ネット誹謗中傷の削除依頼|弁護士が対処方法と相談窓口を紹介

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誹謗中傷の削除依頼

誹謗中傷の被害にあってしまった場合、どういった対応をすればよいか分からず不安になる方は多いと思います。

ここでは、被害にあってしまった時にどういうアクションを取るべきか、弁護士が解説します。具体的な対処法として、(1)削除依頼(2)開示請求・損害賠償請求(3)刑事告訴の3通りがあります。対処ポイントを踏まえて、自分にあった方法を選びましょう。

誹謗中傷の書き込みを削除依頼する

誹謗中傷の書き込み削除依頼をして拡散炎上を防ぐ

悪質な書き込みがされている場合、多くの人の目に触れないうちに削除依頼することは、とても有効な方法です。削除依頼はサイト管理者やSNS管理会社に対して行います。

サイトやSNSにより削除依頼手順は異なりますので、事前にリサーチする必要があります。サイト内に「問い合わせフォーム」が設置されている場合は、そこから削除依頼が可能です。

TwitterやInstagram、YouTubeでは、各投稿に通報ボタンが設置されており、そこから運営会社に対して規約違反の投稿があることを報告をすることもできます。

あるいは投稿者に対してDM等の問い合わせ窓口から直接削除を依頼することも可能です。

しかし、受信拒否の設定をされていると相手に通知されず、メッセージのやり取りができません。また、直接投稿者に削除依頼することにより新たな嫌がらせを受ける等、別のトラブルになる可能性もあります。

ポイント

ブログ管理者、投稿者に直接削除依頼をするときには、さらなる炎上や晒し行為による被害を避けるため慎重に行う必要があります。事前に専門家に相談されることをおすすめします。

個人で削除依頼を試す場合には以下の記事から、該当のコンテンツごとの方法をご確認ください。

複数のコンテンツに既に転載されたり、誹謗中傷の書き込みを発見した場合には、弁護士の手を借りることがおすすめです。コンテンツごとの特性や削除依頼手続きを理解して行うには時間を要するため、その間に拡散が広まる恐れがあります。

削除依頼ができるのは被害者と弁護士だけ

削除依頼は、誹謗中傷を受けた本人と、その本人から依頼を受けた弁護士のみが行うことができます。投稿者がどのような人物かわからないため、削除依頼をすることで刺激しないか不安を覚える人も多いです。自分で削除依頼を出すことに抵抗がある場合には、専門家に対応を依頼して不安を解消していきましょう。

弁護士ではない第三者(業者など)が報酬を得て、本人の代わりに削除依頼することは弁護士法に違反します。削除依頼する場合は、自分自身で行うか、弁護士に依頼するかの2つであると覚えておきましょう。

弁護士に頼む場合、投稿者の性質やサイト特性を見極めたうえで削除依頼が行われるため、ネットのトラブルに精通している弁護士に任せる方が安心です。

発信者を特定して損害賠償請求をする

発信者特定を行うなら早期に踏み切るべき

同一人物と思しき投稿者からの誹謗中傷が執拗に繰り返される場合、特定して損害賠償請求する方法も有効です。

投稿者に対し、損害賠償や慰謝料を請求するためには、まず投稿者がどこの誰なのかをはっきりさせる必要があります。これを「発信者情報開示請求」といいます。発信者情報開示請求の手続きにより、相手が特定できた場合は、相手に民事責任の追及をすることができます。

コンテンツプロバイダ(サイト管理者やSNSの運営会社)に対し接続情報(IPアドレスなどのログ)の開示を求め、その情報を元にインターネットプロバイダ(au、so-ne、フレッツなど)に対しては、契約者情報の開示を求めていく流れになります。

コンテンツプロバイダが接続情報を保存する期間は3か月程度の場合が多いため、問題の投稿を発見したら急いで開示請求の手続きをしなければいけません。

※従来は2段階に分けて開示請求手続きを行う必要がありましたが、法改正(改正プロバイダ責任制限法)により2022年10月以降はワンアクションで行えるようになりました。

開示請求チェックポイント

  • 投稿内容が「誰に向けられたものか」が明らか?
  • 具体的に「どのような権利が侵害されているか」が説明できる?
  • 投稿内容が「犯罪を構成する」もの?

