路線価から相続税評価額を計算|補正のかけ方・路線価の調べ方

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路線価や補正

土地を相続した場合は一般的に、路線価を用いて相続税評価額を計算します。

路線価から相続税評価額を計算する方法は「路線価×地積」とシンプルです。

しかし、土地の正確な相続税評価額を求めるためには、相続した土地の形状や位置に応じた「補正」をかけなければならない場合があります。

この「補正」が土地の評価をややこしくしているのです。

この記事では、路線価を用いた相続税評価額の計算方法はもちろん、ややこしい補正のかけ方を、具体例付きで丁寧に解説します。

路線価とは?

路線価は土地の相続税評価額の計算に使う

路線価とは、道路に接する標準的な宅地の1㎡あたりの価額を意味します。

相続税申告の際には、相続した土地の相続税評価額を計算するために使用されます。

路線価には相続税路線価と固定資産税路線価がありますが、相続税評価額の計算には相続税路線価を使用します。

以下で「路線価」と表記するものはすべて「相続税路線価」を指します。ご留意ください。

相続税路線価と公示価格の違い

土地の価額というと、公示価格を思い浮かべる人もいるかもしれません。公示価格は、国土交通省が全国の標準値について定めている価額です。

対して相続税路線価は、国税庁が定める土地の価額です。

相続税路線価は公示価格の約80%が目安とされているため、もし公示価格を相続税の計算に使ってしまうと、本来よりも多くの相続税を支払うことになってしまいます。ご注意ください。

路線価を用いた相続税評価額の計算方法

相続した土地の路線価の調べ方

路線価は、国税庁が発表している財産評価基準書『路線価図・評価倍率表』で調べられます。

以下が路線価図の例です。

路線価図の見方

路線価は千円単位で記載されています。画像の例だと「280千円=280万円」となります。

また、数字の後ろについているアルファベットは借地権割合といい、人に貸し出している土地を相続した場合に、相続税評価額の計算に使用します。

財産評価基準書『路線価図・評価倍率表』の使い方がわからない方は、本記事の『路線価図の使い方を画像付きで解説』を参考にしてください。

土地の相続税評価額は「路線価×地積」で計算

路線価図から、相続する土地の路線価が調べられたら、相続税評価額を計算します。

路線価を用いた相続税評価額の計算式は、以下のとおりです。

路線価を用いた土地の相続税評価額の計算式

路線価×地積

「地積」とは、土地の面積を意味します。市区町村から毎年4月頃に送付される固定資産税納税通知書を見れば、地積が分かります。

路線価を用いた相続税評価額の計算の具体例

①自用地の相続税評価額を計算

自用地とは、自分のために使用している土地を意味します。自用地の相続税評価額は、基本的に「路線価×地積」で算出します。

【具体例】

上図の場合、道路に記載されている「200C」が路線価を表しています。

路線価は千円単位で記載されています。

以上を前提にすると、上図の「200C」とは、「この道路に接する土地は、1㎡当たり200千円」と表していることが分かります。今回は自用地であり、借地権は関係ないため省いています。

したがって、上図の自用地の評価額は次のとおり計算します。

200千円(路線価)×300㎡(地積)=6,000万円(評価額)

②貸宅地の相続税評価額を計算

貸宅地とは、人に貸している宅地を意味します。

貸宅地には借地権が発生します。自由に利用できない借地権付きの土地を買う人は少ないので、貸主(貸している側)は土地を自由に処分できないことがあります。したがって、貸宅地の相続税評価額は、借地権の分だけ自用地よりも減額されます。

アルファベットと借地権割合の関係は、以下のとおりです。

アルファベット借地権割合
A90%
B80%
C70%
D60%
E50%
F40%
G30%

貸宅地の相続税評価額の計算式は、以下のとおりです。

貸宅地の相続税評価額の計算式

自用地としての評価額×(1ー借地権割合)

【具体例】

6,000万円(自用地としての評価額)×(1-70%)=1,800万円

③貸家建付地の相続税評価額を計算

貸家建付地とは、宅地上に家屋を建設して、その家屋を人に貸している土地を意味します。

この場合、家屋の賃借人は借地借家法により居住する権利の保護を受けられます。

そのため、貸家建付地の価格は、使用収益が制限されることを考慮して自用地よりも減額されます。

貸家建付地の相続税評価額の計算式は、以下のとおりです。

貸家建付地の相続税評価額の計算式

自用地としての評価額×(1ー借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

※借家権割合は、全国一律30%です。
※賃貸割合は、すべて賃貸している場合は100%です。

【具体例】

6,000万円(自用地としての評価額)×(1-70%×30%×100%)=4,740万円

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※路線価のない土地は倍率方式で計算

郊外や農村部など路線価がついていない場所の宅地の評価額は、「倍率方式」で求めます。

倍率方式の計算式は、以下のとおりです。

倍率方式の計算式

固定資産評価額×評価倍率

固定資産税評価額は、市区町村から毎年4月頃に送付される固定資産税納税通知書に記載されています。

評価倍率は、国税庁が発表している『財産評価書 路線価図・評価倍率表』から調べることができます。評価倍率を知りたい土地がある都道府県をクリックし、「評価倍率表」から対象土地の所在する場所を選択してください。

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路線価の補正とは?

