産後離婚したい!産後離婚の注意点と産後クライシスを弁護士が解説

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離婚後の養育費

「妊娠中に夫が不倫していた。出産後に離婚したい」
「産後離婚したいが親権や慰謝料はもらえるのか」

子育てに対するストレスや不安だったり、子どもが生まれても夫が家事・育児に非協力的だったりして、「産後離婚」を考えている方もいるのではないでしょうか。

厚生労働省の令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告における「母子世帯になった時の末子の年齢階級別状況」によれば、末子が2歳になるまでの間に離婚する家庭は全体の37.4%にのぼっています。

なかには、出産後に急に夫婦の仲が冷え込む「産後クライシス」に陥ってしまう夫婦もいらっしゃるようです。

この記事では、産後離婚をするときの注意点や、産後離婚をする前に確認しておくべきこと、産後離婚の原因となる産後クライシスについて解説します。

産後離婚の注意点

産後離婚の注意点として、大きく以下の3点が挙げられます。

産後離婚の注意点

  • 収入が減少して経済的に困窮する
  • 育児と仕事を両立できないおそれがある
  • 精神的に孤立する

収入が減少して経済的に困窮する

まず挙げられる注意点として、産後すぐに離婚すると収入が減少し、経済的に困窮してしまうということが挙げられます。

「もともと専業主婦だった」「妊娠・出産を機に仕事を辞めてしまった」という場合、新しく仕事を探す必要がありますが、子どもが小さいうちは働き口を見つけるのは簡単ではありません。

育児休暇を取得しているうちに離婚した場合でも、育休中は基本的に給与が出ないので、経済的に苦しい生活を強いられてしまうかもしれません。復職しても給与が少ないということもあるでしょう。

元配偶者からの養育費が支払われていない場合も、裁判などで請求しようと思っても、手続きには時間がかかります。

産後すぐに離婚したいとしても、離婚後のご自身と赤ちゃんの生活をどう守っていくかについてはしっかりと見通しを立てておく必要があります。

育児と仕事を両立できないおそれがある

運よく職を見つけたり、育休から復職したりしたとしても、育児と仕事を両立させるのが難しいおそれがあります。

離婚してからしばらくは赤ちゃんと2人で生活することになりますが、知り合いや親類など頼れる人がいない場合は、自分がすべて世話をすることになるでしょう。

産後すぐの体調が不安定な時期に24時間体制で育児をすることになるため、十分な睡眠や休息が取れず、仕事をするにしてもストレスがかかって続けられなくなってしまうかもしれません。

社会的に孤立する

産後離婚をすると、精神的にストレスを感じ、孤独感を覚えるかもしれません。

ホルモンバランスの変化や育児ストレスが原因で、産後には産後うつを発症したり、いわゆる産後クライシス(出産後、夫婦仲が急激に冷え込むこと)に陥ったりするおそれがあります。産後クライシスについては、後ほどくわしく解説しています。

精神的な不調を抱えているなかで離婚すると、「生活はどうなるのか」「子どもの将来はどうなるのか」といった不安を覚えてしまうでしょう。

また、離婚してシングルマザーになると、周囲との交流が減少し、社会的に孤立してしまいやすくなります。その結果、精神的なストレスが増加してしまうおそれがあります。

産後離婚をする前に確認しておくべきこと

親権・養育費などはどうするのか

産後離婚をする際には、親権や面会交流、養育費、財産分与といった子どもに関する権利・お金をどうするか決めておく必要があります。

親権については、子どもの利益を最優先に考える必要があります。子どもがまだ小さい場合は、子どもと母性的なかかわりをしていたほうの親が親権者となることが多いです。

子どもを引き取った場合は、元配偶者に養育費を請求することができます。

当事者同士の話し合いで養育費についての取り決めをおこなう場合は、その証拠として離婚協議書や合意書を作成し公正証書にしておくことをおすすめします。

公正証書とは、公証人の立会いのもとで作成する公的な文書です。この公正証書に強制執行認諾文言を入れておけば、裁判を経ずに強制執行(裁判所の命令によって、債務者の財産を差し押さえ、債権者に代わって強制的に回収する手続き)ができるようになります。

