ごとに、贈与時の価額から年間110万円の基礎控除額を差し引いた残額を加算します。2,500万円の特別控除を適用した部分も、相続税の課税価格への加算対象です。
原則として、贈与をした年の1月1日時点で60歳以上の父母や祖父母などから、同日時点で18歳以上の推定相続人である子や孫など、または18歳以上の孫への贈与について選択できます。
相続時精算課税を初めて選択する年は、贈与を受けた翌年の申告期間内に、相続時精算課税選択届出書と一定の添付書類を提出する必要があります(国税庁「相続時精算課税の選択」)。特定贈与者から受けた贈与額が年間110万円を超える場合などは、贈与税申告書の提出も必要です。
相続時精算課税では、贈与税は以下のように計算されます。
贈与税の計算(相続時精算課税)
(年間110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除を超える部分)×20%
なお、基礎控除は受贈者単位、特別控除は贈与者単位で考える点に要注意です。
- 基礎控除:受贈者単位
Aが父母それぞれから同一年に贈与を受けた場合でも、適用できる基礎控除は年間110万円
110万円の基礎控除は各贈与者からの贈与額に応じて按分して適用 - 特別控除:贈与者単位
Aが父母それぞれから贈与を受けた場合、父からの贈与、母からの贈与それぞれに2,500万円の特別控除を適用できる
評価額2,000万円の土地を子に贈与した場合の計算例
父(65歳)が子(30歳)に、相続税評価額2,000万円の土地を贈与するケースで計算します。
登録免許税と不動産取得税の試算では、この土地が宅地または宅地として評価された土地に該当し、固定資産税評価額も2,000万円であると仮定します。相続税評価額と固定資産税評価額は別の評価額であり、実際に同額になるとは限りません。
なお、ここでは暦年課税を想定します。
| ステップ | 計算内容 | 金額 |
|---|---|---|
| ①評価額 | 土地の相続税評価額 | 2,000万円 |
| ②基礎控除 | 年間110万円を差し引く | ▲110万円 |
| ③課税価格 | ① − ② | 1,890万円 |
| ④税率・控除額 | 税率45% 控除額265万円 | ― |
| ⑤贈与税額 | 1,890万円 × 45% − 265万円 | 585.5万円 |
評価額2,000万円の土地でも、贈与税は585.5万円になります。
さらに、名義変更には贈与税以外にも、以下のような費用がかかります。
- 登録免許税:約40万円
固定資産税評価額2,000万円×2% - 不動産取得税:約30万円(宅地等の場合)
固定資産税評価額2,000万円×1/2×3%
この前提では、贈与税、登録免許税および不動産取得税の合計は、約655.5万円です。
実際の不動産取得税は、住宅用土地に対する軽減措置の適用状況などによって異なります。また、登録免許税と不動産取得税は相続税評価額ではなく、原則として固定資産税評価額を基に計算します。
相続との比較
同じ土地を「相続」で引き継ぐ場合、その土地全体が特定居住用宅地等に該当し、取得者、居住および保有などの要件を満たす場合、330平方メートルまでの部分について評価額を80%減額できます。
この例で土地全体が特例の対象となれば、相続税評価額2,000万円を400万円まで減額できる可能性があります。
贈与税以外の費用も以下のようになり、生前に名義変更する場合と比べて負担が大きく異なることが分かります。
- 登録免許税:
2,000万円 × 0.4% = 約8万円 - 不動産取得税:
非課税
不動産の贈与税を抑える制度と注意点
贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、日本国内にある居住用不動産またはその取得資金を贈与した場合は、贈与税の基礎控除110万円とは別に、最高2,000万円まで配偶者控除を受けられます。
贈与税の配偶者控除は、同じ配偶者からの贈与について一生に一度しか適用できません。
適用を受けるには、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその不動産へ居住し、その後も引き続き居住する見込みであることなどの要件を満たし、贈与税の申告を行う必要があります。
