夫からの離婚宣告|受け入れるしかないの?取るべき対処法を解説

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夫から突然離婚を言い渡されたら、言われた側は混乱してしまうでしょう。しかし、離婚を切り出された後の行動は、今後の人生に大きな影響を与えます。

裁判を起こされない限り、双方の合意がなければ離婚は成立しませんので、離婚したくないのであればただちに応じる必要はありません。

また、離婚に応じる気持ちがあっても、離婚条件や離婚後のことについてよく話し合わずに離婚届にサインをするのはよくありません。

離婚するのかしないのか、離婚するならどんな条件がいいか、冷静に考えてから行動しましょう。

この記事では、夫から離婚を切り出されたらすべきことや、離婚を回避する方法はあるのかについて解説します。

夫から離婚を切り出す理由

夫から離婚を切り出す割合

一般的に、離婚を求めるのは妻の方が多いと言われますが、夫から離婚を求めるケースは全体の何割くらいなのでしょうか。

妻と夫どちらから協議離婚を申し入れたかという公式の統計はないようですが、離婚調停を申し立てた人の割合についてはデータがあります。

令和4年度 司法統計年報 家事編によると、35,013件の離婚調停のうち、男性側から申し立てられた調停は12,054件で、全体の3分の1程度が夫からの申し立てでした。

夫が離婚を決意した理由は?

同じく令和4年度 司法統計年報を見ると、男性が離婚調停を申し立てた理由は、1位から順に「性格が合わない」「精神的に虐待する」「家族親族と折り合いが悪い」「異性関係」と続きます。

女性と比べると、「性格が合わない」の割合が圧倒的に高く、「生活費を渡さない」「暴力を振るう」の割合が低いということが分かりました。

夫から離婚を切り出されたらまず何をする?

すぐに回答しない

離婚に応じる気持ちがあってもなくても、すぐに回答するのは避けましょう

その場は「しばらく考えます」と言って終わらせ、離婚に応じてよいのか、離婚後の生活は大丈夫か、どんな条件で離婚したいかなどを検討した上で、話し合いに臨むことをおすすめします。

もし離婚届を突きつけられても、その場でサインはしないでください。

また、不用意な発言をしてしまうと後の交渉で不利に働く可能性がありますので、まずは冷静になり、何をどのように話すかを考えていきましょう。

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離婚届不受理申出を行う

夫が離婚届を勝手に提出するかもしれないと感じたら、役所で離婚届不受理申出の手続きを行いましょう。この手続きをしておくと、こちらが申出を取り下げない限りは離婚届が受理されなくなります。

離婚したくない場合はもちろんですが、いずれ離婚に応じるつもりの方にとっても、離婚届不受理申出をしておくことは重要です。

離婚届を提出する前に、離婚条件や離婚後のことについて決めておいた方がよいからです。

特に親権争いがあるケースでは、夫が勝手に親権者を自分にして離婚届を出してしまうリスクに留意してください。離婚届に書かれた親権者を、後から変更するのは簡単ではありません。

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離婚したい理由をよく聞く

離婚を切り出されたら、夫が離婚したいと思っている理由をよく聞き出しましょう。

原因が今後改善できるものであれば、話し合って離婚を回避できるかもしれません。家庭裁判所の円満調停や夫婦カウンセリングなどを活用して、夫婦関係の修復を目指すこともできます。

また、冷却期間として一時的に別居することなどでも関係が改善するかもしれません。離婚以外の選択肢も念頭に置いて、話し合いを行いましょう。

ここで注意したいのが、夫が不倫を隠していないかです。不倫をしている夫が、性格の不一致などを理由にして穏便に離婚しようとするケースは少なくありません。

夫の不倫を見落とすと、本来であれば受け取れたはずの不貞慰謝料が受け取れなくなってしまいます。

離婚理由の証拠を集める

離婚に応じるにしろ応じないにしろ、離婚理由の証拠を集めておきましょう。

ここでいう証拠とは、夫が不倫していることを示す写真や、DVによって負った怪我の診断書、夫の言動を記録した日記などです。

こういった証拠があると、今後の話し合いや離婚調停・裁判で有利に働くほか、慰謝料請求に役立ちます

また、離婚したくない人にとっても、証拠集めは重要です。後述しますが、有責配偶者(離婚原因を作った方)からの離婚請求は、調停や裁判では認められない可能性が高いです。