発信者情報開示請求については、記事『発信者情報開示請求の要件と流れ|誹謗中傷の投稿者を特定する方法を解説』でも解説しています。

請求金額が満額認められるとも限らない

損害賠償を誹謗中傷の投稿者に求める場合、民事裁判という方法がありますが、決着がつくまでに数か月かかることが予想されます。

また、裁判で認められる賠償額は、必ずしも請求金額の満額が認められるとも限りません。弁護士費用のことも含めて考え、裁判まで行うかを検討する必要があります。

誹謗中傷の被害にあった際、実際に発信者を特定して損害賠償を請求するかどうかは、自身に金銭や時間の面でデメリットが発生する可能性もあることを念頭に置いて考える必要があります。

自分だけで判断することは難しいと思いますので、まず弁護士に相談し意見を聞いてみることをおすすめします。

誹謗中傷で請求しうる慰謝料の相場を知りたい方は、関連記事『誹謗中傷の慰謝料相場はいくら?損害賠償請求の流れと注意点をおさえよう』もあわせてお読みください。

被害届を出して刑事事件にする

刑事事件として警察に届け出る準備をしよう

悪質な書き込みが行われた場合、加害者に対して刑事責任を問えることがあります。書き込みが犯罪行為に当たるものと警察に判断された場合、刑事事件として取り扱われます。

刑事事件の可能性がある投稿例

  1. 名指しで「前科がある」と投稿
  2. 「殺すぞ」「家を燃やすぞ」など脅迫的な投稿
  3. 「バカ」「ブス」などの侮辱的な投稿 など

投稿内容に刑事事件の可能性がある場合、警察に被害届または告訴状を出す必要があります。

概要
被害届被害の申告をするもの
告訴状被害申告し、かつ相手に処罰を求める意思がある

しかし、ネットの誹謗中傷問題は、警察がスムーズに応じてくれないことも多く、事前に証拠を集めて準備をしておく必要があります。

警察への相談(事前準備のポイント)

  • 書き込みが行われた背景を整理(トラブルの発生原因等)
  • スマホやパソコンを持参してその場で確認できるようにする

実際に警察に相談するときのポイント

ネットの誹謗中傷を警察に相談する場合、ネット犯罪分野に詳しい人に相談に乗ってもらうことが大切です。アポイントを取らずに警察署へ行くより、事前に警察署に電話を掛けて相談したい内容や日時を決めておきましょう。当日の相談がスムーズです。

警察への相談の際の注意点

  • 証拠となるスクリーンショットやURL等の情報を持参する
  • 事前に最寄りの警察署に連絡し、訪問相談の希望を伝えておく
  • 警察が捜査に必要な資料の提示を求める場合には、それに従う

また、一回の相談で警察に動いてもらえなくても、相談を重ねると対応してもらえるケースもあるので、追加の情報などがあれば何度か相談してみましょう。警察に被害届が受理されたら捜査が開始されます。

刑事告訴については、記事『ネットトラブル・誹謗中傷で被害届が出せるケース・刑事告訴を解説』でも説明していますので参考にしていただければと思います。

誹謗中傷の対応方法に迷ったら相談窓口を使おう

行政の無料相談窓口

誹謗中傷の相談窓口として代表的なものに、総務省支援事業として設置されたものがあります。違法・有害情報相談センターでは、メールにて対応方法の助言や削除依頼に関するヒントを得ることができるでしょう。

他にも法務局の職員や、人権擁護委員がネットの誹謗中傷に関する相談を受付しています。

こうしたネットトラブルについての相談窓口を知りたい方は、関連記事『ネットトラブルや嫌がらせの相談窓口はどこ?無料相談や電話相談先を紹介』を参考にしてみてください。

無料相談に対応している弁護士事務所もある

行政の相談窓口は、利用者が多く対応してもらえるまでに時間を要することがあるため、対応について急ぎで知りたい場合には弁護士事務所の無料相談を活用することも検討しましょう。相談内容に応じ法的に適切な対応策を提案してもらえるため、迅速な解決を見込めるメリットがあります。

たとえば、誹謗中傷書き込みの削除依頼を行いたい場合、自分では適切な対応方法や法的根拠等を判断できないことがあります。うまく結果に結びつかなかったり、削除まで時間がかかってしまう可能性もあります。専門家に相談することで、スピーディーな解決が見込めます。

ネット誹謗中傷の相談窓口については、記事『ネット誹謗中傷の相談窓口|法律事務所の無料相談をすすめる理由』もあわせてご覧ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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