骨董品や美術品(書画骨董)の相続税評価方法|申告時の注意点や納税猶予も解説

骨董品や美術品、絵画なども、被相続人が所有していたものであれば原則として相続税の課税対象です。
相続税評価額は、購入したときの価格ではなく、原則として相続開始日(被相続人が亡くなった日)の時価をもとに算定します。家庭で所有していた骨董品・美術品であれば、売買実例価格や古美術商・鑑定士などによる精通者意見価格を参考に評価するのが基本です。
一方、販売目的で所有していたものは棚卸財産として評価するなど、所有目的によって評価方法が異なる点にも注意が必要です。
この記事では、骨董品・美術品・絵画の相続税評価方法をはじめ、価値がわからない場合の対応や申告時の注意点、特定美術品に利用できる納税猶予・免除制度、相続税対策までわかりやすく解説します。
目次
骨董品・美術品・絵画も相続税の対象になる
被相続人が所有していた骨董品や美術品、絵画などは、原則として相続税の課税対象となります。
現金や預貯金、不動産などと同じように相続財産として評価し、ほかの財産と合算して相続税を計算します。
ただし、骨董品や美術品は預貯金のように金額が明確ではありません。購入時より価値が上がっている場合もあれば、反対に価値が下がっている場合もあるため、相続税申告では適切な方法で評価額を算出する必要があります。
相続開始日の時価で評価する
骨董品や美術品、絵画の相続税評価額は、原則として相続開始日(被相続人が亡くなった日)の時価をもとに評価します。
そのため、購入時の価格がそのまま相続税評価額になるわけではありません。
たとえば、数十年前に安く購入した絵画でも、作者の評価が高まり、相続開始日時点で高値で取引されていれば、その時点の価値を踏まえて評価する必要があります。
反対に、購入時より市場価値が下がっている場合には、購入価格より低い金額で評価されることもあります。
具体的には、類似する骨董品・美術品の売買実例や、古美術商・鑑定士などの専門家による評価を参考に相続税評価額を算定します。
価値がわからない骨董品も相続財産から除外しない
遺品整理の際に見つかった骨董品や絵画について、「価値がわからないから」という理由だけで相続財産から除外することはできません。
作者や購入価格がわからなくても、財産的な価値があるものは相続税の課税対象となる可能性があります。
特に、絵画・掛け軸・陶磁器・茶道具・彫刻などは、見た目だけでは価値を判断しにくく、思わぬ高値が付くこともあります。
価値があるか判断できない場合は、購入時の領収書や鑑定書などを探したうえで、類似品の取引価格や買取査定を確認しましょう。高額品と思われるものや市場価格を把握しにくいものについては、古美術商や鑑定士などの専門家に評価を依頼する方法もあります。
具体的な評価方法については、次章で詳しく解説します。
家庭用の骨董品や美術品の相続税評価方法
販売業者以外の一般の方が所有している骨董品や美術品(書画骨董)は、「売買実例価格」や「精通者意見価格」を参考に評価します。(財産評価基本通達135条)
評価方法(1)売買実例価格
売買実例価格とは、現実に市場で売買されるときの価格です。
具体的には、以下の金額を参考に相続税評価額を決めます。
- 同様の商品の市場価格
- 買取業者の査定価格
- 購入価格(※)
※購入から日が経っているものや、時価の変動があった財産は購入価格を参考にすることができません。
この評価方法は、市場価格が比較的明らかな骨董品と美術品の相続税評価に適しています。
特に、高価ではない骨董品や美術品の場合は、売買実例価格により評価できることが珍しくありません。
評価方法(2)精通者意見価格
精通者意見価格とは、骨董品や美術品について、それぞれ詳しい古美術商や鑑定士など、専門家の意見を参考にした価格です。
この評価方法は、市場価格が明確でない骨董品や、希少価値が高い美術品の評価に適しています。
例えば、歴史的価値が高い骨董品や1点ものの絵画などは、精通者意見価格で評価するのが適切なケースが多いでしょう。
専門家の鑑定には費用がかかりますが、鑑定評価書の作成も同時に依頼できるため、税務調査のリスクを抑えるためにも、専門家の鑑定を受けることをおすすめいたします。
依頼先が見つからない場合には、税理士に相談するとよいでしょう。
商品としての骨董品や美術品の相続税評価方法
骨董品や美術品販売を営んでいた両親や親戚などから財産を相続した場合には、評価方法が少し異なります。
商売の在庫としての骨董品や美術品を相続した場合は、「棚卸財産」として評価を行うのです。