土地の相続税評価額の調整が「補正」

路線価は、一方のみ道路に接する標準的な形状の宅地を前提にしています。

しかし、実際の土地の形状は、奥行きが長かったり、正面と側方が道路に接していたりと様々です。

そこで、一定の事情がある場合に、それらの事情を考慮した上で相続税評価額を減額または加算する必要があります。これらの調整に用いる数値を「補正率」といいます。

以下では、具体例を挙げながら各種補正方法について解説します。

なお、各補正率表は、『国税庁ホームページ』から引用したものです。

減額の具体例①奥行価格補正

その土地が所在する地区区分における標準的な利用方法において奥行が長い、または短い宅地は、利用価値が低くなります。

奥行とは、その土地の道路からの垂線距離のことです。

そのため、奥行距離に応じた補正率をかけて相続税評価額を算出します。

奥行価格補正をかける相続税評価額

評価額=路線価×奥行価格補正率×地積

【具体例】

250千円(路線価)×0.97(奥行価格補正率)×400㎡(地積)=9,700万円(評価額)

【奥行価格補正率表(平成30年分以降用)】

減額の具体例②奥行長大補正

奥行が間口に比べて長すぎる場合、宅地の利用価値は低くなります。

間口とは、その宅地の道路に接する部分のことです。

そのため、奥行が間口の2倍以上ある場合は、補正率をかけて評価額を算出します。

奥行長大補正をかける相続税評価額

路線価×奥行価格補正率×奥行長大補正率×地積

400千円(路線価)×0.93(奥行価格補正率)×0.98(奥行長大補正率)525㎡(地積)=1億9,139万4,000円(評価額)

【奥行長大補正率表】

減額の具体例③間口狭小補正

間口が狭い場合、宅地の利用価値は低くなります。

間口とは、その宅地の道路に接する部分のことです。

そのため、間口距離に応じた補正率をかけて評価額を算出します。

間口狭小補正をかける相続税評価額

評価額=路線価×奥行価格補正率×間口狭小補正率×地積

200千円(路線価)×1.00(奥行価格補正率)×0.97(間口狭小補正率)×90㎡(地積)=1,746万円

【間口狭小補正率表(平成19年分以降用)】

減額の具体例④がけ地補正

土地に通常の用途に使用できないがけ地が含まれる場合、その分利用価値が下がります。

がけ地とは、傾斜が急で、宅地としての利用などが困難な土地のことです。

そのため、通常の用途に使用できないがけ地が含まれる土地の相続税評価額は、その土地に含まれるがけ地の部分が、がけ地でないと仮定した場合の価額に、がけ地補正率をかけて算出します。

がけ地補正をかける相続税評価額

路線価×奥行価格補正率×がけ地補正率×地積

【具体例】宅地を上から見た図

総面積に対するがけ地部分の割合は、60㎡/(180㎡+60㎡)=0.25

200千円(路線価)×1.00(奥行価格補正率)×0.92(がけ地割合0.25の場合の南向きのがけ地補正率)×240㎡(地積)=4,416万円(評価額)

【がけ地補正率表】

減額の具体例⑤利用価値が著しく低下している土地

次のように、利用価値が著しく低下していると認められる土地は、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額が、10%減額されます。

利用価値が低下していると認められる土地

  1. 道路より高い位置にある土地または低い位置にある土地で、その付近にある土地に比べて著しく高低差のあるもの
  2. 地盤に甚だしい凹凸のある土地
  3. 震動の甚だしい土地
  4. 1から3までの土地以外で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるもの)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められる土地
    ※土地の近くに、斎場、墓地、汚水処理施設等の施設がある場合など

(出典:国税庁タックスアンサー「No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価」

減額の具体例⑥不整形地

土地の形がいびつな場合、一定の補正率を適用して土地の評価額が減額されます。

不整形地の評価は特に複雑ですので、専門家への相談が必須です。

※参考:財産評価基本通達「不整形地の評価」

加算の具体例①側方路線影響加算

角地や準角地のような2本以上の道路に囲まれている土地は、土地の相続税評価額が加算されます。これを側方路線影響加算といいます。

角地とは十字の交差点やT字路の内側にある土地をいい、準角地とはL字路の内側にある土地をいいます。

角地や準角地は日当たりや風通し、出入りやすさに優れ、建物の設計自由度も高くなるという利点があるため、通常よりも相続税評価額が高くなるのです。

各地・準角地の場合、次の手順で相続税評価額が加算されます。

側方路線影響加算する場合の相続税評価額

①正面路線がどちらになるか確認します。「路線価×奥行価格補正率」で計算した価額が高い方の路線が「正面路線」になります。正面路線ではない方の路線を「側方路線」といいます。

