離婚の法律と民法770条の離婚事由を弁護士が解説

日本の法律では、離婚の方法として協議・調停・審判・裁判の4種類を定めています。このうち裁判で離婚が認められるには、民法770条に規定された離婚事由のいずれかに該当することが必要です。
また、法律上の権利や請求期限を知らないまま離婚を進めると、本来受け取れるはずの財産や養育費を取り逃すおそれがあります。たとえば財産分与の請求期間は、2026年4月1日施行の民法改正により「離婚後2年以内」から「離婚後5年以内」に延長されました。
では、離婚に関するルールはどのような法律で定められているのでしょうか。
離婚制度は主に3つの法律で構成されています。財産分与や離婚の要件といった権利・条件を定める民法、調停手続のルールを定める家事事件手続法、そして裁判手続のルールを定める人事訴訟法です。
この記事では、2026年4月施行の改正内容を踏まえながら、民法に基づく離婚の基礎知識・民法の離婚事由・離婚後の権利について解説します。
目次
離婚の方法に関する法律上のルール
日本の法律(民法)には、法的に離婚が認められるためのいくつかのルールがあります。
最も根幹的なルールとしては、民法が定める離婚方法によらなければ、離婚できないというルールです。
民法には、大きく分けて、以下の図の①~④までの4種類の離婚方法があります。
基本的な離婚の進め方としては、まずは夫婦の話し合いから始め、①協議離婚を目指します。
そして、協議離婚がうまくいかなければ、②調停離婚、③審判離婚、④裁判離婚(和解離婚、認諾離婚を含む。)といった流れで、離婚を目指すことになります。

①協議離婚の法律上の条件
夫婦が話し合いにより合意して離婚する方法を、協議離婚といいます。
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
民法763条
協議離婚が成立するための法律上の条件は、夫婦が離婚に合意すること、および離婚届が受理されることです。
離婚届には親権者を記入する欄があります。子どもがいる場合は、離婚の合意と並行して、父母の双方を親権者とする(共同親権)か、一方のみを親権者とする(単独親権)かを話し合いで決めるのが原則です。ただし、DVや虐待のおそれがある場合などは、共同親権が認められないことがあります。
協議離婚は、全体の約9割を占めるともいわれる離婚方法です。調停や訴訟とは異なり、法律上は離婚届の受理のみで成立するため、当事者にとって最も負担の少ない方法といえます。
ただし、夫婦の一方が離婚を拒否している場合は協議離婚はできないため、他の離婚方法を選択する必要があります。
関連記事
②調停離婚の法律上の条件
調停離婚(夫婦関係調整調停)は、家庭裁判所の調停委員会が間に入り、離婚するかどうかや離婚条件について夫婦の話し合いをサポートする離婚方法です。
家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件(別表第一に掲げる事項についての事件を除く。)について調停を行う(以下略)。
家事事件手続法244条
離婚調停では、夫婦が調停委員と交互に面談して意見を調整します。原則として家庭裁判所に出向いて行いますが、2025年3月以降はウェブ会議での参加も可能になっています。
離婚することは決まっているけれど条件が折り合わないという場合には、離婚条件だけを調停で話し合うことも可能です。
なお、調停委員会が離婚を強制することはできません。調停離婚の法律上の条件は夫婦の合意であり、合意に至らなければ調停は不成立として終了します。
関連記事
③審判離婚の法律上の条件
審判離婚は、わずかな離婚条件の違いなどで調停が成立しない場合に、家庭裁判所の判断で離婚を成立させる方法です。
家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判(以下「調停に代わる審判」という。)をすることができる。
家事事件手続法284条1項
離婚調停が不成立となり、裁判官が相当と認めた場合にのみ審判が下されます。
ただし、審判の告知から2週間以内に当事者から異議が申し立てられると、審判はその効力を失います。異議申立てがないまま確定した場合に初めて、確定判決と同一の効力が生じ、離婚が成立します。
審判離婚は、全離婚件数に占める割合は約2~3%にとどまり、協議離婚や調停離婚と比べて件数は少ない離婚方法です。異議申立てによって容易に効力を失う仕組みであるため、一方が離婚を明確に拒否している場合には、実質的に機能しにくいという側面があります。