販売目的で保有していた骨董品・美術品は棚卸商品として、原則として、相続開始時の販売価額から適正利潤、販売までの予定経費および消費税額を控除して評価します。
骨董品の相続税申告における注意点
低額な骨董品・美術品でも個別に評価する場合がある
家庭用の動産は、価値が低いものを「家財一式」としてまとめて評価できる場合があります(財産評価基本通達128条)。
ただし、骨董品や美術品として財産的な価値が認められるものは、金額の大小だけで判断せず、売買実例価格や専門家の意見などを参考に個別に評価します。
「1点5万円以下なら必ず家財一式に含められる」というわけではありません。
関連記事
相続税における家財一式の評価方法|家庭用財産の一覧表の書き方も解説
骨董品・美術品を使った資産隠しは重加算税の可能性あり
骨董品や美術品を利用して、相続財産を意図的に隠したり、実際より低く申告したりすることは避けましょう。
たとえば、生前に多額の現金や預貯金で高価な骨董品・美術品を購入し、相続発生後にその存在を申告しなかったり、意図的に価値を低く申告したりするケースが考えられます。
現金を骨董品や美術品に換えたとしても、財産そのものがなくなるわけではありません。相続開始時に被相続人が所有していれば、原則として相続財産に含めて適切に評価する必要があります。
また、相続開始前に預貯金から多額の出金がある場合、税務調査でその使途を確認されることがあります。出金した資金で購入した骨董品や美術品を相続財産から意図的に除外していた場合などは、申告漏れを指摘される可能性があります。
税務調査の結果、財産の隠蔽・仮装があったと判断されると、過少申告の場合は35%、無申告の場合は40%の重加算税が課されるおそれがあります。
さらに、5年以内に重加算税等を課されたことがある場合には、重加算税の割合が10%加重されることもあります。
関連記事
相続税の申告漏れは「ばれる」|なぜ税務署にばれるのか税理士が解説
領収書や売買契約書、鑑定評価書などを用意しておく
相続財産に骨董品や美術品がある場合、その評価の根拠となる書類が非常に重要です。
以下の書類は税務署から提出を求められる可能性があるので、大切に保管しておきましょう。
- 購入したときの領収書
- 売買契約書
- 贈与契約書
- 鑑定評価書
など
評価額の根拠が不安な場合は専門家の鑑定を受けると安心
相続税を申告する際、税務署は評価額に適切な根拠があるかという点に注目しています。
例えば、ある程度の価値が予測される骨董品や美術品について、売買実例価格のみを参考に評価している場合、その価格の妥当性について税務署から確認を受ける可能性があります。
また、骨董品や美術品は、ものによっては市場価格の変動が激しかったり、保存状態によって価格が大きく変わったりすることもあります。
そのため、参考になりそうな市場価格があったとしても、その美術品・骨董品が高額と思われる場合や、その市場価格を根拠として良いのか不安な場合は、専門家の鑑定を受けて精通者意見価格を確認しておいたほうが安心です。
骨董品や美術品の鑑定にかかった費用は、相続財産からは控除できません。
しかし、鑑定料を惜しんだばかりに、税務調査や加算税などのペナルティを受けては元も子もありません。最終的な利益を考え、鑑定を受けることはぜひ選択肢の一つに入れてみましょう。
どのような評価方法が適切か迷った場合は、相続税に強い税理士に一度相談してみることをおすすめします。
関連記事
相続税に強い税理士の探し方とは?評判の良い税理士の選び方7選
骨董品や美術品の相続税の納税を猶予・免除できる制度
課税価格の80%に対応する相続税が納税猶予される
一定の美術品を相続した場合、要件を満たせば「特定の美術品についての相続税の納税猶予及び免除」の適用を受けられる場合があります。
この制度は、被相続人が一定の美術館等に寄託していた「特定美術品」を相続・遺贈によって取得した相続人が、引き続き寄託する場合などに利用できるものです。
適用を受けると、特定美術品にかかる課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。
ただし、猶予された相続税は直ちに免除されるわけではありません。その後、寄託相続人が死亡した場合や、特定美術品を寄託先の美術館へ贈与した場合など、一定の要件を満たすと納付が免除されます。
また、すべての骨董品や美術品がこの制度の対象になるわけではありません。
納税猶予を受けるための要件
特定美術品についての相続税の納税猶予・免除制度により、猶予を受けるための条件は以下のとおりです。
