離婚の流れが分かる!離婚手続きの種類と進め方を解説
離婚をするのに最低限必要な手続きは、当事者間での話し合いと離婚届の提出のみです。
しかし、離婚することに双方が合意できなければ、離婚調停や離婚裁判といった手続きを用いて交渉を進める必要があります。
調停や裁判がどのようなものか、どのような手順で進めればよいか、よく知らないという方も多いかと思います。
また、離婚前にすべき準備や手続きも知っておかなければいけません。
この記事を読めば、離婚手続きの流れや、どう進めればよいかが分かります。
離婚手続きの種類と流れ
離婚の手続きは、以下のような流れで進みます。
離婚の方法には、大きく分けて「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3種類があります。
基本的に、離婚を決意したら、まずは話し合いで解決する協議離婚を目指します。
話し合いでの合意が難しい場合は、調停離婚や審判離婚、裁判離婚といって、家庭裁判所に仲裁してもらう方法で離婚を目指すことになります。
いずれの方法も、「離婚すること」と「離婚の条件」を決めるのが目的の手続きです。
離婚条件
- 親権者
- 養育費
- 面会交流
- 慰謝料
- 財産分与
- 年金分割
- 婚姻費用
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協議離婚とは?
協議離婚は、夫婦が話し合って離婚することや離婚条件を決める離婚方法です。協議離婚は最も基本的な離婚方法で、離婚する夫婦の約9割が協議離婚によって離婚しています。
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調停離婚とは?
離婚調停を利用して離婚を成立させる方法を、調停離婚といいます。
離婚調停とは、夫婦間の話し合いで離婚に関して合意ができなかったときに、家庭裁判所の調停委員会のもとで話し合いを行う手続きです。
調停委員会は、家庭裁判所の裁判官と、男女ひとりずつの調停委員の3人で構成されています。調停委員の2人は、経験豊富な弁護士や、紛争の解決に有用な知識を有し、地域に根付いて活動している専門家などの中から選ばれた、裁判所の非常勤職員です。
調停が行われる日には、夫婦が家庭裁判所に出向き、交互に調停委員と面談を行います。話し合いがまとまれば調停成立となります。
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裁判離婚とは?
裁判を行って離婚を決定する方法を、裁判離婚といいます。
裁判離婚とは、家庭裁判所に訴えを起こして、裁判官の判断によって離婚を認めてもらう手続きです。
離婚調停と離婚裁判の最大の違いは、当事者が合意に至らなくても、判決によって確実に結論が出る点です。
なお、日本では調停前置主義が取られており、原則的に離婚調停を行っていなければ裁判を起こせない制度になっています。このように、離婚裁判はどうしても離婚したいときの最後の手段であるといえます。
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協議離婚の流れ
協議離婚はこのような流れで進めます。
- 夫婦間で離婚条件を話し合う
- 離婚協議書・公正証書を作成する
- 離婚届を提出する
協議離婚の流れ①話し合いを行う
離婚前の準備が整ったら、相手に離婚を切り出し、離婚の話し合いを行います。
面と向かって離婚を切り出すだけでなく、電話やメール、手紙を使うことができます。
別居中に離婚を切り出す場合、次に紹介する内容証明郵便を使用することもできます。また、話し合いを経ずに離婚調停を申し立てるケースもあります。
DVやモラハラの被害を受けており、面と向かって離婚を切り出すことに危険を感じる方は、まずは別居して、メールや内容証明、離婚調停などを使って離婚の意思を伝えるのがよいでしょう。
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内容証明郵便とは?