なんとしても離婚したくないという方は、相手が有責配偶者である証拠を集め、裁判で戦う用意をしましょう。

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財産分与の証拠を集める

財産分与の面で少しでも有利な条件で離婚するためには、相手の財産の証拠を集める必要があります。

離婚する時には、夫婦が築いた財産を公平に分けあう財産分与を行います。

財産分与において重要なのは、相手の財産を漏れなく把握することです。こちらに渡す財産を少しでも減らすために、相手がへそくりや隠し財産を作っている可能性があります。

こういった隠し財産を証明し、交渉の場で認めさせるためには、隠し財産の証拠が必要です。

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弁護士に相談する

離婚に応じるにしろ応じないにしろ、自分の希望を叶えるためには弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、離婚が認められる可能性があるか、財産分与がどのくらいになるかなどの見通しを聞くことができるでしょう。また、話し合いで何をどう話すかのアドバイスを得られるはずです。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

話し合いを有利に進めるためには、早い段階で弁護士の助言を受けるのがよいでしょう。

夫からの一方的な離婚宣告、回避できる?

離婚には原則として合意が必要だが、裁判は例外

離婚の方法には、大きく分けて「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つがあります。このうち、協議離婚と調停離婚は、夫婦が合意しなければ成立することはありません

しかし、裁判で離婚を命じる判決が下された場合は、双方の合意がなくても離婚することが決まります。

こちらが頑なに離婚を拒んでいると、相手から離婚裁判を起こされる可能性がありますが、裁判で離婚が認められるためには、厳しい要件があります。

裁判で離婚を回避するためには、その要件が満たされていないことを主張・立証していくことになるでしょう。

なお、離婚に応じたくないからといって、裁判は絶対に欠席しないでください。離婚裁判を欠席し、答弁書も出さないと、「争う意思がない」とみなされて著しく不利になるからです。相手方が合理的な証拠を提出していれば、相手方の主張がそのまま採用されてしまう可能性があります。

欠席してはいけないと言っても、本人尋問の行われる日以外は、必ずしも本人が裁判所まで行く必要はありません。弁護士を立てて、弁護士に出廷してもらうこともできます。

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有責配偶者からは離婚を請求できない

有責配偶者とは、有責行為を行って、夫婦関係の破綻の主な原因となった方の配偶者のことをいいます。有責行為の典型例は、不貞行為、DV、モラハラ、悪意の遺棄などです。

裁判では原則として、有責配偶者からの離婚の請求は認められません

例えば、不倫をしたり暴力を振るったりした人が、さらに離婚まで求めるのは許されないということです。

夫が有責配偶者であることが認められれば、離婚を回避することができるかもしれません。そのためには、こういった有責行為の証拠を集める必要があります。

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裁判離婚には法定離婚事由が必要

裁判で離婚が認められるためには、法定離婚事由といわれる5つの離婚原因のうち、いずれか1つでも存在しなければなりません。

どうしても離婚したくないけれど、相手が有責配偶者にはあたらないという場合は、裁判で法定離婚事由がないことを主張していくことになるでしょう。

法定離婚事由

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みのない強度の精神病
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由

法定離婚事由ではない理由、例えば「性格の不一致」などを理由とする離婚請求は、裁判で認められる可能性が非常に低いといえます。

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まとめ

協議離婚や調停離婚には双方の同意が必要なため、この段階では離婚を拒否することができます。

しかし、離婚裁判まで進むと、同意がなくても裁判官の判断で離婚できてしまいます。なんとしても離婚を回避したい方は、相手が有責配偶者であることや、法定離婚事由が存在しないことなどを裁判で主張・立証していく必要があります。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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