関連記事
・審判離婚とは|調停・裁判との違いは?流れ・メリット・デメリットも解説
④裁判離婚の法律上の条件
離婚調停が不成立となった場合や、調停に代わる審判に異議を申し立てて効力が失われた場合には、離婚裁判(人事訴訟)を起こすことができます。
離婚裁判では、裁判官が離婚を認めるかどうかを判決で決定します。
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
民法770条1項柱書
法律上の条件1 調停を経てから裁判を起こすこと
家事事件手続法257条は、離婚調停を経なければ裁判を起こすことができないと定めています。これを調停前置主義といいます。
ただし、相手方が行方不明であるなど、調停を行うことが不可能な場合は、調停を経ずに裁判を起こせる例外も設けられています。
法律上の条件2 法定離婚事由があること
2026年4月1日施行の民法改正により、現行民法が定める法定離婚事由は「不貞行為」「悪意の遺棄」「3年以上の生死不明」「婚姻を継続しがたい重大な事由」の4項目です。
このうち最低でも1項目に該当することが、裁判離婚の法律上の条件となります。
裁判離婚についての補足
どうしても離婚したいのに、相手が協議でも調停でも離婚や離婚条件を拒んでいる場合、最終的には裁判を起こして裁判官に決めてもらうしかありません。
ただし、離婚裁判中であっても、裁判官立会いのもとで離婚や離婚条件に折り合いをつけ、相手と和解することは可能です(和解離婚)。
また、離婚の訴えを起こされた側(被告)は、訴えを起こした側(原告)の主張を全面的に受け入れることもできます(認諾離婚)。ただし、未成年の子どもがいる場合など、裁判で親権者を定める必要があるケースでは認諾離婚は認められません。
関連記事
離婚における弁護士の立ち位置は?
離婚の手続きにおいては、任意で弁護士を選任することができます。
離婚の手続きにおいて、弁護士を付けることは法律上の義務ではありません。実際に、ご本人だけで離婚問題に対応されるケースもあります。
しかし、配偶者との交渉や法的手続きには、想像以上に大きな精神的負担がかかります。感情的な対立が激しい場合や、相手が離婚条件で譲歩しない場合には、冷静な話し合いが困難になることも少なくありません。
弁護士は、依頼者の代理人となって、相手方との交渉をおこなうことができるので、ご本人が感じるストレスの軽減に貢献することができます。
また、弁護士は法律の専門家なので、離婚問題解決のためにおこなうべき調査、証拠収集、書類作成などのサポートができます。
離婚調停、離婚裁判などの法律の手続きについても、弁護士がいれば、自分で一から調べる必要はありません。
民法の離婚事由とは何か?
法律で裁判離婚が認められる条件
裁判離婚とは、話し合いで折り合いがつかない夫婦に対して、裁判官が判決によって離婚の成否を決める手続きです。
強制力をともなう分、裁判で離婚が認められるには法律上の厳しい条件を満たす必要があります。民法770条1項に定められた「法定離婚事由」のいずれか一つに該当することが、その条件です。
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
民法770条1項各号
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2026年4月1日施行の民法改正により、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」という事由が削除され、法定離婚事由は4つとなりました。精神疾患を抱える配偶者との離婚を求める場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」への該当性が争点となります。
なお、民法770条2項は、1号から3号までの離婚事由に該当する場合でも「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる」と定めています。
離婚事由に当てはまる場合でも、離婚が認められないケースがある点には注意が必要です。
裁判で離婚が認められる基準
裁判で離婚が認められる基準は、一般の方が想像するより厳格です。
たとえば「性格の不一致」だけでは通常認められません。実務では、別居期間が3年以上あるか、DVやモラハラの証拠があるか、不貞行為の明確な証拠があるかなど、客観的な事実の積み重ねが重視されます。