別居中の配偶者に離婚の意思を伝える手段の一つとして、内容証明郵便があります。
内容証明郵便とは、どんな内容の手紙が、いつ、誰から誰に差し出されたかを証明してくれる郵便局のサービスです。
一般書留の方式で送付されるため、普通郵便よりも確実に送り届けることができるうえに、「いつどのような請求を行ったのか」の証拠が残るため、のちに裁判などで活用できることもあります。
また、普通の郵便とは違った方式で届くため、相手にプレッシャーを与える効果が期待できます。
内容証明郵便については、『離婚問題で内容証明郵便はどう活躍する?文例や送り方を紹介』で詳しく解説しています。
協議離婚の流れ②離婚協議書の作成
協議離婚の際には、離婚条件を記した離婚協議書や公正証書を任意で作成することがあります。いずれも契約書のような性質をもつ文書で、後から言った言わないのトラブルになるのを防ぐために有効です。
離婚協議書や公正証書は、離婚届の提出前に作成するのが一般的ですが、離婚後に作成することも可能です。
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協議離婚の流れ③離婚届の提出
離婚することに合意ができたら、離婚届に記入します。
離婚届には、双方が自筆で署名する必要がありますので、2人が同席して記入するか、郵便などで受け渡してそれぞれが記入することになるでしょう。
協議離婚をするための公的手続きは離婚届の提出のみですので、役所へ行って離婚届を提出すれば、離婚が成立します。
役所へ2人で揃って行く必要はなく、どちらか一方または代理人でも提出することができます。また、離婚届を郵送で提出することも可能です。
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すぐに離婚調停を申し立てることもできる
話し合いの場を設けるのが困難な場合、当事者間の話し合いを経ずに離婚調停を申し立てることがあります。相手方は、裁判所からの呼出状が家に届いたときに、初めて離婚調停を申し立てられたと知ることになるでしょう。
離婚調停では、相手と顔を合わせて話し合うことは基本的にないため、相手と直接会って話したくない方は、離婚調停を申し立てるのもよいかもしれません。
調停離婚の流れ
離婚調停は、このような流れで行います。
- 申立人が家庭裁判所に申立書を提出する
- 調停期日が開かれ、話し合いが行われる
- 成立または不成立となって調停が終了
- 審判に移行することもある
調停離婚の流れ①調停の申し立て
離婚調停を開始するためには、夫婦の一方が離婚調停申立書などの書類を用意して、家庭裁判所に申し立てを行います。
その後1~2週間程度で、裁判所から当事者双方に、調停の日時などを知らせる呼出状が届きます。
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調停離婚の流れ②調停期日に裁判所へ出向く
調停期日には、双方が家庭裁判所へ出向き、交互に調停委員と面談を行います。調停委員は、一方の意見をもう一方に伝えたり、時には説得したりして夫婦の合意を目指します。
離婚調停の流れ③調停が成立または不成立となって終了
調停内で夫婦が合意することができれば、調停が成立し、離婚が確定します。合意が難しいと判断された場合、調停は不成立になります。調停が不成立になった場合は、離婚裁判を起こすことができます。
調停が成立した時点で離婚は成立していますが、それを戸籍に反映させるために10日以内に離婚届を提出する必要があります。
離婚調停の流れ④審判に移行することも
離婚調停を行っても合意が成立しない場合、まれに審判が行われることがあります。
審判離婚とは、わずかな離婚条件の違い等のために調停が成立しない場合に、家庭裁判所の判断で離婚する方法です。
審判の結果に不服がある場合は、審判の告知を受けてから2週間以内に即時抗告することで審判は無効となり、高等裁判所で審理が開始されます。
2週間以内に不服申し立てがなければ、審判は確定します。審判が確定してから10日以内に離婚届を提出し、審判離婚の手続きは終了です。
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裁判離婚の流れ
離婚裁判は、このような流れで進みます。
- 原告が家庭裁判所に訴状を提出する
- 口頭弁論が開かれる
- 本人尋問が行われる
- 判決、和解、認諾によって裁判が終了
裁判離婚の流れ①訴状を提出する
原告(訴える側)は、家庭裁判所に訴状を提出します。訴状を提出すると、訴状のコピーと呼出状が相手方に送達されます。
被告(相手方)は、期限内に訴状の内容に対する答弁書を提出します。
裁判離婚の流れ②口頭弁論が開かれる
訴状を出すと、通常、1か月~2か月程度で第一回の口頭弁論が開かれ、その後もおおむね1か月ごとに口頭弁論が行われます。
裁判の段階になると、ほとんどの方が弁護士を選任します。口頭弁論や書類のやりとりは弁護士が行うため、本人が何度も裁判所に行く必要はありません。
裁判離婚の流れ③本人尋問が行われる
お互いの主張と証拠が整理された段階で、当事者本人が裁判所に出廷して、裁判官や相手方からの質問に答える本人尋問がおこなわれます。
裁判離婚の流れ④判決、和解または認諾で裁判が終了
口頭弁論が終了すると、裁判官が判決を下します。
判決に不服がある場合は、2週間以内に高等裁判所に控訴することができます。この間に控訴がなければ判決が確定し、離婚もその時点で成立します。
判決が確定したら、10日以内に離婚届を提出する必要があります。
和解離婚・認諾離婚とは
裁判を始めた後でも、判決を待たず当事者の和解によって離婚を成立させたり、相手の言い分をすべて認める認諾によって離婚することもできます。
