仕事中の骨折が労災と認定|労災保険や慰謝料の金額はいくら | アトム法律事務所弁護士法人

仕事中の骨折が労災と認定|労災保険や慰謝料の金額はいくら

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骨折が労災と認定|労災保険や慰謝料

「作業中に転倒したら労災保険の支給を受けられる?」
「骨折して働けなくなった時の生活補償はどうなる?」

このような不安や疑問を抱えてはいないでしょうか。

特に、工事現場や工場などの場合、業務中の事故で骨折するケースは少なくないです。労災に該当する要件を満たしていれば、骨折でも労災認定を受けることが可能です。

今回は、骨折で労災認定を受けるための要件、支給される労災保険や損害賠償金の内訳について解説します。職場で骨折して働けなくなった時に、どういった金銭的補償を受けられるかわかるので、ぜひご一読ください。

骨折で労災認定を受けるための要件

業務災害または通勤災害に該当する骨折であること

労災であるといえるためには、「業務災害」または「通勤災害」の要件に該当しなくてはなりません。

  • 業務災害
    労働者が業務上の災害により負傷した
  • 通勤災害
    労働者が通勤中の災害により負傷した

それぞれの要件について解説を行います。

骨折が業務災害に該当する要件

業務災害に該当するといえるには「業務遂行性」および「業務起因性」が存在することが必要です。

業務遂行性

業務遂行性とは、事業主の支配下や管理下で業務を遂行中に事故に遭ったということです。
たとえば、工場で作業中に転んでしまい骨折したのであれば、事業主の支配下にある業務中に生じたことなので業務遂行性が認められます。

社外にいる時に起きた出来事でも事業主の管理下にあるといえる状況ならば、業務遂行性を満たす場合もあります。
たとえば、出張時に駅で他人と衝突して骨折した場合はその代表例です。

ただし、仕事の帰りに野球を観戦しに行き、球場の階段から落ちて骨折した時は業務遂行性があるとはいえません。事業主の支配下や管理下から離れ、自らの判断で娯楽に興じているので、仕事との関連性が認められないためです。

業務起因性

業務起因性とは、病気や怪我が業務を原因として生じたものということです。

基本的に、業務行為中に骨折した場合は業務起因性が認められます。

しかし、いたずらや私的行為が原因で骨折した時は、業務起因性があるとはいえません。
たとえば、休憩時間に同僚と口論になり、相手から殴られて骨折した時は、たとえ職場内の出来事だとしても業務起因性はないと判断されます。

また、骨の同じ部位に繰り返し加わる小さな力によって、骨にひびがはいったり、ひびが進んで完全な骨折になる疲労骨折が生じた場合には、業務行為が原因なのか日常動作が原因といえるのかという点で業務起因性が問題となるでしょう。

業務災害に関して詳しく知りたい方は『業務災害にあってしまったら|複雑な労災保険制度を弁護士が解説』の記事をご覧ください。

骨折が通勤災害に該当する要件

通勤災害と認められるのは、通勤途中に災害が生じることが必要です。
以下のような場合に通勤途中と認められます。

  • 住居と就業場所の往復
  • 就業場所から他の就業の場所への移動
  • 単身赴任先と家族の住む住居間の移動

上記に該当する移動であるだけではなく、就業に関する移動であり、合理的な経路及び方法の移動であることも必要です。

移動途中に合理的な経路をそれたり、通勤とは関係のない行為を行った場合には通勤途中といえなくなってしまいます。
ただし、日常生活に必要な最小限度の行為を行うために経路をそれたり関係のない行為を行った場合には、行為終了後は通勤途中であると判断されるのです。

通勤災害の具体例について詳しく知りたい方は『通勤災害とは何か|寄り道で怪我しても労災?誰にどんな請求ができる?』の記事をご覧ください。

骨折により労災保険からもらえる金額はいくら?