- 被相続人が、美術品を一定の美術館等に寄託し、かつ、文化財保護法に基づく保存活用計画の認定を受けていたこと
- 寄託相続人が、被相続人が締結した寄託契約及び保存活用計画に基づき、美術品の寄託を継続すること
- 寄託相続人が、猶予税額と利子税に見合う担保の提供をおこなうこと
- 相続開始後8か月以内に、文化庁長官へ特定美術品の価格評価を申請する
この制度の対象となる「特定美術品」は、認定保存活用計画に記載された次に掲げるものをいいます。
- 一定の重要文化財
重要文化財として指定された、絵画、彫刻、工芸品その他の文化的所産である動産 - 一定の登録有形文化財
登録有形文化財(建造物を除きます。)のうち世界文化の見地から歴史上、芸術上又は学術上特に優れた価値を有するもの
猶予制度を受けるためには、相続税の申告期限までに、この制度を受ける旨を記載した申告書や必要書類を提出しなければなりません。
関連記事
相続税の申告期限はいつまで?10か月の計算方法と遅れた際のリスク
納税猶予が打ち切られるケース
特定美術品にかかる相続税の納税猶予が終了する主なケースは、以下のとおりです。
- 特定美術品を譲渡、紛失、滅失した場合
- 重要文化財の指定取消、登録有形文化財の登録の抹消、保存活用計画の認定の取消が起きた場合
- 美術品を寄託していた美術館が閉館した場合(別の美術館に寄託し直した場合は除く)
納付猶予が終了すると、猶予されていた相続税や利子税をさかのぼって納付しなければなりません。
猶予された相続税が免除されるケース
納税猶予を受けたまま一定の事由に該当すると、猶予されていた相続税の納付が免除されます。
主なケースは次のとおりです。
- 寄託相続人が死亡した場合
- 特定美術品を寄託先美術館の設置者へ贈与した場合
- 特定美術品が一定の災害によって滅失した場合
ただし、災害による滅失について免除を受けるには、特定美術品に保険が付されており、その災害について保険金が支払われないことなどの要件があります。
骨董品・美術品の相続税対策
骨董品・美術品は高価な場合も多く、相続税の負担を大きくする要因となる可能性があります。
そこでここでは、事前にできる相続税対策として、生前贈与・売却・寄託・寄付の4つの方法を解説します。
生前贈与を検討する
生前贈与をしておくと、相続税の負担を軽減しつつ、骨董品や美術品を親族などに渡せる可能性があります。
生前贈与の基礎控除などを活用すれば、贈与税の発生も避けられることがあるでしょう。
ただし、場合によっては生前贈与した骨董品・美術品に相続税がかかることもあるので、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの課税制度にわけて、メリットや注意点を解説します。
暦年課税
暦年贈与は、毎年110万円の基礎控除までは非課税で贈与ができる課税制度です。
基礎控除内に収まるよう骨董品や美術品を贈与すれば、贈与税はかかりません。
ただし、暦年課税で生前贈与を受けた人が相続・遺贈でも財産を受け取った場合、被相続人の相続開始前3~7年以内の贈与は「生前贈与加算」の対象となり、相続財産に持ち戻されます。
生前贈与加算の対象期間は従来、被相続人の死亡前3年でした。
しかし、2027年以降は以下のように段階的に延長されます。
| 被相続人の死亡日 | 遡る期間 |
|---|---|
| ~2026年12月31日 | 死亡日前3年間 |
| 2027年1月1日~2030年12月31日 | 2024年1月1日から相続開始日までの間の贈与 |
| 2031年1月1日~ | 死亡日前7年間 |
なお、相続開始の日が2027年1月2日以後の場合、加算対象期間のうち相続開始前3年以内に取得した財産以外の贈与については、その贈与額の合計から100万円を差し引いた残額のみが相続財産に加算されます。
相続時精算課税
相続時精算課税制度とは、年間110万円の基礎控除(2024年1月1日以降の贈与から適用)に加え、累計2,500万円までの特別控除を利用して贈与税を計算する制度です。
110万円を超える骨董品・美術品を贈与したい場合や、合計で110万円を超える骨董品・美術品をまとめて贈与したい場合に適しています。
注意点として、相続時精算課税で贈与した財産は、基礎控除分を除き相続税の対象になることが挙げられます。
ただし、基礎控除分は相続税の対象外であること、相続発生時ではなく贈与時の評価額で相続税を計算することから、贈与後に骨董品・美術品の価値が上がった場合は、通常の相続よりも相続税を抑えられる場合があるでしょう。
なお、一度相続時精算課税を選択すると、暦年課税には戻せません。