特に和解離婚はよく行われており、件数としては判決よりも多くなっています。多くの裁判では、裁判官が当事者に和解を提案してきます。当事者同士が譲歩し、和解案に合意できれば、和解離婚が成立します。
認諾離婚とは、被告が原告の言い分を全面的に受け入れることで離婚を成立させる方法です。ただし、認諾ができるのは、訴えの中に親権や財産分与などが含まれておらず、単に離婚だけを求める訴訟の場合のみです。
このように利用できる条件が限られているためか、認諾離婚はほとんど使われていません。
和解や認諾によって離婚が成立した場合も、10日以内に離婚届を提出する必要があります。
離婚後の手続き
どの方法で離婚した場合も、離婚届の提出は必須です。
協議離婚の場合は、離婚届が受理された日に離婚が成立します。
調停離婚、裁判離婚の場合は、調停成立日と判決確定日が離婚成立の日となり、離婚したことを戸籍に反映させるための届出として、後日に離婚届を提出します。
離婚届が受理された後は、以下のような手続きを行います。
- 住民票や運転免許証など、身分証明書に関する手続き
- 苗字や転校など、子どもに関する手続き
- 健康保険や年金、各種手当など、公的な手続き
- 財産分与や年金分割に関する手続き
- 各種サービスの名義変更の手続き
これらの手続きには、期限があるものや、手続きが遅れると損してしまうものもあるため、忘れずに済ませましょう。
▼離婚後の手続き一覧はこちら
離婚前にする手続き・準備
離婚を決意したら、相手に離婚を切り出す前にしておくべきことがいくつかあります。これらの準備は、有利に離婚を進めるためには欠かせません。
- 離婚後の生活の基盤を整える
- 離婚原因の証拠を集める
- 相手の財産を把握する
- 離婚届不受理申出を届け出る
- 弁護士に相談する
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離婚後の生活の基盤を整える
離婚条件によっては、住む家がなくなったり、収入が急激に減ってしまうこともあるでしょう。離婚後の生活を安定させるための準備は、離婚を切り出す前から進めておくことをおすすめします。
準備とは、例えば以下のようなものです。
- 貯金を作る
- 住む場所を探す
- 仕事を始める
- 資格を取る
- 保育園・幼稚園を探す
離婚原因の証拠を集める
特に裁判を視野に入れている場合、証拠集めは必要不可欠です。
裁判では、法定離婚事由といって、以下の5つの離婚原因のうち、最低1つでも存在しなければ離婚が認められません。
法定離婚事由
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由
裁判で離婚が認められるには、証拠によって法定離婚事由があることを証明しなければなりません。また、不倫やDVなどに対して慰謝料を請求したい場合も、証拠が欠かせません。
調停でも、証拠があった方が有利な結果が期待できます。
証拠とは、例えば配偶者と不倫相手が一緒に写っている写真や、DVによって負った怪我の診断書、配偶者のモラハラ行為を記録した日記などです。
これらの証拠は、離婚を切り出してからでは確保しづらくなる可能性が高いため、離婚を切り出す前の段階で、相手にバレないように集める必要があります。
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相手の財産を把握する
離婚時には、財産分与といって、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を分け合うことができます。
財産分与を最大限受け取るためには、すべての財産を明らかにすることが重要です。
財産分与で財産が減ってしまうことを恐れた配偶者が、隠し口座を作ったり、黙って不動産を買ったりなどして財産隠しを行っていることがあります。隠し財産を証明し、交渉の場で認めさせるためには、財産隠しの証拠を集める必要があります。
離婚を切り出す前に証拠を探しましょう。
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離婚届不受理申出を届け出る
配偶者や第三者が勝手に離婚届を提出してしまうのを防ぐために、離婚届不受理申出という手続きを利用することができます。
役所に離婚届不受理申出書などを提出すると、本人が不受理申出を取り下げない限りは、誰が離婚届を提出しても受理されなくなります。
一度離婚が成立してしまうと、それを覆すには相当な手間と時間がかかります。勝手に離婚届を出されてしまうおそれが少しでもあるならば、離婚届不受理申出をしておいた方がよいでしょう。
弁護士に相談する
離婚を切り出す前に、弁護士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
多くの法律事務所は、無料もしくは1時間あたり5,000〜1万円程度で離婚の法律相談を行っています。法律相談では、離婚の手続きや今後の見通しについて教えてもらえるでしょう。
法律相談を利用しても、必ずしも正式な依頼をする必要はありませんので、気軽に相談してみましょう。
まとめ
離婚の手続きは、離婚準備、離婚協議、離婚調停、離婚裁判、離婚届の提出という順番で進みます。
約9割の夫婦が協議離婚を選んでいますが、当事者間の話し合いでの合意が難しければ、家庭裁判所に調停を申し立てて話し合うことができます。
調停も不成立になったら、離婚裁判を起こして裁判官に判断してもらうことができます。
いずれの方法を選ぶにしても、まず取り掛かるべきなのは証拠集めなどの準備です。
どの離婚方法を選べばいいか知りたい、調停や裁判の見通しを聞きたいという方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了