業務災害または通勤災害の要件に該当する場合は、骨折の損害に対して、労災保険が下りる可能性は高いです。
労災保険といっても、支給を受けられる補償の種類はいくつか存在します。

骨折の場合は「療養(補償)給付」「休業(補償)給付」「障害(補償)給付」の3つです。
労災保険給付の内容ごとに書類を用意して、労働基準監督署などに給付手続きを行うことになります。

労災保険による給付を受けるための手続きに関しては『労働災害の手続き・流れと適切な給付をもらうポイント』の記事をご覧ください。

骨折の治療費|療養(補償)給付

療養(補償)給付とは、療養のために要した費用を支給するものです。
業務災害の場合は療養補償給付、通勤災害の場合は療養給付という名称になります。

治療のために必要となった費用が原則として対象となります。
具体的には、診察料、薬代、手術費用、入院費などです。

労災病院や労災指定病院を受診すれば、自己負担なくして療養の給付を受けることが可能です。

労災病院や労災指定病院以外の医療機関では、一度、自ら治療費を支払う必要があります。
ただし、申請すれば治療に要した費用の支給を後日受けられます。

療養(補償)給付についてさらに詳しくは、関連記事『労災の治療費は療養(補償)給付から|給付内容や手続き』をご覧ください。

骨折で仕事ができない|休業(補償)給付

骨折が原因で働けなくなった時に、支給されるものが休業(補償)給付です。
業務災害の場合は休業補償給付、通勤災害の場合は休業給付という名称になります。

1日あたり給付基礎日額の80%が支給されます。
給付基礎日額とは、労災事故が発生した日の直前3ヶ月間に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った金額です。

簡単にいうと、働いている時に得られた給与の約8割はもらえるということになります。

ただし、休業(補償)給付は、休業を開始した当日から受け取れるものではありません。休業(補償)給付は、休業4日目以降から支給されます。休業3日目までは待期期間の扱いとなるので、労災保険から給付が支給されることはありません。

もっとも、業務災害であれば、休業3日目までは労災保険とは別途、会社側が給付基礎日額の60%相当を支払う必要があります。

休業(補償)給付についてさらに詳しくは、関連記事『労災保険の休業補償|給付条件や計算方法』をご覧ください。

骨折で後遺症が残った|障害(補償)給付

骨折を治療しても完全に回復せず、後遺症が残る時もあります。これ以上治療を継続しても改善が見込めない状況を「症状固定」と呼びます。

後遺症の症状が後遺障害に該当するという認定を受けると、障害(補償)給付を受けることが可能です。
業務災害の場合は障害補償給付、通勤災害の場合は障害給付という名称になります。

後遺症が残り、症状固定になった後には、後遺障害認定手続きを行いましょう。

障害(補償)給付は、症状に応じて認定される後遺障害等級によって給付方法や給付金額が異なります。

後遺障害等は1級~14級に分かれています。1級から7級なら年金を、8級から14級なら一時金を受け取ることが可能です。

後遺障害に該当しなければ、障害(補償)給付はもらえないので、後遺障害等級認定を受けるための手続きは慎重に行う必要があります。

障害(補償)給付についてさらに詳しくは、関連記事『労災の後遺障害等級|認定基準と障害(補償)給付の金額早見表』をご覧ください。

労災の骨折で損害賠償請求ができる?

労災保険以外にも、骨折による損害発生の原因が会社や第三者にある場合には、損害賠償請求が可能なケースがあるのです。
会社や第三者へ損害賠償が可能となる要件について紹介します。

会社や第三者の損害賠償請求が可能となる要件

会社への請求|安全配慮義務違反の証明

会社側の安全配慮義務違反を証明すれば、損害賠償の請求は可能です。

どういった場合に安全配慮義務違反があったといえるのか、要件面を詳しく見ていきましょう。

会社は雇用する労働者に対して、労働契約上、当然に安全配慮義務を負っています。安全配慮義務とは、端的にいえば、労働者が安全・快適に働ける環境を整備するために努める義務を指します。

安全配慮義務に違反したために損害が生じた場合、会社は法的な責務を全うしていないと判断され、民事上の賠償責任が生じます。

安全配慮義務違反を証明するためには「予見可能性」と「結果回避可能性」を満たす必要があります。
予見可能性とは、事故が起きる危険を事前に予測できたかということです。そして、結果回避可能性は、事故のリスクを認識していた時に、回避するための措置を取ったか問われます。

