離婚に失敗したくない!切り出す前の準備が重要

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離婚の準備

夫には愛想が尽きた。もう一緒に生活したくない。離婚したいと思い始めたら、少しでも早く実行に移したくなるかもしれません。しかし、準備をせずに離婚を切り出すのは絶対にNGです。

確実に離婚をしたい、しっかりと慰謝料や財産分与を受け取りたい新たな人生のスタートを気持ちよく切りたいなら、相手に離婚を伝える前に準備が必要です。

離婚を切り出す前に必要な準備は、大きく分けて3つあります。

  1. 離婚条件を考える
  2. 証拠を集める
  3. 離婚後の生活への備え

この記事では、なぜ準備が必要なのか、どういった準備が必要なのかについて詳しく解説します。

離婚に準備が必要な理由

離婚を切り出す前に準備しないとどうなる?

きちんと準備をせずに離婚を告げると、離婚自体ができなかったり、経済的な不利益を被る可能性があります。また、離婚後の自分の生活を見据えて、経済的・精神的に備えておくことも重要です。

離婚をするときに決めること

離婚をするときに夫婦で決めなければならないことは、「離婚をするかしないか」だけではありません。お金や子どものことについても、離婚届を出す前にしっかりと取り決めておく必要があります。

お金に関すること

子どもに関すること

これらを決めるとき、相手が話して分かってくれるならば良いですが、お金を請求された途端に離婚を拒否しだすといったこともあるでしょう。そうなったときに、準備をしているのといないのでは、結果に差が出てきます。

離婚の条件を決めておこう

離婚をする際には、様々なことを話し合って決める必要があります。

その中でも、慰謝料、婚姻費用、養育費などは、額を決めてこちらから請求することができます。もちろん最終的な支払い金額は話し合いで決まりますが、相手との駆け引きが起きることが予想されます。

あらかじめ希望の離婚条件妥協できる最低限の条件を決めておくことで、スムーズな話し合いができるようになります。

離婚を切り出す前に証拠を確保!

離婚には、大きく分けて「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つの方法があります。どの方法を取るにしても、証拠の確保がポイントです。

離婚自体が認められないこともある?

相手が離婚を拒んでいるような状況で離婚を認めさせるためには、離婚の理由が重要になります。

夫婦の間で話し合って納得すれば、どんな理由でも離婚することができます。しかし、どちらかが離婚を拒んで話し合いがまとまらなかった場合は、離婚調停や離婚訴訟(離婚裁判)を起こして離婚を決定することになります。

離婚調停では、調停委員会が夫婦それぞれの意見を調整しますが、具体的な判断をするのは当事者の2人です。ですので、協議離婚と同様に、合意さえできれば柔軟な解決方法を取ることができます。

調停委員会は中立的な立場ではありますが、離婚の原因となった事実の証拠を見せれば、味方になってくれる可能性は高まるでしょう。

他方、離婚訴訟(裁判)裁判では、裁判官が「2人を離婚させるかさせないか」の判断を下します。裁判離婚には厳しい基準があり、5つの法定離婚事由のうちいずれかが存在しなければ、離婚は認められません。

法定離婚事由

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みのない強度の精神病
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由

不倫が原因で離婚をしたくても、裁判で「夫が不倫をしました!」などと一方的に主張するだけでは、離婚は認められません。裁判では離婚の原因となった事実を立証する証拠が必要です。

逆に言うと、この5つの事由の証拠があれば、裁判で離婚が認められる可能性が高いということなので、協議の段階で離婚に応じてくれる可能性が高まります。

つまり、証拠が必須になるのは裁判の段階ですが、協議・調停の段階でも証拠はあるに越したことはないということです。

離婚方法については、「あなたに最適な離婚の仕方は?|スムーズな離婚を実現するために」の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

離婚慰謝料とは?慰謝料請求にも証拠が大事!

離婚慰謝料とは、夫婦が離婚する際に、離婚自体や離婚の原因となった相手の行為によって受ける精神的苦痛を償うために、有責配偶者(離婚の原因になった方の配偶者)に対して支払いを請求することができるお金です。

「女性側は必ず慰謝料がもらえる」というのはよくある誤解です。離婚慰謝料の請求が認められるには、離婚の原因となった事実とその証拠が存在することが非常に重要です。

慰謝料請求の対象となる行為には、5つの法定離婚事由のうち「不貞行為」や「悪意の遺棄」のほか、「婚姻を継続しがたい重大な事由」の一部も含まれます。

例えば、DVやモラハラは「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたり、慰謝料を請求することができる行為です。

離婚協議においては、双方が納得するならばどのような額の慰謝料でも設定することができます。とはいえ、なんの証拠も用意せずに不貞行為やDV、悪意の遺棄を指摘しても、言い逃れされて話し合いがこじれてしまう可能性があります。

証拠を用意して、冷静に話し合いをするのが良いでしょう。

また、離婚調停離婚裁判で慰謝料の額を争うのなら、離婚の原因となった事実が存在した証拠を調停委員や裁判官に示し、妥当な慰謝料の額を判断してもらう必要があります。

慰謝料をしっかりと受け取るためにも、離婚を切り出す前に証拠を用意しましょう。

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離婚慰謝料がもらえるのはどんな時?相場はいくら?