関連記事
売却して現金化する
相続発生後のご家族の負担を考えた場合、被相続人の生前に売却した方が良いケースもあります。
骨董品や美術品を売却するメリット
骨董品や美術品を所有したまま亡くなると、ご家族は前述した財産の評価方法などを参考に、相続手続きを行うことになります。
しかし生前に売却すれば骨董品や美術品に関する相続手続きが不要になり、ご家族の負担を抑えられます。
また、相続税は現金一括払いが原則です。
支払いが困難な場合には物納も可能ですが、骨董品や美術品の物納が認められる可能性は低いでしょう(物納についての解説記事:相続税の物納|利用条件や物納できる財産の順位、申請手続きを解説)。
そのため、相続税の納税資金が足りないと予測される場合、あらかじめ骨董品や美術品を売却しておけば、その代金を納税資金に充てることもできます。
【骨董品や美術品を売却するデメリット】
個人が生活用として所有している骨董品や美術品のうち、1個または1組の価額が30万円を超える書画・骨董品などを売却して利益が生じた場合は、原則として総合課税の譲渡所得となります。
1個または1組の価額が30万円以下のものの売却益は、原則として非課税です。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額(最高50万円)
- 売却価格:売却代金
- 取得費:相続した骨董品や美術品を売却する場合は、原則として被相続人が購入した際の代金などを引き継ぎます。取得費が不明な場合は、譲渡収入金額の5%相当額を取得費として計算することができます。
- 譲渡費用:オークション出品手数料、売買仲介手数料、売却のために直接必要となった梱包・運搬費、売買契約書の印紙税など
ただし、骨董品や美術品を生前に売却する場合は、「取得してから5年」を超えるまで待つと、長期譲渡所得となり、課税対象となる譲渡所得金額は2分の1になります。
参考:国税庁「譲渡所得の計算のしかた(総合課税)」
関連記事
相続税と所得税・住民税の違いは?相続したお金にかかる税金を解説
寄託する
特定の美術品については、寄託することで「特定の美術品の納税猶予及び免除」の制度を利用できる可能性があります。
骨董品や美術品を寄託するメリット
特定美術品を取得した相続人が寄託契約を継続すれば相続税の支払いが猶予されます。
そして、寄託相続人が死亡した場合や特定美術品を寄託している美術館に贈与した場合などは、相続税は免除されます。
また、美術館等の管理の下、特定美術品が適切な環境で保管されることが期待できるでしょう。さらに、一般の方への公開を通じ、社会貢献につながる効果もあります。
骨董品や美術品を寄託するデメリット
特定美術品の納税猶予及び免除を受けるには、美術館や文化庁への手続きなど複雑な準備が必要です。
また、相続発生後は特定美術品を寄託し続けながら、定期的な届出書の提出が必要であり、寄託相続人にも手間がかかります。
メリットとデメリットを比べて検討することが重要です。
国や自治体などへの寄付を検討する
骨董品や美術品を相続人が国や自治体に寄付することで、寄付した骨董品や美術品の相続税を非課税とすることが可能な場合があります。
非課税とするためには、相続や遺贈によって取得した財産を相続税の申告期限までに国や地方公共団体、一定の公益法人などへ寄付することなどの要件を満たす必要があります。
また、相続税の申告期限前に寄付を行う必要があります。
関連記事
相続税は相続財産の寄付で非課税になる?要件や必要書類などを解説
骨董品・美術品の相続に関するお悩みは税理士へ
骨董品や美術品、絵画は相続税の課税対象となり、原則として相続開始日の時価をもとに評価します。
ただし、預貯金のように金額が明確ではなく、同じ作者の作品でも保存状態や希少性などによって価値が異なるため、適切な相続税評価額を判断するのが難しい財産の一つです。
価値がわからないものを自己判断で相続財産から除外したり、根拠なく低い金額で申告したりするのは避けましょう。領収書や鑑定書、類似品の取引価格などを確認し、必要に応じて古美術商や鑑定士による鑑定を受けることが大切です。
また、高額な骨董品・美術品がある場合は、評価額によって相続税額が大きく変わる可能性があります。評価方法や相続税申告に不安がある場合は、相続税に詳しい税理士へ相談すると安心です。
アトム相続税理士法人では、相続税に関する無料相談を受け付けています。骨董品や美術品を含む相続財産の評価や申告でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士