まとめると、事故のリスクを認識していたにも関わらず対策を怠ったと認められる状況では、安全配慮義務に違反があったと考えられます。

安全配慮義務違反が認められる具体的なケースや、安全配慮義務違反の有無を判断するポイントを知りたい方は『安全配慮義務違反で慰謝料を損害賠償請求できるか?会社を訴えられるケース』の記事をご覧ください。

第三者への請求

労災による骨折が第三者の故意や過失を原因とする場合は、第三者に対する損害賠償請求が可能です。

通勤中に第三者の過失により生じた交通事故や、業務中にお客から暴行を受けた際に骨折した場合などが該当します。

労災の骨折における損害賠償請求の内容

安全配慮義務違反を立証することが、労災の骨折事故で損害賠償を受けるためのポイントでした。気になるのは、慰謝料や損害賠償をいくらもらえるのかということです。

労災事故の損害賠償額はケースバイケースで、一概に相場を申し上げるのはむずかしいでしょう。こちらでは、労災の損害賠償でもらえる項目を紹介します。

慰謝料等の金額を考えるにあたって参考にしてみてください。

慰謝料

骨折の治療を行うために入院や通院を行ったのであれば、入院や通院に要した日数をもとに、入通院慰謝料を請求することができます。

また、骨折により後遺障害が残った場合、その精神的苦痛に対する損害賠償として後遺障害慰謝料を請求することが可能です。

後遺障害慰謝料の金額は後遺障害等級によって変わります。後遺障害等級1級の場合であれば2,800万円、14級であれば110万円となるのです。
以上のことから、労災事故の賠償額は後遺障害等級によって、金額に大きな違いがあることがわかります。

逸失利益

逸失利益とは、労災事故で骨折しなければ将来的に得られたであろう収入を指します。

後遺障害が残ると、従前と比較して労働能力は低下します。したがって、事故に遭う前と比較して、収入は低くなる可能性が高いです。

後遺障害における逸失利益は、後遺障害等級に応じて変動する労働能力喪失率の影響を受けます。障害の程度が重い場合、労働能力喪失率が高くなり、逸失利益としてもらえる金額も高額になります。

逸失利益についてさらに詳しくは、関連記事『労災で失った逸失利益はいくらもらえる?』をご覧ください。

その他の請求内容

その他にも、以下のような損害に対して請求を行うことが可能です。

  • 治療費
    治療のために必要となった費用
  • 入通院交通費
    入院や通院するために発生した交通費
  • 入通院付添費用
    入院中の生活や通院する際に付添が必要な場合に発生する費用
  • 入院雑費
    入院中の生活用品や通信費用などをいう
  • 休業損害
    怪我の治療のために働けないことで生じる損害
  • 物損に関する費用

骨折の慰謝料は労災保険からは給付されない

労災による骨折で生じた損害は、労災保険の給付を受けることで一定程度補てんされます。

しかし、労災事故の原因によっては、労災保険の給付だけでなく損害の原因をつくった相手に対して損害賠償請求を行う必要があります。

とくに骨折で入院治療を受けていたり、骨折自体は治っても曲げづらさなどの後遺障害が残った方は、慰謝料が高額になる傾向があるため要注意です。
労災保険から慰謝料は支払われませんので、損害賠償請求をしていく必要があります。

弁護士と二人三脚で損害賠償請求を進めるべき

まず、損害賠償請求をする相手は誰になるのかを検討しなくてはなりません。
たとえば通勤途中や移動中の交通事故であれば事故の相手方になりますし、職場や現場における怪我の大半は会社が請求相手となるでしょう。

次にどういった法的根拠でいくら請求するのかを考えていく必要があります。
このように損害賠償請求には法的知識が必要ですし、日常生活やリハビリと交渉を並行させることは大きな負担です。

弁護士に相談すれば、損害賠償請求の手続きや請求方法に関してアドバイスがもらえます。また、正式契約をした場合には代わりに手続きや請求を行ってくれます。

関連記事『労働災害は弁護士に法律相談|無料相談窓口と労災に強い弁護士の探し方』でも解説している通り、労災の損害賠償請求における弁護士の役割は多数あります。

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弁護士相談したいと思っても、弁護士への相談や依頼の費用に不安を感じる人は多いでしょう。

労災で骨折して重大な後遺障害が残り、会社などに対する損害賠償請求をご検討の場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。
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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了