不貞行為(民法770条1項1号)
民法で離婚事由とされる「不貞行為」とは、配偶者以外の第三者と性的関係をもつことです。
単なる食事やデートは不貞行為にあたらず、肉体関係を推認させる証拠が必要です。直接的な証拠がなくても、状況証拠の積み重ねによって認定される場合があります。
不貞行為が認められた裁判例として、夫が交際相手を「好きな人」として家族に紹介したうえで別居し、夫の部屋から交際相手の下着が発見されたケースがあります(千葉家判令3・8・17)。直接的な証拠はなかったものの、一連の状況証拠の積み重ねが決め手となり、裁判所は離婚を認めました。
また、妻が以前夫から聞いていた暗証番号で携帯のロックを解除して入手したLINEのトーク履歴を証拠として提出した事案では、夫側が「違法収集証拠だ」として排除を求めましたが、裁判所は取得方法が著しく反社会的とまではいえないとして証拠能力を認め、不貞行為が認定されました(福岡家判令2・7・21)。
悪意の遺棄(民法770条1項2号)
民法で離婚事由とされる「悪意の遺棄」とは、正当な理由なく、夫婦の同居義務、協力義務、扶助義務を果たさないことです。
民法752条は夫婦にこれらの義務を課しており、生活費を渡さない、一方的に家を出て戻らないといった行為が悪意の遺棄に該当します。
実際の裁判では、夫が、レーベル病という難病を発症した妻と小学生の子ども2人を残して家を出て、報酬の振込口座を変更する、住宅ローンの支払いを停止する、健康保険を使えないようにするなどした事案で、悪意の遺棄が認められました(東京家立川支判令2・3・12)。
また、夫が行先を告げず突然家出して消息を断った行為を悪意の遺棄と認定した裁判例もあります(名古屋地判昭49・10・1)。
3年以上の生死不明(民法770条1項3号)
民法で離婚事由とされる「3年以上の生死不明」とは、最後に消息を絶った後、生死が3年以上不明な状態を指します。相手方との話し合いが不可能なため、調停前置主義は適用されず、いきなり離婚裁判を提起することが法律上許されています。
実際の裁判では、「働いてくる」と言い残したまま家を出た夫に対し妻が離婚を求めた事案では、提訴時点で約7年間所在不明の状態でした。裁判所は長期の所在不明から生死不明の状況が3年以上続いていることを推認し、離婚請求を認めました(仙台地裁大河原支部昭38・8・29)。
婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項4号)
民法の離婚事由とされる「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻関係が破綻して、婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込みがないことを指します。婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性がある事情としては、長期間の別居、DV、モラルハラスメント、性的不調和などが考えられます。
ただし、離婚事由に該当するか否かは、個別の事案やその程度によって判断されます。実務では別居期間が特に重視される傾向があり、一般的に3年以上で婚姻関係の修復が困難と判断されやすく、5年以上あれば離婚が認められる可能性が高まります。
婚姻関係の破綻が認められた事例として、夫から2回の暴力を受け、その後2年以上別居が続いたケースがあります(横浜家判令4・5・31)。裁判所は暴力の程度そのものよりも、別居が長期化していることや、夫が関係修復に向けた具体的な努力をしていない点を重視し、婚姻を継続し難い重大な事由があると判断しました。
また、8年以上にわたる別居の継続により婚姻関係の破綻が認められ、妻の離婚意思が強い一方で、夫にも他者の意見を受け入れにくい姿勢が見られたことから、関係修復は困難と判断され、離婚が認められたケースもあります。(福岡家判令4・7・8)。
他にも、夫婦双方が離婚を望んでいる点を踏まえ、婚姻を継続し難い重大な事由があるとして離婚が認められた事案もあります。

弁護士
裁判所は、法律だけではなく、これまで蓄積された過去の裁判例の傾向も踏まえて、判断をくだします。
ご自身の事案で、婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性があるかどうか、知りたい場合は、離婚を扱う弁護士におたずねください。
離婚で役立つ法律上の権利
離婚時や離婚後に持つ権利は?