財産分与を請求するときに重要な証拠

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に公平に分け合うことです。財産分与の対象となる財産は、家や土地、車、預貯金などのほか、有価証券や退職金、保険の解約返戻金なども含まれます。

財産分与を話し合うために必要なのは、互いの財産をリストアップすることです。ここで問題になりやすいのが、財産隠しです。

財産分与によって自分の財産が減ってしまうことを恐れた配偶者が、自宅や貸し金庫に現金を隠す、隠し口座に預金を移す、黙って不動産を購入するなどして、財産を隠してしまうことがあります。

財産隠しをされると、自分が受け取れる財産分与が減ってしまいます。配偶者が財産を隠している疑いがあるなら、財産隠しの証拠を集めることが重要です。証拠があれば、相手は言い逃れができなくなりますし、調停や裁判でも主張が認められやすくなります。

離婚を切り出した時点では財産を隠していなかったとしても、離婚の話が出た後でこっそり自分の口座に預金を移してしまうなどといったことも考えられますので、離婚を切り出す前の段階で、どんな財産がどのくらいあるかを把握しておく必要があります。

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証拠集めは別居前に!

少しでも早く別居をしたいと感じるかもしれませんが、別居を始めると証拠集めが難しくなってしまうので、別居のタイミングは慎重に考えましょう。

とはいえ、法定離婚事由がなく離婚が難しそうな場合でも、別居が長期間に及ぶと「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたり、裁判で離婚が認められることがあります。そのため、証拠を押さえてからの別居は、確実に離婚をするための手段になり得ます。

離婚後の生活に備えよう!

無事に離婚が成立すれば、新たな人生がスタートします。しかし、離婚条件によっては住む家がなくなったり、収入が急激に減ってしまうこともあるでしょう。離婚前後の生活を安定させるために、以下のような備えをしておくことをおすすめします。

経済的な備え

離婚の前後では以下のようなお金が必要になります。

  • 別居費用
  • 当面の生活費
  • 弁護士費用
  • 離婚調停・離婚裁判の手数料
  • 保育園・幼稚園の費用
  • 公正証書の作成費用(離婚協議書を公正証書にする場合)
  • 慰謝料、婚姻費用、財産分与、養育費(支払う側の場合)

婚姻中に相手の収入に頼って生活していた場合、離婚後は自分の経済状況が悪くなってしまうことが予想されます。安心して離婚を進めるためには、離婚後の収入の見通しを立てておくことが重要です。

慰謝料や財産分与、養育費を受け取ることで当面の生活資金はまかなえるかもしれませんが、あてにしすぎるのは危険です。話し合いの結果、想定より額が少なくなってしまったり、支払いが滞る可能性があるからです。

また、別居を始める際にはまとまった費用が必要です。家を借りる際の初期費用は1か月の家賃の5倍程度と言われています。離婚を切り出す前から、別居費用を貯めておくことをおすすめします。

新しく仕事を始めるつもりならば、どこでどんな仕事をするか、子どもを預けておける場所はあるかなど、ある程度の見当をつけておくとよいでしょう。

また、国や自治体による助成金・給付金などの支援制度があるので、事前に調べておくと安心です。

子どもに関する備え

調停や裁判で親権を争う場合は、離婚前の監護実績や離婚後の生活の見通しが重要になってきます。安定した収入や、子どもの世話の体制の見通しを立てて、子どもを育てていけることを調停委員や裁判官にアピールするとよいでしょう。

また、引っ越しが必要な場合は、転入する保育園・幼稚園、学校を調べておく必要があります。

精神的な備え

離婚の話し合いや手続きには、多くの方がストレスを感じています。

調停や裁判に発展した場合は、さらにお金も手間も時間もかかってきます。ケースによってばらつきはありますが、調停離婚だと6か月〜1年程度裁判離婚だと調停にかかった期間に加えて1年程度かかることが多いようです。

その間、気力を保ち続けるのは大変なことです。話し合いの途中で「もういいや」と妥協してしまい、不利な条件での離婚となってしまうのは避けたいところです。

離婚を決意した段階で、これから流れを調べておき、心づもりを作っていくことが重要です。

また、子どもを1人で育てていくにも覚悟が必要です。頼れる人を見つけておくなどして、心の準備をしておくのがよいでしょう。

離婚を切り出す前に弁護士に依頼した方がいい?

弁護士だけが使える「弁護士会照会」

離婚を切り出す前の段階で特に重要なのは、証拠集めです。弁護士は、証拠を集めるための強い力を持っています。それが「弁護士会照会」です。

弁護士会照会は、弁護士が事件の調査のために企業や公共機関に情報の開示を請求できる制度です。この制度を用いて手に入れることができる情報は、隠し口座の情報不倫相手の素性などです。

弁護士会照会には回答の義務がありますので、非常に強力な証拠収集の手段となります。ただし、この制度を使うには、口座のあると思われる銀行の支店名相手の電話番号など、ある程度の情報が分かっている必要があります。

相手が話し合いに応じなかったら

配偶者が一切話し合いに応じてくれない場合、協議を進めることができません。

こういった場合、本人ではなく弁護士から連絡をしてみると、事の重大さに気づいて話し合いに応じてくれることがあります。

また、DVやストーカー行為などがあり、離婚を切り出すのが危険と考えられる場合も、弁護士が依頼者の代理人となって相手との連絡や交渉を全て担ってくれるため、安全に離婚の話し合いを進めることができるようになります。

弁護士に依頼するのはいつがいい?

弁護士は裁判になってからつければいいやと思われるかもしれませんが、離婚裁判を弁護士に依頼する場合、協議離婚よりも費用がかさんでしまいます。

協議で話がまとまらなそう、話し合いが長引きそうといった場合は、離婚を切り出す前のタイミングで弁護士に依頼して協議離婚で終わらせたほうが、結果的には時間も費用も節約できる可能性があります。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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