主に、以下の場合に活用が検討されます。
- 自宅を夫婦の共有名義にしたい
- 配偶者に住まいを確実に残したい
ただし、贈与税の配偶者控除を使っても、名義変更に伴う登録免許税や不動産取得税は別途発生します。
また、居住用不動産のうち宅地等を生前に贈与すると、その贈与した宅地等については、相続または遺贈により取得していれば適用できた可能性のある小規模宅地等の特例を利用できません。そのため、相続まで待ったほうが税負担を抑えられる場合があります。
相続時精算課税
相続時精算課税制度は、贈与税について基礎控除(年間110万円)と特別控除(累計2,500万円)という大きな控除を受けられる点がメリットです。
不動産のように高額かつ分割しにくい財産を一度に贈与する場合には、選択肢のひとつとなります。
相続時には、年間110万円の基礎控除額を差し引いた贈与時の価額が、相続税の課税価格に加算されます。
将来的に評価額が上がる見込みのある不動産では、贈与時の価額で相続税の計算に加算されることが有利に働く場合があります。ただし、将来の値上がりが確実とは限らず、贈与時には登録免許税や不動産取得税もかかるため、税負担全体で判断する必要があります。
また、一度相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与について暦年課税へ戻すことはできません。
暦年課税による持分贈与
暦年課税では、その年に受けた贈与の合計額が年間110万円以下であれば、原則として贈与税はかかりません。
ただし、贈与を受けた人が贈与者から相続または遺贈により財産を取得した場合は、相続開始日に応じた加算対象期間内の贈与財産が、相続税の課税価格に加算されることがあります。
不動産の場合でも、自宅の権利の一部を贈与する、土地の一部を贈与するといった「持分贈与」で少しずつ贈与すれば、暦年課税の基礎控除内で贈与ができる場合があります。
ただし、各年の贈与が、その年ごとに結ばれた贈与契約に基づくものであることが前提です。当初から複数年にわたって一定の持分を贈与することを約束している場合は、その約束をした年に、将来にわたって給付を受ける権利の贈与として課税される可能性があります。
ただし、登録免許税や不動産取得税は贈与のたびに発生するため、持分贈与で複数回に分けて贈与するのが良いか、一括で贈与するのが良いかは慎重に判断すべきです。
住宅・マンション・土地の名義変更における注意点
不動産の名義変更にかかる贈与税の考え方は共通していますが、不動産の種類によって注意すべきポイントが異なります。
ここでは、住宅・マンション・土地それぞれについて、名義変更の際に特に気をつけたい点を整理します。
住宅の名義変更でローンの債務も引き継ぐ場合は負担付贈与になる
住宅ローンが残っている不動産を贈与しても、受贈者が債務を引き継がなければ、当然に負担付贈与になるわけではありません。
負担付贈与とは、不動産の贈与とあわせて、受贈者が住宅ローンなどの債務を負担する贈与です。債務者を変更するには、金融機関との契約や承諾が必要になることがあります。
この場合は、以下の3点に注意しましょう。
- 事前に金融機関の承諾が必要
- 贈与税は時価で計算される
- 贈与者側に所得税が生じることがある
事前に金融機関の承諾が必要
住宅ローンの債務者を受贈者へ変更する場合は、金融機関との契約変更や承諾が必要になるのが通常です。必要な手続きや承諾の形式はローン契約によって異なるため、名義変更前に金融機関へ確認してください。
承諾を受けずに贈与してしまうと、契約違反として残債の一括返済を求められることがあります。
贈与税は時価で計算される
暦年課税では通常、住宅やマンションなどの不動産は、相続税評価額をもとに贈与税が計算されます。
しかし、負担付贈与の場合は時価をもとに贈与税が計算されます。
なお、課税対象となるのは、不動産の時価からローン残高と基礎控除を除いた部分です。
贈与者側に所得税が生じることがある
負担付贈与では、受贈者が負担する債務額を対価として、不動産の一部を譲渡したものとして扱われます。
贈与者の譲渡所得は、受贈者が負担する債務額から、その債務に対応する取得費や譲渡費用を差し引いて計算します。単純にローン残高と不動産全体の取得費を比較するものではありません。