離婚する際には、配偶者に対して以下のような権利を持ちます。
- 財産分与請求権(民法768条)
- 慰謝料請求権(民法709条、710条)
- 養育費請求権(民法766条)
- 年金分割請求権(厚生年金保険法78条の2)
これらの権利は、離婚後も一定期間は消滅しません。ただし、請求できる期間には上限があります。
また、別居中には、夫婦や子どもの生活費にあたる婚姻費用を請求できる権利(民法752条)もあります。これは離婚を前提としない別居中でも請求できる権利です。
子どもと一緒に暮らしていない親は、子どもと面会する権利(親子交流、民法766条)や、子の引き渡しを求める権利、親権者・監護権者の変更を求める権利なども持ちます。
こうした権利が法律で定められているということは、裁判所が認めれば強制的に実現させることもできるということを意味します。お金の支払いであれば、給与や預貯金の差し押さえといった法的手続きによって回収が可能です。
財産分与
財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を、離婚時に公平に分け合う手続きです。
専業主婦(主夫)も財産分与を受け取る権利を持っています。主に相手の収入によって築かれた財産であっても、家事や育児を通じて収入に貢献していたと評価されるため、原則として財産の2分の1を受け取ることができます。
2026年4月1日施行の民法改正により、財産分与の請求期間は離婚から5年以内に延長されています。ただし、2026年3月31日以前に離婚した場合は、離婚から2年以内となります。
関連記事
・離婚の財産分与とは?割合はどうなる?夫婦の財産の分け方を解説
慰謝料
慰謝料は、大きく2種類に分けられます。離婚そのものによって受けた精神的苦痛に対する「離婚慰謝料」と、不倫や暴力といった個別の行為に対する「不法行為慰謝料」です。後者は不倫慰謝料などと呼ばれることもあります。
関連記事
・離婚慰謝料の相場は?慰謝料がもらえるケース・種類・条件を弁護士が解説
養育費
養育費とは、子どもを養育するのに必要なあらゆる費用のことをいい、多くの場合は、離婚後に子どもを育てる親に対して毎月支払うお金のことを指します。
離婚時に後述の手続きを行っておけば、将来養育費の支払いが滞ったときに、強制執行(差し押さえ)によって強制的に支払わせることができます。
なお、2026年4月1日施行の民法改正により、養育費の不払いを防ぐための新たな制度が導入されました。
離婚時に養育費について父母間で合意文書を作成しておけば、将来の養育費債権に先取特権が認められ、相手の財産から優先的に回収できます。優先回収できる上限額は子ども1人につき月額8万円です。
また、父母の合意がない場合でも、暫定的な措置として子ども1人につき月額2万円を請求できる法定養育費制度も新設されました。
関連記事
・離婚後の養育費の相場はいくら?支払われなかったらどうする?
・養育費の強制執行はどうやる?未払いの時の選択肢と手続きの流れ
婚姻費用
離婚前の別居の段階では、夫婦や子どもの生活費など、婚姻生活を維持するために必要な費用(婚姻費用)を請求することができます。
婚姻中、夫婦は互いに協力し扶助しあう義務を負っています。別居中であっても婚姻関係が続く限りこの義務は消滅しないため、収入の多い配偶者に対して婚姻費用の分担を請求する権利があります。
婚姻費用の分担については、家庭裁判所の「婚姻費用の分担請求調停・審判」を利用することができます。調停で合意に至らない場合は、自動的に審判手続に移行します。
また、婚姻費用に子の監護費用が含まれる場合、2026年4月施行の改正により、「毎月〇日までに支払う」といった確定期限の定めがある父母間の合意文書があれば、調停や審判を経なくても先取特権に基づく差し押さえの手続を利用できるケースがあります。
関連記事
・婚姻費用の相場は月10~15万円?別居・離婚調停の生活費請求を解説
離婚時の年金分割
年金分割とは、婚姻期間中の配偶者の厚生年金の保険料納付記録を分割してもらい、将来受け取る自分の年金額に反映させる制度です。
年金そのものを直接分け合うわけではなく、記録を分割することで老齢厚生年金の計算基礎が変わります。なお、国民年金(基礎年金)は対象外です。
年金分割の手続きには「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
3号分割は、2008年4月以降の婚姻期間中に国民年金の第3号被保険者(専業主婦・主夫など)であった期間を対象に、相手の同意なしで2分の1に分割できる制度です。それ以前の期間や共働き期間の記録を分割するには、相手の合意または家庭裁判所の手続きが必要な合意分割を利用します。