「養育費の支払いが滞ってもすぐに強制執行ができる」というように、経済的な不安を少しでも和らげるためにも、公正証書の作成をおすすめします。

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慰謝料はもらえるのか

離婚慰謝料とは、離婚の原因を作ったほうが、もう一方の精神的苦痛を補償するために支払うお金です。

離婚の慰謝料は、すべての場合で支払われるものではありません。請求できるのは、基本的に相手に不倫などの不法行為がある場合が前提となります。

たとえば、夫の不貞行為やDV、モラハラなどが理由で、自分が産後うつを発症したり、産後クライシスに陥ったりして離婚してしまったという場合には、慰謝料を請求できます。

そういったケースでは、夫の不貞行為などによって産後うつや産後クライシスの状態になったと証明する証拠が必要です。病院の受診記録や録音・日記といった、証拠になりそうなものは残しておくようにしましょう。

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公的機関からの援助

産後離婚する前に、離婚後に公的機関からもらえるお金や補助などがないかを確認しておきましょう。

たとえば、離婚してシングルマザーとなった場合は児童扶養手当(母子手当)をはじめとしたさまざまな援助を受けられます。

また、生活保護を受給できる点についても忘れてはなりません。

ひとり親家庭への手当や、養育費を受け取っていたとしても、最低生活費(厚生労働省が定める最低限の生活費)に達していなければ生活保護の対象となります。

なお、最低生活費は、住んでいる地域の等級や、世帯の人数などによって異なるので注意が必要です。

児童扶養手当や生活保護など、受けられる公的援助を離婚前に調べておけば、離婚後の生活をスムーズに進められるかもしれません。

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産後離婚をしようと思ったら?

カウンセリングを受ける

産後離婚をしようと思ったときは、一人で抱え込まず、カウンセリングを受けてみるのも一つの手です。

離婚カウンセリングとは、夫婦問題の専門家であるカウンセラーに相談し、離婚問題の解決方法についてのアドバイスや心理的なサポートを受けることができるサービスです。

カウンセリングを受けてみることで、精神的に楽になったり、次にとるべき行動がわかったりするといったメリットがあります。

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別居してみる

「産後離婚したい」と考えたときは、別居を検討してみるのもよいでしょう。

夫と距離を置いて冷静になることで、自分の考えを整理することができるかもしれません。

ただし、子どもを置いて家出をしたり、違法に子どもを連れ去ったりしてしまうと、親権争いにおいて不利になってしまうおそれがあります。違法な連れ去りとならないためには、子どもを連れて別居することに関して、相手の同意を得ることが重要です。

別居についてくわしく知りたい方は、『離婚前に別居した方がいいの?メリット・デメリットと注意点を解説』をご覧ください。

サポートしてくれる人を見つける

産後すぐに離婚するとなった場合は、生活をサポートしてくれる人を見つけておくことをおすすめします。

1人で育児や仕事をこなしていれば、精神的に疲れてしまうこともあります。

家族や友人、家事代行サービスなど、頼れる人がいれば無理せずサポートをお願いしてみましょう。

弁護士に相談する

産後離婚をしたいという場合は、弁護士に相談してみることをおすすめします。

弁護士に相談すれば、相手と代理で交渉をおこなってもらえるため、産後の忙しいときでも離婚の手続きを進めることができます。

親権や養育費、慰謝料の問題についても法的な主張をしてもらえるため、産後離婚を考えている方は相談してみるのもよいでしょう。

産後クライシスとは

ホルモンバランスの変化や育児ストレスが原因で、産後には産後うつを発症したり、いわゆる産後クライシス(出産後、夫婦仲が急激に冷え込むこと)に陥ったりするおそれがあります。