もらう側の贈与税だけでなく、あげる側の税金にも注意が必要です。
マンションの名義変更は建物と土地がセットで評価される
マンションを贈与する場合は、建物の専有部分と土地の敷地利用権をそれぞれ評価します。
2024年1月1日以後に贈与で取得した一定の居住用マンションについては、建物と敷地利用権の従来の評価額に、区分所有補正率を反映して評価します。
単純に固定資産税評価額と路線価評価額を合算するだけではない点に注意が必要です。
土地の名義変更では形状や利用状況によって評価額が変わる
土地の名義変更は、不動産の中でも特に評価が難しいケースが多いといえます。
理由としては、以下が挙げられます。
- 路線価方式か倍率方式かの判断が必要
- 接道状況や形状によって評価が変わる
- 分筆や共有解消で評価額に差が出やすい
特に、共有地を分筆したり、一部の土地だけを名義変更した場合には、形式上は公平でも、評価額に偏りが生じて贈与と判断されることもあります。
土地については、「同じ面積だから大丈夫」と自己判断せず、評価額ベースで確認することが重要です。
特定の人への贈与は遺留分に影響することがある
特定の人にだけ高額な不動産を贈与すると、他の相続人が最低限受け取れるはずの財産(遺留分)を侵害する可能性があります。
生前は問題にならなくても、相続が発生した後に「不公平だ」としてトラブルに発展するケースも少なくありません。
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相続税の2割加算が適用される場合がある
暦年課税による贈与を受けた人が、その贈与者から相続または遺贈により財産を取得した場合や、相続時精算課税を選択している場合は、贈与財産が相続税の課税価格に加算されることがあります。
相続税額の2割加算は、相続または遺贈等により財産を取得した人が、被相続人の配偶者または一親等の血族に該当しない場合に、原則として適用されます。
主な対象者は次のとおりです。
- 被相続人の兄弟姉妹
- おい・めい
- 子の配偶者
- 代襲相続人ではない孫
- 被相続人の養子となった孫(代襲相続人である場合を除く)
- その他、被相続人の配偶者および一親等の血族以外の人
なお、孫養子は法律上は一親等の血族ですが、被相続人の実子が相続開始前に亡くなっているなど、孫が代襲相続人となる場合を除き、原則として2割加算の対象です。
生前贈与と相続の税負担を比較
贈与税の配偶者控除や相続時精算課税などを利用すると、贈与時の税負担を抑えられる場合があります。
しかし、不動産については以下の点から、相続まで待つことでトータルの税負担が軽くなることが多いのが特徴です。
- 相続では小規模宅地等の特例を適用できる場合がある
- 登録免許税と不動産取得税に差がある
ひとつずつ解説します。
相続では小規模宅地等の特例を使える場合がある
亡くなった人の自宅の敷地が特定居住用宅地等に該当する場合は、配偶者や一定の親族が相続または遺贈により取得することなどの要件を満たすことで、330平方メートルまでの部分について土地の評価額を80%減額できます。
この「小規模宅地等の特例」は、生前贈与には適用されず、相続または遺贈により取得した宅地等が対象です。
そのため、特定居住用宅地等に該当する可能性のある宅地等を生前に贈与すると、その宅地等については、相続または遺贈により取得していれば適用できた可能性のある80%減額を利用できません。
結果として、「節税のつもりで名義変更したのに、相続したほうが節税できた」というケースも少なくありません。
登録免許税と不動産取得税に差がある
名義変更そのものにかかる手続き費用も、生前贈与と相続では大きな差があります。
- 登録免許税
- 相続:固定資産税評価額の0.4%
- 贈与(名義変更):固定資産税評価額の2%
- 不動産取得税
- 相続:原則非課税
- 贈与:課税対象(住宅・土地は軽減措置あり)
贈与による名義変更の登録免許税率は、相続による名義変更の5倍です。
また、不動産取得税は、相続なら原則としてかからないところ、贈与ではかかってしまうのです。
相続する場合は二次相続を見据えた判断が重要