年金分割の請求期限は、原則として離婚の翌日から5年以内です(2026年4月1日より前に離婚した場合は2年以内)。将来の生活を安定させるためにも、離婚時に忘れずに手続きを行いましょう。
関連記事
・離婚時の年金分割手続きとは?必要書類は?共働き・拒否した場合も解説
離婚に役立つ法律知識
財産の差し押さえができる
離婚時には財産分与・慰謝料・養育費・婚姻費用を受け取る権利があります。しかし、「いつまでにいくら払う」という約束をしても、支払いが履行されないことは少なくありません。
そういった場合は、一定の法律上の手続きを踏むことで、強制執行によって強制的に支払わせることができます。強制執行には間接強制や直接強制がありますが、最もイメージしやすいのは財産や給与の差し押さえです。
強制執行を行うには、原則としてあらかじめ「債務名義」を得ておく必要があります。債務名義は、調停・審判・裁判で支払い義務が認められることで取得できます。
また、裁判所の手続きを経ていなくても、強制執行を認める旨を記載した公正証書を作成しておけば、それが債務名義となります。
2026年4月1日施行の法改正により、養育費と子の監護費用を含む婚姻費用については先取特権が設けられました。調停や公正証書がなくても、「毎月〇日までに支払う」といった確定期限の定めとお互いの署名押印がある父母間の合意文書があれば、法務省令で定められた額の範囲内で差し押さえの手続きをとることが可能になっています。
もっとも、子ども1人につき月額8万円を超える養育費や慰謝料・財産分与について確実に支払いを担保するには、引き続き公正証書の作成が有効です。協議離婚をする際は、取り決めを公正証書にしておくことをおすすめします。
関連記事
・離婚の強制執行で未払い金を回収|養育費・慰謝料等の手続きの流れと費用
離婚協議書・公正証書を作成するメリット
離婚協議書は、協議離婚の際に任意で作成できる合意内容を記載した書面です。法律上の義務はなく、書式や記載内容も基本的に自由ですが、作成しておけば合意内容を証明する重要な証拠資料になります。
さらに、離婚協議書を公正証書の形にすることもあります。公正証書とは、公証役場にて公証人によって作成される公文書です。
金銭の支払いについて公正証書を作成し、「支払いを履行しないときは直ちに強制執行に服する」という執行認諾条項を入れておくと、支払いが滞った際に調停や裁判を経ずに強制執行を行えるようになります。
関連記事
離婚後の苗字は自由に選べる
結婚するときに苗字を変えた人(多くの場合は妻)は、離婚時に旧姓に戻るのが原則ですが離婚から3か月以内に手続きを行えば、相手の苗字を使い続けることができます。この制度を婚氏続称といいます。
婚氏続称に必要な手続きは役所への届出のみで、相手の許可も必要ありません。
ただし、一度婚氏続称を選択した後に「やはり旧姓に戻したい」と思っても、役所への届出だけでは変更できません。家庭裁判所に「氏の変更許可」を申し立て、許可を得る必要があります。
また、離婚から3か月が経過した後に婚姻中の氏を名乗りたい場合も同様です。氏の選択は、将来のことも含めて慎重に決めましょう。
関連記事
・離婚後に苗字を変えない理由は?婚氏続称のメリット・デメリット
離婚の法律相談はどこでできる?
離婚の法的知識について気になることがあったら、専門家への相談も検討しましょう。
弁護士
弁護士は、離婚のあらゆる法律問題に対処することができます。
依頼者の代理人として相手方との交渉を行ったり、離婚調停や裁判に出廷することは、弁護士にしか認められていません。
離婚を決意してから相談する方が多いですが、実務では「離婚を考え始めた段階」での早期相談を推奨します。別居前に財産の把握や証拠収集を済ませておくことで、後の交渉が有利になるためです。
弁護士に相談するには、インターネットで離婚を扱う法律事務所を探すほか、弁護士会や法テラス、自治体の法律相談を利用する方法があります。なお、法テラスでは、収入などの条件を満たせば弁護士費用の立替制度を利用できます。
関連記事
行政書士・司法書士
行政書士は書類作成に関する専門家で、離婚協議書や公正証書などに関する相談が可能です。
司法書士は、登記の専門家です。離婚に伴って家や土地の名義を変えることはよくありますが、登記に関する相談をするなら司法書士が向いています。
行政書士や司法書士に、離婚交渉や離婚条件などについての具体的な法律相談をすることはできませんが、費用が比較的安価です。
自身の困りごとに合わせて、誰に相談するのかを決めるのがよいでしょう。
関連記事