②「正面路線価×奥行価格補正率」を求めます。

③「側方路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率」を求めます。

(②+③)×地積=評価額

【具体例】

①正面路線がどちらになるか確認します。

400千円(路線価)×1.00(奥行価格補正率)=40万円

350千円(路線価)×1.00(奥行価格補正率)=35万円

したがって、路線価400千円の路線が正面路線になります。

②「正面路線価×奥行価格補正率」を求めます。

400千円(路線価)×1.00(奥行価格補正率)=40万円

③「側方路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率」を求めます。

350千円(路線価)×1.00(奥行価格補正率)×0.03(側方路線影響加算率)=1万500円

④(②+③)×地積=評価額

(40万円+1万500円)×120㎡=4,926万円

【側方路線影響加算率表(平成19年分以降用)】

加算の具体例②二方路線影響加算

土地の正面と裏面に道路がある場合は、利用価値が高くなり、通常より相続税評価額が加算されます。

そのような土地は、次の計算式により評価額が加算されます。

二方路線影響加算する場合の相続税評価額

①「正面路線価×奥行価格補正率」を求めます。「正面路線」とは、路線価の高い方の路線を言います。

②「裏面路線価×奥行価格補正率×二方路線影響加算率」を求めます。「裏面路線」とは、路線価の低い方の路線を言います。

③(①+②)×地積=評価額

【具体例】

①「正面路線価×奥行価格補正率」を求めます。

300千円(正面路線価)×1.00(奥行価格補正率)=30万円

②「裏面路線価×奥行価格補正率×二方路線影響加算率」を求めます。

250千円(裏面路線価)×1.00(奥行価格補正率)×0.02(二方路線影響加算率)=5千円

③(①+②)×地積=評価額

(30万円+5千円)×300㎡=9,150万円

【二方路線影響加算率表(平成19年分以降用)】

路線価図の使い方を画像付きで解説

国税庁が公開している『財産評価書 路線価図・評価倍率表』から路線価を調べる手順を解説します。

1. 路線価図を開く

財産評価書 路線価図・評価倍率表』を開いてください。

2. 相続開始日が属する年度を選択

相続開始日(被相続人の死亡日)が属する年度を選択します。路線価図は毎年7月に新年度のものが更新されます。そのため、7月よりも前に亡くなった場合、7月まで更新を待つ必要があります。

3. 相続した土地がある都道府県を選択

今回調べたい、相続した土地がある都道府県を選択します。都道府県は一覧からでも地図からでも選択できます。

4. 路線価図を選択

路線価図を選択します。

5. 路線価を調べたい地域を選択

選択した都道府県の市区町村が出てきますので、路線価を調べたい地域を選択します。

選択するとさらに細かく分かれますので、再び路線価を調べたい地域を選択します。

6. 選択した地域の路線価図が出てくる

ここまで選択してきた地域の路線価図が出てきます。

もし路線価図の見方が分からない場合は、税務署の無料相談を利用するのも良いでしょう。税務署の無料相談では、税務署職員と対面しながら相談できます。

ただし、税務署での無料相談を利用するには事前予約が必要ですのでご注意ください。

税務署の無料相談について詳しくは、国税庁ホームページ内の『税務署での面接による相談をご希望の方(事前予約のご案内)』を参考にしてください。

相続税の相続税の無料相談

路線価を用いた相続税評価額に悩んだら税理士に相談

相続税を少しでも節税したい方にとって、「土地の評価額をいかに下げるか」が非常に重要なポイントになります。

土地は相続財産の中でも大きな割合を占めるケースが多いため、土地の評価額を下げれば、相続税額の大幅な減額が期待できるのです。

しかし、土地の評価は非常に難しい問題です。

ご自分ですべて計算しようとしても、補正の計算でつまずいたり、そもそもどのような事情を考慮すべきか分からないといった事態に陥る可能性が高いです。

そうなると、相続税を納税しすぎてしまう結果になりかねません。

土地の評価額を下げるには、相続税の申告実績が豊富な税理士に相談するのがおすすめです。

相続税に強い税理士であれば、土地の評価額を下げるポイントを熟知しています。

この記事でご説明した各種補正率を正しく適用することはもちろん、詳細な現地調査や各専門家との連携を通じ、土地の評価額を少しでも減額できるよう最善を尽くします。

相続財産の中に土地が含まれる方は、ぜひお気軽に相続税に強い税理士にご相談ください。

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監修者情報

アトムグループ 協力税理士

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