不動産については、生前に名義変更するよりも「相続」を選んだほうが有利になるケースが多い一方で、相続の内容次第では、将来の税負担が重くなることもあります。
特に注意したいのが、二次相続です。
たとえば、夫が亡くなった際、自宅や財産の多くを妻が相続するとします。この場合、一次相続では「配偶者の税額軽減」などにより、相続税がほとんどかからないことも珍しくありません。
しかし、その後に妻が亡くなると(二次相続)、相続人は子のみとなるのが一般的です。
このとき、以下の点から子が負担する相続税が一気に増える可能性があります。
- 相続人の数が減り、基礎控除額が小さくなる
- 妻が相続した不動産や預貯金が、妻自身の財産として合算される
つまり、「相続のほうが得だから」という理由だけで一次相続ですべてを配偶者に集めてしまうと、二次相続で不利になることがあるという点には注意が必要です。
不動産の名義をどうするかは、一次相続だけでなく、二次相続まで含めて、家族全体での税負担を考えることが重要です。
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不動産の名義変更と贈与税申告の流れ
贈与による名義変更の必要書類
贈与による不動産の所有権移転登記では、一般に次の書類が必要です。
- 贈与契約書などの登記原因証明情報
- 贈与者の登記識別情報または登記済証
- 贈与者の印鑑証明書
- 受贈者の住民票などの住所証明情報
- 固定資産評価証明書など
- 委任状(司法書士などへ依頼する場合)
物件や住所・氏名の変更状況によって、追加書類が必要になることがあります。
名義変更から贈与税申告までの手順
不動産の名義変更から贈与税申告までの流れは、次の通りです。
ステップ1:名義変更の手続き
名義変更に必要な書類を用意したら、法務局で手続きをします。
必要書類を窓口に持参するか、郵送・オンラインで提出しましょう。
ステップ2:不動産取得税の納付
不動産を取得すると、都道府県から不動産取得税の納税通知書が送付されます。
送付時期は自治体や物件によって異なるため、申告や軽減措置の申請期限については、不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所へ早めに確認しておくと安心です。
通知書に記載された期日までに、不動産取得税を納付しましょう。
ステップ3:税務署への贈与税申告
贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間に、受贈者の住所地を管轄する税務署へ贈与税の申告・納付を行います。
暦年課税では、その年に受けた贈与の合計額が年間110万円以下であれば、原則として贈与税の申告は不要です。ただし、贈与税の配偶者控除など、申告を適用要件とする特例を利用する場合は、納税額が0円でも申告が必要です。
相続時精算課税を初めて選択する場合は、特定贈与者からの贈与額が年間110万円以下で贈与税申告書の提出が不要であっても、相続時精算課税選択届出書と一定の添付書類を期限内に提出する必要があります。
不動産の名義変更と贈与税についてよくある質問
Q.不動産の名義変更を取り消せば贈与税はかからない?
有効に成立した不動産の贈与契約を当事者間の合意で解除し、名義を贈与者へ戻しても、原則として当初の贈与には贈与税が課されます。
一方、過誤または軽率による名義変更であることが客観的に確認でき、原則として、その財産について最初の贈与税の申告、決定または更正が行われる前に名義を元の所有者へ戻した場合は、贈与がなかったものとして扱われることがあります。
法定取消権または法定解除権に基づいて取り消し・解除された場合も、名義を贈与者へ戻したことなどが確認できれば、贈与がなかったものとして扱われます。
なお、名義を贈与者へ戻す行為自体は、通常、新たな贈与として扱われません。
Q.贈与契約書がなくても不動産の名義変更に贈与税はかかる?
贈与契約書がなくても、贈与者と受贈者の合意により不動産を無償で取得した事実があれば、贈与税の対象になり得ます。
登記原因や贈与の内容を明確にするため、贈与契約書を作成して保管するのが一般的です。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士