無資格者の法律相談は違法
離婚カウンセラーや夫婦問題カウンセラーといった肩書の人が、離婚相談を行っていますが、これは法律相談というより夫婦の関係修復や気持ちに関する相談です。
弁護士や行政書士、司法書士の資格を持たない人が有償で法律相談を行うことは違法です。離婚協議書や調停、裁判手続きなどについて相談したい場合は、法律の専門家を選びましょう。
関連記事
・女性におすすめの離婚相談窓口はどこ?24時間対応の窓口も紹介
離婚にまつわる裁判の心得・法律の落とし穴
裁判は法律や判例に基づいて判断される
夫婦の状態が民法の離婚事由にあてはまるのか、離婚を認めてよいのかを決める際に、裁判官は法律やこれまでに蓄積された裁判例に基づいて判断を下します。したがって、離婚裁判を起こす場合は、法律や判例を強く意識することになるでしょう。
とはいえ、裁判官には一定の裁量権があり、個々の事情を鑑みて柔軟に基準を解釈・適用することもあります。少しでも有利に離婚裁判を進めるためにも、離婚を扱う弁護士のナビゲートがあると心強いものです。
合意した離婚条件が法律で無効になることもある
夫婦の合意があれば、法律や判例などに縛られず、自由に離婚条件を決めることができます。ただし、公序良俗に反する条項や強行法規に違反する取り決めは、夫婦の合意があったとしても無効とされています。
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
民法90条
公序良俗とは、法律の中に細かく定められてはいないものの、社会通念上求められる道徳や秩序のことをいいます。強行法規とは、法律の条文の中でも公の秩序に関する規定のことをいい、当事者の合意によって変更することはできません。
たとえば、以下のような条項は、当事者の合意があったとしても調停や裁判では認められませんし、離婚協議書に書いたとしても強制力を持ちません。
- 再婚を禁止する
- 婚姻中の苗字の使用を禁止する
- 利息制限法の上限を超える金利の遅延損害金を設定する
そのほか、夫婦の自由な取り決めよりも優先すべきものとして、子どもの利益が定められています。以下は、子どもの監護者(世話をする人)や親子交流、養育費についての条文です。
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者又は子の監護の分掌、父又は母と子との交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
民法766条
以下のような取り決めは、子どもの利益を害するおそれがあると考えられ、無効となる可能性があります。
- 養育費請求権を放棄する
- 親子交流を放棄する
- 将来的な親権者の変更を予定する
- 将来的な親権者の変更を禁止する
離婚と法律に関するよくある質問
Q. 法律を知らないと離婚で損する?
離婚の際に法律上の権利や請求期限を知らずにいると、本来受け取れるはずの金銭を請求できなくなるリスクがあります。口約束だけで離婚すると、「そんな約束はしていない」と後で争いになるケースも少なくありません。
合意内容を離婚協議書などの書面に残しておけば証拠として機能し、養育費や子の生活費を含む婚姻費用については合意文書をもとに差し押さえの手続きをとることも可能です。慰謝料・財産分与や上限を超える養育費には、強制執行認諾文言付きの公正証書が有効です。
Q. 2026年4月の民法改正で何が変わった?
2026年4月施行の民法改正により、離婚をめぐる法律のルールが大きく変わりました。主な変更点は、①裁判離婚事由から「強度の精神病」が削除、②離婚後の共同親権が選択可能に、③養育費に先取特権が付与され不払いへの対抗手段が強化、④取り決めがない場合でも月額2万円の法定養育費を請求できる制度が新設、⑤財産分与の請求期間が離婚後5年に延長、の5点です。
Q. 弁護士に相談するタイミングはいつがベスト?
離婚を考え始めた段階での相談をおすすめします。別居後や離婚協議が始まってからでは、財産を隠されたり、不利な約束をさせられたりするリスクがあるためです。
特に配偶者が自営業者や財産を管理している場合、別居前に財産状況を把握し、必要な証拠を集めておくことが重要です。通帳や源泉徴収票、不動産の登記事項証明書など、同居中にしか手に入りにくい資料は早めに確保しておきましょう。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

弁護士
話し合いがまとまらない場合でも、家庭裁判所に親権者指定の調停や審判を申し立てていれば、親権者を定めずに離婚届を提出することが可能です。