ここでは、産後クライシスとは一体何を指すのかを解説します。

出産後、夫婦仲が急激に冷めてしまう状態

産後クライシスとは、出産後2~3年ほどの間のうちに、夫への愛情が急激に冷めたように感じ、夫婦仲が悪化してしまうことを指します。

産後うつとは異なり、医学的に病気と認められたものではありませんが、産後うつと同様に、産後離婚に関連する大きな問題となっています。

以下は、産後うつと産後クライシスの違いについて簡単にまとめた表になります。

いつ発症どんな症状
産後うつ多くは産後3か月以内・気分の落ち込み
・楽しみの喪失
・自責感や自己評価の低下
産後クライシス出産後2~3年ほどの間夫婦仲の悪化
参考:日本産婦人科医会|産後うつ病について教えてください

産後クライシスの症状

産後クライシスの症状として、以下のようなものが挙げられます。

産後クライシスの症状

  • 些細なことで夫にイライラする
  • 夫への愛情が冷めたように感じる
  • 夫が育児・家事について非協力的に感じる
  • 夫とのスキンシップが苦痛に感じる
  • 感情をうまくコントロールできず攻撃的になる など

「産後クライシスかもしれない」と感じた場合は、一人で抱え込まず、周囲のサポートを受けるなどして、ケアに努めることをおすすめします。

産後クライシスの要因

産後クライシスに陥ってしまう原因としては、以下のようなものが挙げられます。

産後クライシスに陥ってしまう原因

  • 産後のホルモンバランスの乱れ
  • 生活環境の変化
  • パートナーとの関係の変化
  • 周りからのサポートの不足
  • 過去の育児経験のトラウマ など

産後クライシスは、誰でも陥ってしまうおそれがあるものです。ご自身の夫婦関係に照らし合わせてみて、「産後クライシスに陥りそう」と感じた場合は、適切な対応をとることが重要になります。

産後クライシスを乗り切るには?

産後クライシスを乗り切ったり、回避したりするには、以下のような対応をとることをおすすめします。

産後クライシスを乗り切る方法

  • パートナーとのコミュニケーションを大切にする
  • 親や友人など周囲のサポートを受ける
  • 休息をしっかりとり、自分の気持ちを大切にする など

産後クライシスを乗り切るには、とくに夫婦のコミュニケーションが重要となります。すぐに離婚を決断する前に、夫婦間での対話を大切にしていきましょう。

産後クライシスだけを理由に離婚するのは難しい

「産後クライシスは離婚理由になるのか」「夫から産後クライシスを理由に離婚を切り出されたらどうしよう」と気になる方もいると思いますが、産後クライシスだけを理由に離婚することは難しいといえます。

協議離婚や調停離婚であれば、理由に関わらず夫婦の合意があれば離婚することができます。

夫婦の話し合いがまとまらず、離婚裁判に発展することもあるでしょう。その場合は、産後クライシスは法定離婚事由(民法上の離婚できる理由)ではないため、産後クライシスだけを理由に離婚を認められることはないと考えられます。

ただし、産後クライシスに陥った原因が、以下のような法定離婚事由に該当するものであれば、離婚を認められる場合もあります。

法定離婚事由

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みのない強度の精神病
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由

産後クライシスを乗り切るには、夫婦で話し合いの時間を取るなどして、夫婦間でのコミュニケーションを欠かさないようにしましょう。

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産後離婚は弁護士に相談!

産後離婚をする際は、経済面や精神面でさまざまな負担が生じるリスクがあります。親権や養育費、慰謝料はどうするのか、公的機関の援助はないかどうかを離婚前に確認するようにしましょう。

精神的につらいという場合は、1人で抱え込まずカウンセラーなどの外部機関を相談するようにしましょう。

また、産後離婚をしたいと考えている方は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、産後の忙しい時間でも依頼者の代理として相手と交渉できるほか、調停や裁判に移行した際もスムーズに対応することができます。

無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了